一章 琴葉 after この人たちの冷静が解らない
「・・・やっと終わった。これで十三人。」
自分の家から運転したこともない車を運転し、自分の家に置いてあった死体を琴葉の家に全て運び終えた。車の運転ってやっぱり慣れないと難しんだな。
「全部で二十六人かぁ。私と琴葉の愛の結晶ね、ふふふふ。」
二十六人もの死体が散乱する光景は壮観だった。
血塗れの琴葉の部屋はとっても綺麗だった。
ついさっきまでこの部屋で琴葉が殺人を繰り広げていたかと思うと感無量だった。
「・・・こうしておけば琴葉が殺したことになるよね。私が殺した分まで琴葉が評価されるの、素敵よね。」
・・・・一度車を自分の家において、戻ってきた。
それほど時間はかからなかった。
琴葉の家では勝手口に灯油が置きっぱなしになっているのは知っていた。
家の中に出来るだけ広く灯油を撒く。
琴葉のお兄さんの部屋にあったマッチで火を放つ。
「これでいいよね、琴葉、琴葉が苦しんでいた家なんて燃やしちゃえば。」
燃え始めたのを確認して外に出る。
これで琴葉の殺した奴も、私が殺した奴もみんなみんな燃えちゃうよね。
外に出ると倒れている琴葉が視野に入る。
不意に涙が溢れ出した。
「・・・・琴葉。」
琴葉の死体は満足そうな顔をしていた。
理由は私には解らない。
気が付けば私は琴葉を抱きしめていた。
涙は止まらない。
「ごめんなさい、琴葉。ごめんなさい。」
私は琴葉の事を思い出した。
たくさん、色々なことを。
もう二人で遊んだりすることも出来ないんだな。
どうして殺しちゃったんだろう。
琴葉の事あんなに好きだったのに。
「琴葉、琴葉、琴葉、・・・・・。」
私は琴葉の事を愛していたの、そして今も愛してるの。
私は嫌だった、愛する琴葉が他の誰かに奪われていく姿なんて、絶対に見たくなかった。
このままではいずれそうなってしまう。
城戸君、琴葉のお兄さん、琴葉は美人だから他にもたくさんいるだろうな。
「・・・・・・これで、よかったの。愛するから殺すの。素敵じゃない。」
やっと冷静になることができた、琴葉を殺した私は正しかったの。
さて、そろそろ通報しなくちゃ。
携帯電話を開き、110番に電話する。
「・・・・あ、警察ですか、大変なんです!友達が、友達が、・・・友達の家に来たら友達が庭に倒れてて、友達の家が燃えてるんです!・・・場所、住所とかはわからないです、とにかく、早く来てください!・・・・名前?私の名前ですか?・・・・時音、深山時音です!そんなことより早く来てください!・・・・・。」