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いきたがり  作者: 秋臣
9/18

理由

「今どき銀行員が離婚なんて珍しくもなんともないし、出世に響くなんてこともないのだが、独り身になったことでのハードさはやはりあって、やりがいと言えば聞こえはいいがきつい仕事を押し付けられることは増えた。

子どもたちへの養育費は毎月きちんと滞りなく払ってたし、時々面会もさせてもらっていた。それで充分だなって無理矢理納得させるしかなかった。


でもだんだんと子どもたちが面会を嫌がるようになってきた。面会した時にどうして会ってくれないの?と聞いたら、

『ママのことぶったから』って。

ぶつ?そんなことするわけないだろ?そもそも面会の時にしか顔を合わせてない。

『ママ、ぶたれたところ見せてくれたよ。痛かったって! パパどうしてぶつの? パパ嫌い!』

どういうことかすぐ元妻に聞いたよ。

『私の不貞で離婚なんて言えないでしょ? あなたはもうこっちにいないし、あなたに暴力受けてたってことにしてある』って…自分でぶつけた痣を娘たちにはパパに叩かれたと言っているらしい」


「酷いな」


「どうも再婚する予定だった例のホストに逃げられたらしく、俺のところへ金の無心に来るようになってな。その頃には心が病んでいたんだろう、とうとう銀行にまで押しかけてきて騒ぎになったんだ。

『暴力受けた、金払え!』って。大半の上司や同僚は信じてくれたよ、有難いことに。お前がそんなことするわけないって。でもさすがに営業時間中に行内でやられたのはまずかった。お客様から苦情は入るし、看過できないという声もやはりあって事実上、出世の道は断たれた。それでも騒ぎを起こした元妻のところにいたい、俺のところには来たくないって娘たちは言うんだぜ。俺なんなんだろうな。幸い妻の両親や兄妹が娘たちを溺愛してて生活に困ることはないのが唯一の救いだな。

だから銀行は辞めた。アパートも引き払って残ってた金は俺の両親に渡して娘に毎月少しずつ振り込んでやってくれって頼んだ。

後はもう分かるだろ」

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