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いきたがり  作者: 秋臣
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譲ります

埒が明かない。

「めんどくせえな。だったら俺がこっちから、お前が向こう側の欄干からでいいだろ? それなら文句ないよな」

橋の反対側を指差す。いくらでも空きがある。


「ダメだ」

またもや男は拒否する。

「なんでだよ! 妥当だろ?」

「見てみろ、向こうの外灯が一つ消えてる、暗い」

だからなんだよ!

これから死ぬのに暗いとか明るいとか関係あるか?

「なんか縁起悪いじゃない」

は?

「じゃあいいよ、俺があっち行くから。じゃあな」

「待て待て」

「なんだよ! まだなんかあんのか?」

「俺が愚図ったみたいでなんか後味悪いっていうか気分悪いっていうか……死んでも死にきれない?っていうか……」

男はブツブツ言っている。


ぶん殴りてえ。

いっそのこと、こいつ殴り殺して突き落とせばいいんじゃねえか。

怒りで寒さは忘れてたが、ギャーギャー言ってるうちに白々と夜が明けているではないか!


「お前っ! 明るくなっちまったじゃねえか! 見てみろ、太陽が出てきちゃってるだろ!

死ぬ気あるのか? 死ぬ気でやれ!」

「ああ、ご来光ってやつだ。いいことありますように」

今から死ぬやつがなんで手合わせて祈ってんだ。

ついでに言うとご来光じゃねえ、ただの日の出だ。


失せた、完全にやる気が失せた。

ダメだ、こいつといるといつまで経っても死ねない。


八雲は来た道を引き返すため歩き出した。

「あれ? 死なないの?」

「やる気失せたし、お前が邪魔だから今日はやめる。お前に譲るよ、どうぞ逝ってください。さようなら」

「いまさら水くさいこと言わないでよお~、じゃあ俺も今日はやめよっかな」

軽い、何もかもが軽い。死をなんだと思ってるんだ。

相容れない。こういうやつとはこれ以上関わらない方がいい。さっさと帰ろう。

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