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やっぱ本いっぱい読むのって役に立つんだな

俺はスライムに浴場に戻るよう合図した。人間のいいところって、怪我しても回復できるってとこだけど、魔物は死んだらそれまでだ。

それに、どんな形でバレたとしても、魔物とこんな親密だとイジメのネタになっちゃうよな。


俺は部屋に近づいた。ここは物置部屋で、掃除しなくていいエリアだ。

ちょっと頭を覗かせて様子を伺おうとした。

「そこにいるのは誰だ!」

まだ頭出してないよな? 俺じゃないはずだろ。

「耳が見えたぞ!」

耳? 俺、仮面に手をやった。耳がついてる。

先にどんな仮面か確認しとくべきだったな。


どうしよう? 一瞬でバレちゃった?

でも物盗みに来るくらいなら、ただの小物な泥棒だろ。俺だって見かけによらず結構強いんだぜ! まずはビビらせてやるか。

俺は一気に飛び出して叫んだ。「恥知らずな盗人め、この俺がいる限りさっさと退散しろ!」って、体が大きく見えるポーズを取ってみた。


「何? 仮面ガーフィールド?」

やっぱ先に仮面確認しとくべきだった。裸で猫の仮面とか、威圧感ゼロじゃん。


「その通り! この仮面ガーフィールドがここの守護者だ! さっさと立ち去れば命だけは見逃してやる!」

小物な泥棒も仮面つけててさ、露出してる腕の筋肉が俺の太ももより太いんだよ。そいつがゆっくり背中から巨大ハンマーを取り出して、近づいてきた。


え、泥棒って軽装で来るもんじゃないの? たとえば短剣とかさ。


「お前、近づいたら容赦しないぞ! 真言術:死ね!」冒険者の鉄則だ。敵に優しくするのは自分に厳しくするってこと。

効果なし。

「死ね! 死ね! 死ね!」

どうやら相手は俺と同レベルかそれ以上っぽい。この強力な言葉は自分よりずっと弱い生き物にしか効かないんだ。


大柄な泥棒がニヤつきながら近づいてきて、こりゃ効果弱めの言葉で動きを止めるしかないか。


「真言術:硬くなれ!」

言葉を発した瞬間、大泥棒がハンマーを振り回してきた。ちょっとズレて、ドアの梁をぶっ壊しちゃった。


おおっ、こいつ俺よりずっと強いじゃん。

でも大泥棒の下半身がテント張ってて、明らかにバランス崩してる。これが空振りした原因だな。


でも危機はまだ終わってない。大泥棒が武器の軌道を修正してきて、もう簡単に避けられそうにない。


命の危機より、こいつが無闇に振り回して壊した物の方が気になってきた。

生き延びても、この賠償責任は逃れられないだろ。地下で鉱石掘りとか絶対嫌だよ!


浴場に近づかせちゃダメだ。俺は更衣室の方へ逃げようとしたけど、意図を読まれたみたいで道を塞がれた。

「助けでも呼ぶ気か? 甘いな。」

そうか、助け呼べるじゃん! でもここから一番近い衛兵詰め所まで馬車で20分かかるか。


大泥棒が咆哮を上げて、武器を振り回しながら俺を浴室の方へ追い詰めてきた。もう浴室の入り口まで来ちゃった。


俺はハンマーをかわしたけど、奴の体当たりは避けきれなくて、バランス崩した瞬間に蹴り飛ばされて浴室に突っ込んだ。


浴室はツルツル滑るけど、大泥棒にはあんまり影響なかったみたい。


スライムの安全を確保しないと。もうプライドとか言ってる場合じゃない。交渉だ。

「暴力じゃ問題は解決しないぞ!」

「巨大ハンマーでぶっ壊せない問題なんてない。あるなら二発だ!」

大泥棒がハンマーを振り上げた。このまま避け続けたらスライムがバレちゃう。まだやり残したこといっぱいあるのに。


「じゃあな、仮面ガーフィールド。」大泥棒が俺にトドメを刺そうと振り下ろしてきた。

その時、スライムが俺の前に立ち塞がった。大泥棒が驚いて動きを止めた。

そうだった! スライムって強いんだ! あんなに本読んでるし――

大泥棒が我に返って、ハンマーを全力で振り下ろした。スライムが吹っ飛んで、ゼリーみたいのが飛び散って、俺と大泥棒に付着して、バシャッと壁に張り付いた。

「いやぁぁぁ!!」

「スライムが好きなのか? なら一緒に死ね!」大泥棒がハンマーを振り回して、俺をスライムの上に叩きつけた。


こんな終わり方は嫌だ。でも意識がもうふわっと離れていく。

最後はスライムと一つになれた。物理的な意味だけど、まぁいいか。


大泥棒の足音が聞こえる。めっちゃクリアだ。

大泥棒が武器を構える筋肉の音が聞こえる。めっちゃクリアだ。

武器の軌道が見える。めっちゃクリアだ。

体が軽い。意識が冴えてる。

楽にその攻撃を避けて、距離を取った。


「て、てめぇ何の魔術だ!」大泥棒が今まで見たことないものを見たみたいに、驚きとちょっと興奮した声で叫んだ。


浴室の鏡に映った俺を見てみた。黒いタイツに包まれた体は筋肉がムキムキで、床には勢い余って爪で引っ掻いた跡が残ってる。


「お前、一体何者だ!」


「実は俺……ブラックキャットだ!」スライムヒーローの方がカッコいいかな?


「ふざけた真似しやがって!」大泥棒が俺に突っ込んできた。


スライムのおかげで身体能力の不足は補えてるけど、大泥棒の戦闘経験がヤバすぎて、フェイントや動きが読めない。何度もくらったけど、衝撃は全部スライムスーツが吸収してくれてる。その代わりスーツがどんどん散って薄くなってるのがわかる。


さっき逃げとくべきだったな。


突破口を見つけなきゃ。


大泥棒の体にスライムの一部が付着してるのに気づいた。


避けながらスライムに指示を出した。大泥棒のテント部分に集中しろって。


「ご飯だ!」

スライムが激しく脈動した。

「何!? ……ああっ!」

大泥棒の体がビクビクッて痙攣して、足がガクッと崩れてバランスを失った。


大泥棒の股間に全力で蹴りをぶち込んでやった。そいつは浮き上がって、口から泡吹いて気絶した。


やっぱ本読むって大事だね。

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