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親ってのは強くなるもんだよな

数週間が経って、おばちゃんの好感度が日に日にアップしてる感じ。環境をピカピカに掃除する以外にも、冒険者が部屋に置き忘れた小銭とかには一切目もくれないからさ。おばちゃん曰く、俺ってプロの掃除人としての素質があって、お金に動じない信頼できる奴らしい。


実は細かいとこは全部スライムが代わりにやってくれてるんだけどね。

普段、誰が梁にホコリがあるかなんて気にするんだよ!

隅っこに紙くずがちょっとあっても何だっていうんだよ!

ガラス窓なんて元々水垢がつくもんだろ!

お金に動じない? いやいや、俺はただ小銭のためにリスク冒したくないだけだよ。


俺が欲しがるなら、億単位でぶんどるね!


でもこうやってやれるのも普通じゃないよね。


「お前、このところほんと頑張ってるね。今日はVIPエリアの掃除だよ。給料は今までの3倍だからね!」おばちゃんが期待たっぷりに言ってきた。


これって試練クリアのご褒美アップグレード? でもVIPエリアって百戦錬磨の冒険者たちが住むとこだろ。大半が男だし、正直あんまりテンション上がらないな。


元々の給料が低すぎるから、3倍になっても大した額じゃないけど、まぁありがたく受け取っとくか。


おばちゃんと一緒にVIPエリアに着いたら、敷地面積が仮宿舎の3倍くらいあった。


やり手だねぇ。

***

しばらく平穏に過ごしてたら、おばちゃんがでっかい屋敷の掃除を独りで任せてきた。

給料は増えないけど、俺はこの仕事引き受けたよ。


理由はこうだ:

一、この屋敷、俺の住んでるとこからめっちゃ近い。

二、ここにでっかい浴場がある。

三、住人は今任務中で、ここに誰もいない。


警備手当もついてるし、今回の任務って結構ヤバそうなんだな。屋敷の警備員まで出払ってるくらいだし。

でも普段は誰も来ないし、ここって魔法で隠されてるんだぜ。

それなのに俺に任せるなんて、すげぇ信頼されてるっぽいね。

いいこととは思えないけど。

なんかこう、誰かが侵入してきて俺が濡れ衣着せられるみたいな古臭い展開っぽくね? ハハ、冗談だよ。


最近どんどん金欠になってきてる。スライムの学習法がヤバすぎるんだよ。

分身して何体にもなって、それぞれ本読んで、んで合体。

童話なんて一瞬で物足りなくなって、俺の持ってる……人体図鑑まで読み尽くしちゃった。

スライムが裸エプロンに擬態したときはマジでビックリしたよ。

でも内壁の擬態はまだちょっと微妙で、脈動のパターンもワンパターンすぎる。

やっぱ経験しないとわからないこともあるよな。文字じゃコツを全部伝えられないし。


もっと研究資金が必要だ。そうだ! 実習だよ。


スライムを仕事場に連れてきた。掃除の手伝いもできるし、ここにはでっかい浴場があるからね。

でっかい浴場! つまり俺とスライムで泡風呂遊びができるってことだよ!

おばちゃんありがとう! 「浴室は自由に使っていいよ」って言ってくれてありがとう!

いや、お前俺のペットのこと何か誤解してるっぽいけど、俺ゴブリンとか獣人飼ってないからね!


へいっ、石鹸のいい香り。スライムに寝そべって、スライムに背中に乗られて。

柔らかくてプニプニのスライムに硬いものが擬態されてる。

プリンにチェリー乗せたみたいな感じだよ。

柔硬柔硬柔硬柔硬柔硬柔硬柔硬柔硬柔硬柔硬柔硬柔硬柔硬柔硬柔硬柔硬柔硬。

擦ったりこすったり擦ったりこすったり突いたりこすったり擦ったりこすったり。

仕事を楽しさに変える素晴らしさがだんだんわかってきたよ!


遊び終わって、全裸で更衣室まで歩いてく。まるで俺がこの屋敷の主人みたいだ。

もし何かあったら水晶玉でこの場所の最近の出来事を振り返られるけど、何もなければ誰もこの期間のデータ見ないからね!

監視カメラなら布かぶせればいいけど、魔法だとその点便利だな。残念ながら俺まだ覗き見防止の結界は使えないけど。


歩いてる途中でさ。

「ジャーン。」

何の音だ?

「カンカン。」

この屋敷、ずっと陰気な感じしてたけど、まさか……幽霊?

「カンジャンカンジャン。」

幽霊ならまだマシだよ。浄化魔法でサクッと解決できるし。泥棒だったら俺が弁償しないといけないし、人間の方が幽霊より怖いよ。


迷子の子猫だろ。放っとけば大丈夫っしょ。


「バキッチャリンカンジャンドン。」ガラス製品が割れるような音だ。


くそっ! 物壊されたら結局俺が弁償だよ! 犯人がいてもブラック企業なら損失減らすために俺に請求してくるに決まってる!


しかも音がちょうど俺の今いる場所と更衣室の間から聞こえてくる。避けられないじゃん!

これなら犯人の姿をチラ見できるかも。もし本当に犯人がいるなら。

でも犯人に俺の顔見られるわけにはいかない。もし本当に犯人がいるなら。

適当に掛かってた仮面の飾り物を手に取って、被れば大丈夫だろ。


「バキッチャリンカンジャンドン。」


スライムをチラ見したら、スライムが俺の腕をギュッと掴んで、水っぽい目でじっとこっち見てた。

不安な気持ちが伝染しちゃったみたいで、その表情がめっちゃ生き生きしてて、スライムも心配してるのが伝わってくる。

自分じゃなくて、俺のことを心配してるっぽい。


怖くてもお前を守るよ。これが親って強いってやつだよね。


行くぞ。

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