この魔法、もう『危険』レベルだぞ
メリスのオフィスへ突撃
僕、メリスのオフィスに一直線だよ。道中の衛兵、僕の怒りオーラ感じてか、挨拶もしてこなかった。
僕、ドアをガンって蹴り開けた。入り口の衛兵、ビクッてしたけど、止めなかったよ。
「メリス!お前クソ――」
「お前が何クソやってんだよ!」
メリス、僕にガッて怒鳴ってきた。
おっと!ちょっと待て、それ僕のセリフじゃね?
「休むって言って、オフィスにいない、家にもいない。まさか神経太すぎてレストランとか行ってんのかと思っても、いねえんだよ!」
うっ、僕、スライム楽園でリラックスしてた……あ!スライム楽園!
「スライム楽園に火つけたキチガイ、誰の差し金だよ?」
「お前のせいだよ!」
ごめん……え?「落ち着け、落ち着けって。」
「賢者評議会、野生スライムを超危険な魔物認定しててさ。僕らの品種改良、めっちゃ認めねえって。全部ぶっ壊すつもりで……」
「ただの閉鎖じゃないの?」
「元々、前に出したスライム研究論文なら、君が説明しに行けば、評議会、基本的に君の意見尊重するよ。でも君、態度悪すぎてさ。使者、行動を『全滅』に格上げしちゃった。」
「待て待て、僕、いつ論文出したんだよ?」
「僕が君の名前で出したよ。君のスライム愛なら、将来絶対大物になるって。ただその過程短縮しただけ。」
「ありがと?でもその評議会って何者だよ。無視すりゃいいじゃん。」
「世界のバランス守るって名乗ってる組織だよ。各分野の賢者が集まっててさ。勢力、国、組織にそれぞれ属してるけど、基本的に俗世の争いには手出さない。唯一の例外が、ある存在が世界全体に害あるって判断した時だけ。」
メリス、ため息ついた。
「僕も無視したいって思ったよ。でも僕の父ちゃんの代から参加してて、技術支援も結構受けてるから、抜けるってわけにいかねえんだ。」
「でもスライムくらいで、そんな大ごとか?」
「彼らの研究じゃ、新種スライムが乗っ取りできるって。世界のバランス崩すらしい……」
「バランスの基準、僕、さっぱり分かんねえよ。」
「今、楽園のスライム、全部焼かれちゃったよね……父ちゃんいたら、絶対上手くやってくれたのに。」
メリス、涙こぼした。
「いや、それ、僕が止めたよ。」
「君が?どうやって?」
メリス、目ぱちくりして僕ガン見してきた。
「楽園で友達に会ってたら、ちょうどお前が言った奴らが火つけに来てさ。僕、止めた。」
「やっぱ君、頼りになるね!」
メリス、ホッとしたみたい:「ありがと、父ちゃん。」
お前、僕に感謝しろよ。
「じゃあ、また来るだろうから、今度は絶対ちゃんとどこ行くか言って、連絡取れるようにしてね。」
「そういえば、伝言術使えばよくね?」
「僕、使えねえよ。使える奴、君と繋がらねえって。」
変だな。
「とりあえず、君の机に届いてる論文、見てみてよ。見るだけなら難しくないだろ?父ちゃん。」
「お前、誰を……」
「あ?あ!ごめん、つい思い出して。」
まだ子どもだな。
***
研究室での再会
誰のせいか分かんねえけど、とりあえず研究室戻って待つか。
禿尾、おとなしく留守番してるかな。
スライム、そろそろ回復してるはずだよね。
研究室入ったら、ほのかなバターの香り漂ってきた。
ソファに紅龍と禿尾座っててさ。前の小テーブル、ケーキ、本、飲み物でいっぱいだよ。
紅龍、片足組んで、片手で禿尾のアゴ支えて、クリームまみれのケーキ、禿尾の口に押し込もうとしてる。
「食べなよ。小っちゃくてガリガリなんだから、もっと太れって。」
禿尾、尻尾挟んで、ガタガタ震えながら座ってる。口、震えててケーキ食えてなくて、クリーム、頬にべったり。
「いやぁ、ほんと子どもだね。美味しそう。」
紅龍、ボソッて呟いたけど、トーン全然変わんねえ。
紅龍、指で禿尾の頬のクリーム拭って、自分の口に入れてチュッて吸った。
「ん……君の味するね。」
紅龍、味わうみたいに噛んでた。
禿尾、もっとガタガタ震え出した。
禿尾、僕が入ってきたの気づいて、助けてって目線飛ばしてきた。弱々しい「うぅ」って声出した。
「あ、忙しい忙しい、資料見なきゃ。」
見なかったことにしよう。危険っぽくもないし。
「ん?その声って……」
紅龍、嗚咽に反応してきた。
「わ、僕、トイレ行く!」
紅龍、ちょっと考えた。「おお、抱っこして『シーシー』ってやつね。僕が手伝うよ。」
紅龍、禿尾を脚開きで無理やり抱き上げた。
「脱がすの忘れてた……」
紅龍、尻尾で禿尾のズボン脱がそうとした。
ダメだダメだ、これは止めなきゃ!場所も場面もやり方も間違ってるよ!
「禿尾下ろして。ちょっと話あるから。」
「ん……?」
紅龍、渋々禿尾下ろした。禿尾、シュッて逃げた。
「お前、さっき何しようとした?」
「弟可愛がるだけだよ。」
「それ、怖がらせてるだけだろ。さっきの言葉、愛でるってより、ケーキに飾りつけて食っちまう感じじゃん。」
「好きすぎて食べちゃうの、普通じゃね……?」
紅龍、『お菓子の家』取り出してパラパラめくった。
代入する相手間違ってるよ!
「それにさっきの動き、愛でるとか関係ねえだろ?」
「僕の従者曰く、こういう扱い好きな人多いって。」
クソ変態だな。
「伴侶、君は?」
紅龍、尻尾で僕の足引っかけてきた。
僕、紅龍抱き上げて、さっき禿尾にしたポーズで持ち上げた。
「ほら、今どんな気分?」
説明より体感させりゃ早いよ。
「ん……ちょっと熱くなってきた。」
軽い挑発っぽいトーン、感じてるっぽいね。
「分かればいいよ。」
僕、急いで紅龍下ろした。紅龍、尻尾まだ足に絡めてる。
「ねえ、もっと遊ぼうよ。」
尻尾グイって引っ張って、僕、転んだ。「従者曰く、遊ぶ時こう呼ぶと喜ぶって……父ちゃん?」
流行っちゃったのかよ。
***
町外のキャンプ
町から数百メートルしか離れてないキャンプ地――
魔法の光点いくつか浮かんでて、周辺照らしてる。ローブ着た小柄な影が、動き止まった鎧兵士の周りゴソゴソして、故障原因探ってる。
半透明の家、チラチラ見えてるドア開いて、獣の賢者出てきた。
「石の賢者?僕呼んだ?」
「もう一回聞くけど、誰が何で僕の護衛たちをこうしやがった?」
「スライム賢者、真言術、freezeだよ。僕、この熔岩掘削機試すから、邪魔すんな。」
「どんな魔法だよ?」
獣の賢者、思い出した:「美白効果ある魔法じゃね?」
「なら付魔系か。でも魔像って魔法免疫だろ。」
石の賢者、鎧剥いでチェック始めた。
「呪法系で、関節詰まらせたとか?」
獣の賢者、興味湧いてきた。
「関節異常ねえよ。塑能系でもねえ。」
「どこか氷に変わった?変化系?」
「故障どこもねえ。機能だけ凍った感じ。」
「再起動は?」
「もう一回魔法かけるしかねえ。このスライム賢者、一体何者だよ……」
「賢者でまともな奴なんかいねえよ。」
獣の賢者、家戻った。
「この魔法、もう『危険』レベルだぞ……」
石の賢者、ボソッて呟いた。




