お前の飯はあっちだよ
出勤時間に間に合うとか、もうどうでもいいや。
生きる目標を失ったら、そりゃ塩漬けの魚と何が違うんだって話だよ。
それに、自分が愛してるものを自分の手で壊すなんて、誰にできるっていうんだ?
得失を天秤にかけるのは、冷静になった結果であり、理性の結晶だ。
やっぱり極限状態じゃないと本物の感情って芽生えないのかな。踏絵のときの気持ちこそが、本当の自分だったのかもしれないね。
今日のニュース:
『タマタマ襲撃事件の被害者は全員、性犯罪の常習犯だったことが発覚? 自衛隊が追跡中止を決議。被害女性たちは「みんなくそくらえの男どもだよ!」とコメント』
おおっ! これぞ活路だね、運命ってほんと面白い!
帰ったらスライムにごちそうでもあげようかな!
奴隷市場で獣人を一匹買ってきた。ちょっと高かったけどね。
「うわっ、今回は獣人かよ!」
「気持ち悪い、見ないでよ。」
「さすが人間って感じだね!」
次は絶対に布をかぶせておこう。
***
家に着いて、獣人を吊り下げた檻に安置した。
あとでスライムに新しい味を試させようかな!
ん? 確かこの池だったよね?
空っぽ?
今夜は月明かりが弱くて、見落としたのかも。
池の周りをぐるっと一周してみた。
まさかスライムが透明化でも覚えたんじゃないだろうな?
池に飛び込んでみたけど、やっぱり何もない。
視力が悪いなら手で探せばいいか。
俺、まるで盲目みたいに、空っぽの空間に手を伸ばしながら歩いた。
逃げた? たった一日餌をやらなかっただけなのに……
運命ってほんとクソくらえなくらい面白いね。死神は騙されるのが嫌いみたいだし、運命の神様もそうなのかな。
悲しみに浸ってたせいで、後ろからゆっくり近づいてくる黒い影に全然気づかなかった。
黒い影が襲ってきた! 柔らかくてヌルヌルしたゼリーみたいなものが俺を包み込んで、抵抗する暇も反応する時間もくれなかった。
このパターン、襲撃者は絶対スライムだろ!
そう、スライムだよ!
ごめんな、こんなに長い間お腹空かせてて。すぐにおいしいものをあげるから……
待てよ、俺じゃないよ! 上にいるあいつ、獣人だよ、新鮮な味だよ!
ズボンが脱がされて、冷たい感触に思わず縮こまった。
思い出したよ、あのニュース:精尽人亡ってやつ。
まぁ、こういう死に方なら悪くないか。
俺は抵抗をやめて、スライムに身を任せた。
「うおっ!」一瞬で賢者タイム突入。
冷静になってくると目が慣れてきて、スライムの頭らしき部分が見えた。なんか顔っぽいぞ。
こいつ、知能を持つスライムに進化したのか……?
だんだんスライムの顔がはっきりしてきた。
それって……
俺?
ゼリーみたいな身体が俺の顔の形に固まって、動きに合わせてプルプル揺れてる。
俺の顔、梅干し食ったみたいにシワシワだよ。
う~ん、これってちょっと無理やりすぎない? 想像とちょっと違うんだけど?
う~ん、こうなると技術的には自分で自分に手コキしてるってことになるのか?
う~ん、ダメだ! 受け入れられない!
「真言術……効くのか? まぁいいや! Freeze!」
魔法は効いてない気がしたけど、スライムの動きが止まって、俺はその隙に抜け出した。
スライムの顔が俺の方を向いた。
「お前、俺の言葉わかる?」
スライムがコクンと頷いた。
「喋れる?」
スライムのゼリーみたいな身体が、食道とか肺とか声帯みたいなものを模倣し始めた。
口がパクパク動いたけど、声は出なくて、呼吸してないみたいだった。
「知能ある?」 こんな聞き方だと相手をバカにしてるみたいだけど、他にいい言い方が浮かばなかった。
スライムがまたコクンと頷いた。
「おおっ!」俺は両手で弓を引くポーズ。最後に一つだけ疑問が残ってる。
「なんで俺の顔なんだよ?」
スライムが偽足を上げて、白い液体が徐々に消えていった。
飲み込むとこ見るのは結構興奮するけど、消化されていくのを見るのはまた別だな。
「俺の顔はやめてくれない?」
スライムがじっと俺を見てた。
「たとえばさ、アゴをもっと尖らせて、目を大きくして、胸も大きくして、腰を細くして、お尻をプリッとさせて、脚を長くして……」俺が指さしながら言うと、スライムは指示通りに変形して、最終的に俺の理想の形になった。
「うん、俺が女だったらこんな感じか。男の娘でも結構イケるんじゃない?」自分の作品に満足したけど、毎回こうやって調整するのは面倒すぎる。「チンチンも大きくして。」
「お前、他人になれる?」
スライムが俺の服にくっついてた二本の長い髪の毛を取って、飲み込んだ。
そしたら見た目が受付のお姉さんになって、次に別の受付のお姉さんに変わった。
原理は大体わかったぞ。ふふ、明日掃除の手伝いでもしてくるか。
「お前の飯はあっちだよ。」スライムが指示通りに動いて、俺はそれが食事するのを見守った。
獣人が今まで聞いたことないような恐怖の声を上げて、横でゴブリンがガタガタ震えてた。
これがペットにご飯あげてる気分ってやつかな! 俺の父性が目覚めてきたよ。
「食べすぎんなよ、横にもまだあるから。」獣人は弱りすぎて声も出せなくなって、ゴブリンが叫び始めた。
しかも見た目があの偉そうな受付のお姉さんたちって……
「ここにおやつもあるよ。」