僕、逆転できるよ
禿尾との時間
僕、Dの意図に気づかないフリすることにした。僕が知ってる女の人たちってみんな強くてさ、禿尾みたいに保護欲そそられるタイプって新鮮だなって感じたんだ。
育てるって「養う」と「育む」の組み合わせだよね。ペット飼うくらいなら楽勝だけど、子育ての自信は全然ないよ。
でもさ、少なくともこの期間は君を大人として扱うよ。
間に合えばいいけど、大きくなれるといいね。
僕、禿尾にこの辺の服屋連れてってもらって、スカート系の服何着か選んであげた。
「えっと、これ、僕、あんまり……」
「着なよ。これ、個人的に君のサービスに満足した報酬だから。大人のやり方ってやつだよ。」
タダで何か受け取るわけにいかないなら、理由つけてあげればいいよね。
スタイリストが禿尾に着替えさせて、髪洗って整えてくれた。最後、スタイリストがニコッと笑って僕に自分の作品紹介してくれたよ。禿尾、今じゃすっかりおしとやかなお嬢様みたいだね。
禿尾、顔真っ赤にしてさ。尻尾ピクリとも動かなくて、めっちゃ困ってるみたい。
そんなに優しくされるのに慣れてないのかな。
罪悪感でさ、この村にいる間はもっと優しくしてあげようって思ったよ。
***
最終日
とうとう帰る日が来た。
禿尾の巡回実習の日でもあるよ。禿尾、僕が買ってあげた服着てなくて、やっぱり昔のボロい服のまま。
惜しまないで着てよ~。
「僕、パトロール団と一緒に半分まで護衛するよ。」
D、僕にウィンクして、謎の微笑み浮かべてきた。
「実は僕、一人でも帰れるよ。」
僕、知らんぷりしてニコッと返した。
「いいよ、ついでだからさ、ハハ。」
「じゃあお前が言う通りで。」
これ以上断ったら不自然になっちゃうよね。
禿尾、メンタルすっごい強いよ。一人前だって証明したくて、めっちゃ頑張ってる感じ。でも体は所詮子どもだから、パトロール隊のスピードに全然慣れなくて、何度も置いてかれそうになってた。
「スピード、もうちょっと遅くできない?僕、ついてくのキツいよ。」
これくらいしかできないよ。
「これ、僕らが来た時とほぼ同じ速さだけどね。」
D、隊に減速するよう合図してくれた。禿尾、息切れ隠そうとしてた。
突然、遠くから狼の遠吠えが聞こえてきた。
「警戒!」
Dの命令で、灰狼の群れが僕を囲んだ。
遠吠えの方角から土煙上がってきて、数十の黒い影が森の中を縫うようにこっちに突っ込んできた。
「迎撃!」
灰狼の群れ、相手に突っ込んでった。
「先に行って!」
D、禿尾に僕を戦場から離れさせるよう合図してきた。これ、お前が最初から立ててた作戦だろ。
でもDの元々緑の顔がもっと緑っぽくなってた。この数、予想外なのかな。
でも僕、Dの提案受け入れることにした。禿尾の性格なら、安全なとこ着いたら自分で戦い戻りたいって言い出すよね。
二匹の黒狼が僕ら追っかけてきた。
僕らのスピード、彼らより遅いはずなのに、ずっと追いつかれない?
なんかクラッときてさ、何かの魔法くらったっぽい。
黒狼たち、もしかして追い立ててるだけ?
よく考えたら、二匹だけだよ。僕、勝てないわけないじゃん。なんで逃げてんの?
僕、足止めた。黒狼も止まった。
僕、追い返したら、黒狼、後退した。
でもこの状況気づいた時、僕と禿尾、幻術で沼地に誘い込まれてたみたい。
霧が立ち込めてきた。
「なんで…こんなとこに霧が……」
禿尾、困ったみたいに呻いた。
「君のせいじゃないよ。魔力で作られたんだ。」
どっかに術者いるはずだ。
スライムが僕に教えてくれた。ここ、沼ガス中和してるから、長居しない方がいいって。
禿尾、ずっと鼻擦っててさ。ここ、嗅覚も効かなくなってるみたい。
黒狼、距離保ちながら僕ら観察してきて、プレッシャーかけてくる。
「ごめん……」
禿尾、涙ポロッとこぼして、自責の念で言った:「僕ら、獲物になっちゃった。」
「心配すんな、僕、逆転できるよ。」
赤龍の鱗使えば、黒狼近づけなくできるはず。でも霧抜け出せなきゃ意味ないよね。
死んだフリして術者倒すチャンス狙う方がいいかも。でもどうやって黒狼騙そう?
なんか暗くなってきた。霧のせいで今何時か分かんないよ。
食料、そんなに持ってきてないけど、スライムの栄養循環法あるしね。
禿尾、尻尾ずっと挟んだままでさ。僕に休めって自分から言って、守るって。食料も全部僕にくれた。
緊張しすぎると余計疲れるよ。
黒狼、僕らが休んでる隙にちょっかい出してくる。最初二匹だったのに、今増えてるっぽい。
僕、スライムで濾した水分、禿尾に飲ませた。
相手がただの狩りなら、狩れないって分かったら去るはず。でもなんか目的持ってる感じだね。
目的分かんないうちは、待つしかないか。




