郷に入っては郷に従えだもん
旅行の準備
いや、実は「引っ越しの準備」って言うべきかな。
勢いで隠居しちゃおうぜ!
帰り道は僕一人なんだし、行方不明にしちゃえば、誰も僕らを見つけられないよね!
罪悪感の大きさが角の長さで決まるなら、僕、もう大悪魔になれるんじゃない?
赤龍の鱗、どっかにポイって捨てちゃえばいいよね。
このネックレス、ちょっと価値ありそうだけど、変な魔法でもついてたらヤバいし、ついでに捨てちゃおう。
とりあえず外してみよう……
外す…
外す……
外す!
外れない!これ、呪いのアイテムじゃないの!?
主任、お前、僕をハメたのか!
まあいいよ、僕、真言術使えるしね。
「真言術:脱げ!」
僕、全裸になった。ネックレス以外ね。
「もっと乱暴に!真言術:裂けろ!」
服、ビリビリに破っちゃった。
「いや、正確にいこう。真言術:抜け!」
髪の毛、抜き始めた。
でもさ、視点変えてみれば、呪い解けば外せるんじゃない?
僕、自分を指さして:「真言術:ピュアリティ!」
うん、よく考えたら、
仕事ちゃんと終わらせなきゃダメだよね。行方不明とかダメだよ。
***
出発だよ
さあ、三泊二日の旅の始まりだ!
村を出てすぐ、Dが「ギャッ!」って叫んで僕に飛びついてきた。そして道端の木を指さす。
主任が木の後ろに隠れてた。
「えっと…やあ~」って、主任、めっちゃ気まずそうに挨拶してきた。
「戻ってよ。約束守らないと。僕もすぐ帰ってくるから。」
僕、服の中からネックレス取り出してギュッと握った。
主任、しぶしぶ帰ってった。
「よく気づいたね。僕、全然分かんなかったよ。」
「僕の魂の繋がりで鼻がめっちゃ利くんだ。」
「へえ、犬族?」
「僕、目指してるのは百獣の友だよ……」
なんか色んな動物愛しそうだね。
森の中、風が枝葉をザワザワ揺らしてた。でもDは他の音から情報を聞き分けててさ、そのおかげで道中、野獣とほとんど出くわさなかった。出くわしても平気でやり過ごせたよ。
でもさ、森や獣道歩くのって僕の足腰にはキツい試練で、スケジュールちょっと遅れちゃった。
でも、もうあと一日弱の距離だよ。
「ちょっと待って、前で何か起きてる。」
D、僕の返事待たずにダッシュで飛び出した。
旅の仲間として、置いてかれるわけにはいかないよね!
僕も追いかけたけど、全速力のDに全然追いつけないよ。
やっと追いついたら、長い溝の向こうで二つの狼の群れが戦ってた。片方は真っ黒で十匹くらい、もう片方は灰白色で四、五匹くらい。Dは灰白の陣営にいて、灰狼側が明らかに劣勢だった。
森の奥から遠吠えが聞こえてきて、Dの顔がちょっと明るくなった。味方の知らせかな?
黒狼の群れ、退却し始めたけど、その中の一匹が結果に納得いかないみたいで、Dに猛ダッシュで飛びかかってきた。灰狼たち、全然助けにならないし、溝の反対側の僕なんて論外だよ。
僕の体力じゃ溝飛び越えても間に合わないよね。
そしたらDの姿がスッと消えて、黒狼、空振りしてすっごい情けない感じで逃げてった。
僕、慎重に溝を迂回して近づいたら、灰狼たちが僕にめっちゃ警戒してきて、低く唸って威嚇してきた。
どうやって敵意ないって伝えよう?僕、赤龍の鱗に手置いてみた。
「ワン!」って一声で、灰狼たち、警戒解いてさ。緊張解けたみたいに座る奴、寝そべる奴、バラバラになった。
Dの位置にいたのは、目がちょっと飛び出してて、小柄でずっと震えてる犬っぽい生き物……チワワだった。
「そりゃウサギ好きになるわけだ……」
ウサギとチワワ、どっちが戦闘力高いんだろ?
「僕、目指してるのは百獣の友だよ。」D、人型に戻った。
遠吠えがどんどん近づいてきて、先頭にいたのは森の中を疾走しても毛皮にホコリ一つ付いてない大狼だった。Dに飛びかかりそうな勢いだよ。
距離が縮まるにつれ、大狼の姿が徐々に変わって、Dに飛びついた時にはもう人間の形になってた。そしてDの口にベロベロ舐めまくってた。
「気にしないでね。僕らの族、みんなこうやって挨拶するんだ。」
D、呆然としてる僕見て説明してきた。
大狼、顔立ち整ってて、モフモフで、肉球もあって、確かに魅力的な要素たっぷりだよ。ただ人型になると、耳と尻尾、体の何ヶ所かに毛皮が残っててさ。動物要素が全体の20%くらい?これって獣人って言うべきか、人獣って言うべきか?
大狼が舐めるのに満足したみたいで、Dが僕に紹介してくれた:「こいつは獣化人で、普段一緒に周辺の警戒してる仲間だよ。」
大狼、僕に気づいた。僕にも挨拶するよね?郷に入っては郷に従えだもん、仕方ないよ。僕、緊張して唇舐めた。
大狼、僕にお辞儀してきた。
チッ。




