交尾後に死んじゃう個体がいるんだ
「今回の結果は……引き分けだよ!」
僕、ビクビクしながら今回の成績を発表した。
スライムは元々どうでもよさそうにしてるし、主任はまだグッタリしてる。赤龍はまるでおままごとでも終わったみたいに結果を受け入れてた。
「伴侶、腹減ったよ。服着せてくれ、街に出るから。」
赤龍が両手を広げてくる。小さい女の子みたいだけど、指先の鋭い爪がしっかり龍の存在感を主張してるね。
「うん、このアクセサリー付けてくれ。あとここ、ちょっと詰めて……」
赤龍、めっちゃ短時間で独自の美意識を身につけたみたい。最初は膨らんだお腹が全体のラインを崩すと思ってたけど、服でうまく調整して、逆にその部分がセクシーになっちゃってるよ。
今の服装、ロリータってよりはワイルドロリータって感じかな。
でもさ、長寿種族って学ぶの遅いんじゃないの?僕、主任とスライムをチラッと見比べちゃった。
スライムにも何か可愛く着れる服ないかなぁ。
「ボーッとしてる?行くよ。」
赤龍が超自然に命令してきて、僕、ついフラフラ後ろに付いてっちゃった。
***
赤龍、街中の視線を全部持ってったよ。
僕、編み込みとかできないから、赤龍の炎みたいな赤髪がそのまま広がってるのが唯一の欠点かも。
でもその不完全さが、完璧より美しく見えるんだよね。
幼さ、危険、高貴さを同時に持ってる雰囲気で、踏まれてもご褒美に感じちゃうレベル。
赤龍、焼き肉の店に着いたら、いきなり商品取ってパクッと食べちゃった。
店主、呆然として赤龍を見送ってるだけで、僕が「いくら?」って聞いても気づかない。
「ねえ?いくらだよ?」
「……今回はいいよ。これも持ってって、彼に食べさせてあげて。」
「人間、なかなか分かってるじゃない。褒めてあげるよ。」
赤龍がウィンクしたら、店主の目からハートが飛び出した気がした。
これが龍の魅力ってやつ?
「その魔物、めっちゃ美人すぎない?」
「なんで魔物に惹かれちゃうんだろ……」
「魔物娘サイコー!」
「元々魔物に興味なかったけど、スライムテーマパーク行ってみようかな。」
メリス、もしかして赤龍使ってみんなに魔物を受け入れさせて、スライムテーマパークで稼ごうとしてる?
赤龍に目を奪われた男が、隣の女にビンタされてるの見ちゃった。
甘いなぁ、そういう嫉妬って独占欲の現れだよね。
スライムが嫉妬覚えてくれたらいいのに。
***
街歩き終わって、メリスに会議室に呼ばれた。
メリス横に緑色の影が立ってる。粗い革と木の枝でできた服着てて、枝はまだ成長してるみたいで、花のつぼみが今にも咲きそうだった。
「龍騎賢者、来たね。彼はD、ドルイドだよ。依頼があって、詳しくは彼が話すから。じゃあ僕、先に行くね。」
龍騎って余計だよ!まだ引き受けるなんて言ってないのに!
抗議する間もなく、メリス逃げちゃった。
僕、深くため息ついて自己紹介。
「僕……」
「知ってるよ!龍騎賢者だろ。」
「なんで……」
「君のスライム研究と情熱がハンパないって聞いてるよ。僕ら、似た者同士かもね!」
このドルイド、異端者だろ。
「いや……」
「だからさ、僕らの『魔物娘愛好会』に君を誘いたいんだ!」
協会って大体ろくなもんじゃないよね。
「世の中に魔物娘の素晴らしさを伝えたいんだよ!」
これは例外っぽいな。
「まず第一に、みんな可愛い!」
同意。
「第二に、嫉妬しないことが多い!」
多分メリットだね、同意。
「第三に、肉球がある!」
どの肉球か分かんないけど、同意。
「第四に、モフモフだよ!」
それ獣の特徴だろ、戦争でもしたいの?
「だから僕ら、スライムの研究あんまり進んでなくてさ。協力してほしいんだ。」
うん、確かに僕が適任だ。「それが依頼の内容?」
「いや、これは僕の個人的な誘い。今は地下活動だけど、いずれスライムパークと協力して魔物娘の魅力を広めたいんだ。正式な依頼は、乳製品の貿易協定を結びたいって話。メリスさんが、君が僕らの村に行って確認してくれるって言ってたよ。」
また出張か。でも龍に会った後だと、他の生き物ってそんな怖く感じないな。
「あとさ、最近ウサギを研究してて気づいたんだけど、交尾後に死んじゃう個体がいるんだ。病気は見つからないんだけど、ついでに調べてほしいな。」
「僕、その分野の専門家じゃないよ。でもそんな話初めて聞いた。他じゃ聞かないよね、どんな状況?」
「僕もよく分からないんだけど、僕と交尾したウサギがそうなっちゃってさ。」
「……」




