死んだって怠ける理由にはならねえ
目的地にすんなり着いたよ。出迎えてくれたのは長袍を着たゴブリンで、目に知的な光がキラッと輝いてる。昔の「射精しか能がない」ゴブリンとはまるで別種族って感じだね。
「ようこそ!今回の調査に来られたお客様ですよね。こちらの副責任者のゴベンと申します。ゴベンって呼んでください。俺たちの誇る分公司『黒心』の施設を案内するよ!」
馬車の馬が落ち着かなくてソワソワしてる。主任も小声で呟いた:「ここ、なんか変だよ。嫌な匂いがする。」
私は書類をゴベンに渡して、主任の言葉はあんまり気にしてなかった。
ここ、なんか妙な雰囲気だね。いろんな種族がいるよ——ほとんどが人型の怪物で、知的な取引をしてる。黒と金の縁取りの長袍を着てるのがここの社員で、よく見るとそばに布人形みたいな護衛がくっついてる。
「ほら、あの二体の布人形を連れてる人見てよ。あれ俺たちの社員で、三歳からこの仕事やってるんだ。今じゃ月収数十万だよ。」ゴベンが熱っぽく紹介してくる。
「その布人形って何の意味?」
「これ、家族経営の一種なんだ。」
「?」
「よく言うだろ、『死んだって怠ける理由にはならねえ』って。あの二体の布人形は彼の両親で、今でも一緒に子供を守ってるんだよ!」
温かい話っぽいけど、なんかゾッとするね。道すがら見た布人形の数が多すぎて数えきれなかったよ。
「初めて来た人が怖がらないように、外にある骸骨には特製の布人形着せてるんだ!」
肉屋の布人形が肉を削いでて、犬がずっとその足元をクンクン嗅いでるの見ちゃった。
「ここが俺たちの採掘場だよ。」規則正しいカンカンって音が途切れない。監督っぽい人が挨拶に来た。
真っ暗な中でも岩を叩く音が響いてて、叩くたびの小さな火花で気づいた。せっせと掘ってるの、全部スケルトンじゃん。
「これって……」私がゴベンに質問したら、主任がめっちゃ嫌そうな顔して、なんとか我慢してる感じ。
「最高だろ?寝ない、休まない、食べない、飲まない、命令に完全従う。それに何より——給料払わなくていいんだ!過労死の心配もないよ、だって元々死んでるしね!ハハッ!」
「宗教的に問題ないの、これ?」
「俺たちはお金を信仰してるから、全然問題ないよ。」
調査に来たの、無駄足だったな。参考になんて全然ならないよ。
鉱山を出て、でっかい家に着いた。
「ここが織物生産ラインだよ。」
中に入ったら、さっきのスケルトン鉱夫よりビックリするもの見ちゃった。
スケルトン工場だよ。道具には歯車がいっぱいついてて、全部骨でできてる。動力源が見えないけど、多分秘術エネルギーかな。
黒袍の連中が機械の動きを監督してて、元気いっぱい歩き回ってる。見かけたらデカい声で挨拶してきて、ニコニコしてるよ。
「この人たちって……自願なの?」私の想像してた死霊術師と全然違う。
「もちろん!みんな生前に契約結んでるよ。生産ラインがちゃんと動けば高給もらえて、命の危険もない。普通に出退勤できて、社員旅行や手当もあって、死後も働いてくれるならそれでOK!しかも人をたくさん引き込めば、早く退職して人生楽しめるんだ!」
「これ、神への冒涜行為だよ!」主任が我慢できなくなった。
「いやいやいや、大事なのは命だよ。命が消えたらただの臭い皮袋だろ。獲物を殺したら肉食って、皮や骨使う。使い尽くすほど天に返すってことだろ。じゃあなんで人は埋めなきゃいけないんだ?」
「でも——」
「うちの社長、近々ドルイドと討論する予定だよ。でも今は今回の目的に集中したほうがいいよね?」
こういう議論、私あんまり興味ないから、ゴベンにコクンと頷いた。
「まあ結局、拳のでかいほうが勝つんだろうけどね……」ゴベンがため息ついてる。
「こういう工場、設営超簡単だよ。死体が多い場所ならどこでも建てられる!」ゴベンが壁と屋根を指した:「工場自体、建材すらいらないんだ!」
よく見ると、これ全部磨かれた骨だよ。工場が巨大なスケルトンになっても驚かないね。
「器具もそうだよ!」ゴベンが骨の紡織機を紹介してくる。本来人がいるはずの場所に何もないのに、ずっと動いてる。そばで監督してる黒袍の人が、たまにずれる紡錘を直してる。
こんな自慢げに商品紹介されても、ちょっと気持ち悪いよ。四日間の行程、長すぎるかも。
主任、もう怒りで火球術撃てそうな顔してる。
後の紹介、ほとんど印象に残らないまま宿泊先に帰った。途中で子供向けの遊園地見ちゃった。布人形が飴配ってて、もし子供が真相知ったらどんな顔するんだろ。まだ笑えるかな?でも子供が来てる様子は見なかったけどね。
遊園地の動力……もういいや。今は何見ても骸骨製だと思うよ。
套套の売り込み失敗だよ。ここじゃ子供産めば手当出るしね。
鉱山で見た小さな穴、なんか分かった気がするよ。