ここの錠って頑丈?
メリスの計画はめっちゃ細かいね。半日くらいの距離ごとに驛站があるけど、周りは戦乱で荒れてて、盗賊やゴロツキも増えてくるみたい。マジで心配だよ。
「見てよ、いい天気だね。楽しい旅になるよね!」
「うん。」
今さらだけど、護衛一人ってちょっと心許ない気がしてきた。
「ほら、あの木見てよ。厳かで立派で、高貴な魂が宿ってるに違いないよ!」
「うん。」
下に死体埋まってないといいね。
「あそこに鹿のカップルがいるよ、やっぱり同種同士じゃないと幸せになれないよね!」
「うん、エルフ。」
「前方に強盗がいるよ。」
「うん……何?」
主任が前方の草むらをドカーンと爆撃したら、数人の影が頭抱えて逃げてった。
「強盗って怖いね、キャー!」
「うん、うん。」
今さら弱いフリしても遅いよ。
「昔はいろんな怪物と戦ってきたけど、やっぱり人間が一番怖いね。」
「うん。」
「道中まだ危ないし、ペース上げない?」
「いやいやいや。」
ペース上げたら野宿確定じゃん、三度目は絶対イヤだよ!
***
三飛驛站に着いた。ここは二階建ての小さなレンガ造りの家で、馬小屋付き。冒険者ギルドが運営してて、この辺で驛站やってるのってこの看板くらいだよね。
ここには男の老板と三人の女給仕しかいない。老板、ちょっと年取ってる感じで、俺でも安っぽいと思う布服着てるけど、隠しきれないゴツい筋肉と傷跡が侮れない雰囲気出してる。
女給仕たちはワンピースのミニスカートで、歩くたびにヒップが揺れて、小さなフリルも一緒にユラユラ。チラッと見える感じが男の本能をくすぐってくる。
老板が委任状を受け取った。
「どれどれ……部屋二つ?」
「一部屋でいいよ。」
「いやいや、二部屋二部屋。」
女給仕が二階の部屋まで案内してくれた。階段登る時、マジで目の保養だね。商売繁盛してるだろうな。
でも後ろからの視線が冷や汗ものだよ。
「ここの錠って頑丈?」
「夜にサービスが必要なら、鍵かけないでね。」女給仕が意味深にウインクしてきた。
目撃者は欲しいけど、鍵開けてて女給仕が遅れたら……
「あ、後で老板が商品テストの話するから、早めに頼むね。」
冷や汗止まった。使えるね。
しばらくして、老板が精巧な木箱持ってきた。特注っぽい感じで、書類にはスライムの分体を入れるようにって書いてある。
木箱には蓋があって、果物を入れられる。下に二つの穴があって、一つは型を作って、もう一つでゼリー卵が出てくる。
分体がピッタリ入ったよ。メリス、どうやってサイズ予測したの?しかも俺がスライム連れてくるとかも分かってたの?
さらに時間が経って、夜になった。ドアがそっと開いて、綺麗な足が踏み入ってきた。次に枕を抱えた細い手が胸と半分顔を隠して、最後に引き締まったウエストラインが見えて、俯きながらゆっくり近づいてくる。
ふぅ、さっきまでドキドキしてた小心臓も、これで安心だよ。
「来てくれてありがとう。テストちょっと時間かかるかもだけど、君の貴重な意見が俺たちの成長の糧なんだ!」俺、真剣に言った。良かった、シーツで俺のガッチガチの弟を隠せてるよ。で、前髪かき上げて、彼の下顎を持ち上げて顔をしっかり見た。
「本当?」主任の目がキラキラ輝いて、俺の弟がしっとり光っちゃった。
「待って、なんで……」
「老板に、私がテストするって言っただけだよ。」
なんでこの展開考えてなかったんだろ。早くフォローしないと。
一、「あ、今ちょっと体調悪いから、また今度ね。」
二、……
頭グチャグチャで予備プラン思いつかないよ。
「……多角的な意見集めるために、一人一回でいいよ。」
せめて明日の道を残そう、明日があるならね。
***
翌日出発。平原を抜けてだんだん山脈に近づいてきた。
「この森、龍がいるって伝説あるよ。」
「うん……」
昨日なんとか乗り切った。主任、なんか前よりテンション高いね。
「あそこにデカい骨あるよ。龍のじゃない?」
「うん……」
前は誤解してたのかな。今の主任、小っちゃい女の子みたいで可愛いよ。
「こんな旅、百年前の冒険を思い出すね。」
「うん……」
おばあちゃん。
無事に驛站に着いた。昨日とほぼ同じ内容、同じ編成。違うのは、今回はちゃんと楽しめるってこと!
ここは龍門驛站っていう名前で、入口に石のアーチがあるけど、龍っぽさは見えないね。
龍って強くて我が強い生き物で、歳取るほど強くなって、子孫は育てずに放ったらかし。運も実力の一部って思ってるらしい。
ここの老板、卵料理をめっちゃ推してて、看板メニューは龍の卵だって。
スライムが食べて、一部をトカゲっぽい見た目に変形したよ。
広告詐欺じゃん!まあ俺、タダ飯食ってるけど、調査ってマジでめっちゃ最高だね。
冒険者にとっちゃ、強い生き物を食べるのも励みになるよね。
套套が女給仕に大好評だよ