太るって異常状態に入るのかな?
救うなら、心ごと救わないとね。でも具体的にどうすればいいんだろ?薬品はこれしか残ってなくて、効果もイマイチだ。
私が主任の巻物袋を探ると、もう空っぽ。
主任の胸を見てる。
「そういえばスライム、薬草を薬水にできる?ワインみたいにさ。」
スライムがコクンと頷いてから首を振る。
できるけどたくさんってわけじゃないってことかな。
私は持ってる最後の薬草を全部スライムに食べさせた。
「火傷、腐蝕、再生。この効果をメインで頼むよ。」
スライムの中で薬草がみるみる分解されて、合成されていく。
太るって異常状態に入るのかな?
山洞を見つけて、主任を抱えて入った。そこら辺の乾いた草で簡単に寝床を作ったよ。
主任、揺れでちょっと意識を取り戻したみたいだけど、目はまだぼんやりしてる。
「ダン……ナ?你、来たの?」主任が私を見て呟いてる。
人違いだよ。でも旦那さん、きっとイケメンなんだろうな。私、主任に近づいた。
「抱いて……」
人を救うって面倒だな。私、主任を抱きしめる。
「もう一度愛して……」
具体的にどうするんだ?あ、分かった。これはちょっとやりすぎな要求だよ、私、スライムのこと大好きだし。
スライムを見ると、スライムがコクンと頷いてくれた。
はぁ、いい人やるなら最後までやろうよ。
でも今、主任の状態で衝撃受けたら物理的にすぐ昇天しちゃうかもね。
スライムに山洞を塞いでもらって、小さな通気孔だけ残して、煙を分離させた。もし私がやったってバレたら、次は私が助けを求める番だよ。
そしてスライムが薄い膜になって、私の体を覆った。
手術開始だよ。
まず口から。私、主任にキスして、治療効果のある唾液を交換。
主任の体の傷口を舐めまわして、傷が少し癒えた。
次は主任の心を治療だよ。見ててよ、私が毎日スライムと練習したテクニックを!
「ん……いつもより……体、調子悪い?」
クソッ、スライム、もうちょっと大きくして。
「おぉ……夢なの、これ……?」
「うん。」
一通りの治療が終わって、そろそろだ。薬を塗るよ。
ここの傷口にちょっと、あそこにもちょっと、ここは傷ないけどまあ塗っとくか。
無駄にしないで、最後はこれ全部飲んでね。すっごい栄養あるよ。
治療効果たっぷりのゼリーみたいな物体が、主任の全身をほぼ覆っちゃった。
ふぅ、ただのいい人になりたいだけなのに、なんでこんな大変なんだろ。
***
何か誤魔化せる言い訳を考えないと。
いっそ死んだふりして逃げる?
でも事件解決したのに逃げる必要ないよね、そんな不運じゃないはず。
主任にスライムが治したってバレるのも嫌だし、私、地味に生きたいんだよ。
山洞の中で主任が少しずつ目を覚ました。私は洞窟の外で待機。
「え……私?」主任が自分の体を確認して、傷跡が一つもない。
主任が立ち上がって出てきた。元々ボロボロだった服が滑り落ちて、主任、本来のエルフらしい美形な体型に戻ってる。
うわっ、効果ありすぎじゃん。ダイエット教室でも開こうか。
「どうして、どうして……」主任が私に聞いてくるみたい。
「目覚めたんだね?奇跡だよ!君の旦那さんみたいな人が治療してくれたの見たんだ!」嘘じゃないよ。
「夢の中でまた会えるって言ってたよ。」嘘じゃないっちゃない。
「そしたら傷が治っちゃったんだ!」本当だよ。
主任、思い出に浸ってるみたいで、涙がキラッと目尻に浮かんで、グッと堪えてる。
「他の人を……見に行ってくる。」そういえば他の人忘れてた。早く離れて感情発散させてあげよう。
戦士は骨折とか捻挫、腐蝕の傷があちこちにあって、大幸いなことにまだ息がある。傷を安定させて治療すれば回復するよね、きっと。
沼の表層の水で盗賊の顔を洗って、意識を戻させた。基本的に重傷はあんまりないみたい。
目標達成、死者ゼロ。パーフェクトだよ。
帰る時間だね。