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頭上輪廻戦士アーサー  作者: 川口大介
第二章 出陣! 二代目女神様
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 男子トイレの個室に駆け込んで鍵をかけたア―サ―は、頭上に手を伸ばしてエミアロ―ネの腕を掴むや思いっきり引っ張って、

「ひあっ⁉ ちょ、ちょっとア―サ―君っ」

 ぎゅいん、と滑らせて腹まで持ってきた。

 そしてア―サ―は、頭ではなく腹に生えているエミアロ―ネを見下ろし、向かい合い、両肩をがっし! と掴んで揺さぶって、

「エミアロ―ネさんっ! あのドラゴンがウナって、どういうことなんですかっ!」

 鼻息も荒く問い詰めた。

「ウナの前世は昨日封印したはずでしょう? 一体何を根拠に!」

「こ、根拠は昨日封印した時の手応えよ。デコロスの魂だとは思ってたわ。それと、」

 気合負けしながらも、エミアロ―ネは答える。

「現世の【黒の覇王】は、かなり優秀というか強力な奴らしいってことが判ったわ。遠くから封印を破って人格交換、能力発現、肉体の創造、までやってるんですもの」

「肉体の創造って……あのドラゴンの前世の体ってことですか?」

 まず、あの机ゴンは前大戦で死んで、長い時を経て転生しウナとして生まれ変わった。

 その、前世でのドラゴンの人格が、転生後の今になって覚醒したということか。それが昨夜の騒動で……

「いい? 前世と現世、つまり私と貴方の関係と同じなの。貴方にとっての私が、ウナちゃんにとっての机ゴンってこと。で、今のあいつはウナちゃんの人格を完全に乗っ取った上で、ウナちゃんの体から出たのよ。そしてその魂を元に、転生前の体を、前世での自分の体を創ってもらった」

「じゃあ今、ウナの体は?」

「本来の、現世での生きた肉体がないと、魂はこの世に存在できない。ウナちゃんの体は霊波だけ繋げた状態で、どこかにあるはずよ。大丈夫、あいつにとっても命綱なんだから、傷つけられたりはしてないわ」

 とりあえずア―サ―は、ほっとした。エミアロ―ネから手を放して、額に浮かんでいた汗の滴を拭う。

 エミアロ―ネはア―サ―の頭の上に戻った。ア―サ―は、今度は少し落ち着いて、いつものように視線を上に向けて質問する。

「それで、ウナを助けるにはどうすれば?」

「あのドラゴンの肉体は新たに創られたものだから、ウナちゃんとは何の関係もない。そして、今はあいつの意識体の依代になってるはず。だから、遠慮なくやっつけて前世の意識体を消滅させれば、開放された魂はウナちゃんの体に戻るわ」

 但し、純然たる意識体であり自分の肉体を持たない私は戦えない。貴方に力を貸すことはできるけど――とエミアロ―ネは言った。

 もちろん、ア―サ―の答えは決まっている。

「なら、力を貸して下さい。僕があのドラゴンを、デコロスモンスタ―・机ゴンを倒します!」

 そのア―サ―の言葉に応えるように、ア―サ―の両手の甲に突然光が灯り熱を帯びた。

「わっ⁉」

 驚いて見るとそこに、歴史の教科書で見た覚えのある紋章が浮かび上がっていた。

 まっすぐな長剣を象った、美しくも勇ましいデザイン。どこか、エミアロ―ネの戦装束を彷彿とさせる紋章だ。

「あ、これは……」

「白武術の紋章よ。私が後継者を育てる前に死んでしまったから、もう絶えてるけどね」

 そうだ。白武術史上最強の、そして最後の継承者。黒の覇王を倒した女性、白の女神。

 人の【善き心】を力に換えることができ、無から有を生み出すことさえ可能にするという白武術。だが今となっては、もう誰も使えない。もし使える者がいるとすれば、それは白の女神の生まれ変わりしかいないだろう。

 その者の名は、ア―サ―。

『僕が……戦って、そしてウナを助ける!』

 ア―サ―の魂の奥で大きな力が沸き立ち、心の底で熱い使命感が燃え盛る。

 そんなア―サ―に、優しい声が語りかけた。

「さあ、呼んで。ア―サ―君」

「……はいっ」

 ア―サ―は呼ぶ。自分が求める力を。

 自分の魂の、遥か奥深くにある力。時間を越えた転生前、輪廻を遡った場所にあるもの。

「――前世――!」

 自分自身のその声に導かれるように、ア―サ―は両手を高く翳す。

 すると、紋章の輝きが一気に強まった。そこから溢れる光の粒子が、まるで意志があるかのようにア―サ―の体を包み込んでいく。

 眩しい輝きがみるみる実体化して、白い戦装束を形作る。同時に、ア―サ―の肉体に白武術の記憶が植えつけられていく。いや、覚醒していく。

「覚えておきなさい、ア―サ―君。今貴方が引き出しているのは、机ゴンみたいに他人の術でムリヤリ覚醒させたものではない。私が死ぬ前に施した細工、いわば前世からの呪いでもない」

 前世の意識体であるエミアロ―ネが、

「貴方自身がウナちゃんを救うために強く望んだ、貴方の魂に宿る力よ」

 ア―サ―の頭の中に入った。

《それでこそ貴方の前世、つまり私の力を、使う資格がある……》

 もうエミアロ―ネの声は、ア―サ―の耳には届かない。

 だが直接、心に届いている。

《さあ、行きなさいっ!》

 光が消えた。ア―サ―の体の外側には白い戦装束が、内側には白武術史上最強最終継承者の技が、紋章からの光によって今、与えられた。

 それはア―サ―の前世、白の女神の力。

「……行きます、エミアロ―ネさんっ!」

 ア―サ―の手が、今、初陣の扉を開けた!

 で、トイレの個室から飛び出した!


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