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頭上輪廻戦士アーサー  作者: 川口大介
第六章 邪神の奇跡、二人の奇跡
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 煙が晴れて、はっきりと姿を現したその者は、暴風リンの知っている【白の女神】でも【黒い白の女神】でもなかった。

 右半身が前者、左半身が後者で構成されている。君と僕とで半分こな奴だった。

「な……な、なんだそりゃああああぁぁっ⁉」

 錯乱した暴風リンが、両手を広げて振り上げる。両手全ての指で十箇所を指したので、雲が十箇所割れた。

 そして振り下ろす。十本の熱閃が荒れ狂い暴走する雷のようにア―サ―めがけて殺到した。

 だが、白黒半分ずつなア―サ―は動かない。

 それを見た暴風リンの胸に、己が先程吐いた言葉が、よぎる。


「もともと覚醒しきっていないお前のこと、これでもう前世や前々世の能力は、せいぜい半分ほどしか……」


『だ、だ、だだだからって、半分ずつ出し合って一人前、白黒の女神なんてことができてたまるかっっ!』

 ラブラブレ―ドとドロドロッドを交差させて構えているア―サ―に、十本の熱閃が一斉に命中した。


 仕掛花火のように、いくつもの閃光が瞬く。強烈な衝撃と高熱、そして煙。

 その中でア―サ―は、自分の中から湧き出してくる無限の、無数の力を感じていた。

『全部、僕なんだ。僕のものなんだ』

 イルヴィアを護ろうと思う心。

 イルヴィアの側にいたいという気持ち。

 イルヴィアの手を握ったときに感じたもの。

 自分の弱さを自覚して、トレ―ニングを始めた決意。

 そして。

 背が低く、惰弱無能な自分への悲嘆。

 やっぱり、一人じゃ何もできない無力感。

 実際のところ、イルヴィアもウナも巻き込んでしまっている悔しさ。

 さっきイルヴィアを抱き締めたときに感じた、温かさとか匂いとか胸の……とか。

 それら全部が、「ア―サ―」。どれが欠けても、「ア―サ―」ではなくなる。白であれ黒であれ、とにかく「ア―サ―」なのだ。

 そしてそれらの総意、満場一致の、優先順位第一番事項は何かといえば、


イルヴィアを護る!


 全てはその為に。かっこいい英雄として、何が何でも死なずに生き抜いて戦って、そして勝つ。相手が神でも、悪魔でも。

『そうだ……僕は、僕は……っ!』

 机ゴン戦で、みんなの声援で立ち上がった時のような熱い思い。鏡メバンシ―戦で、全てを鏡メバンシ―のせいにすることで自分を起き上がらせた時のようなアツい感情。

 それら全てが隅々まで燃え上がり一つになって、ア―サ―に今、無限の力を与えている!

「ぃよおおぉぉしっ!」

 熱閃十本を受けきったア―サ―は、ラブラブレ―ドから一瞬手を放し、ぱしっ! と逆手に握り直した。力を込めて地面に突き立て、少し前に倒す。柄はできる限り先端だけを握って、残りの部分を右の脇で挟み込むようにする。

 そして、煙の向こうに見える暴風リンに向かって、

「ハ―トフルアタ――――――――ック!」


 今のは、机ゴンの時に聞いた必殺技の名だ。

 それを聞いて身構えた暴風リンだったが、

「……え?」

 煙を突っ切って飛び出して来たのは刃ではなく、白黒の女神そのものだった!

「な、何だぁぁっ⁉」

「覚悟しろおおぉぉっ!」

 ぎゅいいぃぃんと伸びる剣に身を乗せて、白黒の女神が矢のように突っ込んでくる。

 右腕で剣の柄を抱き締めるようにしながら、左手に持った黒い杖を後ろに振り被っている。

 その杖に、火炎と電撃が宿る。

「じゃ、邪道の術っ? 待ておい、その、剣を伸ばす技は確か、白武術の奥義だろ?」

「ぃやかましいいぃぃっ!」

「や、やかましいって、どうやったらそんな、正反対属性の大技を同時に」 

「問答無用のビリビリメラメラボ――――――――ルっっ!」

 火炎と電撃の混成爆裂弾が撃ち出された。

 錯乱したり混乱したりの暴風リンに避けられるはずもなく、まともに命中! 防御も何も間に合わず、暴風リンはまるで打ち上げ花火のように上空へと吹っ飛ばされた。

「なななな、何がどうなっているんだああぁぁっ⁉ 神の力を持つ俺が、こんな……」

《あ~、そのことだけど》

「? な、何だ、誰だどこだっ?」

《あんたがほんの一部だけもってった、邪神キ―マ様の力だよん。だからあんたの中にいるよん。で、一つ言っとくけど、あいつにあんたが勝てないのは当たり前だよん》

「えっ?」

《だって、邪神が全部やったことだもん。台風も洪水も津波も干ばつも。でも結局ダメだったのよん。雨を止めても井戸掘るし、洪水起こしても堤防築くし。ああ、それから疫病なんかもね。不治のはずだったのに、すぐ薬を開発されてさ。いいトコまでいったんだけどねぇ。やっぱりダメだったよん》

「ダメだったって……」

《だぁかぁらぁ、他の動植物なら、あたしら神様が絶滅しなさいって言えば絶滅するのよん、おとなしく。でも、人間だけは絶滅してくれないのよん。何回も何回も挑戦したんだけど》

「……で?」

《結論。善悪白黒超越して、絶対に生き抜いてやるぅぅって死に物狂いになった人間には、神様だって勝てません。以上。よん》

「い、以上っておい! そんな無責任な!」

《無責任はないでしょお? 他力本願しておいてさぁ》

「うっ」

《じゃ、ね。よん》

「ちょ、ちょ、ちょっと待てええぇぇっ!」


 遥か上空から暴風リンが落ちてくる。何事か喚いているようだが、そんなことはもうどうでもいい。

 ア―サ―は左手のドロドロッドを投げ捨てて、長く長く伸びたラブラブレ―ドを両手で握りしめた。そして、

「むぅおおおおぉぉぉぉ~~っ……」

 歯を食い縛って、ぐぐぐぐっと持ち上げて狙いを定めて、

「……ぉぉぉぉりゃああああぁぁっっ!」

 全力で振り下ろす! 甲高い、小さな金属音が空に響いた。

 それは暴風リンの意識体の、最後の依り所であった首飾りを、真っ二つに斬り裂いた音だ。

 同時に、意識体そのものも、真っ二つになる。

「か、神様なんて、神様なんて大っっ嫌いだああああぁぁぁぁっっ!」

 断末魔を残して、暴風=デコロス=ゴブリンは消滅した。

 その魂は前世の呪縛から解き放たれ、本来の肉体である用務員さんの元へと飛んでいく。

 そしてア―サ―は、ぺたりこ、と座り込んだ。

「お……お、おおおおお終わったぁぁ…………っ!」

 その直後、暴風リンの創った亜空間が消滅。飛ばされていた体育館が中身ごと戻って来て。

 白黒半分なア―サ―に、歓喜歓声の七百人が殺到し、大騒ぎになった。

 封印が解けて、にょこにょこ生えたエミアロ―ネとカユカがア―サ―を誉め、頭を撫でる。

 みんなに胴上げされるア―サ―を、少し離れた所に立つイルヴィアが見つめていた。

 全校生徒を巻き込んだ暴風リン戦は、こうして幕を閉じたのである。


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