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頭上輪廻戦士アーサー  作者: 川口大介
第六章 邪神の奇跡、二人の奇跡
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 ――? 今の声、あ~くん?

 って、ここはどこなの? 暗くて……やだ、何も見えない……えっ? て、手は? わたしの手……か、体を触れない? 足は……あ、足も? 何も踏んでない……んっ、くっ、な、何なの?

(ほう。愛の奇跡、か? まさか、完全に眠らせたはずのお前の意識が目覚めるとはな)

 じ、自分の体が見えない、触れない……どうして? どうなってるの? わたし、もしかして死んじゃったの? 幽霊にでもなったとか……あ、聞こえた! この声は女神二号さん……違う、あ~くんの声! あ~くんが、わたしに助けを求めてる!

(フン。残念ながら今、殺すところだ!)

 あ~くん、しっかりして! あ~くんっ!


 にょこっ!


「あ~くんっ!」

「ぬおっ⁉ あ、頭が重っっ!」


 ずぼごっ!


「……へっ?」

 ア―サ―は思わず、場違いなまでにマヌケな声を出してしまった。

 氷の長剣を振りかざし、豪快にア―サ―の頭をカチ割らんと急降下してきた暴風リン。それが何をトチ狂ったのか、いきなり顔面から地面に突っ込んだのだ。

 もちろんア―サ―は無事。

 しかし、一体何が起こったのか? まるで、突然頭が重くなったみたいに……

「! も、もしかして」

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆   

「なくはないわよ。重さは意図的に調整して、減らしてるの。言ったでしょ? 貴方の感覚に対しては有効な存在だって」

 ア―サ―が、え? と言う間もなく、

「何なら試してみようか? えいっ」


 ごぃん!


 机に、思いっきり頭突きを……

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆   

 暴風リンが、ぼこっと地面から顔を出した。やはり頭が重そうだが、それでもア―サ―に目を向ける。

 そして立ち上がろうとする、が、

「うっ? こ、こらっ、やめろっ!」

 何やらじたばたしている。まるで頭上を飛び交うハエを追っ払おうとでもしているような。

 そう、頭の上の……

『あ、頭の上っ!』

 その時、ア―サ―には見えた。

 いや、実際に目に見えたわけではないし、第六感でどうとかいうわけでもない。

 でも見えたのだ。

 暴風リンの頭の上で、上半身だけ生やしたイルヴィアが、えいえいえいえいっと、ぽかぽかぽかぽかっと、暴風リンを叩いている姿が。

 体を乗っ取られたイルヴィアが、戦っている。戦ってくれている!

「いいいいぃぃるぅぅびぃああああぁぁっ!」

 暴風リンが完全に封じたはずの、「励まされて火事場のバカ力」。それが今、ア―サ―の中で思いっきり大火事となって燃え上がった。

 ア―サ―は右手と左手でしっかりとラブラブレ―ドを握りしめ、根性で片膝立ちになって、

「ぬぅおりゃああああぁぁ――――っ!」

「! しまっ……」

 暴風リンが逃げる、その寸前に一閃!

 閃いたラブラブレ―ドは見事に、暴風=デコロス=ゴブリンを象った首飾りの鎖を捕らえて打ち飛ばした。

 イルヴィアの首から外れて、飛んでいく首飾り。日の光を浴びてキラリと光ったが、ア―サ―はそんなもの見てはいなかった。

 ぺたん、と尻餅をついたイルヴィアが、不安げに辺りを見回す様子を見ていた。

 そしてそのイルヴィアが、言った。

「あっ……あ~くん……なの?」

 その声がその言葉が、ア―サ―の五臓六腑に染み渡って。

 ア―サ―は、痛みも疲労も麻痺も忘れた。

 ついでに、普段だったら出るはずの照れも忘れた。

「イルヴィア……っ!」

 そっと優しく。そして、しっかりと強く。

 ア―サ―は片膝立ちのまま、イルヴィアを抱き締めた。

「あっ……あの、えっと、」

 イルヴィアは混乱しながら、状況を把握しようと務めた。

 何か、不思議なことに巻き込まれていて……真っ暗な中で、ア―サ―の声が聞こえて無我夢中で……でも、今ここにいるこの子はア―サ―ではなくて。

 白い戦装束の女の子。女神二号。

 でも、この感じは何だか。

「あ、あの。あなたはもしかして、」

「……僕は、」

 イルヴィアをしっかりと抱き締めて、ア―サ―は名乗った。

「……女神二号……です」


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