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頭上輪廻戦士アーサー  作者: 川口大介
第六章 邪神の奇跡、二人の奇跡
34/41

「今のは……エ、エミアロ―ネ……か?」

 校舎ゴ―レム=暴風リンが、校庭の中央で、よろりと立ち上がる。

 受け止められて、ブン投げられて、そして蹴り飛ばされた、その相手。下へ上へ横へと動きが激しかったので、よくは見えなかったが、しかし。

 もし見間違いでなければ、あの女はエミアロ―ネだ。前世からの宿敵、白の女神その人だ。前世で姿を見た。覚えている。

 だがエミアロ―ネはとっくの昔に死んだはず、転生したはず。現に今、その転生先の奴と戦っていたではないか?

 黒の覇王の力で輪廻を狂わせ、完全に前世の力と肉体を取り戻した自分たち、デコロスモンスタ―ならいざ知らず……

『⁉ ま、まさか!』

 最初からずっと謎だった、【黒い白の女神】そして昨日の【邪道の者】。もしかして……いやまさか、だがしかし。現世が前世の力を借りられるのなら、ついでに(?)前々世の力を借りることもできる、のかも。だとしたらもしかしてエミアロ―ネの前世、つまり現世から見て前々世が……?

 校舎ゴ―レムの頭の中で一つの仮説ができ上がった、その時。

「てええええぇぇ――――――――いっ!」

 さきほど壁を踏み潰した体育館の東側から、白い光の矢が駆けて来た。

 校舎ゴ―レムが反応し、あっと思った時にはもう手遅れ。白い光の矢ことエミアロ―ネは、走ってきた勢いそのままに速く高く大きく跳躍、校舎ゴ―レムのドテッ腹に拳を叩き込んだ。

「ぐふぁおおおおぉぉっ!」

 体を「く」の字に折り曲げて、校舎ゴ―レムが悶絶する。とんでもない圧力と鋭い激痛が、腹から背中へと突き抜けていく。

 その呻き声が消えぬ内に着地したエミアロ―ネは、間髪入れず今度は真上に跳び上がり、苦しげに下がってきていた校舎ゴ―レムの顎を、天まで届けとばかりに思いっきり蹴り上げる!

「ぁごっっ!」

 蹲ろうとしていたところに逆方向の力を加えられて、校舎ゴ―レムは大きく仰け反る。そしてそのまま踏ん張ることができず、後ろにぶっ倒れた。

『つ、強い、強過ぎる! これほどまでに強かったのか、白の女神とは⁉』

 仰向けに倒れた、その目に映るのは空。渦巻く赤黒い雲、邪神の門。

 あれが開ききれば、邪神の力を完全に得られさえすれば、いくらエミアロ―ネが強くとも必ず勝てる。人間と神とでは、どう考えても勝負になるはずがないからだ。

 しかし今のこの圧倒されっぷりでは、門が開くまでもつかどうか?

『いや、もってみせる!』 

 マナジリ決して、校舎ゴ―レムが立ち上がる。

 だがその時にはもう目の前に、校舎ゴ―レムの身長と同じぐらいの長さの剣――ラブラブレ―ドを構えたエミアロ―ネが、跳びかかってきていた。

『……もたない……かも……』

 ざしゅっ! と音がした。エミアロ―ネが着地した。と同時にラブラブレ―ドは縮み、普通の長さの剣になる。

 そして校舎ゴ―レムの体には、

「うぐ……っ?」

 輪切り、か。その体には水平に何本も何本も、光のスジが走っている。もちろん今、斬られた跡であろう。

 と思いきや、時間差を生じて縦にも何本も何本もスジが走った。サイの目切り、か。

 どうやらさっきの「ざしゅっ!」だけで、タテタテヨコヨコ、存分に斬りまくられたらしい。全然見えなかったが、そうらしい。

「ち、ちちちちちくしょおおおおぉぉっ!」

 エミアロ―ネが後ろに跳び退るのと同時に、校舎ゴ―レムの全身がバラバラになりながら大爆発! その体は炎と煙の塊となって、煉瓦や壁土を辺りに撒き散らす。

「……ふうっ」

 エミアロ―ネが一息つく。と、背後から希望に満ちた歓声が響き轟いた。

 振り向いてみると、屋根も壁もなくなって吹きっ晒しとなった体育館の東側に、みんなが集まっていた。

 もちろんその中には、感涙にむせぶオデックもいる。

「やっぱり、あの子は本当に本物の、白の女神の生まれ変わりだったんだ! で、二代目のピンチを救う為に、先代が天から降りてきたんだ……!」

 元気なオデックの元気な姿を見て、声を聞いて、エミアロ―ネはほっとした。幻術も解けたし、怪我人らしい怪我人もいない。みんな無事だ。

 雲の渦=邪神の門はまだ健在だが、空のあちこちに細かくヒビが入り始めている。この亜空間そのものが、壊れようとしているのだ。

『うん、もう時間の問題ね。この空間が壊れてしまえば、ここに召還されるはずだった邪神も行き場を失うはず。体育館もみんなも、ここから開放されて元の世界に戻るわ』

 一件落着……と思いきや。


 どさっ!


「!」

 何かが落ちてきた。

 エミアロ―ネがそちらに向き直ると、辺りに散らばる煉瓦の破片の中に、黒焦げになった人型の塊があった。

 暴風=デコロス=ゴブリン、暴風リンだ。

「ぐく……っ」

 痛々しく弱々しい姿ながら、暴風リンは立ち上がる。

 そしてその両手に、魔力を集中させ始めた。

 まだ戦うつもりのようだ。

「そうはさせないっ!」

 エミアロ―ネはトドメを刺すべく、ラブラブレ―ドを振り被る。が、

「あ……っ、何? 体が……」

 突然動きを止め、その場に固まった。ラブラブレ―ドを持つ手に力が入らず、握ったまま地面に突き立ててしまう。

 全身から力が抜け、意識が朦朧としてきた。暴風リンはというと、手間取っているようではあるが、何かをしようとしている。何かは知らないが、一刻も早く倒さねばならない。

 だが体が意識が……と苦しむエミアロ―ネの心の中に、同じように苦しそうな声がした。

《す、すまぬ来世……もう、限界じゃ。これ以上は輪廻に……こ、抗しきれぬ!》

「カユカちゃん? ……う、あっ……》

 突き立てたラブラブレ―ドにもたれかかるようにして、エミアロ―ネは両膝を落とす。

 両膝が地面に着いたその瞬間、もうエミアロ―ネはいなくなっていた。

 いるのは背が低く、体つきは子供っぽく、黒く短い髪の少女。

「……あ、あれ? 僕は……うっ!」

 意識を取り戻したア―サ―は、全身の痛みに顔を歪めた。筋肉という筋肉が、骨という骨が、威勢良く悲鳴を上げている。

 無理もない。たった今、伝説上の戦う女神様そのものになったのだから。ムリヤリその力を使わされたのだから。

 ア―サ―の肉体と魂は、まだ前世の能力を完全に使いこなせていないのだ。邪神の力まで利用して、輪廻を捻じ曲げたりしない限りは。

《要するにソナタの体と魂を、ムリヤリ前世のそれに引き戻したというわけじゃ》

《ア―サ―君、勝手なことしてごめんなさい……その、大丈夫?》


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