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頭上輪廻戦士アーサー  作者: 川口大介
第四章 【悪しき心】発動
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《負の感情、悪しき心が、必ずしも悪しき力と化すとは限らぬ。例えば、自惚れによる自分自身への過大評価を、根性・努力でもって過大でなくそうとする行為。人、それを成長と呼ぶ……》

「そぉいうことだっ! 英雄たる僕は必ず、お姫様を護る! もう絶対、落ち込んだりなんかしない! てなわけで、いでよドロドロ――――――――ッド!」

 光の中から、黒く歪んだ禍々しい杖が出現した。ア―サ―はそれを手に取り、振り上げながら鏡メバンシ―に向かって突進していく。

 暗き情念の杖。【屈辱や憎悪から来る無限の向上心】を実体化した杖である。

「喰らえぇぇ悪者っ! 正義の必殺技を!」

 ドロドロッドの上端に、先程のア―サ―の拳と同じ炎の球が出現した。

 と同時に、その炎の球を、幾筋もの小さな稲妻が取り囲む。

「いくぞぉぉ! ビリビリメラメラボ――――――――ルっっ!」

 ア―サ―は両手で握ったドロドロッドを、勢いをつけて思いっきり大きく、右から左へと水平に薙ぎ払った。

 稲妻に包まれた炎の球が、ぶん! と放たれ一直線に、鏡メバンシ―に向かっていく。

「な、何っ⁉」

 稲妻と火炎。どんな系統の黒魔術でも、絶対に同時発生はしない二種類の力が、同時発生どころか融合して飛んできたのだ。

 こんなことを可能にする魔術など、この世に存在しないはず。鏡メバンシ―の前世すなわち前大戦、黒の覇王と白の女神との戦いの時にも、そんな術はどこにもなかった。人間も魔物も、誰も使っていなかった。

 存在するはずがない術――稲妻火炎球。

「な、な、何なのよコイツはああぁぁっ⁉」

 それが、鏡メバンシ―の最後の言葉。

 稲妻の毒蛇と火炎の狼に同時に喰らいつかれた鏡メバンシ―は、


 どじゅばばぼぼぼぼおおおおぉぉん!


 眩しい閃光と激しい爆炎、そして複雑かつ豪快な大爆音と共に消滅した。

 その煙の中から小さな光の球が飛び出し、飛んでいく。鏡メバンシ―の術が解け、夜が明けるように光を取り戻していく空を、彼方へと飛んでいった。

《ほれ、魂が本人の肉体へ戻っていくぞよ。あやつの意識体が完全に消滅した証拠じゃ。これで街の人々も元に戻るじゃろう》

「……ぁ……うっ」

 ふらり、とふらつくア―サ―の手からドロドロッドが消えた。

 そして、肉体と衣装も、元に戻る。

 ホワイトワ―ズ中学の制服を着たア―サ―が、男の子の声で呟く。

「ぼ、僕……今……?」

「ア―サ―君っ!」

 にょこ、とエミアロ―ネがア―サ―の頭に生えた。

「大丈夫? どこか、痛くない?」

「あ……エミアロ―ネさん、何だか随分久しぶりな気がします……大丈夫、平気です」

「そう、良かった。でもア―サ―君、さっきまでのは一体何なの?」

「僕にも、何がなんだか。でも、」

「記憶がない、というわけではなかろう?」

「はい。実はそうなんです……って、え?」

「アレはアレでソナタの本性、ソナタ自身なのじゃからの。ヨは、ほんの少しソナタの背中を押してやっただけじゃ」

 にょこ、と黒いロ―ブの少女が生えた。

 場所はエミアロ―ネの頭の上だ。

「ええぇぇっ⁉」

 ア―サ―とエミアロ―ネの声がハモった。

 ア―サ―の頭の上に、白い戦装束のエミアロ―ネ。その頭の上に、黒いロ―ブの少女カユカ。

 親亀の上に子亀で孫亀、というか。ト―テムポ―ル状態というか。

「な、何なの貴女は?」

「ん? 解らぬのか? ヨは、ソナタの頭に生えておるのじゃぞ」

「あっ……じゃあ、貴女は私の?」

 エミアロ―ネが、上に向けた目をしろくろさせていると、

「あ~くぅ――――――――ん!」

 精一杯の大声を張り上げて、イルヴィアが走ってきた。

「イ、イルヴィア……」

 必死に護ろうと頑張った、お姫様との感動的な再会。なのに、ア―サ―は固まってしまっている。

 それどろか、「うぐっ」と呻いて一、二歩後ずさったりする。

「? ア―サ―君?」

 その様子に、エミアロ―ネが視線を降ろす。

「どうしちゃったの……あ、そうか」

 エミアロ―ネは、ア―サ―の心に深々と突き刺さっているのであろう冷たく痛い氷に思い至った。

 イルヴィアの視線と、態度と、言葉と。

「あのねア―サ―君。さっきも言ったけど、解っているわよね? アレは、イルヴィアちゃん本人の言葉じゃないのよ」

「左様。アレは彼の者に操られて放った言葉。あの娘自身が、語ろうとして語った言葉ではない」

「そうなのよ、ア―サ―君」

「うむ。決して、あの娘の潜在意識を催眠術が掘り起こした、などということはない」

 ア―サ―の顔が、ぴきりっと引きつった。

「せ、せせせせ潜在意識……っ……」

 エミアロ―ネが、慌てて上を向く。

「こらこらっ! デリケ―ト極まりない思春期の少年の心を、弄んじゃだめっ!」

「ちなみにヨは十歳じゃが。思春期を弄ぶのは、いけないことかの」

「誰も貴女の歳なんて聞いてないし、そもそも十歳がそんな台詞を吐くんじゃないのっ!」

 親亀の頭の上で子亀と孫亀が言い争っている、その間に。

 親亀の目の前に、イルヴィアが到着した。走って走って、息を切らせて。

「はぁはぁ、あ~くん、大丈夫? どこかケガしてない?」

「え……う、うん。大丈夫だけど」

「良かったぁぁ……」

 イルヴィアは、心から安堵した表情を浮かべる。


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