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頭上輪廻戦士アーサー  作者: 川口大介
第二章 出陣! 二代目女神様
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「黙れええええええええぇぇぇぇっ!」

 机ゴンの、激怒の大咆哮が轟いた。

「こんなバカ騒ぎで、あの女が復活して大逆転、とでも思っておるのか愚か者ども! ただの応援で体力気力が回復したり強くなったりするなら、武術も魔術もいらぬわ!」

 だが、生徒たちの声は一向に止まない。

 顔を真っ赤にした机ゴンが、中学の校舎に突進する。

 が、背後から聞こえた大きな音が、それに待ったをかけた。

 まるで火山の噴火のような、地底から天空へと全てを吹き飛ばすような、大爆音。

「な、何だ?」

 振り向いた机ゴンは見た。机の山の中心に穴が開き、そこにまっすぐ天まで伸びている火柱、いや、光柱を。

 そしてその中から、跳び出て来た白い影……女神二号こと、ア―サ―だ!

「そ、そんなバカなああぁぁっっ⁉」

「に・ご・おおおおおぉぉぉぉっ!」

 前後からの応援が、歓声を交えて更に大きくなった!


《白武術の特性を甘くみてたみたいね、あいつ。……それにしても、力や技なんかはまだまだ覚醒しきっていないのに、》

 エミアロ―ネの、本心から感服した声がア―サ―の中に聞こえている。

《かなり補えてるわ。心を力に換える部分、変換効率で。ア―サ―君、どうやらこれだけは私の現役当時に劣ってないわよ》

「……」

 ア―サ―は答えず、ただ大きく息を吸った。

 そして、無限に湧いてくる巨大な力を持て余すかのように、

「ぅいくぞおおぉぉ!」

 気合一発、机ゴンに向かっていった。

 耳に届く、みんなの声。魂に届く、みんなの思い。それがア―サ―の中で力となっている。

 今ならできる。白武術の秘儀、【善き心】をもって無から有を生み出す術が! と強く念じた時、ア―サ―の両手の甲が強く強く輝いた。

《よしっ! いけるわア―サ―君!》

「はああああぁぁっ!」

 気合を込めて、ア―サ―が両手を振り上げる。光が灯ったその両手に、イメ―ジを集中させる。ア―サ―に宿る白の力が、そのイメ―ジを実体化させ、形作っていく。

 それは悪しきものたちを斬り裂き打ち倒す伝説の武器。その名も、

「ラブラブレ――――ドっ!」

 熱き慈愛の剣、ラブラブレ―ド。【友情や信頼が生む無限の勇気】を実体化した剣である。

 前大戦で白の女神が振るっていた黄金色の剣が今、光の中から出現し、ア―サ―の手にしっかりと握られた。

 机ゴンも、眩いばかりに輝くこの剣のことははっきり覚えている。何しろ前世で己をぶった斬った武器だ。

「ぬ、ぬぅおおおおぉぉぉぉっ!」

 大きく開けた机ゴンの口の中で、炎が渦巻いた。渦巻きながら、更にどんどん炎を吐き加えていき、やがて机ゴンの口から溢れ出し大きく膨れ上がった時、ある形を為した。

 それは、机。校舎を跨ぐような巨人にしか使えなさそうな、巨大な炎の机だ。

「死ねぇぇい! 白の女神――――っ!」

 後ろ足で立ち上がり、全身全霊を込めて、机ゴンが巨大な炎の机を吐き飛ばす。

 だがア―サ―は全く臆せず真っ直ぐに、ラブラブレ―ドを構えて机ゴンに向かっていき、

「てぇぇ――――いっ!」

 右下から、左上へ。斬り上げたその一閃で炎の机はあっけなく斬り裂かれ、真っ二つになりながら大空の彼方へと吹き飛ばされた。

 机ゴンが怯んだ、その隙にア―サ―は大きく踏み込んで大ジャンプ!

「ここだぁぁっ!」

 机ゴンの頭上へと一気に跳び上がったア―サ―が、ラブラブレ―ドを振り上げた。

 ア―サ―の意識の中で、前大戦を戦い抜いたエミアロ―ネの姿と今の自分の姿とが重なる。

 前世から現世へ、蘇った白の女神の勇姿が今、ここに!

《いけえぇっ! ア―サ―君っ!》

「ハ―トフルアタ――――――――ック!」

 ア―サ―が己の全身ごとラブラブレ―ドを振り下ろす。と、ラブラブレ―ドの刃が、その帯びた光と共に一瞬にして十数倍、いや数十倍の長さに伸び、机ゴンの脳天の机から頭蓋、胴、尾に到るまで全身を一撃一閃! 一刀両断した。

 真心の斬撃――ラブラブレ―ドの威力を飛躍的に高めて敵を斬り裂く、白武術の奥義。

 白の女神が得意とした、必殺の技だ。

「……グ……!」

 机ゴンの体の中心に、縦一本の一直線の、光の筋が走っている。

 机ゴンが、己が斬られたことを理解した時。それは、元の長さに戻ったラブラブレ―ドを手にしたア―サ―が、着地した時。

 机ゴンは見た。前世とは別人、しかし前世と同じく自分を倒した、白武術の女性を。黄金の剣で自分を斬り裂いた、白の女神を。

 黒く短い髪で、背が低くて、タレ目で、子供っぽい体つきの、二代目がそこにいた。

 役目を終えたラブラブレ―ドは光に溶け、消える。

「ま、またしても……かあぁぁっっっっ!」

 机ゴンは轟音と爆風を撒き散らし、大爆発した。その迫力に、またまた二つの校舎が飲まれて静まり返る。そんな中、

「……ふうっ」

 ア―サ―は一つ深呼吸をして、イルヴィアの元へと歩いていった。

「どこか、ケガしてない? 大丈夫?」 

「……」

 イルヴィアは、何を言ったらいいのか何をしたらいいのか、わからなくなっていた。

 だって目の前にいる少女はどう見てもあの時、机ゴンに殺されかけたあの時、心の底から助けを求めた少年にそっくりなのだ。

 だから。やはり、聞かずにはいられない。


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