寝癖男と寝癖の力
毎度のことながら、設定にすごい無理があります。暇で暇でしょうがない方へぜひ。
ドォン、という物音が倉庫に響き渡る。何事かと思い、恐る恐る中に入ってみると、中には一人の男がいた。昨日見たいかにも怪しい男だ。こんな状態でこの大遅刻を見過ごしてもらえるだろうか。突然彼が振り向いてきたので、「ウヘェ」となんとも頼りなく気色悪い声を出してしまった。
「やっと来たか!遅刻にも限度があるだろう…まぁいい、とにかく入れ。」
そう男に言われ、私は倉庫に入った。しかし、髪の残った者を集めると聞いていたが、周囲には私と、この男しか見当たらない。
「あのー、他にも何人か髪が残ってる人がいるんじゃ…?」
私が尋ねると、彼は答えた。
「…誰もこないんだ。全員に同じ時間、同じ場所を伝えたというのに、まっっじで誰も来ない。」
なんということだ。彼はこの暗い夜の倉庫で40分も私をたった一人で待っていたというのか。私なら、5分でリタイアする自信がある。
「まだ遅刻という可能性もあるし、まぁ…桃鉄でもやるか。」
何故桃鉄かは知らないし、あまり2人で桃鉄をやる奴らは見たことがない。恐らくこの様子を誰かに見られたら、変人扱いは確定だろう。最悪通報されるかもしれない。
しかし、意外と桃鉄勝負は盛り上がり、既に3年目の決算を終えていた。
「もう待っても誰も来ないだろうな…ハァ、始めるか。」
この状況は男にとって完全に想定外だったらしく、酷く落ち込んだ様子だったが、冷静に考えてみてほしい。いきなり黒服グラサン男から9時に倉庫に来いなどと言われて来るやつはいるのだろうか。私が来たことに感謝の一つでもしてほしいものである。
「名乗るのが遅れたな。俺の名前は小梅慎太郎。小梅とでも呼んでくれ。お前は?」
「寝癖男っす。」
「ハァ?ふざけてんのか?」
「いや、ふざけてないですよ。寝具が名字で、瀬男が名前です。」
どこに行ってもこのやり取りは必ず起こる。今私の頭には本当に寝癖がくっついてしまっているのだから、ふざけていると捉えられるのも無理はないだろう。
「まぁ、何でもいいか…寝癖男、お前のその寝癖、どうやっても直らないだろう?」
言われてみれば確かにそうだ。一応水で濡らしてみたけれど、びくともしなかった。
「その寝癖にこそ、このスキンヘッド事件の秘密が隠されている!寝癖のついた者には、個人差はあれど、皆このような能力を発現させるのだ!」
そう小梅が言うと、彼は髪の毛を掌で押し込んだ。すると押し込まれた寝癖は巨大化し、目の前に壁となって現れたのだ!
「この能力をお前も身に着け、髪の毛を奪った奴らと戦い、髪の毛を勝ち取るのだ!」
最近パプリカを克服した。好きでもないけど