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05 見習い神官 シンシア

見習い未満として鍛錬・雑用を積みながら過ごし、半年…技能が大分生えた。現在の技能は戦士2、騎兵1、斥候1、錬体師1である。まだまだ見習い未満であるが、同時期に訓練を始めた子供たちには実践稽古で負ける事はない。よって、訓練にならないと先輩達と試合をするようになった。

そんなある日…私は祈りの対象を全ての神から戦神グラディア様に対するものに変えた。要するに、信仰の対象を決めたのである。神官戦士又は聖騎士になるにはいずれの神に仕える神官になっても良いのだがあのハスタ様の恋人である女神様…女神同士で夫婦なのだと言う事で近親感を覚えた。その理屈であればハスタ様でも良いし、見知っている分親しみも抱きやすいのだが、特定の主に使え、その人の為に働く、という信仰の性質が性に合わなかったため、グラディア様に仕える事とした。

そして、グラディア様の仕える証として、その聖印である剣の意匠を彫り込んだペンダントを授かる儀式を受け…私は祈りをささげた。すると聖印が光った…いや、なんで初めの祈りで光るのさ。普通、一か月くらい祈り続けて初めて光る物でしょう…?と、言うのも、この光は信仰が神又はその御使いに認められた証であるからである。

「…シンシア・オータムムーン、汝の信仰は神々に届いた。されど、これからも信心を積むことを誓うか?」

母が、私に聖印を授けた高司祭様がそうアドリブで言う。本来は、汝、信仰を神に認められるべく信心を積むことを誓うか?である。

「はい、誓います」

「では、その聖印は汝の物である。我らが主、戦神グラディア神よ、どうかこの者、シンシア・オータムムーンをお見守り下さい」

そう、母が宣言し、儀式は終わった。


「…一年くらい、全ての神への祈りは続けていたとはいえ、まさか初めの祈りで信仰が認められるとはね…」

「祈りを初めて数日で、というのは聞いた事がありますが、初めの祈りで、というのは聞いた事がありませんね…ですが、むしろ喜ばしい事です」

「母様、ハリス様」

「大いなる才能を持った者が熱心に祈ればこんな事もあるのですね…司教様に報告せねば」

「そうですね、エリオット様…ですが、聖騎士養成所に入るまでは意地でもライタウン神殿で養育しますけれど」

「ああ、そう言えば司教様周辺がそんな事を言っているのでしたか…マーガレット殿からシンシアを引き剥がすのも、マーガレット殿とジルベスタ殿を後方に下げるのもやめておくように、と一言加えておきますね」

「お願いいたします」

母と儀式に立ち会っていたハリス高司祭様はそんな会話を交わした…そんな事になっていたのか、私の身柄について…少し掘り返してみるか。

「あの、司教様がご命じになったら私はこの神殿を去らねばならないのですか?」

「そんな事はないわ、司教様とはいえ、そんな権限はないし、私も無理筋の要求位は跳ね返せる位の権力はあるから、安心してね、シンディ…まあ、そんな事できないように根回しはちゃんとしておくけれどもね」

流石は母、備えよ、というグラディア様の教えに忠実である。

「ええ、他の司教区では天才の称号を持って生まれた子を良い環境で育てる為と称して親元から引き離したりした、という話も伝え聞きます…それも一つではなく複数…そう言った意味では聖騎士として育てるのによい環境であるライタウン神殿の子で良かった…」

ハリス高司祭様の言葉に、両親はうんうんと頷くのであった。


それからさらに半年が経過し、私は6歳の月例祭を迎えた。その時点での技能はこうである。


戦士4、神官(グラディア)3、騎兵2、斥候2、錬体師2、マルチタスク1


この世界で、レベル3未満は見習い未満の素人であり、レベル3からやっと見習いとして認められる。つまり、私は戦士見習い兼神官の見習いに昇格したのである。言い換えれば、私は戦士の権利である干し肉を日々の正餐(昼食)で加増されるようになり、また神官の権利であり義務である合同礼拝の儀式に末席とは言え参加する様になった。そんな私の平日のスケジュールはだいたいこんな感じである。


4時起床

5時日の出と始まる朝の合同礼拝開始。参加は見習い含む聖職者のみ。

5時半朝の集い(警備の当直以外全員参加、朝礼を兼ねる)

6時朝食後、自由時間。大体は熱心な騎士・従士に交じって自主鍛錬。

7時半午前の仕事。見習いの私は基本的に雑用や簡単な仕事をこなし、

それが終わったら訓練をつけてもらえる。

11時半昼の合同礼拝。参加は聖職者のみ(見習い含む)。

12時正午の鐘が鳴り、合同礼拝終了。食堂に移動し、正餐。その後自由時間。大体は他の皆がそうするように午睡を取り、午後の仕事に備える。

14時午後の仕事。内容は午前と同様。

18時夕方の集い(全員参加)

18時半夜の合同礼拝。参加は見習い含む聖職者のみ。

19時日没後、夕食。以降は自由時間だが、明かりは自前で用意する必要がある。

19時半就寝。以降、4時に鳴る夜明け前の鐘まで静粛の義務が課される。

日の出は5時、日没は19時であり、その前後30分くらいは字が読めるくらいには明るい。とはいえ、プライムアースでは常に満月である為、屋外であれば完全に明かりが無い、という事は雲が出ていない限り基本的にはない。


これに加えて、平均して月に2日程度存在する祝祭日前後はその準備や片付けに奔走し、当日も参拝者たちの対応などで忙しく働く。一方、休息日は週6日間で1日の交代制である、私は一人で町に出る事が許されていないので大体は仕事が鍛錬に置き換わるだけであるが。

そうして、過ごす内に友達と呼べる同年代の子供が二人出来た。二人とも、聖騎士の見習いでスケジュールが似通っているから自然と交流が増えた、という感じである。

一人はシャーロット・スミス。3年上の女の子で、辺境都市ヨーク・ウォール市の鍛冶職人の親方の娘で、戦士の才能・中と神官の才能・中と騎兵の才能・小をもって産まれてきた為、現地の司祭様に勧められて聖騎士になるべく修業を積み、最近、従士としてライタウン神殿にやってきた。文明神ロマに仕える見習い神官でもある。

もう一人はアラン・ガードナー。4歳年上の男の子で、王都の近衛騎士の息子で慈悲神クラティアに仕える侍祭でもある。こちらも戦士の才能・中と神官の才能・中と騎兵の才能・小をもって産まれてきた為、家業の近衛騎士となる事を期待されていたが、王の為の騎士ではなく万人の為の神官になりたいと本人が主張した為、妥協の産物として聖騎士を目指す事になったらしい。彼は私の親戚筋であり(私の母がガードナー家の傍流出身)、修業が厳しい神殿に行きたい、と志願した為にライタウン神殿に従士として預けられた。

尚、二人が言うには、修行の厳しさは覚悟していたが食事が思っていた以上に質素なのが辛いらしい…まあ、ハスタ様の講義内容からすれば、修行中の身分でも、もうちょっといいモノ食べているわな…と内心思いつつ、ほぼこの神殿から出た事が無い私はそうなんだねーと頷くしかなかったのであるが。

そうこうしている内に私は7歳になり…戦士技能レベルが5になった事が判明した私は従士に昇格する事となった。


レベルの目安について。

1:最低限、その心得がある。

3:見習いとして認められるレベル。わずかでも才能があれば、一年も鍛錬すればこの段階に。

ただし、複数の技能を同時並行で伸ばせばそれだけ時間はかかる。

5:その道で生きて行くには最低限必要なレベル。

7:プロであれば一般的な技能レベル。戦闘技能であれば騎士階級の平均最大技能レベル。

9:職人であれば親方、騎士であれば隊長格、聖職者であれば司祭になるのに求められる水準環境に恵まれた凡人(才能なし)が熱心に努力した時の最盛期がこの段階とされる。もちろん、いくつかの技能を同時に伸ばしていれば到達点も低くなる。

11:小国であれば、その国で一番の、と呼ばれてもおかしくないレベル。

13:世界でも指折りの、とされるレベル。

15:人類の成長限界。ただし、特別な何か、があればこの壁を超える事も可能かもしれない。

尚、各種レベルはレベル5の神聖魔法で調べる事が出来る。神殿でこの魔法を受ける場合の寄進は小銀貨3枚からが目安。とはいえ、一般人は転職の必要が出来た時や遍歴職人等が技能証明書として使うくらい。後は、技能レベルの規定がある地位に就く場合など。


暦等

1年=12カ月=60週間=360日、つまり一週間は6日。神授歴である。

一日は24時間で、季節に関わらず、常に日の出は5時かつ日の入りは19時。薄明と薄暮を考慮に入れれば、明かり無しで活動できるのは4時半から19時半。

月は1つで常に満月、太陽と12時間ずれて同じ高さを回っている。

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