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13 聖騎士養成所へ…?

季節が巡り、秋となって私が10歳になった際に受けた技能調べの儀式で、私は聖騎士養成所の入所資格である戦士7、神官5、騎兵5を達成している事が発覚した。よって、中等教育を修了し次第…具体的には年明け頃の入所を目安に準備を進めては、という方向で話が進んでいる。

最寄りの聖騎士養成所があるこの国、グラスラントの王都の司教座神殿に入所手続きの為の手紙(推薦状相当の手紙は神殿を代表して母が書いたが願書相当の手紙は自筆で書く必要がある)を神殿のネットワークを使って出し、入学の為の武装(短剣以外の装備は神殿からの貸与品である)の手配を行い、といった具合で準備を進めていった。


「はぁ…戦士と神官で大いなる才能持ちとはいえ、まさか10歳で入学資格を満たしてしまうとは…入学資格を満たしたからってすぐに入所しなくてもいいのに…私も入所したのは13歳よ?」

「母様、ソレもう何度も聞きました」

「何度でも愚痴りたくなるのよ…ああ、そんなに生き急いでどこに行こうというの、シンディ」

「有限のこの生を有効活用したいだけですよ、母様…まあ、無理を押し通す気はありませんが」

「…世界中でシンディと同時期に生まれた『神童』たちも似たような感じらしいとは噂で聞いているけれども…ハァ」

そう、母はため息をつくのであった。


「なあ、シンシア…聖騎士様になったら旅に出るんだろう?」

11月のある日、鍛錬後エマさんを待つ間、私はハリー君と話をしていた。

「ええ、大体の聖騎士様は数年位は修行の為に遍歴に出るものですね、近場で冒険者する例もないとは言いませんが、私は旅に出るつもりですよ」

「ならさ…一緒にしようぜ、冒険をさ。俺もその時までには一人前になるからさ」

「ハリー君、一人前になるのはいいですが、エマさんへの奉仕期間はどうする気です?私、聖騎士になるのに三年もかける気ないですよ?」

「あ…えっと…どうしよう」

「そこは忘れちゃだめですよ、ハリー君。まあ、エマさんが許してくれるのであれば、ですが私が漆黒の番犬に暫くお世話になる、でもかまいませんよ」

「え…いいのか?」

「もう…自分から提案しておいてなんです?その言い草は」

「だって、俺、シンシアより弱いし…足手まといかなって」

「その分、冒険者としてのノウハウはハリー君の方があるでしょう?それに、気心の知れた仲間がいるというのも旅には重要な事…らしいですよ?」

「そっか、そうだな!俺もできるだけ強くなるから、シンシアも頑張れよ!」

「ええ、ありがとうございます。ハリー君も頑張ってくださいね」




で、年が明け、いよいよ入所の為の旅に出る…筈だったのだが

「えっ…入所延期ですか?」

年が明けてすぐのある日、私はハリス様と母に呼び出されてそんな事を告げられていた。

「そうです、シンシア。神前会議で聖騎士養成所への入所は13歳から、聖騎士資格の授与は15歳からという事になりました」

「…それは…私…いえ、私達が生き急ぎすぎているから、でしょうか」

「そうですね、各地の『神童』達が幼いうちから旅に出ようとするのを止める為、の一環ですね。『神童』達の内、才能が聖騎士に該当するのはシンシアともう二名だけですが…それでもしっかり学び、鍛錬をし、旅に出るならば成人してからにしてほしい、という事ですよ…表向きは」

「表向き…ですか?」

「私とハリス様の推測、ではあるけれど本音はせっかくの才能の塊にしっかり首輪をつけておきたい、という事でしょうね。提案者の司教様が確保している『神童』の才能が聖騎士候補という事ですし…確か、戦士の天才で、中程度の神官と騎兵と同時処理の才能でしたか」

「私が聞いている限りではその通りです。噂では、シンシアと同じく技能的には聖騎士養成所の入所資格を満たしていて、中等教育を受けている所だった、という話です」

「成程…それは、その司祭様、その『神童』の子に恨まれませんか?」

少なくとも、私はイラッとしている。当人と知り合いであれば恨み言の一つも言うであろう位は。

「それは当人の性格次第、でしょうね…あとはそれを提案したのがその司教様であるとの情報が入るか、次第ですか…まあ、どちらにせよ、シンシアには悪いのですが、養成所への入所は延期、という事でお願いいたします」

「了解いたしました、ハリス様、母様」

と、いう訳で私の聖騎士養成所への入所は延期される事となったのである。




「と、いう訳で、私はもう暫くライタウンで生活する事になりました。色々と相談に乗って頂いたのにすいません、エマさん」

私は漆黒の番犬がいる宿を訪ね、エマさんとハリー君に面会していた。

「まあ、やんごとない方々の決定であれば仕方ないさ。そうなると、また暫く教練師を続けのかい?」

「そうですね、一度止めると言ってしまっているので冒険者ギルドで再開できるか確認しないといけませんが、できれば続けたいです」

「だ、そうだ。よかったな、ハリー。」

「…はい。シンシア、これからも…よろしくな」

「ええ、あと二年半くらいですが、それだけあればハリー君もレベル5になるでしょうし」

「まあ、私が教練代を払ってやるのはギルドの規約通りハリーがレベル5になるまでだが、その後もハリーが自腹を切るならシンシアの教練を受けても構わんぞ、ハリー。日程調整はしてやる」

「フム…ハリー君が良いならば教練相手を務めますが…払えます?料金は私の戦士レベルに合わせて相場通りにするつもりですが」

「えっと…分け前の額次第だけど、代金を捻出できるならできればお願いしたい、です」

「じゃあ、聖騎士養成所に入るまで、よろしくお願いいたします」

その後、冒険者ギルドに確認したが、教練師を再開する事は問題ない、という事であった。

…で、その少し後の技能調べでハリー君の戦士技能レベルが5になっていたことが判明し、ハリー君はめでたく見習いを卒業する事となった。そのお祝いも割と盛大に行われ、私も招かれてごちそうをご相伴にあずかる事となった。



そして、私は元の日常に戻るのであった…と思っていたのだが。

『シンシア、シンシア・オータムムーンよ。我が主、戦神グラディアの名において、汝の信仰を認め、より多くの主の力を振るう事を承認せん』

ある日の夜の合同礼拝の終わりに、御使いが降臨し、私にそう告げた。

コレで私は神聖魔法にかかっていたレベルキャップを解放され、レベル6以上になる権利を得た。

まあ、神殿の神官が承認を受ける時は大体合同礼拝の時なので特に騒がれず、寿がれただけではあるが。


そうして、春になる頃には神官技能もレベル6となり、私は助祭に叙される事となっていた。

夜の合同礼拝の後、水浴びをして身を清め、司祭様が交代で立ち会う中、祭壇の前で夜通し礼拝堂で跪いて祈りを捧げ続け、朝の合同礼拝の時間になった。

「おはようございます、シンシア」

「おはようございます、ハリス様」

「よく祈れましたか」

「はい、夜の帳の中、神々に深く祈りをささげることが出来たように思います」

「それはよろしい。では…始めなさい、シンシア」

ハリス様の言葉に従い、私は立ち上がり、メシス様とグラディア様の神像に礼をして皆の…この神殿の聖職者全ての方を向き、礼をした。

「我が主、戦神グラディアよ、どうか主神メシスに代わってシンシア・オータムムーンの技能の段位を我らに示したまえ!」

私の祈りに応え、神聖な気配が、御使いが降臨し、礼拝堂に声を響かせる。

『告げる。この者、シンシア・オータムムーンが持つ技能は6つである。

1つ、戦士としての技能、階位7。

1つ、神官としての技能、階位6。

1つ、騎兵としての技能、階位5。

1つ、同時処理の技能、階位4。

1つ、錬体師としての技能、階位4。

1つ、斥候としての技能、階位3。

以上である。技能を磨く為の日々の努力を怠る事無かれ』

御使いが去ると共に、ハリス様が告げる。

「ここにシンシア・オータムムーンが助祭となるに十分な能力を持つ事が証明されました。

また、私、エリオット・ハリスの名においてこの者が侍祭として十分な経験を積んだ事を保証します。

列席の皆の中にこの者の助祭叙階に対し、正当な理由をもって異議を申し立てる者がいれば直ちにそうしなさい。

そうでないならば、後に異議を申し立てる事はあってはなりません」

ハリス様がそう告げ、皆は沈黙で答えた。

「では、シンシア・オータムムーンの助祭叙階の儀式を始めます。」

私は再び祭壇に向き直り、跪く。ハリス様は祭壇の上で香炉を焚き、その煙を扇で私に浴びせた。その間に、祭壇上に白いストラ(首にかける帯)が用意される。

「シンシア・オータムムーン、誓いの言葉を」

「はい。私、シンシア・オータムムーンは輪廻に還るその日まで、我が主、戦神グラディアに変わらぬ忠誠を誓います。

また、主が望むのであればこの生が尽きた後も主に眷族として仕える事を厭いません」

「よろしい…ではあなたに助祭の証として、ミトラを授けます」

そう、ハリス様が私に告げ、ミトラをたすき掛けにかけた。以上で助祭叙階の儀式は終わりである。


助祭への叙階は高司祭であれば行えるという世界観。いや、辺境から助祭叙階の為に護衛をつけて司教座神殿に行かせる程の余裕がある世界観ではないので…

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