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釜山哀歌  作者: 南ゆう
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四条大橋にて

彼女の名前はイ・アルム。

名前の意味は「美しい」だ。

その名の通りの人だった。

170cmに届くかというすらりとした身長を持ち、黒くて艶のある髪は肩を過ぎたあたりで切り揃えられている。大きな瞳を直視していると吸い込まれていくような気持ちにさせられる。

彼女と初めて出会ったのは2019年の秋のことだった。

僕の住む京都は紅葉を目当てにした観光客が世界中からやって来ていた。

市も来るべきインバウンドを十分に理解しており、数年前に中心地・河原町の歩行者道路を拡張したばかりだ。おかげで車道は片側1車線になってしまい、万年渋滞する道路になってしまったのだが。

ともかく年間何万人と来る観光客の中に彼女は含まれていた。

「すみません。この場合はどのようにして行きますか?」

やけに聞き取りやすいが引っかかるな日本語で話してきたことに衝撃を覚えた。

しかしそんな気持ちをおくびにも出さず

「ああ、清水寺ですね。それならこの道をー」

と優しい地元民らしく振る舞った。

「わかりました。ありがとうございます。」

まるで機械音声のような正確な発音のあと、彼女は髪の毛を宙に舞わせながら四条大橋を渡ろうとしていた。

普段から僕は困っている人を見かけたら声をかけていくタイプだ。だから、この女性もそんな1人だと思っていた。

なのに、なぜか彼女ともう少し話してみたくなった。なぜそんなに流暢な日本語が話せるのか、何をしに来たのか、もっと深掘りしてみたくなってしまった。

「あのっ。もしよかったらご一緒させてもらうことはできませんか?」

我ながらナンパじみたことができたものだ。

彼女は私が発した言葉の意味をよく理解できていなかった。

「すみません。意味がわかりません。」

「僕はあなたをガイドした、、ガイドします。私も清水寺に行きます!」

このような日本語を話した気がする。なにしろ一緒に行きたくて内心焦っていたから。

なんとか彼女は理解してくれたようだった。

「あなたも行きますか?同じ場所だから良いですよ」

観光客と間違われているような気もしたが、なんとか時間を確保できた。

嬉しすぎる気持ちを抑えつつ、共に歩幅を合わせつつ四条大橋を渡った。

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