第33話 寮の規則
寮の部屋に着いたミカは、自分に割り当てられた机やタンスを早速チェックしていく。
そんなミカを眺めながら、メサーライトは引っ切り無しに話しかけてくる。
一昨日から入寮したメサーライトは、余程時間を持て余していたようだ。
自分の机の引き出しから小瓶を取り出すと、ミカにも勧めてくる。
中に入っているのは飴のようだ。
「一つあげるよ。 ここの飴は結構人気なんだよ。」
「…………お返しはないよ。」
「大丈夫。 期待してないから。」
そう言って、飴を一つミカの手に乗せる。
手のひらの飴を見ると、視界に自分の着ている服が入る。
あちこちに継ぎ接ぎがあった。
メサーライトの服を見ると、なかなか上等そうな服を着ている。
メサーライトが苦笑した。
「ウチは親が商会をやってるからね。 そこそこ裕福なんだ。」
これも特に悪気はなさそうだ。
ミカと自分の恰好を比較し、嘲るような空気はない。
ただの事実として話している感じを受ける。
ミカは飴を口に放り込んで机の引き出しを開く。
引き出しは全部で4つ。
机の右側に縦に3段並び、膝の上にも広い引き出しが1つある。
鍵がかけられるのは膝の上にある引き出しだけのようだが、簡素な作りなので簡単に開けられそうだ。
(お金の管理が困るな……。 こんなのじゃアテにはならないし、今後どうするか少し考えないと。)
ニネティアナに教わった教訓がある。
こんな机の鍵に全財産を託す気にはなれなかった。
それでも、今のところはしょうがないとお金を入れた袋を入れて鍵をかける。
勿論、入れる時は自分の身体で隠し、メサーライトからは見えないようにした。
こんなのはセキュリティでも何でもない、マナーの問題だろう。
わざわざ「ここにお金入れますよ」と見せつけるのは、信用以前の話だ。
次にタンスを見る。
高さは120~130センチメートル位の子供用。
それでも、ミカからすればちょっと見上げるような大きさだ。
タンスは右側にコートを掛けられるクローゼットが付いたタイプだ。
左側の引き出しは4段あり、一番上の段には鍵がかけられる。
だが、高すぎて台を置かないと中を見ることもできない。
とりあえず、一番上の引き出しの使い道は今度考えよう。
ミカは雑嚢をクローゼットに放り込む。
整理はまた後でいいだろう。
「寮の説明は聞いた?」
メサーライトが聞いてくる。
「昼食の後、下の部屋に来るように言われた。 そういえば、メサーライトにいろいろ聞いておきなって言われたかな。」
「そっか。 じゃあ、簡単に寮の中を案内しよっか。」
ぴょんと椅子から立ち上がり、早速ドアに向かう。
余程時間を持て余していたのだろう。
時間を潰せるなら何でも喜んでやりそうだ。
ミカがついて行くと、メサーライトは階段に向かう。
「ここが男子用のフロアで、3階は女子用。 階段の向こうの部屋は、前の年に学院に来た人の部屋。 1コ先輩だね。」
そう言って、階段右に並んだ扉を指さす。
「そこがトイレ。 結構綺麗で安心したよ。」
右側に並んだ一番手前の扉はトイレらしい。
メサーライトが扉を開けてくれたので、ミカも覗いてみる。
右側に個室が6個並ぶが、小便器のような物はない。
当然、手を洗う洗面台のような物もない。
ミカは思わず、顔をしかめる。
「あれ? お気に召さない? 僕は結構安心したけど。」
この世界の衛生観念ではそんなものだろう。
こんなことを気にしていては、この世界ではやっていけない。
ノイローゼになる前に、慣れるしかない。
階段に戻ってくると、メサーライトは3階に上がる階段を指さす。
「ここから3階に上がれるけど、さっきも言った通り女子専用だからね。 命が惜しければやめておいたほうがいいよ。」
メサーライトが物騒なことを言いだした。
(命が惜しければって何だ? さっきもおばちゃんが危ないとか言ってたけど。)
女の子全員に袋叩きにされるのだろうか?
ミカには分からない感性だが、それはある意味ご褒美なのでは?と馬鹿なことを考える。
ミカがよく分からないような顔をすると、メサーライトが声を潜めて教えてくれる。
「魔法士ってのは貴重なんだ。 でも、重大な違反をするような奴はいらない。 強い力を身に着けさせようってのに、悪質な奴は国にとっても危険でしかないからね。 だから処分される。」
「…………処分?」
「僕も詳しくは知らないけどね。 そういう奴は魔法士としてではなく、別の活用方法があるって噂。 …………だって、魔法士は貴重だから。」
ミカはぞっとした。
貴重な魔法士を守るために、その中の悪質な奴を処分するというのは分からなくもない。
だが、その処分の仕方はミカの想像を遥かに超えていそうだ。
人権などない世界。一体どんな活用をされるのか。
「何でもかんでも違反した奴を処分してたら、ますます魔法士がいなくなるからね。 余程の違反者でなければそこまでの処分はされないよ。 でも、女子フロアへの侵入は別。 魔法士の男女比はほぼ半々。 女の子の学院生を守れなければ、国の魔法士が半分になっちゃう。」
ミカは感心した。
よくこんなことを知っているものだ。
「随分と詳しいね。 君、実は去年から居た? 留年?」
「あはははは、そんな訳ないでしょ。 言ったろ、そこそこ裕福だったって。」
どうやらメサーライトは、1年前に魔法学院行きが決まってから情報収集をしたらしい。
ミカとしても、情報に詳しい人が身近にいるのは助かる。
そういう意味でも、メサーライトとの同室は運が良かった。
「じゃあ、次は1階ね。」
メサーライトが階段を下りる。
1階に着くと左の広いフロアを指さす。
「ここが食堂。 朝昼晩の3回食事が出るよ。 学院が始まっても、お昼はここに食べに戻るんだって。 僕ももう何回か食べたけど、味は悪くなかったよ。 ただ、質より量を重視してるのは間違いない。 今朝も『朝からそんなに食べられない』って言ったのに山盛りにされたよ。 で、残したら怒られた。」
「あはははは。」
うんざりした様子のメサーライトが可笑しくて、つい笑ってしまった。
明日は我が身どころか、1時間後には自分にも降りかかるであろう災難を忘れて。
「寮の中で見ておくのは、後はここかな。」
メサーライトは、おばちゃんの部屋を通り過ぎて突き当りまで進む。
「ここが湯場ね。 奥が女子用、手前が男子用。 ここも入ったら一発で処分だから。 言うまでもないけど。」
確かに言われるまでもないが、ミカにはもっと気になることがある。
「湯場が男女で別れてるの?」
この世界では湯場を男女で分ける概念がないのかと思ったが、そうでもなかったらしい。
「昔は分けてなかった頃もあったみたいだね。 でも、今は女の子に配慮してるみたい。 なんせ未来の魔法士様、だからね。」
メサーライトが男子用の湯場に入る。
ミカも後に続いて入った。
「実際、今は魔法士が年々減ってるみたいだよ。 だから待遇も良くなる。 昔は、この寮に入りきれないくらい集まったこともあるって話。 それが今年は6人だからね。」
「7人じゃないかな。」
ミカが訂正した。
「そうなの?」
「そう聞いたよ。 まあ、変わってる可能性はあるけど。」
ミカが聞いたときは7人だった。
ただ、その後にまた変わっていないとも言い切れない。
メサーライトは気にせず、説明を続ける。
「湯場は基本的に夕方には使えるように準備してくれるみたい。 学院が終わったらすぐに入れるって。 湯場の掃除とかは全部使用人がやってくれる。」
「使用人?」
「食事を用意してくれるでしょ? 他にも掃除や洗濯もやってくれるんだって。」
至れり尽くせりである。
脱衣所は年季が入っているのは仕方ないが、それでも綺麗に清掃はしてくれているようだった。
湯場も安宿より広く、綺麗に見える。
基本的な構造は同じようだが、宿屋にあった蓋付きの棚はなかった。
「いくら未来の魔法士とはいえ、なんでそこまでしてくれるんだ?」
「多分、それどころじゃないんでしょ。 僕たちは。」
「それどころじゃない?」
メサーライトが暗い顔をする。
「そんなことするくらいなら、他にやって欲しいことがあるってことなんでしょ。 僕たちに。」
納得した。
生活のすべてを魔法士としての成長に注げ、ということか。
ミカもうんざりしたような顔になる。
「ま、ざっとこんなもんかな、寮内は。 校舎の方はまだ行っちゃいけないらしくてさ。 あと数日は暇との闘いだよ。」
部屋に戻って少し休むと昼になり、メサーライトと一緒に食堂に行った。
メサーライトは「味は悪くない」と評していたが、ミカからすると十分に美味しい食事だった。
ただ、量に関してはメサーライトが言うほどではなかった。
というのも、調理をしてるおばちゃんがミカを女の子と勘違いして加減をしてくれたからだ。
ミカもあえて勘違いを指摘せず、涼しい顔をしてそのまま受け取る。
山盛りのトレイを持つメサーライトの恨めしそうな視線を受け流し、そのまま黙って席についた。
味、量ともに満足する昼食が終わり、ミカはおばちゃんに言われた通り1階の部屋に来た。
どうやら最初に会ったおばちゃんはここの寮母で、他にも数人のおばちゃんが使用人として働いている。
そう教えてくれたメサーライトは、現在自室のベッドで「腹が苦しい」と唸っている。
食べてすぐ横にならない方がいいよ、とアドバイスはしたが、すぐには起き上がれそうになかった。
ドアを数回ノックして返事を待つと、すぐに返事があった。
ミカが中に入ると寮母のおばちゃんと、もう一人女の子がいた。
おそらくミカと同じ歳のその女の子は、やや赤めのブロンドが印象的だった。
というのも、手入れがされていないのかちょっとボサボサで、少し俯いているので目元があまり見えない。
顔の印象というより、首から上の印象として髪にしか意識がいかなかったのだ。
ミカと同じで継ぎ接ぎだらけのワンピースを着て、慣れない場所にすっかり縮こまっている。
「すいません。 お待たせしました。」
「ああ、大丈夫だよ。 おばちゃんもようやく手が空いたところさ。 じゃあ、この寮のことを説明するよ。」
そう言っておばちゃんは部屋の奥に二人を連れて行く。
奥にある棚には様々なサイズの服が積んであった。
「後で二人に制服とかを配るんだけど、その前におばちゃんのことを紹介しようかね。 おばちゃんはトリレンス。 ここの寮母をやってるよ。 二人がこれからの2年間を頑張っていけるように、この寮でサポートするのがおばちゃんの務め。 何かあれば、遠慮しないで何でも相談していいからね。」
トリレンスが胸を叩く。
何というか、肝っ玉母さんのような感じだ。
沢山の子供を預かるのだから、こういう人の方が向いているのだろう。
「じゃ、まずは寸法を測るかね。 ちょっとそこに真っ直ぐ立って。」
身長を測るメモリを刻んだ柱の前に順番に立たせる。
「リムリーシェちゃんが118センチメートル。 ミカ君が114センチメートルだね。」
この女の子の名前はリムリーシェというらしい。
ていうか、身長で女の子に負けてんじゃん俺!
この子が他の子と比べて大きいのか小さいのか分からないが、メサーライトよりは明らかに小さい。
(もしかして、俺ってチビなのか……?)
今まであまり考えたことがなかったが、衝撃の事実に眩暈を覚える。
(くっ、……だが、まだだ。 まだ終わらんよ! 俺はまだまだ成長期! 俺の成長はこれからだっ!)
勝手に落ち込み、勝手に奮起するが、そんなことは微塵も表には出さない。
にこやかな表情で制服を探すトリレンスを眺める。
「…………おとこのこ……。」
ぽつりと呟く声が横から聞こえた。
ミカが振り向くと、リムリーシェは驚きに大きな目を見開いていた。
(ずっと俯いてたから分からなかったけど、この子結構大きい目してる? 身なりを整えたら可愛くなるのかも?)
いかんせん、ボサボサ頭で俯いているから分かりにくいが、ちょっと勿体ない気がした。
ただ、価値観などは人それぞれ。
外見に頓着しないのも個人の自由といえば自由だ。
ミカと目が合うとリムリーシェはあっという間に顔を真っ赤にして、ますます俯いてしまった。
人と接するのが苦手なタイプなのかもしれない。
それから、寮の規則について簡単に説明を受ける。
起床時間、朝昼夕の食事の時間。湯場を使える時間。洗濯物の出し方など。
時間の設定はすべて余裕を持っているので、然程気にしないでも破らないで済みそうだ。
ただ、門限は18時。
これは正直「早いな」と思った。
学院で生活するだけなら問題はないのだろうが、ミカは自分でも少し生活費を稼ごうと考えていたので、この門限は厳しい。
だが、8歳と9歳の子供たちが生活する寮なのだ。
これでもゆとりをもってくれた方だろう。
「外泊する時は届けを出しておくこと。 おばちゃんに言ってくれれば用紙を渡すからね。」
どうやら、外泊はいいらしい。
ということは、「土の日の昼から」翌日の「陽の日の18時まで」は自由になる。
実質、まともに働けるのは1週間でこれだけになりそうだ。
それからトリレンスに案内されて、寮の横にある共有の井戸に行く。
洗濯とかを自分でする時は、ここを自由に使っていいらしい。
水が飲みたい時は食堂に水甕があるので、それを使えばいいとのこと。
寮の子供たちは水袋を使って、部屋で喉が乾いた時にそれを飲むという子がほとんどらしい。
その場合、1日1回は水を交換するように念を押された。
どうやら、あまり手入れをせず、何日も入れっぱなしの水を飲んで体調を崩す子が毎年いるのだとか。
寮の中に戻り、トリレンスが食堂や湯場、トイレなどを案内してくれる。
メサーライトに案内された場所ではあるが、ミカは黙ってついて行く。メサーライトが言わなかった注意点などがあるかもしれないからだ。
だが、特別気をつけなくてはいけないことはなさそうだった。
ただし、「女の子用の湯場と、3階には絶対に行かないように!」とミカにだけ、かなり強く念を押した。
入ったらどうなるのか聞いてみたが、「……寮を出ることになるよ。」とだけトリレンスは答えた。
あまり具体的なことを話そうとしないトリレンスの様子から察するに、メサーライトの言っていた噂が、ただの噂だけではないことが分かった。
トリレンスに案内されている間、リムリーシェは一言もしゃべらずにいた。
リムリーシェがミカと微妙に距離を取ろうとする態度に、そこはかとなくショックを受ける。
子供の素直な態度が、地味に大人にショックを与えることは稀によくある。
(お、女の子だから、男の子がちょっと恥ずかしいだけだし。 別に俺が嫌われてるって訳じゃないし。 傷ついてなんかいないんだからね!)
ちょっとだけぎくしゃくした空気のまま案内が終わり、寮母室に戻って来た。
「制服と運動着は何着いるかい?」
トリレンスが聞いてきた。
「何着も貰えるんですか?」
「制服は2着、運動着は4着くらい持ってく子が多いね。 でも、寮の中でも着るって言って、もっと持っていく子もいるよ。」
学院の授業で汚すことも多いようで、みんな余裕をもって持っていくらしい。
破れたり、小さくなって着れなくなったら、交換もしてくれると言う。
ミカは自分の服を見る。
改めて確認するまでもなく、継ぎ接ぎだらけだ。
普段着にしてもいいのなら、是非ともそうさせてもらいたい。
「制服はとりあえず2着でいいかな? 運動着は6着貰えます?」
ミカは遠慮なく言ってみる。
特に気にする風でもなく、トリレンスはミカの服を用意する。
運動着は半袖短パンに、上に着る長袖と長ズボンもあり、制服も合わせて山のような量になった。
「これ、もう持って行っちゃっていいですか?」
「ああ、いいよ。 おばちゃんの説明ももう終わったから、後は自由にしてていいよ。」
「はい、それじゃあ失礼します。 リムリーシェさんも、これからよろしくね。」
ミカが軽く挨拶をすると、リムリーシェは躊躇いがちながらこくんと頷く。
自室に戻ると、メサーライトはベッドで横になったままだった。
「おかえり~……て、すごい量だね。」
メサーライトはゆっくりと身体を起こす。
「普段着る服にしてもいいって言うから、多めに貰ってきた。」
「ああ、確かに。 ミカはそうした方がいいかもね。」
特に悪気もなく、メサーライトが言う。
彼は割と何でも正直に言うタイプなのかもしれない。
ミカは早速、制服に袖を通すことにした。
サイズが合わなかったら、交換してもらわないといけない。
こういうことは早めに済ませておいた方がいいだろう。
制服は白シャツに濃紺のローブとズボン。
袖付きのローブは前開きになっていて、紐で縛って閉めることもできる。
ローブの上から腰のあたりで縛るベルトもあり、ダボついた感じがしない。
なかなか格好いい。
というか、これを着ると途端に自分が一端の魔術師になった気がしてくる。
もしかして、これがコスプレイヤーの気持ちなのだろうか。
「お、いいじゃん。 似合ってるよ。 ……それさえ何とかすれば。」
メサーライトが指さす。
ローブの袖とズボンの裾が思いっきり余っていた。
「おばちゃん、サイズ間違ったのかな?」
「……聞いてみたら?」
たぶん違うと思うけど……、とメサーライトが小声で言う。
ミカは運動着の方にも着替えてみる。
半袖短パンの方は多少大きくても問題はなかった。
ただ、長袖と長ズボンはやはり袖と裾が余ってしまう。
仕方なく袖と裾を折り込んで、トリレンスに聞いてみることにした。
ミカが階段に行くと、リムリーシェが3階の階段を上がるところだった。
ミカと同じく、大量に制服と運動着を貰ったリムリーシェが、ふらふらと階段を上がる。
一瞬声をかけそうになったが、そこで思いとどまった。
ミカは3階に上がることができないので、手伝うことはできない。
下手に声をかければ、かえってバランスを崩して落ちかねない。
とりあえずミカは黙って見守ることにした。
リムリーシェは、何とかふらつきながらも踊り場に着いて一息つく。
そして、再び気合を入れて階段を上がって行った。
「……規則は規則だけど、これはちょっと可哀想だな。」
大きな荷物を抱えた女の子を手伝ってあげられないのは、少々思うところがなくもない。
だが「彼女たちの安全のために」というのも分かるので、素直に受け入れることにした。
だったら素直に寮を分けろよ、と思わなくもないが、それはそれで都合があるのだろう。
主に予算とか。
新たに寮を建てるとなると、建設費、維持費、人件費などなど。
いろいろと費用がかかるだろう。
寮母室に行ってみたが、トリレンスは居なかった。
食堂の方から話し声が聞こえるので覗いてみると、トリレンスが厨房のおばちゃんと談笑していた。
「あの~……。」
「あらミカ君。 どうしたの。」
ミカが声をかけると、トリレンスが入口までやって来た。
「いただいた制服とかのサイズが大きいようなんですが。」
ミカがそう言うと、トリレンスは苦笑する。
「あー、先に言っておけばよかったわねえ。 ミカ君に渡したのが一番小さいサイズなのよ。 悪いんだけど我慢してもらえる?」
どうやらこれが最小サイズのようだ。
(はい、俺チビが確定しました!)
心の中で泣いた。
(くっそー、今に見てろよ!)
自らの、今後の成長に期待するミカなのだった。




