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【コミックス第1巻発売中!】 神様なんか信じてないけど、【神の奇跡】はぶん回す ~自分勝手に魔法を増やして、異世界で無双する(予定)~ 【第五回アース・スターノベル大賞入選】  作者: リウト銃士
第5章 魔法学院高等部の”神々の遣わし者”

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第287話 近衛軍の孤立




 ピピピ……チチ……。


 小鳥の囀りが聞こえる。

 視界が白く染まっていることに気づく。


(あ……、朝だ。)


 ぼんやりとした意識で、そんなことを思う。

 ミカが瞼を開くと、見慣れない天井が目に入った。

 足を伸ばし、むくりと起きる。


「……どこだ、ここ?」


 ぽりぽりと頭を掻く。

 掛けられていた毛布をどけると、ベッドを下りた。


(あい)ててて……。」


 干し草も何も敷かれていないベッド。

 身体が強張っていた。

 部屋の中を見回すと、中央にあるテーブルに通信機が置かれていた。

 緩慢な動きで腰に触れると、あるはずの通信機が無い。

 どうやら、あの通信機はミカの物らしい。


 通信機を定位置に付けながら、窓の外に視線を向ける。

 空が白み始めていた。


「おう、目が覚めたか。」

「ヤロイバロフさん。」


 ミカが外を見ていたら、開け放たれたドアからヤロイバロフが入って来た。


「あの、ここって……。」

「7区の宿屋だ。 廃業した。 憶えてないか?」


 手掛かりを貰い、少し思い出す。

 そう言えば、慌てて移動してきたのだった。


「……なんか、いつの間にか寝ちゃったみたいで。」

「疲れてたんだろ? 昨日は大変だったみたいだしな。」


 ヤロイバロフが片眉を上げて言う。


「昨日……。」


 ミカは呟き、少しずつ記憶を繋げていく。

 ワイエッジスの壊滅、前線でのヒブジーザとの戦闘、ケルニールスの復権とクランザードの失脚。


(…………ロズリンデ。)


 危険を冒してまで、ミカに組織の動きを知らせに来てくれた。


(そうか…………あれは全部、昨日のことか。)


 ミカが頭の中を整理していると、ヤロイバロフがテーブルの上にパンや燻製肉などを置いていく。


「食べながらでいいから聞いてくれ。 坊主が休んでからのことを説明したい。」


 ヤロイバロフに言われ、ミカは頷く。

 そうして、猛烈な勢いで食べ始める。


「あー……、説明していいか? 後にしようか?」


 ミカのあまりの食べっぷりに、ヤロイバロフが気を遣う。


へふへひひへふははひ(せつめいしてください)。 もぐもぐ……。」


 ヤロイバロフは苦笑しながら、説明を始めた。


「まず、すべての王国軍に命令が下った。 王都に緊急招集だ。」


 ミカはもぐもぐと咀嚼しながら、目を瞬かせる。


ふへへ(すべて)?」

「すべてだ。」


 もぐもぐ……。


へんへんは(ぜんせんは)?」

「すべてだ。」


 ごっくん。


「…………。」


 口の中の物を飲み込み、命令の意味を考える。


「前線から王国軍を撤退させるんですか!? 二千万の群衆がまだいるのに!?」

「そういう命令だ。」


 それでは、領主軍だけで前線を支えろと言うのか?

 ミカが驚いて声を上げるが、ヤロイバロフは冷静に答える。


「幸い、坊主の作った通信機はツダーゼンが持ってる。 つまり、命令は早馬網で伝達されるって訳だ。」


 ということは、前線に伝わるまでは二日ほどのタイムラグがある。


「そう何度も潜伏先(ヤサ)を変えたくはないが、ツダーゼンは別の場所に移った。 通信機の使える場所にだ。」


 そこで、前線にいる方面軍司令官に連絡し、命令のことを先に教えたらしい。

 命令が届いても無視し、前線に留まるように、と説得するために。


「坊主に相談もしないで悪いとは思ったが、ツダーゼンには”呪われし子(イムプレカーティオー)”のことを教えることにした。 今の王は王じゃねえ。 中身が違うってな。」


 俄かには信じ難い話だろう。

 だが、他にも無茶苦茶な命令を連発しているため、少なくとも陛下が乱心しているとは認識してもらえたという。


「それと、王太子の公開処刑だが……。」


 行う場所が判明したという。

 ヤロイバロフが顔をしかめながら教えてくれた。


「教会の敷地?」

「ああ。 王都で一番広い広場は、教会にあるんだ。」


 大昔、異端審問で火刑を公開していたことがあるという。

 処刑をショーとして利用していたのは、国だけではない。

 教会にも、そうした歴史があったようだ。


「その広場を接収し、処刑台とかを急ピッチで設営中だ。 王都復旧のための資材も人員も、すべてそっちに振り分けてな。」

「なんてことを……。」


 ミカが呻くように言うと、ヤロイバロフは努めて表情を消す。


「それだけじゃねえ。」

「…………何ですか?」


 もはや、嫌な予感しかしない。


「教会が、素直に応じたと思うか?」


 ヤロイバロフがそう言うと、ミカの顔が強張った。

 嫌がるように、微かに首を振る。


「まさか……!」


 ミカがそう呟くと、ヤロイバロフが重く頷く。


「抵抗した教会の関係者が片っ端からしょっ引かれてる。 斬られた人もいる。」


 ミカはもう聞きたくないと言うように、耳を塞ぎ、項垂れる。


「オズエンドルワは、被害を少しでも抑えるために第五騎士団に合流してる。 もうすぐ戻るはずだが……。」


 以前に教えてもらったが、教会のある5区は第五騎士団の管轄じゃないはずだ。

 それでも何とかするために、オズエンドルワは奔走してくれているようだ。


 ヤロイバロフは立ち上がると、ミカの横に立つ。

 そうして、項垂れるミカの頭をがしがしと撫でた。


「無理矢理でも何でも、今はとにかく食っとけ。 …………厳しい戦いになるぞ。」


 その言葉に、ミカは歯を喰いしばりがら頷く。


 これから向かう、王城を固めているのは味方だ。

 王に乗り移った者に、騙されているだけなのだ。







■■■■■■







 ミカが休んでいる間に、王城に詰めている近衛騎士を減らすためのゲリラ戦が行われたという。

 暗殺者ギルドと盗賊ギルドが合同で進めてくれたらしいのだが、睡眠薬や痺れ薬を使い、騎士を倒しているらしい。

 夜闇に紛れながら、遠距離からの攻撃を繰り返して消耗を強いる作戦だ。


「当然、麻痺消し薬の備蓄なんかもあるだろうからな。 備蓄倉庫を先に潰した上でだ。」


 倉庫を襲撃し、回復を遅らせることで数を減らしているそうだ。


「王都の近隣に駐屯してる三つの王国軍にも、ツダーゼンの使いを出して攪乱を行っている。」


 待機や移動など、軍務大臣の名前で命令を連発。

 相反する命令を時間差で度々発行しているという。


「王や新しい大臣からの命令、その信憑性に疑義を持たせるんですね。」

「そうだ。 幸い王国軍本部は、ツダーゼンが掌握している。 新しい軍務大臣に従う振りをして、のらりくらり遅滞作戦を行わせているそうだ。」


 普通、軍司令官への命令は軍務大臣の名前で行われる。

 それが、一貫性のない命令がいくつも発せられる。

 しかも、普段はまず発行されることのない国王陛下の名前や、()()()()()()()()()()大臣名でも、だ。

 一体、どれが本当の命令なのか判断がつかなくなる。

 迷った駐屯地の軍司令官が確認の早馬を出しても、第五騎士団にもまた、ツダーゼンの名前で命令を発行してあった。


『我が軍の混乱を狙った、敵の工作が行われている可能性が高い。』

『王都に王国軍本部の者以外、軍関係者を通すな。 状況を確認し、こちらから改めて命令を発すように伝えろ。』


 この命令を徹底させるために、オズエンドルワが直接第二街壁の門に出向いて厳命して回ったという。


「上手くいけば、王城に籠る近衛軍だけを何とかすればいいという状況になる訳だ。」


 そう、ヤロイバロフが口の端を上げる。


 王国軍の介入を防げるだけでも、有難い。

 できるだけ、味方と戦う状況は減らしたかった。


 おかげで、あっちゃこっちゃで、えらいこっちゃの大混乱が進行している訳だが……。

 ミカは、()()とした顔になり、後始末のことを考えることを拒否した。







 そうして、夜が明けたために撤収してきたユースバルト、エフモントが顔を出した。

 暗殺者ギルド、盗賊ギルドは多少の被害を出しながらも、それでも全員が無事に引き上げたようだ。


「王城に登るってのはやったことなかったが、中々面白かったな。」


 そう、デリバリーが笑った。

 何でも身軽な者は上層階から襲撃し、薬で近衛騎士たちを一時制圧する大活躍だったらしい。

 すぐに応援が駆けつけて来たようだが。


「…………()()()に励んだ人はいませんよね? エフモントさん。」


 ミカがじとっとした目で見ると、デリバリーが目を逸らした。

 ミカは盛大に溜息をつく。


「カトラリーや燭台くらいならいいですけど、国宝を盗んでたら後でお仕置きですよ?」

「さすがに宝物庫なんか襲わねえよ。 そこは安心してくれ。」

印璽(いんじ)とかもだめですからね。」

「分かってるって。 たく、信用ねえなあ。」


 そんな、ミカとデリバリーのやり取りを見て、ユースバルトが苦笑する。


「まあ、何かあれば言ってください。 暗殺者ギルド(うち)で締め上げますから。」

「おいおい、本当に何もしてねえって。 ちょっと小銭をちょろまかしてきただけだって。」

「やっぱり、やってんじゃん。」


 ミカは呆れたような顔になる。

 だが、これで三割近くはまともには戦えないようになっただろう、という話だった。


「時間があれば、このまま継続して削っていきたいところですね。」

「それでもいいんじゃねーか。 王太子には諦めてもらって。」

「それはちょっと…………。 混乱を治めるには、やっぱり王太子がいた方がいいでしょう。 王国軍もいつまでも抑えてはいられないでしょうし。」

「まあ、それはそうだな。」


 ミカはユースバルトとデリバリーを見る。


「ありがとうございました。 ユースバルトさん。 エフモントさん。 後は任せてください。」

「ええ、頼みましたよ。 ”解呪師(ディスペラー)”。」

「こっちもやべえ橋渡ってんだ。 まじ頼んだぜ。」


 ミカは二人に、しっかりと頷いた。







■■■■■■







 ミカはオズエンドルワと合流し、ヤロイバロフと三人で王城に向かうことにした。

 人気の無い裏路地に、三人で固まる。


「オズエンドルワさん、本当に休まなくて大丈夫なんですか?」


 夜中も王都中を奔走していたオズエンドルワに確認するが、オズエンドルワはしっかりと頷く。


「ミカ君が休んでから、私も少し休ませてもらった。 夜中にも少し休んでいるしね。 ずっと動きっ放しだった訳じゃないから、そんなに心配しなくても大丈夫だ。」


 確かに、表情を見る限り、そこまで疲労が溜まっているようではないが。

 オズエンドルワを心配するミカを、ヤロイバロフががしがしと撫でる。


オズエンドルワ(こいつ)は殺したって死にやしねえよ。 それより、本当に二人も抱えて飛べるのか?」


 王都襲撃の時に、一度飛んだことのあるヤロイバロフだが、少々不安があるようだ。


「これまでの最大人数は十人ですかね。 まあ、ごく短時間でしたけど。」


 そんな話をしながら、ヤロイバロフが魔法具の袋から”銅系希少金属(オリハルコン)”の斧槍(ハルバード)を取り出す。

 オズエンドルワも同じように”銅系希少金属(オリハルコン)”の(ソード)を取り出した。

 そして、ミカとオズエンドルワが、ヤロイバロフをじとっとした目で見る。


「…………おかしくないですか、それ。」

「そうだな。」


 ヤロイバロフの斧槍(ハルバード)は三メートルを優に超えている。

 そして、市販の魔法具の袋のサイズは、二メートルまでである。

 明らかに違法改造の魔法具だった。


「ミカ君、きっとヤロイバロフ(こいつ)も奴らの手先だ。 成敗しよう。」

「そうですね。」

「待て待て待てっ、ちょっと待てっ! た、確かにこの袋は市販品じゃねえけどっ!」

「白状しましたね。」


 ミカが腰に佩いた聖剣ナマクラ様に手をかけると、ヤロイバロフが本気で焦った表情になる。


「つ、作ってもらったんだよっ!」

「誰に?」

「………………。」


 ヤロイバロフが、つつつ……と視線を逸らす。

 オズエンドルワが溜息をつく。


「やはり、先にやってしまおう。」

「そうですね。」


 ヤロイバロフの顔が引き攣る。

 ミカとオズエンドルワが腰を落として構えるが、ヤロイバロフはそれでも口をつぐんだ。

 息が止まるような、張り詰めた緊張感。

 だが、すぐにミカが息をつく。


「はぁ……その様子じゃ、アーデルリーゼさんかノッツェミューラさんってとこですか。」

「まあ、そうだろうな。」

「ぶはあっ!」


 呼吸を止めていたらしいヤロイバロフが、音を立てて息をした。


「……おめえら、心臓に悪りぃぜ!」

「そんな紛らわしい(もの)を持ってるからだ。」


 本気で寿命が縮まったらしいヤロイバロフに、オズエンドルワが言う。


「しょうがねえだろ! 普通のじゃ入らないんだからよぉ。」

「でも、改造はできないって前に聞きましたけど。」


 ミカがそう言うと、ヤロイバロフが渋い顔になり、黙る。

 おそらく、情報を漏らせないのだろう。

 そういう約束の下、作ってもらったのだと推測する。


 まあ、確かにそんな馬鹿でかい斧槍(ハルバード)を持ち歩くのは大変だろう。

 しかし、魔法具の袋って、軍事機密のはずじゃ……。


「たくっ……人騒がせなんだから。」


 ミカはラペリングロープを魔法具の袋から取り出す。

 ラペリングロープの真ん中あたりをオズエンドルワに掴まらせ、端の方をヤロイバロフに持たせる。


「しっかり掴まっててくださいね。」


 ミカがそう言うと、二人が真剣な表情で頷いた。


「それじゃ、いきますよ。 ”吸収翼(アブソーブ・ウィング)”。 ”突風(ブラスト)”。」


 ミカは四点の”突風(ブラスト)”を斜め下に向けて噴射する。

 オズエンドルワたちに”突風(ブラスト)”を浴びせないためだ。

 ミカはゆっくり上昇していき、徐々に加速する。

 そうして、一気に上空まで舞い上がった。


「ぐっ!?」

「くぅぅ!」


 ぐんぐん速度を上げて上昇し、ヤロイバロフとオズエンドルワが呻く。

 とりあえず千メートルほどにまで上がり、速度を落とした。

 ここまで来れば、地上から視認されることはほぼないだろう。


 そこから一気に下りていく。

 とは言っても、自由落下ではない。

 四点の”突風(ブラスト)”を噴射し、落下速度と位置を調整する。


 ミカたちが目指すのは王城の入り口だ。

 待ち構えている近衛騎士たちの前に、あえて下りる。


 おそらく、王は謁見の間か居室にいるだろう。

 上空に上がったのだから、直接乗り込むことは勿論可能だ。

 だが、その方法は選ばなかった。

 手加減ができなくなるからだ。


 ”呪われし子(イムプレカーティオー)”との戦闘。

 これまで戦った”呪われし子(イムプレカーティオー)”は三人だ。


 合成魔獣(キメラ)を放った者は、ミカの”風千刃(サウザンドエッジ)”や”突風(ブラスト)”のようなものを使った。

 浅黒い女は巨岩を降り注がせた。

 ヒブジーザは【爆炎】のようなものを使った。

 そんな戦いに、近衛騎士たちを巻き込んだらどうなる?


 無駄な足掻きかもしれないが、なるべく先に叩き、戦闘不能にしておく。

 そのために派手に暴れ、近衛騎士たちをおびき寄せるのだ。

 多少の怪我はさせてしまうだろうが、命にかかわるようなことはないように。


 上空に上がったのは、第一街区を守る騎士団と衝突しないためだ。

 第一街区を守る騎士団は第五騎士団ではないため、オズエンドルワが命令できない。

 王につくのか、王太子や軍務大臣の側につくのか分からない。

 説得できるかもしれないが、失敗すれば丸ごと叩き伏せる必要がある。

 そうした無用の衝突を避けるために、空から王城に乗り込むことにしたのだ。







 城壁の内側、王城の前には広いスペースがある。

 馬車が自由に走り回れるだけの広さがあり、そこには近衛騎士たちが二百人くらい居た。


「ど真ん中に行きますよ!」


 ミカが高度を下げながらそう言うと、ヤロイバロフとオズエンドルワが頷く。

 そうして、高度が二十メートル以下になった所で、ヤロイバロフが身体を振り子のように振って飛び降りた。


「どりゃああああっ、と!」


 真下で待ち構えていた近衛騎士たちからは、大きく外れた位置に着地した。

 そうして、ぐるんと斧槍(ハルバード)を回すと、猛然と近衛騎士たちに突撃した。

 ヤロイバロフは斧槍(ハルバード)の刃を当てないように、気をつけながら近衛騎士を吹っ飛ばす。


 オズエンドルワも同じように、大きく横に飛び、着地予想地点を大きくズラした。

 オズエンドルワは剣の腹でぶっ叩くようにして、やはり近衛騎士を吹っ飛ばしていた。


 ミカはラペリングロープを手放すと、城壁の門に向かう。

 門を固めていた近衛騎士たちが剣を向けるが、ミカは空中に留まったまま。


「”鉄壁(アイアンウォール)”。」


 大量の魔力を、門の内側の地面に飛ばす。


 ドッシャアーーーーッ!


 地面からせり上がった”鉄壁(アイアンウォール)”が、門を塞ぐ。

 これで、大規模の応援は無くなる。

 そのまま城壁沿いに飛び、他の門も同じ要領で塞いでいく。


 城壁には正門として、南に大きな門がある。

 そして、北と東西にも小さい門がある。

 ここを塞げば、王城にいる騎士以外は考える必要が無くなるという訳だ。


 ミカがすべての城門を塞いで戻ってくると、近衛騎士たちの半分が伸びていた。

 ミカはナマクラ様を手に、近衛騎士たちの中に潜り込む。


「だっしゃぁぁらあああああぁぁああっ!」


 ミカは、騎士たちの剣を持つ手を、ナマクラ様で軽く打つ。

 軽くと言っても、それは強化四十倍のミカ基準である。


「「「ぐあっ!?」」」

「「「ぎゃっ!」」」


 利き手の手の甲や手首を軽~く骨折させられた騎士たちが、剣を落とす。

 それでも、利き手と逆の手で剣を持って、挑んでくる騎士たちがいた。

 ミカは眉を寄せ、やや困った顔になる。


 ちらりと、ヤロイバロフやオズエンドルワを見ると、二人は器用に騎士たちの意識を刈り取ってみせる。


(脳震盪を起こさせればいいのか。)


 所謂、顎先を狙う、という方法がメジャーだろう。

 しかし、動いている相手にやるのは難度が高いし、何より強化されたミカの力でやるのは少々危険ではある。


(慎重に……慎重に。)


 ミカは迫ってきた騎士の剣を躱し、ナマクラ様で顎先を撫でる。

 すると、騎士がその場で崩れ落ちた。


「おお、イケるじゃん!」


 ミカが喜びの声を上げると、ヤロイバロフとオズエンドルワが「あちゃー。」という顔をしていた。

 何で?


 そうして、三人で瞬く間に制圧した。

 門を守っていた騎士たちもやって来たが、順次倒した。


「さて、それでは中に入りましょうか。」

「ああ。」

「慎重にな。 いきなり”呪われし子(イムプレカーティオー)”が現れても不思議はないのだから。」


 三人で頷き合い、王城の中に入る。

 エントランスの正面に階段があるが、その前には盾で防御陣形を整えた近衛騎士たちが固まっていた。


「放てええええっ!」


 指揮官が号令を発すると、数十本の弓矢が飛んできた。


「うひぃ!?」


 ミカは、ぴゅーっとヤロイバロフの後ろに隠れた。

 ヤロイバロフは器用に斧槍(ハルバード)をぐるぐる回し、矢を叩き落す。


「……坊主よぉ。 おめえ、自分で躱せるだろうが。」


 自分を盾にするミカに、ヤロイバロフが呆れたように呟く。


「だから躱したじゃないですか。」


 ミカの中で、今の行動は柱の陰に身を隠すことと、ほぼ同義である。

 そんなやり取りをしつつ、ミカは"低重力(ロウ・グラビティ)"を使い、三次元機動で近衛騎士たちを翻弄する。


「「「ぐはあっ!?」」」


 階段前を固めていた騎士たちは、ミカにいきなり背後に回られ、正面からはヤロイバロフとオズエンドルワという挟撃を喰らうことになった。

 ミカたちはエントランスの制圧が終わると、二階に上がる。


 だが、ミカは二階に上がり切る直前で、その足を止めてしまった。

 階段の途中から見えた、廊下の先。


「…………やはり、来てしまったか。 ミカ君。」


 そこには、クレイリアの兄。

 イクセル・レーヴタインが待ち構えていたのだった。





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― 新着の感想 ―
[一言] 自身の辺境領地を壊滅させる命令出した国王についたのか?
[一言] 前線から完全撤退の命令を出した時点で王として失格だからねぇ、中身がどうであっても
感想一覧
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