表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミックス第1巻発売中!】 神様なんか信じてないけど、【神の奇跡】はぶん回す ~自分勝手に魔法を増やして、異世界で無双する(予定)~ 【第五回アース・スターノベル大賞入選】  作者: リウト銃士
第5章 魔法学院高等部の”神々の遣わし者”

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

272/313

第271話 摂政と宰相との話し合い




 土の3の月、4の週の風の日。

 国境の防護壁。

 ミカは防護壁の増設を行っていた。

 帝国の狙いが屍に屍を重ねて防護壁を乗り越えることなら、単純に防護壁を高くすれば防げる。

 ただ、あまり巨大な壁を作ると、倒れる危険もある。

 倒れないように厚みを持たせると、質量が途轍もなく大きくなってしまう。

 それでも作れなくはないのだが、一つひとつを作るのに時間がかかり過ぎる。

 三十キロメートルにもなる防護壁を、すべて増強しようとすると、それなりに効率も考えなくてはならなかった。


 あまり複雑な形状では作りにくい。

 やはり、手っ取り早いのは立方体。

 正六面体に近い形状の物が作りやすい。


 現在ある防護壁から、なるべく隙間を作らずに五メートルの立方体を作る。

 そして、更にその上にもう一つ同じ物を作る。

 これで高さ十メートルの壁の出来上がり。

 隣り合う石同士の隙間もなくすため、上から見ると若干(いびつ)な石を並べていく。


 一回で高さ十メートル、幅と奥行きが五メートルの立方体を作るよりも、こうして分けた方が作りやすかった。

 まあ、あくまで比較で作りやすいというだけで、滅茶苦茶大変なことには変わりないのだけれど。

 とにかく、これを二千万人を超えるという群衆が押し寄せる前に、なんとしても三十キロメートル分作らなくてはならない。


 ミカは宙に浮きながら、慎重に巨大な石を重ねた。

 そうして額の汗を雑に拭うと、これまで作ってきた分を眺める。


「ようやく、半分くらいか……?」


 すでに作業に取り掛かって一週間。

 一日に、三キロメートル弱くらいの進み具合だろうか。

 さすがにこの大きさの石を立て続けに作るのは、集中力を保つのが大変だった。

 リッシュ村を囲う二メートル強の立方体なんか目じゃないくらいの質量だ。

 あれでも大変だったのに、それを遥かに超える質量を、ハイペースで作り続けていた。


 それでも、泣き言を言ってる暇があるなら一つでも多く作らなくてはならない。

 このペースで作れれば、今月中には完成させられそうだ。


 群衆の到達予想は来月の上旬。

 間に合いそうだとは思うが、何があるか分からない。

 一日でも早く完成させる必要があった。







 ミカが、レブランテスから群衆が押し寄せるという話を聞いたのが一週間前。

 そして、その翌日に王太子から呼び出しを受けた。


「摂政、ですか?」


 ミカは事態が飲み込めず、思わず聞き返す。


 いつものムンバーロ子爵の屋敷ではなく、王城に呼び出され「何事?」と思っていたら、王太子からそんな話を聞かされた。

 そして、呼び出された部屋には王太子だけでなく、なぜか宰相までいた。

 何だか、よく分からんことになっているな。


「…………陛下に、何かありましたか?」


 ミカは眉を寄せて尋ねる。


 ついに死んだか?

 まあ、高齢だったからね。

 心の底から、ご冥福をお祈りいたします。

 頼むから、化けて出てくるなよ。

 退治しちまうぞ。


「話が早くて助かるが、なぜ其方は『摂政』を知っている? そう頻繁に置かれる職ではないのだがな。」


 摂政と聞いて、すぐに国王の異変に思い至ったミカを、王太子が訝しむ。


「前に何かで読んだ憶えがあるので。」


 ということにしておく。

 いや、実際に本か何かで読んだ知識だな、これは。

 この世界の本ではないけれど。


「まあ、良い。 詳しいことは言えないが、陛下の代わりに私が政務にあたることになった。 そのことをまず伝えておこう。」

「分かりました。」


 どうやら、この部屋は摂政の執務室ということらしい。

 すんなり飲み込むミカを見て、宰相が苦笑する。


「……本当に、この子はどういった子なんだ? 一平民に、そんな簡単に理解できる話ではないはずだが。」

「そこを考えても仕方なかろう。 今は、手間が省けたとでも思っておく方が賢明だ。」


 疑問を持つ宰相に、王太子……摂政……クランザードがアドバイスをする。

 クランザードが、ミカと宰相を見て表情を引き締めた。


「其方も一度会っているな。 宰相のデドデリクだ。 これからしばらくは、摂政、宰相体制で事にあたることになる。」


 クランザードがそう言うと、デドデリクがミカに話しかける。


「君からすれば、私は国王とともに君を罰しようとした側だ。 いきなり信用しろと言っても、できるものではないだろう。」


 そう、真剣な表情で言う。

 どうやらデドデリクは、客観的にこれまでの対応がどう見えるかは理解しているらしい。


「私は立場上、国王の意を叶えることを至上とする。 私個人の考えは、そこに入り込む余地はなかった。」


 国王の命令を、全力で実行することが宰相の役割。

 国王の望みを叶えるために、現実の問題をどうするか。

 そこを考えるのが宰相の役目だという。


「それってどうなんです? 国王が間違ってても、それを実行するってことですよね?」


 そう、クランザードに向けて言ってみる。

 クランザードが苦笑した。


「要は、国王が求める役割がそうだった、という事だ。 意見を求められれば当然、良いと思う意見を出す。 それが宰相というものだ。」

「間違っていても諫めないんですか?」


 ミカが聞き返すと、デドデリクが首を振る。


「無論、諫めることもある。 ただ、それを()れるかどうかは国王次第だ。」


 言葉を尽くして説得しても、受け入れないことはある。

 そもそも諫言を聞こうともしない、ということだってあるだろう。

 そして、国王から命じられれば、それを実行するのが宰相の役目。

 たとえ、間違っていると思っていても。

 その中で最善を尽くす、ということらしい。


 ミカは溜息をつき、デドデリクを見る。


「それでは、貴方自身はどう思っているんですか。 僕を。」


 試しにそう聞いてみると、デドデリクはクランザードに視線を向ける。

 クランザードが頷くのを確認してから、デドデリクは口を開く。


「君をどう思っているかを端的に言えば、有用な戦力だと思っている。 王国のために是非有効活用したい。」


 あっさりと言い切るデドデリクに、ミカはじと目になってしまう。

 えらくズバッと言うな。

 ただの兵器扱いかよ。

 まあ、()()()扱いよりはマシだが。


「魔獣襲撃の際には多くの民を救い、先の戦いでは多くの兵を救っている。 そのことを感謝しているし、有難いとも思っている。」


 デドデリクは、とても真摯に言った。

 その目に、嘘はなさそうだった。


「なので、可能な限り王国のために使いたい。 骨の髄までな。」


 曇りのない笑顔で言い放つその言い草に、ミカは顔を引き攣らせる。

 徹底的に利用し、使い潰す気まんまんだった。

 正直過ぎる意見に、クランザードも苦笑している。


(ま、まあ…………為政者として当然の意見ではあるか。)


 下手に隠されるよりはマシだろうか?

 下心が透けて見えるよりは…………。


「デドデリクの言い方はあれだが、基本的なスタンスは私と同じということだな。」


 クランザードが、補足する。

 それ、自分も利用する気しかありません、って言ってるだけだぞ?


「其方の力を、王国のために役立てて欲しい。 勿論、王国は相応の見返りを用意する。」


 お互い出せるものを出す。

 ギブアンドテイク。

 一方的に、義務だ何だと負わせるだけ、というよりはマシと言えるが……。


 ミカはにっこりと微笑む。


「兵役免除を求めます。」

「できると思うか?」


 クランザードに、呆れ顔で却下された。

 まあ、クランザードたちがもっとも求めるものを禁じるってことだからな、これは。

 だが……。


「わざわざ義務を負わせなくたって、実際に協力してるじゃないですか。 自主的に、二回も戦場に出てるんですよ? 王都での不正規戦闘にも自ら進んで参加してます。」

「そ、それは確かにそうだが…………。」


 ミカの望みの中に、王国の安寧も入っている。

 より厳密に言うと、大切な人たちが安心して暮らしていける環境を望んでいるのだ。

 そのためなら、自ら戦場に出ることも厭わない。

 むしろ、『義務だから』『命令だから行け』なんて言われると、そちらの方が行く気が失せる。


 返答に困るクランザードを見て、デドデリクが割り込む。


「今日、すぐに希望を叶えることは難しいだろう。 よく話し合った上で、双方の納得する条件を探るべきだ。 だが、残念ながら今はその時間がない。」


 お互い、ここで下手に条件を提示することも、飲むこともできない。

 抜け道でもあったら大変だ。

 なので、時間ができてから、ゆっくり話し合えばいいじゃないかという棚上げ案だった。

 所謂、問題の先送り。


 ミカは溜息をつき、クランザードはあからさまにホッとしていた。

 デドデリクが続ける。


「まず、今日君に来てもらったのは、君への処分が正式に無しとなったことを伝えるためだ。 我々は君に誠意ある対応をしようとしていると、そのことを理解してもらいたい。」


 しかし、デドデリクのその言い分に、ミカは軽くイラッとする。


(自分たちから難癖をつけて、難癖を引っ込めたから誠意がある? 宰相(こいつ)、実はアホか?)


 ミカの考えていることが分かったのか、クランザードがやや渋い顔になった。


「それと、グローノワに動きがあったからだ。 こちらの予想もしなかった事態になり、君の協力が必要だと判断した。」

「もしかして、群衆が押し寄せるって話ですか? 二千五百万の。」


 ミカは内心のイラ立ちを一旦引っ込め、確認した。

 だが、ミカの言葉にクランザードとデドデリクが驚いた顔になる。


「其方は、どうやってその情報を……?」


 どこから情報が漏洩(リーク)したのか、訝しむ顔だ。


「僕の情報源(ネタもと)は別にいいでしょう。 それで?」


 情報屋ギルドがどうやって情報を入手したのかは、ミカにも分からない。

 国の情報をキャッチしたのか、自分たちで帝国から入手してきたのか。


 ミカが続きを促すと、クランザードが複雑な表情で話を引き継ぐ。


「元々群衆が押し寄せてくるという予想はされていたのだ。 規模の予想は桁が一つ少なかったがな。 しかし、それに対処するために王国軍、領主軍を合わせて七十五万ほどの兵がレーヴタイン侯爵領に集まっている。」


 教皇帝の『聖戦』の話は、王都内でも噂が広がっている。

 国もかなり前から帝国の動き自体は掴んでおり、扇動された民衆がダブランドル平原にやって来ると予想はしていた。


「しかし、当初予想されていた規模を遥かに超えることとなり、計画を変更せざるを得ない。」

「ええ、それは分かります。」


 クランザードは、国の考えている対応をミカに伝えた。


 まず、【神の怒り】はようやく解禁になるという。

 ミカの処罰無しという決定は、この方針転換を根拠としたものだろう。

 ただし、【神の怒り】を扱える者はそう多くないらしい。

 隠れて研究を行っていた都合上、どうしても小規模でこそこそやらざるを得なかったという事情のようだ。


 そして、サーベンジールの街から、領民をできる限り避難させる。

 ただ、これには応じない者も多いだろうと考えていた。

 国としては、それはそれで構わないというスタンスだという。


「あくまで群衆が止められなかった場合を想定し、避難させるだけだ。 被害を減らすために。 ただ……困ったことに、サーベンジールの民が全員避難しても、受け皿がない。 そのため、強制的に避難させるようなことまでは求めない。」

「まあ、それは仕方ないでしょうね。」


 避難先で餓死して、サーベンジールは無事だった、なんてことだってあり得る。

 そのため、避難はそれぞれの判断に任せるそうだ。

 ただ、すでに二回も帝国の侵攻があった。

 自主的に避難する者は、ある程度避難しているだろう。


(……レーヴタイン侯爵領の税収は、今年は散々だろうな。 財政がもつのか?)


 税収減と戦費のダブルパンチである。

 まあ、それはミカの知ったこっちゃないが。


「それと、国中の王国軍を更にレーヴタイン侯爵領に向けて動かす。」


 すでにある程度送っていたが、追加で投入する方針らしい。


「ただし、これはおそらく群衆の到着には間に合わないだろう。」


 すでに、ギリギリに近いところまで、各地に駐屯する王国軍から兵を出していた。

 そこから更に絞り出すため、国内の治安悪化も目に見えている。

 それでも、群衆を止めなければ王国そのものが潰れかねない。

 国としても、大きく身を削りながらの戦いになるという。


「おそらく、追加の兵は五十万を出せるかどうか、といった具合だ。 昨夜から、軍務省が徹夜で計画を練って、指示を飛ばしていることだろう。」


 国内の治安を何とか保とうと、なるべく影響を最小限にするために知恵を絞っているらしい。

 もっとも、そんなのはすでに出し切ってしまった後なのだが。

 そうして絞り出した兵が、現在レーヴタイン侯爵領に送り込まれた兵であり、これから絞り出す兵はそのまま人手不足に直結する。


 現在レーヴタイン侯爵領に駐屯している王国軍には、堀や盛り土、逆茂木を使った簡易拠点を防護壁の外に作らせているところだという。

 これも無駄にするつもりはないが、一旦中断して、防護壁の手前にも作っていく方向に作戦をシフトするそうだ。


「これまでは防護壁の向こうである程度の数を削り、防護壁を使った防衛戦術で戦おうと考えていた。 だが、ここまで数が多いと、防護壁は破られるだろう。」


 防護壁の内側にも、遅滞作戦のための準備が必要になると、方針を転換したらしい。

 少しでも長く足止めできれば、追加で投入する兵も間に合うとの算段だからだ。


「それと、魔法士はあるだけ出す。」


 クランザードの言葉に、ミカは一瞬どきりとした。

 国内のほとんどの魔法士を、この一戦に投入するという。

 例外は、王宮や宮廷魔法院に所属する魔法士。

 彼らは最後の予備戦力として残す予定だ。


「王国軍、領主軍、退役した魔法士も合わせると四千弱の魔法士が軍に登録されている。 予備役登録されている魔法士にも、召集をかけることが決定している。」


 予備役動員令を発令することが、すでに決定しているとのことだった。

 という事は、ケーリャのパーティのリーダー、サロムラッサは招集がかけられることになるようだ。


 ミカは思わず俯く。

 そして、重苦しい表情で顔を上げると、クランザードを真っ直ぐに見た。


「魔法学院の学院生の扱いは?」


 高等部の一年二年は予備役だ。

 レーヴタイン組の皆やクレイリアまで、戦場に狩り出されるのだろうか。


「……今は、そこまでは考えていない。 だが、レーヴタイン侯爵領が落ちればそんな甘いことも言ってられん。」


 ミカは目を閉じ、小さく頷く。

 少しだけ、ホッとしている自分がいる。


(ここで食い止めれば、皆が戦場に狩り出されないで済む。)


 元々そのつもりだったが、勝たなくてはならない理由が一つ増えてしまった。


 ミカが目を閉じたまま考え込むと、クランザードは黙って待った。

 ミカはゆっくりと目を開き、一つ提案する。


「防護壁を増強します。 よろしいですか?」

「増強?」


 あと、数週間で群衆が押し寄せる。

 今から何ができるのかと訝しむ顔だ。


 一カ所をどれだけ増強しようと、そこを避けられては無駄になる。

 何をするつもりなのか、見当がつかないといった感じだった。


「防護壁の高さを上げます。 とりあえず今の倍まで。」

「倍だと!?」

「何を言って……っ!?」


 帝国の邪魔があったとはいえ、防護壁の建設には十六年かかっている。

 その防護壁を、たった数週間で倍の高さにするなど、到底不可能なことだ。


「部分的に高くしても効果は薄いぞ?」

「ええ、ですから全体の高さを倍にします。」

「は…………あ……?」


 ミカの提案は、あまりにも意味が分からない。

 クランザードが、顔を引き攣らせて固まる。

 同じように驚いていたデドデリクだが、すぐに真剣な表情になった。


「……そんなことが、本当に可能なのか?」

「何とかします。」


 としか言えん。

 元の世界で、無茶なスケジュールの仕事を振られた時、よく口にしていたセリフだった。

 とてもではないが「できます」なんて断言できないような時に、よく用いていた返事である。


(『必須要件』を満たすだけの、突貫工事とかよくやったなあ。)


 要件さえ満たしてりゃいいんだろ!と、継ぎ接ぎだらけのプログラムを書いたものだ。

 我ながらひどいプログラム(コード)だ、と思いながら。

 懐かしいな。


「話は以上ですか?」


 ミカがそう聞くと、デドデリクが頷く。

 クランザードに視線を向けると、分かっているのか分かっていないのか、呆気に取られた様子でクランザードが頷いた。


「それでは、時間が惜しいのでこれで失礼します。」


 ミカはすぐに立ち上がると、王城を出た。


 三十キロメートルの防護壁の増強。

 手段も含めて、いろいろ考える必要がある。

 何より、レーヴタイン侯爵に無断でやる訳にもいかない。

 話を通し、方法を考え、ひたすら作る。


「それでも、やらないとな。」


 ミカは、レブランテスに話を通すため、まずは情報屋ギルドの窓口に会いに行くのだった。







 そうして、防護壁の増強に着手。

 以前に防護壁の材料を提供した時に相談した、領主軍の工兵のリーダー、大工の棟梁みたいなおじさんと話し合う。


 ミカが防護壁に着いた時には、すでに王国軍には軍務大臣から話が伝わっており、王国軍経由で領主軍にも話が通っていた。

 通信機を設置したおかげで、話が非常にスムーズに進んだ。


「…………こんな感じなら、僕も手間が減るので手っ取り早いんですが。」

「オーケー。 それで充分だ。 御使い様はじゃんじゃん石を作ってくれ。 矢や投石を防ぐのは、こっちで作ろう。」


 さすがに三十キロメートル分も作れないだろうから、持ち運ぶような形にするしかなさそうだ。

 時間に余裕があれば石壁の上に身を隠す壁を作ってもいいのだけど、今は最優先で石壁の方を作らなくてはならない。


 すでにある防護壁の上から梯子をかけて、ミカの作った石壁の上に上がる。

 そこで盾を並べて弓を射ったり、魔法士が【神の奇跡】で攻撃。

 防護壁での戦い方は、そんな感じに決まった。


 元々防護壁で同じような戦い方をする予定だったのだ。

 それが、一段高い場所からやることになった。


 完成した場所を使い、即席で戦い方の訓練もしてもらう。

 数週間の訓練期間で、部隊の展開の仕方などに慣れてもらうしかない。


 時間に余裕があれば、何カ所か階段も作ることにした。

 やはり梯子では壊れやすいので、しっかりとした階段もあった方がいいだろう。







 そんな感じで、あとはひたすら石を作り続ける。

 作っては地面に置き、作っては石の上に重ねる。

 防護壁には門があるが、それもミカの作る石で塞ぐことになった。


 まずは防護壁で戦い、群衆の数を削りに削る。

 もしこの防護壁も破られたら、その場所に部隊を展開して、なんとか侵入者を押し留めてもらう。

 今回は一度穴を開けられても、ミカが駆け付ければ再度塞ぐことができるのだ。

 展開した部隊が防護壁の内側で押さえている間に、再び石を配置すれば侵入者の流入は止まる。

 多少侵入されようと、流入を止めれば兵士たちでも十分対応は可能だ。

 ミカによる修復が間に合わないような状況になるまで、可能な限り防護壁で戦い、数を削ろうという作戦だった。


 また、通信指令室の設置、通信機のアンテナの敷設を王国軍にやってもらっている。

 これは、防護壁の三キロメートルごとに通信機を設置し、被害状況を通信指令室に知らせるためだ。

 各所から通信指令室に連絡が行き、通信指令室からミカに防護壁の修復の依頼が入る。

 複数個所が壊された場合でも、距離の近い場所、被害が大きく急いで修復すべき場所などを考慮しながら、ミカに指示をする。


 とにかく、王国(こちら)の被害を減らすには、徹底して防護壁を利用するのが一番だ。

 一番被害を減らすなら、ミカが皆殺しにしてくるというのも、一つの方法だろう。

 だが、ミカが一人で二千万人の群衆を殺して終わりなど、到底やるつもりはない。

 国がミカを利用するというなら、ミカも国を利用する。


 ともに戦おうというなら手を結ぶこともできるが、自分たちは何もせずにミカにだけ戦えなどと言われたら、「どっちと戦おうかな?」と少々迷いが生じてしまうだろう。

 幸い、王太子はミカのそうした気性をよく理解しているようで、ミカが()()()とくるようなことは命じてこない。


 そんなことを考えながら、せっせと石を作っていると、伝令の馬が駆けてくるのが見えた。

 どうやら、ミカに用のある伝令のようだ。

 こちらに向かって手を振っている。


「御使い様ぁーーっ!」


 まだ多少距離があるが、ミカを呼んでいるのが聞こえた。

 ミカは首を傾げ、伝令に向かって飛んで行く。


「御使い様っ!」

「どうしました?」


 その伝令は王国軍の騎士だった。


「通信が入っています。 至急、王国軍駐屯地までお越しください。」

「通信? 駐屯地……?」


 王国軍の駐屯地にいる人から通信が入ったのなら、防護壁の通信機に行けば用は済む。

 わざわざ王国軍の駐屯地に行かなければならないということは、軍務大臣との直通(ホットライン)の方か?

 そして、この伝令は多分、防護壁の通信番だろう。

 おそらく軍務大臣から王国軍駐屯地、王国軍駐屯地から防護壁の通信番と伝わったのだと思われる。


「軍務大臣からですか?」


 そう尋ねるが、通信の相手は軍務大臣ではないようだ。

 伝令の騎士は首を振った。


「いえ、軍務大臣ではありません。 チレンスタという人からです。」

「…………は?」


 なぜか、冒険者ギルドのチレンスタが軍の通信機を使い、ミカに連絡をしてきたのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 主人公も他の登場人物も稚拙というかなんというか。 前世の知識とかプログラマーであったこととかまるでいきてないし、登場人物たちのいろんな対応策も微妙だし、国王は謎に倒れるし。 侯爵に対する恨み…
[一言] 群衆、人口密度もやばそうだし、流行り病とかに弱そうだよなぁ…(邪悪)
[気になる点] どんどん主人公に共感出来なくなってくる 成長を楽しみにしていたのに残念
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ