第240話 ミカの失踪
ブライコスロア子爵領、山中。
ミカは空を仰ぎ、微動だにせず立っていた。
ミカが笑うことをやめてしばらく経つ。
それでも、ミカは動こうとせず、ただただ空を見上げていた。
ミカの周囲だけでも、数十の死体が散らばっている。
この拓けた場所全体では、数百にもなる死体が転がっていた。
そのすべてが、ミカの手により命を奪い取られた。
視界のすべてが血に染まるのではないかと思うほどの、夥しい数の死体と血。
そんな中に一人佇むミカを、キスティルは茫然と見つめていた。
チチチチ……。
ピピ……。
小鳥のさえずりが聞こえる。
実際はずっと耳には届いていたが、意識が向くことがなかったのだ。
ツンと鼻をつく、むせ返るほどの血の匂いに、キスティルは吐き気を覚えた。
カチカチと不快な音も耳に届く。
キスティルの中の時間が、ゆっくりと流れ始めた。
「…………ミカ、くん……。」
キスティルは緩慢な動きで涙を拭うと、傍らのネリスフィーネに視線を向ける。
ネリスフィーネは蹲り、自分の身体を抱くようにしながら、がたがたと身体を震わせていた。
その時になってようやく気づく。
キスティルもまた、身体が震えていた。
歯の根が合わず、カチカチと奥歯が鳴っている。
「ネリスフィーネ……。」
キスティルは手を伸ばし、その手がネリスフィーネの肩に触れた。
「ヒッ!?」
ネリスフィーネはビクリと身体を大きく震わせ、目を見開いてキスティルを見る。
しばらくキスティルのことを凝視して、ようやくその表情の強張りが幾分か和らいだ。
「……キス、ティル……?」
ネリスフィーネの呟きに、キスティルは頷く。
それからゆっくりと視線をミカに向けた。
キスティルに釣られ、ネリスフィーネもミカに視線を向ける。
「キャアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーッ!!!」
だが、ミカを見た瞬間にネリスフィーネが悲鳴を上げた。
「ネリスフィーネ……。」
「……あ……あ……あぁ……っ!」
ミカを見るネリスフィーネはひどく怯え、がくがくと震える。
無理もないだろう。
今のミカは返り血で真っ赤に染まり、ひどい状態だった。
「ネリスフィーネ……。」
キスティルはネリスフィーネに寄り添い、その身体を抱きしめる。
ネリスフィーネはキスティルにしがみつき、泣きじゃくった。
ネリスフィーネが少し落ち着くのを待ってから、キスティルは立ち上がる。
膝ががくがくと震え、気を抜けばきっとすぐにしゃがみ込んでしまうだろう。
そして、一度膝を折れば、もう立つことはできない。
二度と取り返しのつかないことになる。
そんな予感に、キスティルは懸命に力を入れ、足を踏み出す。
「キスティルッ……だめ……!」
ミカの方に歩き出すキスティルを、ネリスフィーネが引き留めるように声をかける。
「……だめなの……今の、ミカ様は……!」
必死の形相でキスティルを止めようとするネリスフィーネに、キスティルはぎこちない笑顔を向けた。
「待ってて。 ……帰ろう? 皆で、一緒に……。」
そうだ。
帰るんだ。
こんなひどい悪夢は忘れ、また三人で一緒に。
楽しく暮らそう。
そんなことはもう叶わないと、心の片隅で何かの叫ぶ声がする。
だが、キスティルは全力で耳を塞ぎ、現実逃避する。
こんなひどいことが現実なはずない。
きっと、これは悪い夢なのだ。
キスティルが一歩歩くごとに、ピチャ……ピチャ……と不快な水音がする。
キスティルはあえて、足下を見ないようにした。
強い意志を持って、現実を直視することを拒否する!
血溜まりの中を歩く自分など、決して想像すらしない!
キスティルはただ真っ直ぐにミカだけを見て、一歩、また一歩と歩みを進めた。
まだ、ミカまでは十メートル以上ある。
「ミカくん……。」
キスティルはカチカチと勝手に震える口を懸命に動かし、呼びかける。
「ミカくん、帰ろう……?」
キスティルの顔がくしゃりと歪む。
勝手に涙が溢れ、頬に流れ落ちる。
ピチャ……。
ミカがバッと振り向き、キスティルに左手を向けた。
キスティルには、ミカのその表情が見えなかった。
いや、目には入っているはず。
だけど、キスティルはミカの表情を認識することができなかった。
目だ。
その常軌を逸した目だけしか、キスティルには認識することができなかったのだ。
一言で表せば、狂気。
キスティルは無意識に、本能的に両手で顔を庇う。
シュッ!
「痛っ!」
頭部を守るようにした腕に、鋭い痛いが走る。
恐るおそる腕を見ると、袖が刃物で切ったように裂け、手首の上辺りから少し血が出ていた。
「……あぁ……あっ……ああ……。」
呻くような声が聞こえ、キスティルは視線を向ける。
そこには、ショックを受けたような顔のミカがいた。
ミカのその表情は、何と言えばいいのだろうか。
何かを恐れるようであり、何かに怯えるようでもあった。
今にも泣き出しそうなほどに顔を歪め、唇を震わせ、嫌がるように首を微かに振る。
(あ……ミカくんだ……。)
ミカのその様子を見て、キスティルはどこかほっとするような気持ちになった。
その時になって、初めてミカの傍にフィーがいたことに気づく。
フィーはミカに向けて光を照射していた。
きっと、お仕事後のいつもの”何か”を消しているのだろう。
(そうよ……フィーちゃんがいて、ミカくんがいて、ネリスフィーネもいる。)
何も変わらない。
いつも通り、皆でお家に帰ろう。
「……ミカくん、帰ろう?」
キスティルはミカに手を伸ばし、ゆっくりと近づく。
ミカは自分が傷つけてしまった手をじっと見つめ、それからギュッと目を閉じた。
その目から、涙が零れる。
ミカは背を向けると、逃げるように飛び立つ。
「ミカくんっ!」
キスティルは震える喉に力を入れ、必死にミカを呼んだ。
だが、その声はミカに届かなかったのか、どこかに飛び去ってしまった。
「…………ミカくん。」
キスティルはミカの消えていった空を見つめ、呟く。
フィーがふよふよ~……とやってくる。
その光は弱々しく、しょんぼりしているようだった。
「フィーちゃん……。」
手を伸ばすと、フィーはその手の中に収まった。
そんなフィーを見て更に泣きたくなるが、懸命に涙を堪える。
実際はとても堪えることなどできず、零れてしまうのだけれど……。
何が何だか分からなかった。
家に不気味な男が現れたと思ったら、長い時間真っ暗な場所に押し込められ、外に出たと思ったらミカくんがいた。
不気味な男はひどく力が強く、掴まれた首が軋むようだった。
そうして、ミカくんに殺し合いを強要…………いや、一方的な殺りk――――。
そこまで考えて、キスティルは考えることをやめる。
思い出したくなかったし、今はそんなことをしている場合ではなかった。
キスティルはネリスフィーネの下に行くと、ネリスフィーネを立たせる。
ネリスフィーネの動揺は大きいが、それは自分も同じだ。
ただ、やるべきことは分かっている。
(ミカくんを探さなくちゃ。)
もう二度と、大切な家族を無くしたりしない。
失わせない。
奪わせない。
キスティルは、そう強く決心するのだった。
それは、やや歪んだ愛情かもしれない。
都合の悪いことは無かったことにして、幸せな形だけを見ようとする。
ただ、一度は大切な幸せを失ってしまったキスティルの、それは必要な防衛機能だった。
心が壊れないための。
そして、この時だけは、それは唯一の正解だった。
不幸中の幸いとでも言えばいいのか。
この方法以外では、間違いなくすべてを失っていただろう。
まともに考える力の残った者なら、すべてを放り捨てるだろうから。
完全に元に戻すことなど不可能。
無かったことにするなど、土台無理な話だ。
それでも、もしもキスティルがミカとともにあることを望むならば、この時のこの選択こそが未来を手繰り寄せたといえる。
そして、その選択はミカを、この国を、ひいてはこの大陸をも救う選択となった。
誰一人として、その事実を知る者はいないのだけれど……。
■■■■■■
「こっちでいいの、フィーちゃん?」
キスティルが聞くと、フィーが光を強める。
キスティルはネリスフィーネを励ましながら、山道を下りていた。
あんな場所からは一秒でも早く、一歩でも遠くへ離れたかった。
しかし、ここがどこかも分からない。
そこで、一番近いと思える村でも町でも、とにかく移動することにした。
フィーに空から見てもらい、その場所までの道案内をしてもらって。
そうして、山道を下りていると町が見えた。
まだ少し距離はあるが、ようやく人のいる場所を目にすることができ、キスティルはほっと胸を撫で下ろす。
「ネリスフィーネ。 町が見えたわ。 もうすぐよ。」
努めて明るい声を出し、そう声をかけるが、ネリスフィーネは俯き、黙り込んでいる。
ネリスフィーネは山を下り始めた頃はひどく動揺していたが、それでも腕の怪我に気づくとすぐに【癒し】を使ってくれた。
途中からは何かを考え込み、一言もしゃべらなくなってしまったが。
キスティルはネリスフィーネの様子を見て、そっと溜息をつく。
落ち込みたいのは自分も同じだが、今はとにかく動かなくてはならない。
もはや生きることを諦めるというなら、その辺で寝っ転がっていればいい。
死ぬまで。
キスティルは意識を集中し、小さな水の塊を作る。
それを口の中に入れると、ごくんと飲み込んだ。
水を作れるということが、どれほど生きるためには有利か、前にミカが力説していたことがある。
キスティルも森に薬草採集に行っていたことがあるので「確かに便利かも?」とは思っていた。
だが、それを実感する時が来るとは思わなかった。
今のキスティルたちは、まったく荷物がない。
突然攫われたので、いろいろ準備していた魔法具の袋も身につけていなかった。
おそらく丸一日くらい何も食べていないと思うので、力も出ない。
ただ、もし目の前に食べ物があっても、食べる気にはなれないだろうけど。
なので、余計に水を飲めることが有難かった。
「ネリスフィーネも、お水飲んで。」
キスティルはネリスフィーネの分の水の塊を作り、軽く唇に触れさせた。
人の本能なのか、唇にそうして触れさせると、僅かにだがネリスフィーネは口を開いてくれる。
その口に水の塊を入れると、ネリスフィーネは素直に飲んでくれた。
(……私の魔力量だと、あとどのくらい持つかな……。)
魔力の量は、キスティルは圧倒的に少ない。
大分増えたとは言え、【神の奇跡】を発現できるネリスフィーネとは、比較にならないほど。
それでも湯場でお湯を張ったりするくらいはできるようになったので、飲み水に困ることはないだろう。
ただ、今のような状況がどのくらい続くか分からないため、節約する必要がある。
町に着いてからも、どう行動すべきか分からない。
なにせ銅貨一枚すら持っていないのだから。
その町はあまり大きくなかった。
食堂や酒場はあるが、お金のないキスティルたちには意味がない。
キスティルは町の入り口から真っ直ぐ延びる通りを、ネリスフィーネの手を引きながら歩く。
(ミカくんを追いかけなくちゃ……。 でも、どうすればいいの?)
どこに行ったのか分からないし、何より移動手段がない。
(それよりも、まずはここがどこかを確認しないと。)
誰かに聞けば教えてくれるだろう。
しかし……。
(…………ちょっと聞きにくいな。)
何というか、町の雰囲気がちょっと荒んでいる。
第三街区で生活していた頃は、もっと荒んだ雰囲気の場所で暮らしていた。
ミカと知り合い、一緒に暮らすようになり、とても恵まれた環境で生活をしていたのだ。
そのことが、改めて身に沁みる。
(ずっと、守られてたんだね……。)
そのことを忘れたことはない。
ミカが望まぬ手段を用いてまで、助けてくれた。
守ってくれた。
そのことを改めて思い知らされ、涙が零れそうになる。
キスティルは目元を拭うと、周囲を見回す。
どうすればいいのか、どう行動すればいいのか。
何も良いアイディアなど思い浮かばず、途方に暮れる。
「あれ……?」
その時、見覚えのある看板が目に入った。
「冒険者ギルド……。」
王都の南東の大通りで買い物をしていた時、よく見かけた看板。
ミカが「あれが冒険者ギルドだよ」と教えてくれた。
入ったことはないのだけど。
キスティルは吸い寄せらるように、ネリスフィーネの手を引いて冒険者ギルドの建物の前に行く。
「冒険者さんに依頼……。」
お金があれば、そういう手段も採れるだろう。
だが、依頼するにはお金がいる。
それも、決して安くはない金額だ。
何より、依頼を出したところで、すぐに引き受けてくれる冒険者がいるかは運次第。
依頼を出して、十日後、一カ月後に引き受けられることも普通にあるという。
なるべく早く受けてもらうには、やはり上乗せのお金が必要だ。
「どうしよう……。」
キスティルがそう呟いた時、一人の冒険者がギルドから出てきた。
ヤロイバロフのようにごつい冒険者は、大きな剣を背中に背負っていた。
キスティルは、ギルドから出てきたその男をじっと見る。
「ん?」
男もキスティルの視線に気づき、じっと見つめてくる。
「……んー? あれ……君はー……?」
「あっ……!?」
男が怪訝そうな顔をした時、キスティルは思わず大きな声を上げてしまう。
「ヤロイバロフさんの!」
「あ!」
男も気づいたようで、ちょっと驚いた顔になる。
「宿の、料理してた子か!」
「そうです!」
その男は、王都のヤロイバロフの宿を定宿にしている冒険者だった。
ヤロイバロフに負けず劣らずのごつい体躯で、大剣を背負った冒険者。
名前をセッヴェロという、らしい。
実を言うと、キスティルはセッヴェロの名前を知らなかった。
厨房担当なので宿の客と直接話をする機会などほとんどなく、ただ厨房から見かけたことがあるというだけ。
それでもセッヴェロは、キスティルのことを憶えていてくれた。
「君が突然辞めた時、珍しくヤロイバロフの奴が落ち込んでたぜ。」
「…………すみません。」
簡単に自己紹介をすると、当然話はそのことになった。
「まあ、事情があったらしいのは分かったけどな、やっぱおじさんとしては頼って欲しかったんじゃねえのか?」
「…………すみません。」
セッヴェロの言葉に、キスティルは恐縮するしかない。
あの時のことは、本当に迷惑をかけたと思うし、きちんと相談するべきだったと後悔もしていた。
ただ、あの時はもう何をしても無駄なんだと、ただただ無力感と絶望感に打ちひしがれ、諦めてしまっていたのだ。
キスティルの様子に、セッヴェロは苦笑する。
「済まねえな。 どうも、おじさんは説教臭くて。 ……それにしても、こんな所で会うなんて偶然だな。 この辺りが故郷なのか?」
「いえ、そうではないのですが……。」
キスティルはその時、自分たちがどこにいるのかも分からないことを思い出した。
「すみません。 あの……ここってどこですか?」
「あ? どこって……、どういう意味だ、そりゃ?」
怪訝そうな顔をするセッヴェロに、どうやって説明しようか悩む。
ただ王都に戻るだけなら、官所にでも誘拐されたことを相談すれば、帰してくれるかもしれない。
その場合、聴取に時間を取られるし、上手く話しをしなければミカのあのことも伝えなくてはならなくなる。
誘拐犯には捕まって欲しいし、後からならいくらでも捜査に協力しよう。
だが、今は優先すべきことがある。
キスティルがどう伝えたものか悩んでいると、セッヴェロがやや厳しい表情になった。
「何か、訳でもあんのか? ここはブライコスロア子爵領。 ヌオモノって町だ。 アム・タスト通商連合との国境に近い所だな。」
「ブライコスロア子爵領……。」
そう聞いても、キスティルにはブライコスロア子爵領がどこにあるのかも分からなかった。
アム・タスト通商連合が、王都からとても遠い国なのは知っているが……。
「……その様子じゃ、聞いてもどこか分かってねえな? どういうことだ?」
キスティルの様子に不審なものを感じ、セッヴェロが事情を聞いてくる。
街の中で迷子になったというならともかく、今いる町も分かっていないというのはちょっと普通ではない。
キスティルは眉を寄せ、必死に考える。
だが、何も思い浮かぶことなどなく、意を決してそのままお願いすることにした。
「あの…………報酬は必ずお支払いします。 人を探すのを手伝っていただけませんか?」
「あ? ……人探しぃ?」
増々怪訝そうな顔になるセッヴェロ。
そんなセッヴェロを、キスティルはじっと見続けた。
セッヴェロは困った顔になり、がりがりと頭を掻き、やがて大きく溜息をつく。
「まあ、丁度依頼も片付いて、手は空いてるけどよ。 報酬って、分かってんのか? 俺は高けえぞ?」
セッヴェロはBランクの冒険者で、指名依頼では二百万ラーツ以上の依頼しかギルドが受け付けない。
そういう設定にしているらしい。
それでも月に数件の指名依頼があり、基本的には指名依頼の仕事しか今はやっていないという。
この町にやって来たのも、そうした指名依頼のためのようだ。
「それに、必ず払うって言ってもなあ。」
信用も何もない。
ヤロイバロフが気にかけている子のようだが、すでに宿屋も辞めている。
務めている時なら、ヤロイバロフから取り立てることもできたかもしれないが……。
セッヴェロは腕を組み、うーん、と唸る。
「……まあ、受ける受けないはともかく、話だけは聞いてやるか。 一体、誰を探してんだ?」
「ミカくん…………ミカ・ノイスハイムという十四歳になる男の子です。」
「ミカ……ノイスハイム?」
セッヴェロはそう呟くと、ぎょっとした顔になる。
「――――って、まさか”解呪師”かあ!?」
目を丸くして驚くセッヴェロに、キスティルはこくんと頷く。
そんなキスティルを見て、セッヴェロは崩れるようにしゃがみ込み、両手で顔を覆った。
「……勘弁してくれ……厄日か今日は……。」
セッヴェロは、何かぶつぶつと独り言を言っている。
「…………確か、ヤロイバロフの奴が”解呪師”を気に入ってるってのは聞いたことあったが…………あ、そう言や、この子も”解呪師”となんかあったって聞いたな。 ……なんか、いろいろ思い出してきたぞ。 いや、待て待て…………てことは何か? 俺もこれ断ったら、もしかしたら呪師に祟られるのか? ギルドや教会ですら、ただじゃ済まなかったのに……?」
セッヴェロが頭を抱えて、悶え始めた。
「あ、あの……。」
キスティルが声をかけると、セッヴェロが渋い表情で顔を上げる。
「…………アテはあんのか……?」
そう、ぽつりと呟く。
行き先の見当と言われても、まったく分からなかった。
が、それはすぐに解決する。
フィーが憑依し、ミカのいる方向を教えてくれたのだ。
「あっちです。」
キスティルが指さすと、セッヴェロが訝し気な表情でその方向を見る。
「……何だそりゃ? 東? いや、北東くらいか……? あー……、そっちの方角だと、ヤウナスン辺りか? オールコサ子爵領の。」
「ヤウナスン……。」
ミカから聞いたことはあるが、そこにいるのだろうか。
いまいちピンと来てないキスティルの表情を見て、セッヴェロが片眉を上げる。
「違うのか? しかし、その先っていうと、もう何もねえぞ? リンペール男爵領は王国の中じゃどん詰まりだし、あそこには何もねえ。 領都のコトンテッセも大したトコじゃ――――。」
「コトンテッセッ!」
キスティルは思わず大きな声が出てしまった。
コトンテッセはリッシュ村の隣だ。
きっと、ミカはリッシュ村に向かったのだ。
「コトンテッセに何かあるのか?」
「いえ! 多分、隣の村だと思います!」
キスティルの声に力が籠る。
ミカの行き先に見当がつき、キスティルは力が湧いてくるのを感じていた。




