表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミックス第1巻発売中!】 神様なんか信じてないけど、【神の奇跡】はぶん回す ~自分勝手に魔法を増やして、異世界で無双する(予定)~ 【第五回アース・スターノベル大賞入選】  作者: リウト銃士
第5章 魔法学院高等部の”神々の遣わし者”

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

240/313

第239話 天に嗤う




「キスティルッ! ネリスフィーネッ!」


 ミカが叫ぶように呼ぶと、二人は怯えたような表情から、泣きそうな表情になる。

 ヒブジーザは、キスティルとネリスフィーネを自分の前に立たせて、二人の首を後ろから掴んでいた。


「びっくりだねー。 もう着いてたんだー。 俺でも結構大変だったのにー。 結構ていうかー、もうへとへとー……?」


 病的な顔をしたヒブジーザが、そんなことを言いながら疲れた顔になる。


 ミカの握り締めた拳はぶるぶると震え、喰いしばった歯がギリ……と鳴った。

 ミカの【身体強化】は四十倍だ。

 ”風刃(エアカッター)”なんかよりも余程早く、ヒブジーザを殴り飛ばせる。

 だが、ミカがそう考えた瞬間、ヒブジーザの口の端が上がった。


 ゾッとする笑み。

 まるで、こちらの考えを見透かしたような笑みだった。


 そう言えば、なぜヒブジーザは数百メートルも離れたミカのことに気づいたのか。

 得体が知れな過ぎて、迂闊には動けなくなる。


 とにかく、今はキスティルとネリスフィーネの安全を、何よりも最優先にしなくてはならない。

 万が一があれば、やり直しも取り返しもつかないのだから。


「二人を放せ、ヒブジーザッ……!」


 ミカがそう言うと、ヒブジーザはきょとんとした顔になった。


「んー? …………あ、そうかー。 うん、そうそうー。 ヒブジーザだってー。 うんー。」


 そんなことを呟きながら、一人で納得する。

 キスティルとネリスフィーネは多少憔悴している様子はあるが、目立った外傷はない。

 殴られたりなどの、暴力が振るわれた訳ではなさそうだった。


「二人とも、今助けるよ。 もう少しだけ待ってて。」

「ミカくん……。」


 キスティルが泣きそうな表情でミカの名前を呟く。


「ミカ様……だめ。 逃げて……。」


 だが、ネリスフィーネはミカの身を案じ、逃げるように言う。


「だめだよー。 勝手に話しちゃあー。 首ねじ切るよー?」


 とんでもないことを、軽い口調で話すヒブジーザ。


「お前らもー、さっさと起きろー。 お仕事だよー。」


 ヒブジーザは、酒盛りをしていた男たちに声をかける。

 やはり、こいつらは仲間のようだ。

 男たちは酔いの残った身体を怠そうに起こし、立ち上がる。

 その手には、剣や斧が握られていた。


「おい、こいつか? お前が言ってたのは?」


 男たちの一人が、ヒブジーザに尋ねた。


「うんー。 そうー。」


 ヒブジーザがにっこりと答えると、ドッと男たちが笑い出す。


「おいおい、まじかよ!」

「こんなガキ()って三億ラーツ!? 本気か?」

「なあ、こいつ貰っちゃだめか? ……結構好みなんだが。」

「うげ……、まじか?」


 男たちは下卑た笑いを浮かべながら、好き勝手言っていた。


「なあ、こいつ()ったらくれるって言った女。 もしかして、そいつらか?」


 男のうちの一人が、欲望の滾った目をキスティルとネリスフィーネに向けた。

 その瞬間、抑え込んでいたミカの殺気が膨れ上がる。


「いいっ! いいよー、テーちゃん! それそれーっ! すっごくいいーっ!」


 だが、そんなミカを見て、ヒブジーザが喜ぶ。

 ヒブジーザのその表情を見て、ミカはぞっとした。


「…………僕を殺したいなら、好きにしろよ。 だけど、二人は解放しろ。」


 ミカは無駄だと思いつつ、ヒブジーザに交渉を持ちかける。

 ところが、ミカの言葉を聞き、ヒブジーザはきょとんとした顔になった。


「殺すー? テーちゃんをー? 何でー?」


 心底意外そうに、そんなことを言う。

 テーちゃん?

 そう言えば、さっきもそう呼んでいた。

 やはり、ヒブジーザは赤茶けた髪の青年と繋がりがあるのだろう。


「僕の首に三億ラーツかけてるんだろう? そんな無駄金出さなくたって、自分で首を刎ねてやろうか?」

「のおおおおおおおおおおおっ!? それは誤解だよぉー、テーちゃーん!」


 ヒブジーザは驚いたような顔で否定する。


「俺はー、テーちゃんのお手伝いをしてるだけなんだよー。」

「…………手伝い?」


 さっぱり意味が分からない。

 何がしたいんだ、こいつは?


「テーちゃんさー、怒ってるよねー?」


 ヒブジーザはミカを窺うように、そんなことを聞いてくる。

 怒らない訳ないだろうが。


 だが、それをそのまま言っていいのだろうか。

 怒ってない、許すよ、とでも言えばいいのか?


「もっと怒っていいんだよー! もっと、もっともっと、もっとおーっ!!!」


 ヒブジーザが、不気味な笑顔を浮かべる。


「それを全部ぶつけるんだーっ! こいつらにさーっ!」

「…………は?」


 ヒブジーザ(こいつ)が何を言っているのか、本気で分からない。

 本当に、こいつは何がしたいんだ?


 一人盛り上がるヒブジーザに、ミカは戸惑いの目を向ける。

 そして、その戸惑いに気づいたヒブジーザの目が、すっと冷える。


「んんー? やる気が感じられないなあー。 さっきまでいい感じだったのにー。」


 そう言ってヒブジーザは、魔法具の袋に右手を入れる。

 魔法具の袋から取り出したのは、またしても人だった。


「うわあっ!?」


 その人は騎士だった。

 王国軍の騎士。

 ヒブジーザは騎士を袋から取り出すと、そのまま放り投げた。

 投げられた騎士は五メートルほど離れた場所に、ガシャンと鎧を鳴らして落ちる。


「お手本ねー。」


 そう言うとヒブジーザは、目が合った者が気を失いかねないほどの殺気を籠めた視線を騎士にぶつける。


「【爆ぜろ】。」


 ボン。


 騎士の頭が吹き飛び、そのままドシャッと崩れ落ちた。


「ッ!?」

「「キャアッ!」」


 キスティルとネリスフィーネが身を竦ませながら悲鳴を上げる。


 ヒブジーザには躊躇(ためら)いも何もない。

 あまりにも簡単に、騎士の命を刈り取った。


「こんな感じー。 分かったー?」


 そうして、ヒブジーザはにこにことミカに笑いかける。

 だが、ミカが呆気に取られていると、ヒブジーザの目が再び冷えた。


「…………もしかしてだけど、()()()()()()()()?」


 それまでの間延びした口調から一転し、ぞっとするほどの底冷えした声が耳に届く。

 ミカが騎士の死体からヒブジーザに視線を移すと、何を考えているのかすぐに分かった。


「…………や……やめろ……。」

「この子の目玉でも抉り出せば、ちょっとくらいは本気で怒ってくれるか?」

「い、(いた)っ……!」


 ヒブジーザは、キスティルの首を掴んだ手にほんの少しだけ力を籠める。

 キスティルが痛そうに顔を歪めた。


「…………よせ……だめだ……!」

「それとも、こっちの子の腹でも裂こうか? 臓物(ワタ)の引っ張りっこでもするか? 懐かしくない?」


 ネリスフィーネの首を掴む手に、力が込められていく。


「よせええええええええええええええええええっ!!!」


 ミカの中で、何かが切れた。

 ミカが力の限りに叫ぶと、ヒブジーザが口の端を上げる。

 その、狂気の光を湛えた目を、真っ直ぐにミカに向けた。


「…………俺が、憎いだろう?」

「ああ……。」


 ミカはぎりぎりと音が鳴りそうなほど、両手を力いっぱい握り締める。

 ヒブジーザが、()()()()()


「怒りで気が狂いそうだろう? 殺してやりたいよなあ?」

「ああっ……!」


 ミカの目に、憎悪の炎が宿る。


「だめです…………ミカ様。 それは、だめ……()()()()()()()。」


 ネリスフィーネが震えながら、ミカに懇願する。

 だが、その声はミカに届かなかった。


「”(ウォカーブルム)”で、それをぶつけるんだ。 手本は見せただろ?」


 そう言うとヒブジーザは、周りで見ていた男に視線を向ける。


「誰かー、最初に相手してやってよー。 早い者勝ちだよー。 ()った奴の総取りだー。 金も、女もだー。」

「おおお、やるやる!」

「馬鹿野郎、俺だよ!」


 男たちは、我先にと進み出る。


「お前が早かったねー。 他のは下がれー。」

「へへ、俺か。」

「ちっ……。 くそ。」

「嘘だろぉ? 俺の方が早かっただろうが。」


 ヒブジーザが一人の男を指さすと、その男が欲望に塗れた顔になり、前に出る。

 他の男たちはぶつぶつと文句を言いながらも、素直に従った。

 ヒブジーザはミカを見て、アドバイスを送る。


「しっかりと、一人ひとり、全力で憤怒と憎悪をぶつけな。 ……気の抜けたことしてみろ。 首無し死体が()()()()転がることになるぞ?」


 ミカは、もはや抑えることも困難な怒りに、全身を震わせた。

 そんなミカの様子に、男たちが笑い声を上げる。


「おいおい、可哀想に。 ブルっちゃってんぞ。」

「あーあ、あんな俯いちゃって。」

「くっそー……、これじゃあ金も女もあの野郎のじゃねえか。」


 口々に、男たちは悔しがったり、ミカを嘲笑ったりする。

 だが、そんな声は欠片もミカの耳に入らない。


「こいつらを全員()れば、女は解放してやる。 一人でも残ってれば、そいつがこの子たちをどうするか。 言わなくても分かるよなぁ? もし分からなきゃ、ここで実演させるが?」


 ミカがヒブジーザを睨みつけると、ヒブジーザがニヤリと笑う。


「それでいい。 一人ずつ、噛みしめて()れ。 行けっ!」


 ヒブジーザの声と同時に、ミカは男の方を向くことなく、左手だけを向ける。

 そうして”石弾(ストーンバレット)”で撃ち抜いた。


 パキャッ!


 男の頭が弾け飛び、ドサッと倒れる。

 その光景に、一瞬にして周囲が静まりかえった。


 その瞬間、


 ズシ……。


 ミカの胸の中の、()()が重くなった気がした。

 ヒブジーザは肩を竦めて首を振る。


「悪くないが……もっとだ。 そんなもんなのか、お前の怒りは。 アリンコか?」


 そう言ってヒブジーザが男たちを見る。


「さあ、次だ!」


 ヒブジーザが声をかけるが、男たちは茫然としていた。

 何が起きたのか理解が追いつかず、呆気に取られていた。

 その様子に、ヒブジーザは軽く舌打ちする。


「やれやれだ……。 もっと滾れよ、お前たちもよお。 ほーら、金も女も手に入るぞー? 目の前にぶら下がってるぞー? 欲しいよなあー?」


 それは、暗示だった。

 ヒブジーザの言葉に、男たちの目が異常なほどギラギラと輝き出す。


「よし、お前行け。」


 ヒブジーザが指さすと、その男が目を爛々と輝かせ、舌なめずりをする。


「悪くない”(ウォカーブルム)”だが、まだまだ足りない。 気合を入れたくなったらいつでも言ってくれ。 すぐに首を落としてやるから。」


 ヒブジーザはそう言うと、ミカに見せるように軽くネリスフィーネを前に押し出した。

 ネリスフィーネが涙を零す。


「ミカ様…………この男の、言うことを聞いてはだめです。 それは、だめなの……。 抑えてっ……。」


 ネリスフィーネは唇を震わせ、必死にミカに訴える。

 だが、ネリスフィーネのその声もミカに届かない。

 ミカにはもはや、こいつらを皆殺しにして、二人を解放することしか頭になかった。


()れっ!」


 ヒブジーザの声と同時にミカは振りかぶり、全力で殴りつけるように拳を繰り出す。

 その瞬間に、”石弾(ストーンバレット)”で男の頭が弾け飛んだ。


「そうだっ! いいぞっ! その調子だっ!」


 ヒブジーザが歓声を上げる。


「よし、コツは掴んだな? だが、そんなもんじゃない。 もっと絞り出せるはずだ。 お前の本気を見せてみろ。 行けえっ!」


 ヒブジーザが男たちに呼びかけると、一斉に男たちがミカに襲い掛かった。


 ミカは迫り来る男たちに、自分から向かって行った。

 一人ひとりに、一撃一撃に、ミカの怒りを、どす黒い憎しみを、ありったけの殺意を乗せて放つ。

 ”石弾(ストーンバレット)”が男たちの頭を吹き飛ばし、胴体に大穴を開ける。

 そして、その度にミカの中の()()が重くなった。


「だめだめっ! 諦めんなよっ! もっと振り絞れっ! 絞り出せよっ! もっと出せるっ、もっと出せるよっ! そうだっ、それだよっ!」


 ミカが一人()るごとに、ヒブジーザが声援を送る。


「いいよいいよー! 輝いてるよー! やっぱり、いいー! 最高だよー、テーちゃーん! 最高に輝いてるよー!」


 その表情は、狂気と恍惚に蕩けるようだった。

 血の雨を降らし、返り血に染まるミカを、ヒブジーザはうっとりとした表情で見つめる。


 キスティルは、あまりの惨劇に目を閉じ、顔を背けてしまう。

 ネリスフィーネは、()()()()()()()()()に、身体の震えを止めることができなかった。


「ああ……ミカ様……。」


 両手で顔を覆い、力なく首を振る。


「それは、だめなのです…………ミカ様。 それは……。」


 だが、ネリスフィーネの呟きは、誰に届くこともなく消えていった。







 ”(イーグニス)”は、ミカを陶酔するような面持ちで見つめる。


(ああ……やっぱり、いい。 絶対にテーちゃんなら辿り着けるよ。)


 ”神の子(フィリウス・デイ)”になるには、”(ポテスタース)”を使えるだけではなれない。

 強い”(ウォルンタース)”と結び付き、それを沢山積み重ねないといけない。

 人の身を、”神の子(フィリウス・デイ)”へと至らせるには。


 いや、積み重ねるのとは少し違うらしい。

 そう、アーちゃんは言ってた。


 でも、その結びつける”意”が、誰もが持つような弱い”意”では”神の子”にはなれない。

 とても強い”意”と結びつけられないといけない。


(手っ取り早いのは、やっぱり憤怒と憎悪だね。)


 強い”意”なら、別に種類は問わないらしい。

 歓喜でも悲嘆でも愉悦でも。


(まあ、それで”神の子”になれた子はほとんどいないらしいけどね。)


 理屈では何でもいいらしいが、出しやすい出しにくいはある。

 歓喜や愉悦は、絞り出せない。

 だから、”神の子”になれるほどに強い”意”を捻り出せないのだ。


(まあ、慣れの問題だけどさ。)


 慣れると、歓喜や愉悦でも強い”意”と結び付けられる。


(さあ、テーちゃん! その先へ行こう!)


 まずは”神の子”に!


(頑張れ、テーちゃん!)


 キラキラと輝く瞳で、”火”はミカを見つめた。







 ミカは振り下ろされた斧を横から殴り、弾き飛ばす。

 そうして男の顔を掴むと、”風刃(エアカッター)”を放った。

 十枚にスライスされた男の顔が、厚切りハムのように飛んで行く。


(クッ……!)


 胸が、苦しい。


 ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ……!


 さっきから煩いくらいに心臓の鼓動が聞こえる。

 言いようのない不安が心の中に広がる。


 だが、不思議なことに、それでも心が少しずつ()()()()()()()

 男の命を一つ狩るたびに、憤怒と憎悪の魔法を放つたびに、心が弾み高揚していく。


 ミカは絶え間なく繰り出される男たちの攻撃を躱しながら、一つずつ命を刈り取る。

 そうして、ちらりとキスティルとネリスフィーネを見た。


(もう少しだけ……! もう少しだけ待っててくれっ…! 必ず、助けるからっ!!!)


 ミカは正面の男の顔面を”石弾”で吹き飛ばしながら、後ろから斬りかかった男の首を”風刃(エアカッター)”で刎ねる。

 いちいち”魔法名”など唱えず、目についた者から片っ端から殺していった。


「横着しちゃだめだよー。 ちゃんと、しっかり、絞り出してー。」

「ちっ……!」


 ヒブジーザからのクレームに、思わず舌打ちをする。

 ミカが腕を振るうたび、一つの命が散った。

 それなのに、男たちはまったく怯むことなくミカに向かってくる。

 目を血走らせ、涎を垂らし、まるで魔物か魔獣でも相手をしているような重圧(プレッシャー)


 命を一つ散らすたび、胸のうちが僅かに重くなる。

 だが、それとは逆に、なぜか心は軽くなる。


 いや、軽くなるどころではない。

 もっともっとと、湧き立つような高揚感。

 まるで、浮かれているかのような全能感。

 降り注ぐ血飛沫の温かさに、口の端が上がる。

 鼻をつく血の匂いに、目尻が下がる。


 不意に、ミカの腹筋が震えた。


「くっ……ふ……。」


 ありったけの怒りを。

 どす黒い憎悪を。

 一撃一撃に籠めながら、それでもミカの頬が緩む。


「は、ははっ……!」

「いいよー! その調子、その調子ー!」


 目の前の一つの命が砕けた。

 そうするたび、込み上げる衝動。


 ミカはキスティルとネリスフィーネの姿を時折確認しながら、必死に命を刈り取り続けた。

 込み上げる衝動を、懸命に抑え込みながら。


 だが、突き出した手の向こう。

 弾け飛ぶ男の頭を見て、ミカはついに()()()()を抑えられなくなる!


「あっは! あはははははははははははははははははははははははっっっ!!!」

「やたーっ!!!」


 血の雨の中、笑いながら殺戮を続けるミカに、ヒブジーザは諸手を挙げて歓声を上げた。


「そうだよ、それだよっ! 怒るって楽しいよねー! 憎むって気持ちいいよねー! いいよー、テーちゃん! 最高だよー!」


 ヒブジーザは、もはやキスティルとネリスフィーネのことなど忘れ、小躍りする。


「あははははははははははははははははははははははははははははっっっ!!!」


 ネリスフィーネは、男たちを殺しながらギラギラと笑みを張り付けて笑うミカを見て、へなへな……と腰を落とす。

 両手で自らの身体を抱くようにし、止まらぬ震えを懸命に止めようとする。


「だめ……ミカ様……そっちに行っては、だめ…………。」


 止めどなく涙が溢れ、声を振り絞る。


「ミカさまああああああああああぁぁぁーーーーーっ!!!」

「あははははははははははははははははははははははははははははっっっ!!!」


 ネリスフィーネの叫びをかき消すような、ミカの狂った笑い。

 狂気と狂喜。

 キスティルは、ぺたんとしゃがみ込み、そんなミカを茫然と見ていた。


 ヒブジーザはミカの様子に満足げに頷き、冷えた眼差しで観察する。


「これなら、定着もすぐかな? ふふ…………元々、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 この様子なら”神の子(フィリウス・デイ)”にもすぐ至るな。」


 そうして、ミカたちに背を向ける。


「ようこそ、テーちゃん。 あとはそのまま、衝動のままに”(ポテスタース)”を振るえば、あっという間だよ。」


 これだけ進行すれば、もう放っておいても”神の子”になる。

 あっちの計画は待ってくれない。

 計画を滞らせず、テーちゃんも”神の子”にする。


「また迎えに来るからー。 大きく育てよー。」


 ヒブジーザはそう呟くと、軽い足取りで山道を下りていった。


「あははははははははははははははははははははははははははははっっっ!!!」


 心地よい、ミカの笑いを聞きながら。

 ………………。

 ……。







 ヒブジーザが去った後も、ミカは殺戮を止めず、男たちを皆殺しにした。

 動く者のいなくなった場所に一人立ち、ミカだけがその身を仰け反らせるようにして、高らかに笑っていた。


「あははははははははははははははははははははははははははははっっっ!!!」


 狂笑。

 空を、仰ぐ。


 ――――天に、嗤う。







 キスティルとネリスフィーネは、そんなミカを、ただただ茫然と見つめていた。

 止めることのできない、涙を流しながら…………。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ミカ君が感情爆発させると 感想欄が爆発する定期 笑
[一言] っしゃァァァァ!闇堕ち完了!! だといいなぁ…|ूᐕ)
[気になる点] ここまでも首を傾げる展開はわりと多めだったけど、ここまで読んで作者さんは自然なピンチとか演出できない人なんだなってのがよく分かった。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ