第216話 王都大捜索
突然の眩い光に、大混乱に陥った王都をミカとリムリーシェたちは学院に向かって走っていた。
目を開けていられないほどに空が光った、と光の神の奇跡に人々が祈りを捧げているのだ。
道端のあちこちで。
(俺は知らん……俺は何も知らない……何も見てない……。)
ミカは自分に言い聞かせる。
涙を流し、空に向かって祈りを捧げる人を横目に、ミカは現実逃避していた。
最初にミカの傍で光が起こり、黒い繭が現れた。
そして、他にも王都にいくつもあると聞いたチャールが、鋭い洞察力を発揮した。
「……今の光、王都中を照らした……。 ……もしかしたら……。」
王都内の他の黒い繭も暴き出したかもしれない、と。
(多分、当たりだろうな。)
第二街壁の門を潜りながら、ミカは考える。
あの光の正体はフィーだ。
おそらく相当に上空に上がり、呪いを視覚化させる光を王都中に照らしたのだ。
チャールに言われるまで、
「何やってんだ、あのバカタレは!」
とか思ったが、言われてみると「それしかない」と確信した。
希少金属を生成する時のような莫大な魔力を使い、王都をあの光で満たした。
視覚化の効果がいつまでもつか分からないが、なるべく早く探し出さなくてはならない。
「緊急の召集をかけ、何とか探し出してみる。」
オズエンドルワは赤茶けた髪の青年の遺体を第五騎士団の詰所に運ばせ、自身は”黒い繭”捜索の指揮を執るという。
第五騎士団の騎士は一万。
だが、そのすべてを割り当てる訳にはいかない。
何より、混乱している王都の鎮静化、正常化にも人を割かねばならない。
本来、緊急招集をかけてそっちに人を割り当てたいところなのだ。
「……任せて……。 ……いい方法が、ある……。」
第五騎士団だけでは捜索の人手が足りないだろうと、ミカが他の方法を考えていた時、チャールが提案した。
「……一度、学院に戻る……。 ……ミカ君も来て……。」
そう真剣な表情で言われた。
有無を言わせない迫力があった。
学院内も混乱しているのは同じだった。
女子寮に向かう道に跪き、空に向かって祈りを捧げる女の子が何人もいた。
チャールはその祈りを捧げる子供をぐるりと見渡し、三人ほどの女の子の所に向かう。
「あ! 名誉顧問!」
女の子の一人がチャールに気づき、声をかけてくる。
「名誉顧問も見ましたか! 神々の奇跡を! 神々しい光が、まるで世界を包むように……!」
「なんて素晴らしいのでしょう! あのような奇跡を経験できるなんて!」
「私たち、丁度外にいたんです! 光の神の奇跡を浴する幸運に恵まれるなんて、私もう! 感動してしまってっ……!」
感動に打ち震え、興奮した様子の女の子たちがチャールに話しかける。
チャールは「その肩書を外で呼ぶなと……。」と言いかけて、やめた。
そして、ただ一言だけを伝える。
「……腐女子に、緊急招集……。」
その呟きを聞き、女の子たちの表情が一変する。
「わ、分かりましたっ!」
三人の女の子は即座に立ち上がると、その内の一人が女子寮に向かって駆け出した。
そのやり取りを見て、ミカは目を丸くする。
何だ、このリーダーシップは!?
(何で?とか一切聞かず、即座に行動に移ったぞ!? この非常時に!)
なんか、すっごく格好良くない!?
それに、メンバーって何?
何のメンバーなの?
「……親衛隊にも、呼びかけて……。」
「ええ!? 親衛隊にも!?」
「そ、それは、ちょっと……。」
戸惑う女の子たちを、チャールが睨んだ。
「……ミカ君が、困ってる……。」
そうして、一歩だけ女の子たちの方に近づいた。
「……なら、これを解決する以上に……。 ……優先すべきことなんて、ない……。」
「ですが……。」
何か、葛藤することがあるのだろう。
女の子の表情は苦し気だ。
ていうか、親衛隊って何ですか?
「……これが、受け入れられないなら……。 ……私は貴女たちを、軽蔑する……。」
チャールに迫られ、女の子たちは重い表情で顔を見合わせる。
そうして、躊躇いがちに頷き合った。
「分かりました。」
「……OGにも、呼びかけて……。」
「「はいっ!」」
二人の女の子が駆け出す。
チャールは女の子を見送りながら、ほっと息をつく。
「……これで、二~三百人は動く……。 ……どうすれば、いい……?」
「二~三百っ!?」
何ちゅう人望や。
(声をかけるだけで百人単位の人を動かせるとか。 どれだけリーダーシップあんの?)
OGって、学院のOG……?
それって軍役に就いてる人なんじゃないですか?
そんな人たちが本当に動くのか?
(ま、まあ……。 いろいろ疑問はあるけど。)
今優先すべきはそこじゃない。
ミカはざっと方針を打ち出した。
ミカとリムリーシェ、ツェシーリアが第一街壁の南の門で待機。
チャールは動いてくれる人に、黒い繭の外見を説明。
発見したら第一街壁の南の門にいるリムリーシェやツェシーリアに報告。
ミカは報告があり次第、その場所に案内してもらい解呪を行う。
解呪が終わったら南の門に戻る。
複数の発見の報告が溜まっていたら場所を教えてもらい、報告者にはその場所で待機してもらう。
皆ミカのことは知っているそうなので、ミカがその場所に着いたら声をかける。
これなら一々南の門に戻らなくても、発見場所から発見場所に直接向かうことができる。
「こんな感じでどうかな?」
「……分かった……。」
大まかな方針が決まり、とりあえずは一旦行動に移る。
ミカたちは第一街壁の南の門に向かって走りだした。
第一街壁の南の門に情報を集めるのは、そこが王都の中心だからだ。
実際の中心は王城だが、第一街区には入れないので、中心に近い場所として南の門を選んだ。
リムリーシェは第五騎士団のオズエンドルワにも知らせるため、途中で別れた。
詰所に連絡したら、南の門で合流することにした。
「何だか、大変なことになったわね。」
南の門に向かって走っている時、ツェシーリアがそんなことを言う。
「まったくだよ……。 正月から何やらせんだって話だよな。」
「しょうがつ?」
そんな話をしながら、南の門に到着。
相変わらず王都は大混乱だ。
というか……。
「えらいことになってるわね……。」
「……そうだな。」
ミカとツェシーリアは、数百メートル先にある大聖堂をうんざりしたような顔で見る。
南の門から真っ直ぐ延びる南の大通り。
そこには光神教の聖地、王都の大聖堂がある。
「あんなことがあれば、そりゃ殺到するわな。」
下手したら万に達するような人たちが大聖堂に集まり、祈りを捧げていた。
道を埋め尽くす、人、人、人である。
「南の門に情報を集めるのは失敗だったか?」
このまま人が膨れ続ければ、南の門にまで人が届くかもしれない。
「さすがに、そこまでは気づかなかったわね。」
「まあ、思いつきで方針を立てたからな。」
もうね、今日一日の王都における経済的損失とか考えたくもないね。
何千億ラーツ、もしかしたらもう一つ桁が上かもしれない。
そんなことを考えていると、リムリーシェが到着。
リムリーシェも呆けたような顔をして、大聖堂に殺到した人を見ていた。
第五騎士団のオズエンドルワに伝えてきたリムリーシェだが、ちょっと騎士団が動くのは難しいかもしれないとの伝言を持ってきた。
王都の混乱が想像以上に大きく、そちらの対処を優先せざるを得ないとのことだった。
まあ、目の前にその混乱の最たる場所があるので、何も不満はない。
むしろ、そっちを頑張ってくださいと言いたい。
そして何より、「うちのフィーがご迷惑を……。」と平謝りしたい気分だった。
そうして南の門で待機すること三十分。
最初の発見の報告が来た。
「こっちです!」
ミカは下級生らしき女の子に先導されて、3区の広場に向かっていた。
学院生の中でも【身体強化】を使える子を中心に、捜索にあたってくれているのだとか。
捜索の人手を、すべての区に割り振ったらしい。
魔力の量が豊富で、【身体強化】の出力を高くできる子に遠くの区を。
魔力量が少なかったり、まだ扱いに慣れていない子は近くの区、といった感じに。
(しっかり考えてくれてるね、チャール。)
クラスではあまり目立たないようにしているが、チャールだって成績は優秀だ。
一声で数百人を動員できる人望もあり、ミカが思っていた以上にすごい子だったのかもしれない。
ちょっと得体の知れないところもあるけど……。
3区の広場に到着し、案内されたのは中央にある台座。
(赤茶けた髪の青年が仕掛けるとしたら、こうした誰でも入れる場所を選ぶのは当然か。)
そうした傾向がある、という情報を広めるべきだろうか。
(まだ早いか。 それに、そうした情報を与えるのは危険でもあるしな。)
広場なんかは、言わなくても探すだろう。
そうなると、情報を与えることで反って捜索の邪魔になるかもしれない。
そうした傾向から外れた場所に仕掛けられていた場合、捜索の目が行きにくくなってしまう。
ミカは一旦いろいろな考えを頭から追い出し、”黒い繭”の解呪に取り掛かる。
半自動なので手動よりは速いが、それでも強い呪いなので時間がかかってしまう。
(やっぱり”自動解呪”が使えないのは痛いなあ。)
まあ、文句を言っていても始まらない。
とにかく今は、一つでも多くの”黒い繭”を、一刻も早く取り除くべきだろう。
ミカが解呪している間、案内してくれた女の子が横でじっと見ていた。
解呪を見ているというか、ミカを見ている……?
(……何ていうか、ちょっとやりにくいな。)
何だろうか。
視線に少々粘っこいものを感じるのは気のせいだろうか?
「……大きな音が出るみたいだから、耳を塞いでおいた方がいいよ。」
ミカを案内してくれた子は耳を塞ぎながら、それでもミカのことをじっと見ていた。
ミカは女の子のことを気にしないようにしながら解呪を進める。
「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!」」」
地響きのような唸り声が響き渡り、耳を塞いでいた女の子がびっくりした顔で固まる。
言うまでも無く、ミカは”地獄耳”を発現してある程度をカットしていた。
「ありがとう。 君のおかげで助かったよ。」
ミカがそう声をかけると、女の子は顔を真っ赤にして照れた。
こうしてると、普通の女の子なんだけどね。
さっきまでの粘っこい視線は何だったのだろう?
ミカはその子の学年と名前を聞き、後でお礼をするからと伝える。
捜索に参加してくれた子には全員に何かしたいと思うが、発見してくれた子にはプラスで何かしてあげよう。
ミカが南の門に戻ろうとすると、リムリーシェが広場にやって来た。
危うく入れ違いになるところだ。
「ミカ君、南東の第一街壁に集める場所を移したから。」
何でも、大聖堂に集まる人が膨れ上がり、南の門はすでに人に埋め尽くされてしまったようだ。
これはもう、下手すると十万人とかの規模になりそうだ。
南の門にも学院生を置くが、情報を集める場所は南東の大通りとぶつかる、第一街壁に移すことにしたそうだ。
南の門に人を置くのは、南東の第一街壁に場所を移したことを伝えるためだ。
(これはもう、どうにもならんね。)
王都の混乱は増々ひどくなっていた。
これでは第五騎士団の騎士たちはとてもじゃないが、”黒い繭”捜索には人を割けないだろう。
ミカとリムリーシェは南東の第一街壁に向かい、女の子にはチャールへの伝言を頼んだ。
情報を集める場所を移したことを伝え、現在捜索にあたっている人たちにも何とか伝えてもらいたい。
まあ、無理だとは思うが。
(携帯電話の無い世界じゃ、情報の伝達がネック過ぎるな。)
伝言ゲームという脆弱なネットワークしかないため、情報伝達だけでも一苦労である。
それでも、やれることをやっていくしかないが。
「ミカッ!」
「メサーライト!?」
ミカたちが第一街壁に着くと、ツェシーリアの他にメサーライトも居た。
「何か変なの探してるんだろ? 男子寮の皆も今動いてるから。」
「いや、助かるけどさ。 何で?」
何でもチャールが男子寮にいるメサーライトやムールト、ポルナードにも協力を要請したようだ。
そして、メサーライトたちは寮の皆にも協力を頼んだ。
全員という訳ではないが、かなりの人数が動いているという。
勿論女子寮の方も、皆が声をかけあって、この”黒い繭”捜索に参加してくれているらしい。
「多分だけど、四~五百人は動いてるみたい。」
ツェシーリアが苦笑しながら言う。
(うーん……、みんな人望があってすごいなあ……。)
少々呆れるような気持ちで思う。
ミカが声をかけても、こんな風には動いてくれないだろう。
ここは一つ、レーヴタイン組の力を素直に借りておこう。
そうして待っていると、すぐにまた発見の報告が届く。
今度は8区だ。
王城を中心に考えると、北北西にある区である。
つまり、現在地からすると完全に反対側。
ミカは報告に来た女の子の案内で、8区に向かった。
やっぱり”黒い繭”は広場にあり、そこの解呪をしているとメサーライトが伝令でやってきた。
1区と6区にもあったという。
(今のところ、すべて広場にあるのか。)
おかげで発見が早い。
これまでに解呪した物と合わせ、すでに五個が発見された。
残りは一個である。
「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!」」」
そんなことを考えていると、大音量の唸り声が響く。
耳を塞いでいなかったメサーライトが、びっくりして腰が抜けそうになっていた。
(あ、教えるの忘れてたね。)
案内してくれた女の子には移動の途中で教えていたが、途中でやって来たメサーライトには伝えていなかった。
どんまい、俺。
そうして8区の解呪が終わり、隣の1区ではなく、6区に向かう。
なぜ先に6区に行くのか。
それは、帰り道のルートを考えてだ。
南東の大通りに戻る場合、南の大通りは避けて行く必要がある。
南の大通りには大聖堂があるため、人が多すぎて通過するのが困難だからだ。
1区と6区の解呪が終わり、南東の大通りに戻る時、どちらも距離だけを考えれば同じだ。
だが、南の大通りを通れないとなると、逆方向から回り込む必要があるのだ。
つまり、どっちにしろ1区を通ることになる。
ならば、先に6区を片付ければ、どうせ帰り道で1区を通るのだから余計な動きが減るという訳だ。
まあ、これはあくまで残りの一個が見つからずにいた場合の最適化である。
どうなるか分からない部分はとりあえず排除して、今現在分かっていることで移動距離を効率化しているだけ。
そうして6区で待っていた男の子の学院生の所に行き、続いて1区の解呪に向かう。
五個目の解呪を終えて南東の大通りに戻るが、最後の一個はまだ発見できていなかった。
「ただいまぁ~……。」
「おかえり、ミカ君。」
「おかえり。 大分お疲れね。」
ミカが南東の第一街壁に着くと、リムリーシェとツェシーリアが労ってくれた。
すでに今日一日で、何十キロメートルも走り回っている。
【癒し】を使ったりしているが、疲労が溜まっていた。
「最後のはまだ見つからない?」
「うん……。」
ミカが尋ねると、リムリーシェが表情を曇らせた。
ミカは腕を組み、顎に手を添えて少し考える。
これまで発見したのは1区、3区、6区、8区。
最初に赤茶けた髪の青年に連れて行かれたのは4区だ。
これまで一つも被っていない。
そう考えると、残っている区に置かれている可能性が濃厚。
つまり、2区、5区、7区だ。
「……おそらく、5区にあるんだろう。」
「どうして?」
ミカが予想を立てると、リムリーシェが首を傾げる。
「2区も7区も、捜索はしやすい。 でも、5区は一番混乱がひどいだろ?」
「そうね……。」
ミカの予想に、ツェシーリアが頷く。
とにかく人が殺到しているのは、5区にある大聖堂だ。
正直、5区内は捜索どころじゃない。
ちょっと移動するのにも苦労する有様なのだ。
「もう夕方になるし、捜索は打ち切った方がいいかもしれないな。 5区だけなら僕一人でも何とか探せると思う。」
探知機を使って、区内の広場を巡れば見つけられそうな気がする。
今は、その広場を巡ることすら困難な状態なのだ。
「問題は、どうやって皆に捜索の打ち切りを伝えるかだけど……。」
「それは大丈夫よ。」
「チャールが、見つからなくても夕刻で一旦寮に戻るように予め言ってたみたい。」
「チャール、そこまで指示してたのか。 本当に優秀だな。」
意外にも「指揮官向きだな」と感心してしまう。
ミカはつい目の前のことに気が向きがちだが、チャールはしっかりとした広い視野を持っていた。
うーん、ちょっと悔しい。
こうして、”黒い繭”の捜索は一旦終了することになった。
家に帰ると一時間ほどかけて、フィーがミカに付いた”何か”を落とす。
どうやら、またよく分からない物がたっぷりとくっ付いていたらしい。
そうして”何か”を落としている間、
「ミカ様、見ましたか! 神々の奇跡があったのです!」
ネリスフィーネがとても興奮して、昼間あった光のことを話していた。
ミカは何とか平静を保ち、ネリスフィーネの熱の籠った話を聞き流した。
フィーの仕業という事は黙っていた。
墓場まで持って行く秘密が、一つ増えてしまった。
そして、王都の混乱は当然ながら一日で済む訳もなく、その後三日に渡り続いた。
第五騎士団など、王都の治安維持に関わる皆さんは勿論、他の王国軍も応援に狩り出される事態となった。
■■■■■■
ミカは大聖堂付近の混乱が少し落ち着いてから、”黒い繭”の捜索にでかけた。
しかし、5区内の広場を回ったが、発見することができなかった。
さすがにもう消えてしまっている可能性が高いが、フィーが反応を返さないのだ。
予想が外れたか?
大聖堂の混乱は、それはそれはひどいものだったようだ。
ミカは5区の広場を巡った後、キフロドに会いに行ってきた。
「あんなのは儂も初めてじゃわい。」
キフロドは少し疲れた表情をしていた。
「礼拝堂の中にも人が押しかけてのう。 ロクに身動きも取れんようじゃったわい。」
「僕も外から見てたけど、とてもじゃないけど近づける様な状態じゃなかったよ。」
ミカがそう言うと、キフロドが頷く。
「空が光るなんてのもそうじゃが、急に黒い丸っこい物が現れてのぉ。」
「ぶふうっ!?」
吹いた。
黒い、丸い物!?
「な、ななな、何っ!? 何処に!?」
ミカが慌てて聞くと、キフロドは礼拝堂の横の壁にある”六つ輪”を指さした。
「触ろうとしても触れん、不思議な物での? 皆が奇跡の一端だ、と手を伸ばしておった。」
見えるのに、触れることができない。
空が光った奇跡と関連付け、何かの奇跡だろうと考えたようだ。
ミカはどのあたりにあったのかを聞くと、手を伸ばす。
見えないが、確かに”黒い繭”があるようだ。
思わず、ミカは複雑な表情になってしまう。
「……キフロド様。 皆には内緒ね。」
そう言って、ミカはこれが呪いに関連するものだということを説明する。
そうして、解呪は可能だが大きな音がするので、何とか誤魔化す方法を考えてくれと頼んだ。
ミカの話を聞き、キフロドも複雑な表情になった。
「教皇聖下や枢機卿らに相談しておくわい。 やれやれ……。」
後日、人払いをした上で解呪を行える環境を整えてもらう約束をして、ミカは帰った。
これで、何とかすべての”黒い繭”の解呪の目途が立ったぞ。
■■■■■■
王都の混乱が収まった翌週の陽の日、学院に許可を取り、バーベキュー大会を開いた。
参加資格は、”黒い繭”捜索に参加した人。
まあ、誰が参加したかなんて誰も把握していないので、ほぼ自由参加である。
一トンほどの肉を買い付け、寮のおばちゃんも総出で手伝ってくれて、学院のグラウンドを使っての大バーベキュー大会となった。
まあ、余ったら寮に寄付しますんで、明日の食材にでもしてください。
この国では串肉はポピュラーな料理だが、寮生は食べることがない。
寮の食事に出ないからだ。
主なタンパク質は豆で摂取する。
肉なんて高い食材が、寮生の食事にそうそう出る訳がない。
挽肉や細切れ肉がちょびっと入っているのが関の山なのだ。
「うんめえーっ!」
「美味しーい!」
と、普段はあまり口にすることのできない塊肉に、皆が喜んでくれた。
つーか、明らかに講師まで混ざってんだけど、捜索に参加したのかよ!
まあ、いいけどさ。
”黒い繭”を発見してくれた人たちには、更に別の日にお茶や食事を奢ってきたよ。
またリクエストのあったステッランとメサーライトには、同行を断られたけど。
それはちょっと薄情じゃないですか?




