第180話 不穏な噂
土の1の月、1の週の風の日。
ミカは学院から戻るとふと気になって、自宅の庭とお隣との境界を確認する。
視線を上げていくと、ミカの家に植えてある木の枝が、お隣の敷地にかかっていた。
「枝も案外伸びてたんだなあ。」
秋に落ち葉を集めたりはしたが、枝までは気にしていなかった。
ちょっと隣にかかったくらいで、すぐにご近所トラブルになる訳ではないが、やはりきちんとしておいた方がいいだろう。
「でも、冬にやるより春になってからの方がいいか?」
枝を切り落とすとして、木が成長する時期にやるべきなのか、木が休んでいる時期にやるべきなのか。
どっちにも、それなりに理屈はつけられる。
成長する時期に切れば、木が傷口を塞ぎやすいし、寒さに弱い木というのもありそうだ。
休んでいる時期に切れば、成長を阻害しないので、ダメージも少ないのではないだろうか。
「どっちだと思う?」
ミカは、庭先で洗濯物を取り込んでいたネリスフィーネに声をかける。
「何がですか、ミカ様?」
ミカが声をかけると、ネリスフィーネが手を止めて聞き返す。
フィーは風に揺れるベッドシーツと戯れていた。
「枝を剪定する時期。 暖かい時期がいいのか、寒い時期がいいのか。」
「そうですねえ。」
ネリスフィーネが、頬に手をあてて考える。
「葉の落ちる木は、葉が落ちた後が良いと思います。」
「あ、そうなんだ。」
有識者発見!
「詳しいね。 もしかして、花とか育てるの好き?」
ガーデニングでもやる?
「詳しい訳ではないのですが、教典にそうしたお話があったのを憶えています。 土の神、第三十八章辺りだったと思うのですが。」
まさかの、出典が教典だった。
途端に胡散臭くなった。
(……ま、まあ、ああいうのって、経験則なんかに基づいて書かれていることもあるし、まるっきりアテにならないとは言わないけど。)
中々に悩ましい。
どう判断すべきだろうか。
「まあ、いっか。」
とりあえず洗濯物を取り込み終わったら、”風千刃”で一気に切り落とそう。
切り落とした瞬間に”突風”を自分の家の敷地に向けて吹かせるので、枝一本もお隣には落ちない。
あまりご近所付き合いはないが、トラブルの元は未然に防いでおこう。
そうして、洗濯物を取り込むのを手伝い、一瞬で剪定を完了する。
肩にフィーを乗っけて、家に入った。
「あ、おかえりなさい、ミカくん。」
「ただいま。 もう起きて大丈夫なの?」
キスティルが自分の部屋から出てきて、ミカに声をかける。
自室でキスティルが休んでいるのは、外でネリスフィーネに聞いていた。
「うん。 さっき飲んだから。」
「…………あんまり、無理しないでね。」
「ええ、分かってるわ。 ごめんね、心配かけて。」
そう言って、キスティルは家事に戻る。
実は、最近キスティルは魔法の練習をし始めた。
先日フィーに憑依してもらって?されて?から、魔力を多少なりとも感じることができるようになり、魔法に強い興味を持つようになった。
ただ、やはり国による魔力量の選定、教会の儀式に漏れたキスティルでは、そう簡単に魔力を感じることも操作することもできない。
そのため、フィーに憑依してもらい、魔力の操作を手伝ってもらっていた。
魔力は、放出すれば増やすことができる。
仕組みは知らないが、ミカの経験でもそうだし、広く認知もされている。
フィーというアシストを使い、普通ならできないはずのことを、無理矢理可能にしているのだ。
毎日、魔力の回復薬を飲みながら。
(…………魔力の回復薬が一本一万ラーツもするって知ったら、卒倒しちゃうだろうね。)
ミカは魔力の回復薬の値段を、キスティルに教えていない。
ネリスフィーネも、魔力の回復薬の存在は知っていても、それがいくらする物なのかというのは知らなかった。
そして、二人が普段買い物に行く店には、魔力の回復薬は売っていない。
魔法具屋か、時々道具屋でも置いてる店があるね、くらいだ。
(キスティルの年齢を考えれば、魔力量を増やせるギリギリのタイミングだな。 普通に考えれば、精々あと一年。 長くても二年~三年くらいが限界か?)
魔力量が劇的に増えるのは、十六歳前後まで。
早い人では十五歳くらいで増える量が極端に少なくなっていき、人によってはどれだけ【神の奇跡】を使おうがまったく増えなくなるらしい。
遅い人だと十八歳くらいまで増える人もいるらしいが、そこまで遅い人は稀だ。
ほとんどの人が、学院を修了する前後で魔力量がほぼ増えなくなる。
現在、キスティルに触発され、ネリスフィーネも意識して【神の奇跡】を使うようにしていた。
なので、家では毎日魔力の回復薬を四本くらい消費している。
(四本×三十日で……。)
などと計算してはいけない。
趣味らしい趣味を持たず、ただ家事だけをしていた二人が魔法に興味を持ったのだ。
ミカはただ、そっとその後押しをするだけである。
黙って、ミカが月に一つ二つ多くお仕事をすれば済む話だ。
二人が目指しているのは、ミカの魔法のようだ。
普段ミカが見せている魔法は、水やお湯を作る魔法くらい。
湯場で沸騰したお湯や、混ぜるための水を用意するのを見ることがほとんどだった。
キスティルが最初に水を作ったのも、そのイメージが強かったかららしい。
(【神の奇跡】を無視して、どんどん魔法を使う人が増えちゃうね。)
リムリーシェが水の塊を作ってみせたのは驚いたが、やはりやろうと思えば誰でもできる物のようだ。
ミカとしては、それを邪魔するつもりはない。
今のところ自分の優位を揺るがされるほどだとは思っていないし、何より皆ミカの身近な人だ。
この力を悪用するような人はいないと思っている。
むしろ、一番悪用しそうなの俺だし。
いざとなれば、何でもやってやる所存である。
(しっかし、魔力の回復薬をいちいち買いに行くのが面倒すぎるな。)
毎日四本を消費するのだ。
ダースで買っても三日しかもたない。
グロスで買おうとしたら「そんなに在庫がない」と言われてしまった。
(…………自分で作ろうかな。)
回復薬を自作できるなら、魔力の回復薬も自作できるのではないだろうか。
今度、パラレイラにでも聞いてみよう。
そんなことを思うミカなのだった。
そして、後日パラレイラに聞いた衝撃の事実。
魔力の回復薬は確かに自作できる。
だが、その原材料が……。
「魔物や魔獣の魔力っ!?」
あまりの驚きに、ミカが素っ頓狂な声を上げる。
「ああ。 お前、冒険者やってるって言ったよな。 だったら、魔力の買い取りも知ってるだろ。」
「え、ええ、それは知ってますけど……。」
何でもないことのように言うパラレイラに、ミカは顔を引き攣らせて頷く。
冒険者ギルドが、なぜわざわざお金を払ってまで魔力を買い取るのか。
考えるまでもない。
”何か”に利用するからだ。
「ギルドで買い取った魔力の使い道はいくつかあるが、代表的な物の一つは魔力の回復薬の材料だな。 買おうと思えばお前でも買えるが、それなりの量じゃないと取り引きしないから、結構な値段になるぞ? もっと少ない単位で欲しければ、店を紹介してやってもいいが、割高にはなるな。」
また、魔力の回復薬は他にもそこそこ高価な材料を必要とするらしい。
さすが、売値が一万ラーツなだけはある。
ちなみに、普通の回復薬にも魔物や魔獣の魔力は使われているとのことだった。
知りたくなかったよ、そんな事実…………。
■■■■■■
土の1の月、2の週の火の日。
朝、学院へ行く支度をして部屋を出る。
「それじゃ、行ってきます。」
「はーい、行ってらっしゃい、ミカくん。」
「行ってらっしゃいませ、ミカ様。」
キスティルとネリスフィーネに声をかけると、フィーがミカの肩にふよふよ~……と乗ってくる。
「またついて来るのか? ちゃんと見つからないようにしろよ?」
ミカがそう言うとフィーは一瞬だけ光を強めた後、スゥー……と薄くなり消えていく。
ミカとフィーのそんなやり取りを見て、キスティルとネリスフィーネがくすくす……と笑う。
最近、フィーはミカの学院によくついて来る。
ミカも周りにバレないようにするなら、と容認することにした。
ただし、バレた場合には「僕は知らない振りするからな」と言い聞かせてある。
そうして、”吸収”と【身体強化】を発現し、学院に走って行く。
えらい勢いで大通りを走るミカは、ある意味名物のようになっていた。
知らない人が初めて見ると、指さして「何あれ!?」と言われるし、ミカに抜かれるタイミングで「あれ? 今日はいつもより遅いな。」と自分の出勤のペースを調整する人もいるとかいないとか。
そうして、学院に着く。
ミカが教室に入ると、リムリーシェが目敏くミカを見つけて挨拶をしてくる。
「おはよう、ミカ君。」
「おはよう!」
「おはようございます、ミカ。」
ミカはすれ違ったりするクラスメイトにも声をかけながら、自分の席に向かう。
そんな、いつもの光景。
ただ、最近は少し学院の雰囲気が暗い。
それは、ある噂が原因となっている。
昼休み。
食事中はあまり話をせず、食事に集中するのは以前と変わりはない。
ただ、食べ方は皆少し大人しくなった。
ミカがあんまりかっ込まなくなったので、皆も何となくそんな感じになっていった。
「……もう、あの話ばっかりで嫌になっちゃう。」
向かいに座るツェシーリアが、周りの席で交わされている話にうんざりという顔をする。
「……仕方、ない……。 ……私たちも、無関係じゃいられない……。」
「それは分かってるけどさあ。 学院でも寮でもそんな話ばっかりで、気が滅入っちゃうわよ。」
チャールの言葉に同意しつつも、ツェシーリアは肩を落とす。
「男子寮もそんな感じ?」
ミカがメサーライトに聞くと、メサーライトはこくんと頷く。
「寮の方がもっと雰囲気は悪いよ。 寮は半分オフみたいな場所だからね。」
「本音が出やすいんだと思うよ……。」
メサーライトの言葉に、ポルナードが補足する。
「覚悟が足りねえだけだろうが。」
「それはしょうがないよ。 僕だって、覚悟があるかって言われたら微妙だし。」
ムールトの呟きにミカが答えると、意外そうな顔をする。
「お前がか?」
「そりゃそうさ。 誰も好き好んで、戦場になんて立ちたくないよ。」
そう。
最近、学院に広がる噂。
エックトレーム王国とグローノワ帝国との戦争が近い、という噂が広がっているのだ。
実際は学院だけじゃない。
街中でも、時々耳にする。
ただ、この学院に通う学院生は、全員が軍人の予備軍。
自分はまだ正規の軍人じゃないしー、と能天気でいられるようなのは一部しかいない。
信じ難いけど、一部にはいるんです。
自分はまだ関係ないしー、と平然と言ってのける猛者というか、…………馬鹿が。
五十年続いた戦争があったことを知らないのだろうか?
中等部のミカたちは、まだ戦場に行くことを命じられるような立場ではない。
でも、高等部の子供たちは、すでに予備役という立場にある。
戦況次第では、予備役動員令の発令により、本当に戦場に立たなくてはならないのだ。
そうでなくても、今年高等部二年の学院生は、あと三カ月で正規の軍人だ。
そんな子供たちが、今この状況でどんな気持ちでいるか。
それを考えると、雰囲気が暗くなってしまうのも、無理からぬことだと思えた。
ミカの演習も、現在は高等部ではなく、中等部の方で行うことになった。
少々、風当たりが強いのだ。
自分たちは、これから戦場に行くことになるかもしれない。
そんな中、中等部のミカは「ガキが遊び気分でやってんじゃねえ」みたいに受け止める人もいるからだ。
ミカとしては学院に命じられて高等部に参加しているだけだが、そうした陰口は何度か耳にしたし、そう思われるのも仕方ないと思って黙って聞き流していた。
だが、高等部の学院生たちの心情に気づいたツァトーラルが配慮して、ミカを中等部の方に戻した。
その時、クレイリアの護衛騎士が、クレイリアに何かを耳打ちする。
だが、クレイリアは一つ頷くが、特に何かを言ったりはしなかった。
(……さすがにこうなると、学院を辞めるのも難しいか。)
高等部に上がる前に退学することも以前に考えたが、情勢的に難しいだろう。
特に、ミカの場合は相当に目立ってしまっている。
(まあ、戦場に行ったとしても自分が生き延びることだけを考えれば、多分そんなに難しいことじゃないんだろうけど。)
最悪、空飛んで敵前逃亡もできる。
そんな手段を選べるなら、だが。
ミカはレーヴタイン組の皆を見る。
ツェシーリア、チャール、メサーライト、ポルナード、ムールト。
隣に座るリムリーシェに、クレイリア。
きっと別々の戦場に送られると思うが、皆が命がけで戦っているのを分かっていて、それでも見捨てて逃げられるだろうか。
(……できなくは、ない。 ………………と思う。)
一生モノのトラウマになりそうだけど。
そんな人間にはなりたくないと思うが、それでも「逃げる」という選択肢は常に残しておくべきだ。
ミカの悪い癖で頭に血が上ると、どうしてもそういうことを考えられなくなってしまうのだけれど。
(それでも、今の俺ならただの兵士や騎士にやられる可能性はほとんどない。 あとは……。)
自分が【神の奇跡】を喰らったら、どうなる?
【爆炎】を喰らって、果たして生き残れるだろうか?
威力が可変なので運もあるが、【爆炎】の直撃を受けて生き残れる自信はさすがにない。
それと、化け物級の存在。
今のミカでも、全力でやって「勝てる」と言い切れない化け物が二人いる。
ヤロイバロフとオズエンドルワ。
飛んでれば負けないだろう、くらいしか思いつかない。
こんなのが戦場にいたら、丁寧に尻尾を巻いて逃げます。
ミカの知る範囲だけでも二人もいるのだ。
他にもごろごろしていてもおかしくない。
(はぁー……、考えたくねえ。)
少しだけ現実味を帯びてきた「戦場」に、ミカは思わず溜息が漏れる。
「……ミカ君?」
ミカのローブを、リムリーシェが軽く引っ張っていた。
「ん?」
「どうしたの、ミカ君?」
見ると、皆はすでに立ち上がり、教室に戻るところだった。
考え事に夢中になり過ぎて、気づかなかった。
「ああ、ごめん。 ちょっと考え事。」
ミカは慌てて立ち上がり、トレイを持つ。
そうしてトレイを返しながら、食堂を出た。
廊下を歩いていても、すれ違う人たちのうちの何人かが、やはり戦争について話題にしている。
学院でも寮でもこんな話が耳に入ってきては、ツェシーリアのように愚痴りたくもなるか。
「ミカ。」
もうすぐ教室に着くという所で、クレイリアがミカに声をかけてくる。
皆に先に行ってもらい、ミカはクレイリアの後をついて廊下の端の方に行く。
「何かあった?」
「ミカに、お父様からの伝言です。」
クレイリアは、周りに聞かれないように、こっそりとミカに伝える。
侯爵から伝言?
もうね、嫌な予感しかしないし、こんなの。
「ミカは、今年も里帰りしますか?」
「里帰り? あー……、まだ全然考えてなかったけど、すると思うよ。」
「そうですか。」
クレイリアが頷く。
「お父様が、今年は冬の終わりに王都には来れないということです。 ミカが里帰りする時はサーベンジールに寄るように、と。」
王都での面談を、サーベンジールで行いますというお知らせだった。
(しまったな……。 これ、里帰りしないってことにすれば、回避できたんじゃないのか?)
一瞬そう思うが、結局は同じかもしれない。
旅費は持つから、サーベンジールに来いとか言われそうだ。
(まあ、普通は王都からリンペール男爵領に行くなら、サーベンジールで一泊するのは当然か。)
そうなのである。
なので、ミカがここで言うべき言葉は一つだ。
「分かったよ。 でも、泊る部屋は自分で用意するからね? 念のために言っておくけど。」
ミカ一人だと思って、「泊って行きなさい」なんて流れになることだけは避けなくてはならない。
クレイリアが一瞬だけきょとんとした顔になるが、すぐに意図を察したようだ。
「お二人もですか?」
キスティルとネリスフィーネのことを知っているクレイリアが、確認に聞いてくる。
ミカは素直に頷いた。
「分かりました。 先手を打って、先に伝えておきましょう。」
「頼むよ。」
それから、ミカはやや神妙な顔になり、周囲を軽く確認する。
「侯爵が王都に来ない理由って……。」
そう、小声で聞いた。
クレイリアも、難しい顔になる。
「影響がないと言えば嘘になると思います。 ただ、皆さんが心配しているほど、具体的に何かあったという訳でもないと思うのです。」
「そうなの?」
まあ、何かあっても、それを漏らすわけにはいかないのだろうけど。
「直接的な兆候ではないのだと思います。 それでも、開戦は明日かもしれないですし、五年後か十年後かもしれないです。 …………お父様は必要ならば、例え十年後であろうと、このまま警戒を続けるでしょう。」
予断を許さない。
そういう段階に入った、ということらしい。
「ありがとう、教えてくれて。」
「いえ、それでは具体的な日程は、また後ほど詰めましょう。」
ミカは頷いて、クレイリアと教室に戻った。
そうして席に着くと、ミカはまた考え込んでしまう。
(…………どうすればいいんだ……?)
先程のクレイリアの話は、いつ開戦してもおかしくない、と受け止めることもできる。
里帰りは中止した方がいいのか?
リッシュ村は、戦場に近すぎる。
レーヴタイン侯爵領とリンペール男爵領は隣接している。
魔獣の棲む危険な森が間にあるため直接の行き来はできないが、経由するオールコサ子爵領を押さえられたら、どこにも行けなくなってしまうのだ。
(アマーリアやロレッタ、キスティルの家族を王都に呼ぶべきか……?)
疎開、というと都市部から地方に行くイメージだが、戦場から離れる選択が必要ではないだろうか。
(キスティルの父親はもういない。 少なくとも、最大の懸念の一つは消えている。)
もし万が一、誰かが回復薬でも使って生き長らえさせたとしても、今度は顔を合わせた瞬間に首を刎ねてやろう。
すでにミカの中でヨークアデスは死んだ存在だ。
一度死んだ者を何度死なせようと、別に何も思わない。
”幽霊”や”骸骨”を倒すのと、何も変わりがない。
(第二街区に、皆で住める大きな家を探すか……?)
少々気の早い話になるが、もしも目途が立ったらそうしたことも必要だろう。
第三街区では街壁がない。
家を用意するとしたら、絶対に第二街区だ。
(でも、村の皆はどうする?)
ミカが絶対に助けたいと思う人たちは他にもいる。
キフロド、ラデイ、ニネティアナ、ディーゴやデュール、ホレイシオ……。
ミカ一人では、彼らのことまでは難しい。
(どうすればいい……? どうすれば……。)
忍び寄る漠然とした不安に、ミカは頭を悩ませるのだった。




