第160話 読書の春
水の3の月、4の週の月の日。
仕立て屋に注文していたミカの礼服もでき上り、記念パーティの準備は整った。
ちなみにお値段、大金貨三枚である。
こんな一度しか着ない、着たくもない服に三百万ラーツなんて……。
しかし、泣いても笑っても記念パーティまで残り三週間ほど。
一日一日と忍び寄るパーティ当日に、胃の痛い毎日を過ごしていた。
ミカは学院から戻ると、自室で読書に勤しむ。
本のタイトルは『錬金術の基礎 ~サルでも分かる錬金・希少金属~ 応用編』。
基礎なのか応用なのかよく分からん、非常に胡散臭い本だが、パラレイラに勧められた本だ。
サルでも分かると銘打っているが、金や希少金属の生成の成功事例は今のところ皆無である。
それ、著者も絶対に分かってねーよな!
ミカがそんな胡散臭い本を読んでいるのには、勿論理由がある。
パラレイラに呼び出された日、ミカはある提案をしたのだ。
■■■■■■
「寮に押し込められてから、給料だけで研究を続けてるんですか?」
「あ? それ以外、何があるっていうんだ?」
「もしかして、給料全部突っ込んでます?」
「当たり前だ。」
当たり前なのか……。
まあ、寮なら食事も寝床も無料だしな。
自分で用意しなくたって、おばちゃんが作ってくれる。
「研究資金、足りてます?」
ミカがそう言うと、パラレイラが不機嫌そうに横を向く。
「……余計なお世話だ。」
確かに他人のお財布事情なんか、余計なお世話ではある。
だが、それでは話が進まない。
「僕も錬金術には興味あるんですよね。 苦い経験もありますし。」
焼かれるような日差しの下、あの日流した涙をミカは今も忘れてはいない。
あの、欲望に塗れた悔し涙を。
”吸収翼”を使える今なら、もしかしたら砂金くらいなら生成できるかもしれない。
今度、試してみよう。
ミカは魔法具の袋から金貨二枚を取り出す。
「共同研究……と言えるほど、僕はまだ錬金術に関して知識がありません。 ただ、研究への関りが深くなるほど、提供する資金を増額することは可能です。 とりあえず、毎月金貨二枚でどうですか?」
「…………何を言っているんだ、お前は?」
パラレイラが警戒するような顔になる。
「いろいろ教えて欲しいんですよ。 僕自身が研究に携われるくらいになったら、もっと資金を出してもいいです。」
「ふざけるな。 お前の手なんかいるか。 ガキが舐めたこと言ってんじゃねえ。」
取りつく島もない。
まあ、いきなり言われれば誰でもそうなるだろう。
ミカは溜息をつきながら、ギルドカードをパラレイラに差し出す。
「…………これが何だ?」
「冒険者ギルドのカードです。」
パラレイラはカード軽く見るだけで、フンと鼻を鳴らす。
「だから、それが何だってんだ?」
「ここに書かれてある通り、僕はCランクの冒険者です。」
「それがどうした。」
そろそろ面倒になってきたのか、パラレイラが横を向く。
「冒険者が一人前として認められるのは、Cランクからなんですよ。 確かにガキはガキだけど、親のすね齧って遊んで生きてきた訳じゃない。 必死になって、何度も死にかけながら認められたんです。 学院に縛りつけられながらね。」
ミカがそう言うと、パラレイラは少し驚いたような顔をして振り向いた。
学院に縛りつけられる、という言い方が意外だったようだ。
「感謝してる部分もあります。 いくつかの【神の奇跡】は本当に役に立つ。 冒険者としての活動で…………僕が生き残れたのは、学院で習得した【神の奇跡】があったおかげでもあるので。」
特に【身体強化】と【癒し】は、ミカの冒険者としての活動には必須。
この二つがなければ、とっくに命を落としていただろう。
「家が貧しかったので、早くに独り立ちできたのも有難かったかな。」
家に仕送りできるようになったのも、自分の生活費がまったくかからなかったから、というのが大きい。
まあ、結局それは手をつけなかったようだが。
「それでも……、あと四年も学院に通って、その後は十年の軍役? もう、自分の手で稼げるのに! やりたいことはいっぱいあるのにっ! ……なんでっ…………なんでだよっ!!!」
ミカは思わず、心の奥底に抑え込んでいた思いを吐き出してしまった。
感情が昂り過ぎている。
そのことに気づき、ゆっくりと大きく、はぁーー……と息を吐き出す。
何度か深呼吸して、気持ちを落ち着ける。
そんなミカを、パラレイラは苦しそうな表情で見ていた。
「……随分と、溜め込んでるものがありそうじゃないか。」
「……………………すいません……。」
ミカは最後にもう一度、大きく息を吐き出す。
「……まあ、そんな訳で。 僕が好きなことをやれる時間はそこまで多くありません。 学院に通ってる間に時間を捻出して、できるだけのことをやっておかないと、その後の十年はどうなるか。 宮廷魔法院に行けば、軍に入るよりは多少は自由が利きそうですけど……。」
そう言って、ミカはパラレイラを見る。
「話を聞く限り、ロクな所じゃなさそうだ。」
「ふっ……違いない。」
パラレイラが「くっくっくっ……。」と喉を鳴らす。
「お前の言う通り、宮廷魔法院に行けばそれなりに時間の融通は利くだろうよ。 だが、宮廷魔法院に入るには相当に頑張らんと普通は入れんぞ? 少なくとも、学院に通っている間に習得の指示が来て、それに応えるくらいの実力を見せないと――――。」
「習得の指示くらい、初等部の一年の時から来てましたよ。 【神の奇跡】は、これまで全部習得してます。」
「…………は?」
ミカの言葉に、パラレイラが口を半開きにして、固まる。
「いくら寮に引き籠ってるって言っても、学院の情報に疎すぎでしょ。 今のところ、初日にすべて習得する記録を更新中です。」
「……初日に、すべて? 嘘だろ。」
パラレイラが呟く。
パラレイラも宮廷魔法院に居たのなら、当然ながら魔法学院に通っていたはずだ。
天才肌のパラレイラでも、宮廷魔法院に入るのには多少の苦労があったのかもしれない。
仮にパラレイラが全賭けに気づいていたとしても、一日二日で必ず習得できるとは限らない。
「【神の奇跡】を習得するのがそんなに大事ですかね? 研究職なら、もっと大事なことが他にもあるでしょうに。」
【神の奇跡】の習得と、研究に必要な能力はまったくの別物だろう。
何とも的外れな採用基準だと思う。
ミカがそう言うと、パラレイラが俯き肩を震わせる。
「……お、お前……絶対、宮廷魔法院に行ったら苦労するぞ。 ぷっ……くっくっくっ……。」
そうして、パラレイラはしばらく肩を震わせ続けた。
「共同でやるかどうかはともかく、それなりに真剣に錬金術をやりたいってのは、まあ分かった。」
パラレイラが新しく入れてきた謎の黒い液体を手に、呟く。
「とりあえず、最低限の知識を詰め込んで来い。 猫の手も借りたいと言っても、本当に猫に居られても邪魔なんでな。」
まあ、比喩表現をそのまま受け取られても困るわな。
「明日また取りに来な。 それまでに読んでおくべき本を用意しておいてやる。 私のやってる研究の、具体的な話は最低限の知識を得てからだ。 ロクな知識もない奴に、いちいち説明しながらじゃヨボヨボの婆さんになっちまう。」
どんだけ補足説明する気だよ。
説明が下手すぎだろ。
ただ、パラレイラの言うことももっともなので、ミカは翌日の放課後にまた寮に寄ることにした。
そうして、積み上げられた分厚い十冊の本に、膝から崩れ落ちるのだった。
■■■■■■
「ふぅー……。」
ミカは読み終わった『錬金術の基礎 ~サルでも分かる錬金・希少金属~ 応用編』をパタンと閉じ、机の上に置く。
最近はずっと、学院の授業中も家に帰ってきても読書、読書、読書である。
夜でも”照明球”のおかげで明るい。
ランプの光量の足りない明るさで読んでいると目を悪くしそうだが、”照明球”があれば明るさは自在。
しかも燃料要らず。
一般のご家庭では夜に読書するのは厳しいだろうが、ミカなら寝る直前まで読んでいられる。
そのため、パラレイラから渡された本はこれでもう四冊読み終わった。
次の五冊目を読み終えれば、ようやく半分である。
三週間で四冊。
ほぼ一日を読書に費やしているにしては進みが遅いが、それも仕方ない。
ただ読んでも意味はないのだ。
理解しながら読んでいくため、「あれ、これどういう意味だっけ?」というのを前に読んだ本から探していったりする。
パラレイラは、本の読む順番を指定してきた。
今読んだ本を理解すれば、次の本も理解できるというのを考えた構成のようだ。
さすがに応用編というだけあって、内容が難解になってきた。
それでも何とかついていけるのは、用意された本と、それを読む順番が理に適っているからだ。
「……こんなの、本の内容を完全に把握していないとできないだろ。」
遺跡調査の資料を記憶だけで復元したり、とんでもない記憶力の持ち主だと思ったが、本当に凄まじい記憶力だ。
「もしかして、直観像記憶……?」
一般的には映像記憶というのか。
見たものを、映像としてそのまま記憶する能力を持つ人がいる。
そんな特殊な能力ではなく、単純に一度見聞きすれば忘れないなんていう記憶力を持つ人もいるが、パラレイラが相当に記憶力の優れた人なのは確かだろう。
「ミカくーん。」
そんなことを考えていると、部屋の外からキスティルの呼ぶ声が聞こえた。
「なーにー。」
ミカは返事をしながら、部屋のドアまで行き、ドアを開ける。
「いつの間にか、玄関の下から差し込まれていたみたいなの。 ミカくん宛。」
そう言ってキスティルが手紙を差し出す。
ミカが手紙を受け取ると、フィーがふよふよ~……と部屋の中に入って来た。
「ありがとう、キスティル。」
ミカがそう言うと、キスティルはダイニングに戻って行く。
もうすぐ夕食ができるようだ。
いい匂いが廊下に漂っていた。
ミカは後ろ手にドアを閉め、部屋の中に戻る。
ふと見ると、フィーが”照明球”を相手に、何やら荒ぶっていた。
突っ込んで行ったり、周囲を忙しなく動き回ったり。
フィーが触れると”照明球”の魔力量では敵わないため、その分が削れてしまう。
「フィー、余計なことするんじゃないよ。 大人しくしてろ。」
ミカがそう言うと、フィーがしゅんとなって肩に止まる。
そして、ミカの魔力を吸い出した。
(こいつ……。)
ミカがじとっとした目で肩に止まるフィーを見るが、まったく意に介さない。
構わず吸い続ける。
ミカに魔力を吸っていることがバレ、無事に無罪を勝ち取ってから、フィーは遠慮をしなくなった。
魔力を吸うのに、ミカに触れている必要はないようで、ちょくちょく魔力を持っていくようになった。
というか、学院の授業中でさえ魔力を持っていかれるのだ。
もしかしたら、距離をまったく気にせず吸い出せるのかもしれない。
寝ている間にも、勿論魔力を吸っている。
以前は起きると「少し足りないな」と思うくらいだったが、最近はがっつり減っていることがよくあるのだ。
さすがに起きた時に半分以上の魔力が減っていた時は、ミカも本気で怒った。
下手をしたら、寝ている間に魔力枯渇を起こしてそのまま気絶していてもおかしくない。
そのため、キスティルとネリスフィーネがフィーにいろいろルールを教え込んだようだ。
というか、魔力を吸ってることが分かっても判決は覆りませんか、そうですか。
なぜ吸われる当事者のミカではなく、キスティルとネリスフィーネがルールを定めるのかよく分からないが、とりあえずは任せることにした。
ミカは溜息をついて、フィーから手紙に視線を移す。
表に書かれた「ミカ様へ」の文字と、端の方に付けられた印を確認する。
(ガエラスからか……。 王都に戻ったのか?)
キスティルの家族をリッシュ村に送り届けてもらう依頼を出して、丁度一カ月くらい。
とんぼ返りなら、とっくに戻っていてもおかしくないが、サロムラッサが帰りは物見遊山をする気まんまんだった。
寄り道しながら戻ってきたのかもしれない。
中身を確認すると、第二街区の4区の酒場兼食堂が書かれていた。
ミカは魔法具の袋を身につけ手紙を入れると、ローブを羽織った。
急に慌ただしく動き出したミカに、フィーが一旦離れる。
ドアを開けるのと同時に”照明球”を消し、そのまま部屋を出る。
「ごめん、ちょっと出てくる。」
ダイニングを通りながら、キッチンで料理中のキスティルとネリスフィーネに声をかける。
「ミカ様? 今からですか?」
「ミカくん、ご飯は?」
「取っておいて。 戻ったら食べるから。 二人は先に食べていいよ。」
それだけ伝えると、ミカは家を出る。
【身体強化】を発現し、指定された店に向かって走り出すのだった。
「えらい早かったですね、坊ちゃん。 まだ一杯しか飲めてないですよ。」
「そりゃ良かった。 酔っぱらいの相手は勘弁だよ。」
ミカは席に着くと、果実のジュースを注文する。
本当は俺も酒が飲みたいぞ。
ガエラスは緑酒を片手に木の実の盛り合わせを摘まんでいる。
緑酒、結構強いみたいだけど大丈夫なのか?
確か、トリュスがべろんべろんになった時、止めで飲んでたのが緑酒だったはずだ。
「無事に送ってきましたよ。 今日はその報告に、ね。 なるべく早く聞きたいかと思って。」
どうやらガエラスは、リッシュ村に二週間近く滞在していたらしい。
ケーリャとサロムラッサは送り届けた後、すぐに遊びに行ったという。
送って行く道中で、一人はしばらく様子見で残るということで話がついていたのだとか。
「用意された家は、正直あんまりいい家じゃないですねえ。 ただ、あの村は全体がそんな感じなんで。」
「ああ、それはしょうがないね。 僕の家もそうだったから。」
「見てきましたよ。 坊ちゃんの生家も。 こう言っちゃなんだが、苦労されたんですねえ。」
ガエラスが、少々同情の籠った目でミカを見る。
あれ?
そこまでひどいか?
「あの村じゃ、教会のシスターが無料で【癒し】を使ってくれるんですねえ。 ちょっとびっくりしましたよ。 癒し手がいることも、無償で施すことにも。」
「いいシスターでしょ。 僕の命の恩人なんだよ。」
「はは、いろいろ聞きましたよ。 随分無茶したようですねえ。」
ガエラスが楽しそうに、緑酒を一口飲む。
ミカも届いた果実のジュースを飲んだ。
が、あまりの甘さに顔をしかめる。
ガエラスが苦笑して、木の実の乗った皿をミカの方に押しやった。
ミカはクルミのような物を一つ摘まみ、口に放り込んだ。
木の実の淡白な味と塩気で、甘味を上書きする。
「それで、仕事の方ですがね。 母親は調理場に入ることにしたようです。」
「調理場? また、随分ハードな所に……。」
ホレイシオには身体の弱いことを伝え、配慮をお願いしていたのだが。
「最初は紡績工場で、負担の少ない仕事を割り振るつもりだったみたいですよ。 ただ、あっしらが行った時、丁度調理場の人が高齢で辞めようと思ってるって話をしてたところで。」
それを聞いた母親が、料理なら得意だとホレイシオに言ったらしい。
「最初は見習いってことで入ったみたいなんですが、すぐにテキパキやるようになったって。 工場長が驚いてましたよ。」
どうやら、自分から調理場に入ったようだ。
「でも、大丈夫なの? 調理場は負担が大きいよね?」
「まあ、楽じゃねえでしょうねえ。 でも、本人はすごいやる気出してましたよ。」
キスティルに料理を仕込んだのは、母親だという。
なら、確かに得意なことなのかもしれないが。
(工場と、畑で働いている人のための食事を用意するんだ。 毎日二百食近くを作るはず。)
ミカの住んでいた王都の男子寮でさえ、そこで暮らす子供は百五十人。
それが二棟あり、それぞれで調理していた。
子供の百五十食でも大変そうなのに、大人の畑仕事をしている人を含めての二百食だ。
相当な量になるはず。
「まあ、やってみて、何かあればまた考えるでしょう。 気をつけて見ておくから、と工場長とシスターからの伝言です。」
「そっか。」
ラディに負担をかけてしまうが、頻繁に母親の様子を見てくれているようだ。
なら、王都にいるミカが、あれこれ言ってもしょうがないだろう。
任せると決めた以上、任せるべきなのだ。
「弟の方はまあ、慣れない畑仕事で苦労してますよ。 手とか足にできたマメが潰れたって、半泣きです。」
そう言ってガエラスが苦笑する。
「それくらいじゃ、【癒し】は使ってもらえないか……。」
「使ってもらえないというか、使っちまうとまた元に戻っちまうからねえ。」
「まあ、そうだね。」
マメができて、それが潰れて皮膚ができて。
そうこうしているうちに皮膚が厚く、固くなっていく。
【癒し】では元に戻ってしまうので、何度潰しても皮膚が柔らかいままだ。
ミカも学院に入ってすぐに散々歩かされた。
幸いミカは足にマメができても潰れはしなかったが、毎日ぶっ倒れるのが当たり前だった。
もしマメが潰れても、毎日状態を看ながらそのまま放置が基本だ。
悪化するようなら【癒し】で治すが、そうでなければ自然に治す。
そうして強くしていくのだ。
ガエラスがカリッと木の実を噛んだ。
「慣れない環境で苦労はあるでしょうけどね。 こんな温かく迎えてもらえる所なんて、他にはないでしょう。 坊ちゃんの人徳ですよ。」
「あははは、人徳? そんなのあったっけ?」
ミカは笑い飛ばした。
「冬の終わりに、キスティルとかもリッシュ村に行って過ごしたからね。 キスティルが受け入れられたから、キスティルのお母さんにも好意的なんでしょ。」
ミカがそう言うと、ガエラスがわざとらしく溜息をつく。
「あのねえ、坊ちゃん? そのキスティルさんが受け入れられたのだって、坊ちゃんの人徳でしょうが。」
そうして、残った緑酒をぐいっと飲み干す。
「ふぅー……。 どんなにキスティルさんがいい人だって、普通はそう簡単には受け入れられませんよ。 時間はかかるし、誤解されることだってある。 どんなことだって、悪意的に見ようとすれば、いくらでもこじつけられるんだ。」
そう言ってガエラスは空のグラスを振って、お代わりを注文をする。
「そうされずに、素直な目で見てくれるってだけでも、普通は運次第なんです。 もっと自信を持っていいんですよ?」
「…………自信、ねえ。」
なんか、前にヤロイバロフにも似たようなことを言われたな。
遠慮し過ぎるとか、難儀な性格してるとか。
ガエラスは届いたグラスを受け取ると、ダンッとテーブルに置く。
何やら、半分目が据わっているのだが。
「こうなったら、今日はとことん行きますよ。 坊ちゃんの良い所を、あっしがたっぷり教えてあげますよ。 あっしの情報を舐めんなってんです!」
「ちょ、ちょっと待って! 家で二人がご飯作って待ってるんだけど!? ていうか、絶対酔っぱらってるよね!?」
「いーや、酔ってませんよ! さあ、坊ちゃんも飲みましょう!」
「飲めねーよ! 報告終わったんなら帰らせろよ!」
こうして、絡んでくるガエラスから逃れるのに少々苦労した。
(何で俺の周りは、こんな絡み酒ばっかりなんだ!?)
苦労して家に帰ると、キスティルとネリスフィーネが食事を摂らずに待っていた。
ミカは戻るのが遅くなったことを、二人に平謝りするのだった。




