第150話 やってみたかった
血の匂いが漂う深い森の中で、ミカはにやりと口の端を上げる。
周囲には何体もの魔獣の死骸。
その死骸に群がる別の魔獣と、ミカを取り囲む魔獣で、この辺りには百を超える魔獣が集まっていた。
「ふっふっふっ……。」
不敵に、ミカは笑う。
「僕は〇身の度に魔力が遥かに増す。 僕はその変〇を後二回残してる。 この意味がわかるな?」
返事はない。
ただの魔獣のようだ……。
魔獣たちはマウンティングをしたり、雄叫びを上げたりと、好き勝手にミカを威嚇してくる。
そんな魔獣たちを、ミカは半目になって眺める。
(…………うーむ。 『何だってー!?』とか、リアクションを返してくれないと、いまいち気持ち良くないな。)
少々拍子抜けである。
まあ、リアクションなど返ってくる訳がないのだが。
なにせ、言葉が通じないのだから。
言ってみたかったセリフを言ってみたが、いまいち盛り上がらなかった。
「まあいいや。」
ミカの足に噛みつきにかかったソウ・ラービを、片足を上げてひょいと躱す。
「”吸収翼”!!!」
ミカが叫ぶように”魔法名”を口にすると、輝く光の翼がファサッと背中に現れる。
ミカの第二形態である。
もっとも、第三形態なんてありませんが。
二回も変身できません、はい。
だがその姿に、魔獣たちが一段と警戒を露わにする。
「”風刃”!」
まるで岩を繋げた芋虫のような魔獣に無数の”風刃”を放つと、瞬く間に乱切りにする。
ミカはバッと両手を開く。
「”鉄弾”!」
両手のマシンガンを乱射するように、左右の魔獣に向けて鉄の弾丸を次々に喰らわせる。
勿論、回転を加えているので貫通力は抜群だ。
何体ものアグ・ベアが蜂の巣になり、もんどり打って倒れる。
ドドドドドドドドドドドドドドッ!
体高が二メートルを越すような、巨大な猪の魔獣がミカに突っ込んで来た。
だが、あえてミカはそれを躱さず両手を向ける。
「”鉄壁”!」
ドッシャアーーーーッ!
地中深くから厚さ五十センチメートルほどの鉄の壁が突然迫り出す。
巨大な猪が鉄の壁に頭から突っ込んだ。
ズガアーーーーーーンッ!!!
凄まじい衝撃音が森に響き渡る。
が、その後の動きがない。
ミカが鉄の壁を回り込むと、猪はどうやら頭が潰れているようだった。
「…………自分の突進に自分が耐えられないって、どういうことだよ。」
よくこの種は生き残っているな。
自滅して滅びるだけの未来しか見えない。
普通の獲物なら、相手の方が吹き飛ぶから問題ないのだろうが、さすがにビクともしない”鉄壁”が相手では耐えられなかったようだ。
ミカは謎の鉄壁から離れ、場所を移動する。
自分で作っておいて何だが、ぶっちゃけ邪魔だった。
「ほら、こっちだ、こっち。」
ミカは森の奥へ誘導しながら、”風刃”と”鉄弾”で次々に魔獣を倒す。
そうして移動している時に、気づく。
移動している先に、これまで見たこともない巨大な魔物がいる。
「”望遠鏡”。」
ミカは移動しながら、まだ数百メートルは離れているその巨大な魔物を確認する。
「…………巨人? ”単眼巨人”か?」
単なる大きい人なら攻撃するのも気が引けるが、目が真っ赤に輝いているのが見える。
魔物で間違いない。
「”光砲”!」
ミカは左手を突き出すと、”単眼巨人”に次々とレーザーを放つ。
距離があるので収束した光の減衰が気になるが、これも試しだ。
ブオオオオオオオオオオオオッ!!!
胸を五本ほどのレーザーが貫通するが、”単眼巨人”が元気に雄叫びを上げる。
口径が小さすぎて、ダメージは与えているが、倒しきれないようだ。
木に二センチメートルほどの穴を空けられるレーザーなんですけどね。
「薙げば切断できそうだけど……。 いっちょ、あれを試してみるか。 そろそろ完成させたいし。」
ミカは空中に飛び上がると、一気に加速して”単眼巨人”に近づく。
ありったけの魔力を集め、”吸収翼”で集めた魔力を更に注ぎ込む。
必要となる魔力が多すぎるのが難点だが、それだけの威力は期待できる。…………はずだ。
ミカは集めた魔力を”単眼巨人”に向けて飛ばした。
その魔力は”単眼巨人”にぶつかった瞬間に、一気に展開する。
”単眼巨人”を丸まる包み込む魔力の球体。
「いっくぜえーっ! ”爆縮”ッッッ!!!」
ミカが叫んだ瞬間。
ズドンッ!!!
”単眼巨人”が真っ赤な球体に飲み込まれた。
均等に配置された百を超える爆発の起点が、すべて同時に爆発する。
そして、その爆発の運動エネルギーは、すべて中心に向かう様に制御している。
爆発でダメージを与えるのではなく、均等に配置した爆発の起点からの、圧力でダメージを与えるのだ。
中心にどのくらいの圧力がかかるのか、数字で確認はできないが……。
ズンッ!
「ぐっ!」
”爆縮”が消えた後すぐに、吹き飛ばされそうなほどの衝撃波がやってきた。
そして、後に残ったのは消し炭のようになった”単眼巨人”の残骸。
バスケットボールのような大きさの黒い物が、五~六個残されていた。
「あんな大きい魔物が、こんなになるのか。」
吹き飛んだり、燃えたりした分もあるだろうが、中々の威力だ。
爆発起点の配置ミスで、圧力が外に漏れることもなかったようだ。
今度、固さに定評のある魔物にも使って、更に検証を進めてみたい。
ミカは地上に戻ると、集まって来た魔獣を”風刃”と”鉄弾”で、どんどん倒す。
倒しても倒しても、集まってくる魔獣たち。
森の奥へ奥へと誘導しながら、殲滅せんとばかりに蹴散らす。
「おっと。」
数で押してくる猿のような魔獣を”鉄弾”で倒すが、それでもミカに肉薄してきた。
ミカは躱しながら、つい口の端が上がってしまう。
「やるじゃん。」
自分の周囲に展開する魔力範囲を一気に二十メートルまで伸ばし、一度清算する。
「”風千刃”!」
ミカは踊るように蜥蜴の魔物の攻撃を躱しながら、”風千刃”を発動した。
その瞬間、周囲にいた魔物たちが一斉にビクンッ!と身体を強張らせ、次々に倒れて悶え始める。
「はは、ボムだな、これは。」
シューティングによくあった。
一旦周囲のすべてを片付ける切り札。
そうして、再び殺到し始めた魔獣を倒し始める。
(やっべ。 すっげえ楽しい。)
血が湧き、肉が躍った。
高揚感に包まれながら、ミカは血煙の中を踊る。
ドクン!
更なる高揚感の高まりに、まるで心臓まで踊っているようだった。
ドクン!
いや、これは高揚感なんてものじゃない。
万能感。全能感。
蕩ける様な至福の中、ミカは踊りながら魔獣を屠る。
(もっと、もっと、もっともっともっと……っ!)
俺を楽しませろ!
ミカは”風刃”で真っ二つになった狼のような魔獣を、更に”風刃”で粉微塵にする。
「あは。 あはは……。」
思わず笑いが込み上げる。
そうして、いつまでもいつまでもミカは深い森で踊り続け、魔獣たちを屠り続けた。
バシャアーーーーーッ!
ミカは湯場で”水球”のお湯を被り、血と汗を流す。
魔獣からの攻撃は受けなかったが、さすがに返り血まですべて躱すのは難しい。
だが、ミカが血だらけになっているとキスティルとネリスフィーネが心配するので、さっさと流しておく。
手から”水飛沫”を弱く出し、全身をゴシゴシとこする。
そうして、再び”水球”を被る。
「ぷはぁーーっ。 さっぱりした!」
ミカは新しい服に着替え、村の集会場に向かった。
集会場の前には、百人くらいの人が集まっていた。
皆、手に皿を持ち、立ったまま食べている。
結局、いくつかのテーブルと椅子を用意するだけで、立食形式にしたようだ。
今日は陽の日。皆がお休みの日。
ミカがリッシュ村に帰省して、三週間ほど経つ。
ミカは村人全員にカンパのお礼をする、何かいい方法はないかと考えた。
そのことをキスティルとネリスフィーネに相談したら、
「お料理を振る舞うとかどうかな?」
とキスティルが提案してくれた。
「でも、それって僕からのお礼になる?」
ミカの料理では、お礼どころか嫌がらせにしかならない。
提案してきた以上、キスティルが自分で作るつもりなのだろうけど。
「勿論なるわよ。 ミカくんのお礼に私が手を貸すくらい、村の人も不思議には思わないわ。 だって……。」
そう言って、キスティルがもじもじと顔を赤くする。
「私たち、です。 ミカ様には費用の方で頑張ってもらえれば大丈夫です。」
「そりゃ、お金を僕が出すのは当然だけど、二人はいいの?」
リッシュ村には二百人くらいの住民がいるのだ。
まだ小さすぎて食べられない子供や、寝たっきりの老人は除いても、それでも百七十は超えるだろう。
多目に作ると、結局二百人分くらいは作る必要がある。
「人数が多いから、計画をちゃんと立てて作らないといけないけど、大丈夫よ。 任せて。」
そうして「ミカのお礼」という名の、キスティルとネリスフィーネによる手料理を振る舞う会が開催されることになった。
村長にも相談して集会場を借り、ついでに村人への宣伝もお願いしておく。
「それは構わないが、大丈夫なのかね? こう言っては何だが、費用の方が結構かかるのではないか?」
料理だけではなく、酒や果実ジュースなども振る舞うことを伝えると、さすがに少し心配になったようだ。
「費用は問題ありません。 むしろ、料理の方が心配です。 なにせ数が多すぎるし、僕が役に立ちません。」
ミカが胸を張ってそう言うと、村長が苦笑する。
「それでは、前日や当日に手伝ってもらえる人を少し探してみようか?」
「お願いします。」
料理によっては、前日から下拵えして漬け込んでおく物もあるらしいので、手伝ってくれる人の手配も頼んだ。
が、この問題はすぐに解決した。
「もう、そういうのはまず私たちに言うべきでしょ!」
「お母さんたちが手伝うから、他の人は大丈夫よ、ミカ。」
聞きつけたアマーリアとロレッタが、参戦した。
こうして、ノイスハイム家主催として、料理を振る舞う会が催されることとなった。
つまりは、そういうこと。
村の人たちからすると、キスティルとネリスフィーネも、すでにノイスハイム家の人ということになっている。
優秀な宣伝部長のおかげで。
ミカは集会場の前を見回し、宣伝部長の所に向かった。
「行ってきましたよ。 これで大分数は減らせたと思うんですけど、どうですかね。」
料理をがっつくデュールの口元を拭いていた、ニネティアナに声をかける。
ミカはここ一週間ほど、森で魔物・魔獣の間引きをしていた。
そのため、この食事を振る舞う会に関しては、買い出しなどを少し手伝ったくらいでほとんど任せっぱなしになっていた。
「うん、ご苦労様。 多分もう大丈夫だと思うわ。 ありがとうね。」
そう、にっこりとミカに笑いかける。
■■■■■■
十日くらい前。
ニネティアナとディーゴがミカの家にやって来て、真剣な顔で相談された。
「ここ何カ月か、森がすごく不安なの。」
そう、表情を曇らせるニネティアナ。
そんなニネティアナの言葉を支持するディーゴ。
「俺は気配だの何だのは人並みにしか分からねえけどよ。 ニネティアナの勘は馬鹿にならねえ。 それで命拾いしたことも一度や二度じゃねえんだ。」
冒険者として現役の頃から、ニネティアナはそうした勘が働くことがあるという。
「多分だけど、森の魔獣が増えすぎたのかも……。」
ニネティアナは、魔獣が好む本来の生息域から、弾かれた個体が増えているのではないかと考えているようだ。
そうした個体によって徐々に生息域が広がっていき、リッシュ村に近づいてきているのではないか、と。
「……ごめんね、ミカ君。」
そう、ニネティアナがミカに謝る。
「どうして謝るんですか?」
ミカは努めて明るく答える。
「何かあれば言ってくださいって言ったのは僕ですよ?」
だが、ニネティアナとディーゴの表情は曇ったままだ。
きっと、ミカのような子供に頼ることを苦しく思っているのだろう。
「任せてください。 二つ名持ちが伊達じゃないってとこ、見せちゃいますよ。」
そう、二人に笑って見せるミカだった。
そして、ミカは二人に頭を下げる。
ただし、今度の二人はニネティアナとディーゴではない。
キスティルとネリスフィーネである。
「村の人へのお礼は僕が言い出したことなのに。 本当にごめん。」
「そんな、謝らないで、ミカくん。」
「こちらは全然大丈夫ですから。 それよりも、ミカ様の方が心配です。」
料理を振る舞う会の企画が進行しているのに、その主催者が手伝えないという事態になってしまった。
「元々ミカ様には買い出しなどをお願いするつもりでしたので、それさえ手伝ってもらえれば。 村の人との段取りは、お、お義母様と、お義姉様がいますので……。」
ネリスフィーネが顔を真っ赤にしながら言う。
そんなに照れるなら、言わなきゃいいのに……。
もう、リッシュ村の中では、キスティルとネリスフィーネは完全にミカの嫁である。
優秀な宣伝部長のおかげで。
厳密には婚約者ということだが、婚約者が二人いるってどうなんだ?
村の人は、それすら「さすが魔法士様だ」とか思ってるようだけど。
ミカは、もはや否定することに疲れてしまった。
ミカも村に二人を連れてくれば、そうした誤解を受けることは予想していた。
ただ、予想外だったのは、その熱量である。
「いやあ、違うんですよ~。」
と説明すれば、そうした誤解は簡単に解けると安易に考えていた。
ところが、
「もう、照れちゃってえ。」
「そんなこと言うもんじゃない、男らしくないぞ!」
と、誰もミカの言葉に耳を貸さず、「もっとしっかりしろ」とお叱りを受ける始末。
何より、本人の前で「違う」というの、はひどく傷つけることになる。
そうして流されるうちに、完全にそういうことになってしまった。
田舎の嫁を求めるパワーを読み違えてしまった。
舐めていた、と言ってもいいだろう。
正直言えば、ミカも二人のことはとても可愛い子だと思っている。
ただ、元々が四十代後半のおっさんだったせいか、「こんな子供と婚約とか犯罪臭しかしねえよ!」とか余計な倫理観が働いてしまうのも事実。
これは口が裂けても言えないが、そもそもがミカのストライクゾーンがもっと上なのだ。
なので、「これが光源氏計画ってやつか」などと、雑念が湧いてしまったりする。
■■■■■■
ミカは帰省中、あり余る時間でずっと考えていたことがある。
新たな魔法の開発についてだ。
”吸収翼”による魔力の供給で、これまで以上に魔力を必要とする魔法を扱えるようになった。
これまで通りバージョンアップでの対応もいいが、新しい魔法もいくつか考えたい。
そこで、どちらもとりあえず思いつくことをやってみることにした。
ということで、まずバージョンアップしたのが”石弾”、”風刃”、”土壁”だ。
これを”鉄弾”、”風刃”、”鉄壁”へとバージョンアップさせた。
かなりの魔力量の増加になったが、材質を石や土から鉄に変更。
”風刃”の名称は変わっていないが、やはり小さな石粒から鉄粒に変更している。
これらは”吸収翼”を使ってじゃないと、すぐに魔力枯渇になる。
使えない訳じゃないが、連発するためには”吸収翼”が必須だ。
そして、新しい魔法として”光砲”、”望遠鏡”がある。
これは、光を操作することで実現した。
これまで、ミカは光の操作を少々面倒に考えていた。
というのも、光の正体が電磁波だからだ。
ぶっちゃけよう。
ミカは光のことをよく理解していないのだ。
ミカにとって、電磁波の代表は電波だ。
ラジオなんかで送受信するものだ。
それと光は同じ物だよ、と言われても「?」となってしまうのだ。
学生時代に持ってしまった苦手意識を、そのまま引きずってしまった。
そして、その苦手意識のまま、何となく光に関わる魔法を避けていた。
だが、”吸収翼”はアニメで恰好良かったなという軽いノリで作れてしまった。
難しく考えるから苦手なのであり、使いたいから使う、くらいの考えでも十分扱えたのだ。
ならば、と考えてまずは”望遠鏡”を作ってみて、更に”光砲”を開発した。
ちなみに、”照明球”という室内照明用の魔法も開発済みである。
そのうち、光学迷彩なんかも作ってみたいけど。
そして、”爆縮”だ。
単純に爆発させる魔法はすでに【爆炎】がある。
同じ様な魔法をわざわざ作るのもちょっとなあ、と思い少し捻ってみた。
爆発という現象を魔法で再現するのは中々面倒だったが、要は急激な圧力の発生による衝撃波だ。
大量の大気を一気に作り出し、炎や石などの混ぜ物が入れば、爆発という状態を再現できる。
で、【爆炎】以上に威力を高める方法はないかと考え、思いついたのが”爆縮”だ。
どうしてだかは忘れたが、原子爆弾などでこうした圧縮方法を使っていたのを思い出した。
なので、やってみた。
中心部の圧力を高めるためには、大気が漏れてはいけない。
だが、ミカが作り出した大気なら自分で操作できるが、元々存在する空気は動かすことができない。
そこで、自分が作り出した大気で一気に”爆縮”の範囲を覆い、中心部に向けて押し込む必要がある。
この制御が中々上手くいかなかったが、ようやくまともに機能するようになった。
作り出す大気も酸素を多くしたり、水素も入れてみたり、起点すべてで同時に着火したりといろいろ試行錯誤した。
まあ、酸素と水素の混合気体による爆発はおまけだ。
メインは爆発的な大気の生成。
空気圧と水蒸気でどこまで圧力がかけられるかと思ったが、案外何とかなるものだ。
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ミカは、夢中になって料理を食べるデュールの頭を撫でながら、どんな魔獣をどのくらい狩ったかをニネティアナに伝えた。
そうして、集会場の入り口に向かう。
料理を手に笑顔で談笑している人たちの間を縫っていると、途中で何度も「美味しいよ」「ありがとう」などの声をかけられる。
集会場の入り口には、一通りの料理を作り終わり、休んでいるキスティルとネリスフィーネがいた。
「ありがとう、二人とも。 皆も喜んでくれてるみたいだ。」
二人とも、やり切ったという達成感を感じさせるいい笑顔をしていた。
「ミカくんもご苦労様。 怪我はしていない?」
「大丈夫。 攻撃も受けていないよ。」
そうミカが答えると、キスティルがふんわりと微笑む。
「ミカ様もどうぞ。 今用意しますね。」
「あ、いいよ。 自分で取ってくるよ。」
ミカがそう声をかけるが、ネリスフィーネはすぐに料理を取りに行ってしまう。
そこに村長がやって来た。
「ミカ君、盛況なようだね。」
「村長。 協力していただき、ありがとうございました。」
ミカが頭を下げると、村長が少し真剣な顔になる。
「これくらいは大したことじゃないさ。 それより、ディーゴから聞いているよ。 森で魔獣を狩っているんだって? 怪我などはしてないかい?」
ディーゴが村長に報告をしたようだ。
「それは大丈夫です。 慣れてますから。」
ミカがそう言うと、村長は苦笑する。
「それならいいが。 無理はしないようにな。」
「はい。」
ミカが素直に頷くのを見て、村長はキスティルや戻って来たネリスフィーネに労いの声をかける。
アマーリアやロレッタも、給仕を手伝ってくれたおばちゃんたちと談笑していた。
(うん、やって良かった。)
ミカは皆の笑顔を見て、心からそう思った。
(…………あとは、アマーリアたちとキスティルたちに、何かお礼をしないとだけど。)
ほぼ丸投げしてしまったお詫びを兼ね、四人へのお礼をどうするか悩むミカなのだった。




