第149話 閑話 神学者ワーターエラム
【神学者 ワーターエラム視点】
グローノワ帝国とエックトレーム王国を分断する山脈。
その山脈に、古代の遺跡の点在する場所がある。
激しい風化により、かつての姿は窺い知れないが、それらの遺跡の周辺にはいくつもの洞窟があった。
その洞窟からは古代の光神教に関わる重要な物がいくつも出土しており、最近新たな洞窟が発見された。
ワーターエラムは、洞窟発見の報にすぐさま帝都カーチを飛び出し、現地に駆け付けた。
洞窟を発見したのは、彼が個人で雇っている調査団だった。
神学者、ワーターエラム。
五十代半ばの、如何にも学者らしい風貌の男だ。
伸び放題の髪に、無精髭。
ヨレヨレのシャツは、最後に着替えたのがいつかと問い詰めたくなるほどに薄汚れている。
彼の、公式な場での肩書は枢機卿。
グローノワ帝国の光神教で枢機卿を務め、本来は教会で神々に奉仕する立場である。
だが、彼にとって枢機卿の肩書はただの許可証にすぎない。
光神教の研究こそが、彼の生涯の使命である。
枢機卿の肩書は、枢機卿でないと閲覧することの許されない資料などを調査するために得ただけだ。
枢機卿を務める者は、すべて司教位にある。
では、司教でないと枢機卿に選ばれないかというと、実はそんなことはない。
司祭位にあれば、教皇に任命されて枢機卿になることができるのだ。
そうした場合、枢機卿に就任する前に形だけ司教位にして、枢機卿を務めることになる。
さらに言えば、教皇は聖職者である必要すらない。
光神教の男性信者であれば、誰でも教皇に選ばれることができる。
ただし、教皇の選任は枢機卿の満場一致が絶対条件。
そうして選ばれた教皇がもし司教位になければ、教皇就任の前に形だけ司教位になる。
教皇が聖職者、それも枢機卿以外から選任された例は、ここ七百年ほどない。
だが、それまでは時々そうした教皇がいたのは事実である。
選ばれる理由は様々だが、要は金か権力。
どちらか、若しくは両方を使い教皇となることが多かったようだ。
権力闘争で司教位を剥奪され、破門とされた者が、その後の情勢の変化で教皇に選出されたという例もある。
神々の教えを説く教会内が、実はそんな金と権力闘争の歴史であることを知る者は、あまり多くない。
教会もそうした醜聞はいろいろと取り繕い、覆い隠してきたからだ。
ワーターエラムの使命は、そうした教会の欺瞞を暴くことにも繋がる。
しかし、それを馬鹿正直に人に言うつもりは、ワーターエラムにはない。
あくまで個人的に興味があり、好奇心を満たすために自費で調査をしているだけ。
教会が転覆するような新たな発見をしても、それを発表し、教会と対立することは望んでいなかった。
ワーターエラムは、遺跡の近くの簡易拠点に建てた小屋で、歴代の教皇についての研究をしていた。
大聖堂の図書室から、本来持ち出しを禁止されている書物を少しばかり拝借し、発掘作業の合間に調べているのだ。
「…………やはり、こちらの名簿とは一致しないか。 そうなると、枢機卿から名前の消えたギュブライエスが選出されたと考えるべきか……?」
以前に調査した結果と、新たに持ち込んだ書物とを見比べ、違いを確認する。
ワーターエラムはギシッと軋ませながら椅子の背もたれに寄りかかり、資料の食い違いの理由を想像する。
現在行っているのは、歴代教皇の名簿作成だ。
そんなものはどこかの大聖堂にでも行って、図書室で調べればすぐに見つけることができる。
だが、その名簿には意図的に、いくつもの名前が抹消された痕跡があるのだ。
在任期間百年近くの教皇など、誰が信じるのか。
そんな杜撰な隠蔽でも、精査しなければ誰も気にしない。
意図的に就任や退任の年を曖昧にしているものがいくつもあるからだ。
それでも他の資料、例えば会議録などを調べることで、当時の本当の教皇の名前が載っていることがある。
直接名前が載っていなくても、議題に「教皇選出」に関連するものがあれば、その時期に新たな教皇が選出されていた可能性がある。
教皇の名前を何らかの理由で抹消したため、その前の代の教皇が「在任期間百年」という超長命教皇になったのだと思われた。
おそらく、この百年の間に五人は教皇に就いたはずだ。
多ければ十人以上が就いていてもおかしくない。
それを丸ごと隠蔽するのだから、少し調べれば綻び自体は誰でもすぐに分かるというものだ。
だが、年代を遡れば遡るほど資料は少なくなり、手掛かりがなくなる。
そこで、当時の枢機卿の名簿の中から突然名前が消えた者が、実は教皇に選出されていたのではないかと予想した。
今度帝都に戻ったら、この線で裏取りをしてみようと予定表に書き込む。
もっとも、教皇の選任に聖職者以外が選ばれた例がいくつもあるので、これも無駄に終わる可能性があるが。
「……無駄足を厭うて、研究ができるか。」
ワーターエラムは、独りごちる。
研究とは、基本は無駄足、失敗の連続だ。
それでも、「間違い」を取り除いていくことで、いつかは「正解」に辿り着く。
その瞬間の喜びを思えば、無駄足の千や万など……。
「さすがに、万の無駄足は勘弁してほしいがな……。」
自分の思考に自分で突っ込む。
その時、誰かが走って小屋の方にやって来る音が聞こえた。
ザッザッザッザザァーーッ、バンッ!
勢い良く、小屋のドアが開かれる。
「先生っ! 発見しましたっ!」
小屋に飛び込んで来たのは、四十代前半の浅黒い男。
調査団を任せている、セステンドフだった。
「おお、出たか!? 何が出た!」
ガタンと椅子を鳴らし、ワーターエラムが立ち上がる。
「壺が三つです!」
興奮冷めやらぬ様子のセステンドフだったが、そこでバツの悪そうな顔をする。
「あー……、ですが、一つは潰れちまっていて……。」
長い年月により、破損してしまった物があるらしい。
「残念だが、仕方あるまい。 無事だった物が一つでもあれば御の字だ。」
落ち込むセステンドフに、ワーターエラムが声をかける。
そうして、羽織っていた上着を脱ぐと、すぐに洞窟に向かう。
洞窟に行くには、ちょっとした山登りになる。
厚着をしていると、あっという間に汗だくになってしまうのだ。
「何番にあった。」
「3番です。」
ワーターエラムは山を登りながら、壺を発見した場所をセステンドフに聞く。
洞窟の入り口は長年土砂に埋もれていた。
だが、何らかの理由でその土砂が少し崩れ、小さな穴が空いた。
その穴を調査団が発見し、掘ってみたら意外に大きな洞窟だった、という訳だ。
洞窟は内部でいくつかに枝分かれし、ワーターエラムはその枝分かれした洞窟に番号を振っていた。
「ふぅー……ふぅー……、やはり、もう少し道を整備した方がいいな……。」
洞窟までは、急勾配に垂らしたロープに掴まって昇り、枯れ草を踏みしめて険しい道を進む。
あっという間にワーターエラムの息は上がってしまった。
「そんなことしたら、教会に見つかっちまいますよ、先生。」
汗だくというほどではないが、肩で息をするワーターエラムを見ながら、セステンドフが苦笑する。
一部の遺跡周辺での調査には、教会の許可がいる。
ワーターエラムは、それを許可証で難なくクリアする。
そのために面倒ながらも司祭位の叙階を受け、教皇個人に多額の寄付をすることにより、枢機卿に任命してもらったのだ。
もう二十年近く前のことで、当時は前教皇が就任して間がない頃だった。
以来、かかった費用の元を取ろうとばかりに、ワーターエラムは許可証を使って様々な調査の許可をもぎ取って来た。
ただし、調査で何か発見すれば、教会に無償で寄贈することになっている。
そういう契約を結ぶことで、許可がおりるのだ。
なので、それについてはワーターエラムも渋々ながら了承している。
だが、いつ寄贈するかまでは定められていない。
ということで、ワーターエラム自身がたっぷりと調べ尽くし、「もうここにはミミズかネズミしかいないだろ。」と見切りをつけた時点で報告すれば契約違反にはならない。
……ではあるのだが、教会に見つかってしまえばそうもいかない。
なので、調べ尽くすまでは秘匿する必要があるのだ。
何とか洞窟の入り口に辿り着いた時には、ワーターエラムはもうそこに座り込みたくて仕方がなかった。
水入れの革袋から浴びるように、果実酒の水割りを飲む。
「ぷはあっ……、生き返る。」
「先生、飲み過ぎないでくださいよ。」
セステンドフも、自分の水入れから水を飲み、軽く息を整える。
「この程度で酔うものか。 私はなあ――――。」
「はいはい、分かってますから。 さあ、さっさと行きましょう。」
そう言ってセステンドフが松明に火を点ける。
「そう急かすな。 お前も五十を過ぎれば分かるが、昔と比べて体力が――――。」
「大変だからって、フィールドワークを減らしたからじゃないですか?」
セステンドフが、ワーターエラムの言葉を遮り「早く行きましょう。」と急かす。
ワーターエラムは「やれやれ……」と首を振った。
ワーターエラムの家は果実酒の酒造を生業としている。
凝り性は血筋なのか、ワーターエラムの祖父は果実作りに生涯を捧げた。
品種改良に心血を注ぎ、非常に優れた果実を何種類も育てた。
ワーターエラムの父は、醸造酒造りに生涯を捧げた。
祖父の作った優れた果実を使い、素晴らしい果実酒を造り上げた。
そして、三代目であるワーターエラムは光神教の研究に生涯を捧げる。
祖父や父の苦労を台無しにする、云わば道楽息子と言ってもよい所業ではあるが、表向きの肩書は「枢機卿」だ。
なんて立派な方だと評判ではあるが、親子三代、それぞれが好き勝手にやっているだけである。
ワーターエラムは父の作ったいくつもの酒造場を人に任せ、自身は研究に没頭していた。
セステンドフに案内され、洞窟の奥に着く。
発掘の作業をしていた数人の男たちが場所を空け、ワーターエラムが現場を見やすいようにする。
ワーターエラムは、その光景に身体が震えそうになる。
まだ半分以上が土に埋もれた状態ではあるが、確かに壁に壺が埋まっていた。
掘り出している途中の壺を、慎重に観察する。
「……封がされていた痕跡があるが、さすがにもたなかったようだな。」
壺の蓋には、蝋のような物が付着している。
だが、長い年月による劣化で、それもボロボロになっていた。
ワーターエラムは、壺の形状や描かれた紋様などから年代を推測する。
「どうですか、先生。 これまで以上に古い物ですかね。」
セステンドフが、壺をじっと見るワーターエラムに聞いてくる。
「……いや、おそらく三千年から三千五百年前の物だろう。 壺の形状に、その頃によく作られた特徴がみられる。」
「ぐおおおおぉぉ……。」
セステンドフが崩れ落ちた。
「……大発見だと、思ったのに。」
セステンドフの様子に、ワーターエラムが苦笑する。
「大発見であることに違いは無いぞ、セステンドフ。 この頃の資料は極端に少ない。 貴重な資料だ。 慎重に掘り出してくれ。」
「……はぁ~……。 了解です、先生……。」
ワーターエラムがフォローするが、セステンドフは落ち込んだままだった。
そんなセステンドフの肩を、ワーターエラムはポンポンと叩く。
別にワーターエラムは、セステンドフを慰めるために言った訳ではない。
ワーターエラムの言った通り、三千年以上も前の資料となると、とても少なかった。
当時の光神教の教え、人々の受け止め方、どのように生活に溶け込んでいたのか。
そうしたことを、少しでも知ることのできる資料を発見できれば、私費を投じ調査団を派遣した甲斐があったというものだ。
「潰れていたというのも見せてくれ。 どこだ?」
セステンドフがのろのろと立ち上がり、洞窟を少し戻った場所まで案内する。
そうして、端の方に除けられた、盛られた土を指さす。
「最初は気づかずに土を掘ってたらしいんです。 で、壺の破片らしき物がいくつも出てきて……。」
そう、セステンドフが少し言いづらそうにする。
「元々潰れていたのでは、気づかなくても仕方ないな。 周辺の土も含めて、これで全部か?」
ワーターエラムが聞くと、セステンドフが頷く。
「数人でこの土の中から、出土品を集めてくれ。 羊皮紙は多分ダメになっているだろうが、僅かにでも形を留めている物はすべて回収してくれ。」
「羊皮紙もですか?」
「羊皮紙もだ。」
おそらく何かが読み取れるほどの物は残っていないだろうが、すべて回収しておく。
雇った現場の者の判断で勝手に捨てられては、万が一に貴重な物があっても捨てかねない。
捨てるにしても、その判断はワーターエラムが行う。
「壺の破片、金属片、紙片、棒きれ一本も捨てるな。 それを判断するのは私だ。」
「了解しました。」
ワーターエラムの指示に、セステンドフが姿勢を正して答えた。
■■■■■■
ワーターエラムは、発掘された壺を帝都カーチにある自宅に持ち込んだ。
簡易拠点で出土品を広げては、紛失しかねない。
簡単に中の確認だけして、そのまま自宅に運び込んだのだ。
帝都に戻る前に、光神教の聖地であるウープ・サクトゥの大聖堂に立ち寄り、調査より戻ったことを報告。
今のところ何も発見していないと、洞窟や壺のことを隠して報告した。
聖地ででっち上げの調査報告を提出した後、帝都に向けて出発する。
聖地ウープ・サクトゥと帝都カーチは乗り合い馬車で二日ほどの距離だ。
ワーターエラムは自分の馬車を持っているが、それでも一日半はかかる。
帝都では、まず遺跡の調査から戻ったことを帝都の大聖堂に報告。
そして、ワーターエラムが枢機卿として本来務めるべき仕事場である支局にも報告を行う。
聖邪検省帝都支局。
これが、ワーターエラムが現在務めている仕事場である。
聖邪検省は、検閲や異端の調査などを司る、聖地に本省を置く機関だ。
帝都支局だけで、ワーターエラム以外にも三人もの枢機卿が籍を置いている。
というより、本来は三人の枢機卿が籍を置く。
ワーターエラムがおまけなのである。
聖邪検省の大きな業務の一つが、検閲。
市中に出回っている書籍を検め、内容が不適切なものは焚書に。
あまりにもひどい内容のものが多数出回っている場合、禁書目録に禁書とする理由とともに掲載し、実物を数冊聖地に送って封印してもらう。
なぜ実物を残しておくかというと、他にも同じ物があるかもしれないからだ。
比較する物がなければ、同じ物だと断定ができない。
なので、厳重に封印し、類似の物が出てきたら比較して調べるという訳だ。
勿論、こんな仕事をワーターエラムが真面目にやる訳がない。
だが、聖邪検省への配属はワーターエラム自身の希望によるものだ。
なぜ聖邪検省への配属を希望したか。
それは、この禁書目録にある。
禁書目録は、禁書の理由も載っている。
これを見ているだけでも、意外に楽しめるのだ。
というのも、時代時代で、禁書とする理由が結構変わる。
ひどいものでは、ある時代の教典の一部が、後の時代で禁書に指定された例すらあるのだ。
一言で教典といっても、実は一冊の本ではない。
大元となる原典はあるが、それ以外にも様々な神話などが追加されたり削除されたりを繰り返し、一冊にまとめられた物が光神教の現在の教典だ。
その追加された神話が、後の時代では禁止事項に触れ、教典から削除された。
教典なのであまりに多く出回り過ぎて、さすがにすべてを回収しきれないが、その教典は現在でも所持しているだけで罰せられる。
ちなみに、ワーターエラムは当然隠し持っている。
時代によって、教えなどにも変化がある。
現在の光神教の聖人では、真っ先に挙げられるのがヒルディンランデルだ。
最初の聖人。
最初の【神の奇跡】の使い手。
だが、時代を遡れば、実はヒルディンランデルは聖人の中に入ってすらいない。
後の研究で様々な功績が分かり、聖人に列せられたが、それまでは埋没した存在だったのだ。
ワーターエラムはそうした、光神教の変遷を時代背景などと絡めて知ることに楽しみを感じるのだ。
他人からすれば、どこが面白いのかと思うかもしれない。
だが、それでいい。
なぜなら、これはワーターエラムの趣味なのだから。
そう。
ただの趣味。
恵まれた家に生まれたおかげで、ワーターエラムはその趣味に没頭していられる。
何か大きなことを成そうとかを考えている訳ではない。
知りたい。
だから調べる。
それを、金の力で叶えているだけなのだ。
ワーターエラムは自宅に運び込んだ壺の中から、羊皮紙片を一つずつ取り出して並べる。
とりあえず順番などは気にせず、一通り出す。
テーブルの上にずらりと並んだそれらを眺めるのが、至福の時間だった。
そうして、何気なく一番近くに置いた羊皮紙片を見る。
「……ハベ……ルーメ……。 ……”光を掲げる者”か? ヒルディンランデルのことだな。」
さすがに三千年以上経っているため、傷んで読みにくい箇所が多い。
それでも何とか、続きを読み進めてみる。
「…………ウォカ……ム……。 ”言”。」
”言”は【神の奇跡】のことだと考えられている。
ヒルディンランデルと【神の奇跡】。
どうやらこの羊皮紙片には、ヒルディンランデルの【神の奇跡】について書かれているようだ。
「……これは、これ以上は傷んで読めそうにないな。」
その隣の羊皮紙片に視線を移す。
「ミー……クル……? ……ああ、”奇跡”か。」
”奇跡”も、【神の奇跡】を表す単語として、よく見られるものだ。
更に読み進める。
「”奇跡”……ウォカーブ……コントラ……? ”奇跡”と”言”?」
これは、ちょっと珍しい。
”奇跡”も”言”も、どちらも【神の奇跡】を表す単語だ。
一つの羊皮紙片に、この二つの単語が並んだ物は、これまで見たことも聞いたこともなかった。
「つまりは……、【神の奇跡】で【神の奇跡】に、対抗……? いや……。」
ワーターエラムは目を瞑り、頭の中で整理する。
この場合、おそらく……。
「【神の奇跡】で”言”に対抗した?」
そう呟いた瞬間、ぶるっと身体が震える。
【神の奇跡】と”言”が別の物?
それは、つまり……?
「……とんでもないことになるぞ。」
これまで同一のものを表すと考えていた二つの単語。
それが実は別物だったとなれば、解釈の仕方がひっくり返る可能性がある。
何より、これまで三十年以上もかけたワーターエラムの研究のすべてが台無しだ。
それほどの大発見。
ワーターエラムの足が、ガクガクと震えた。
「……これは…………こんなのが公になったら、本当に教会が転覆しかねない。」
テーブルの上を眺める。
羊皮紙片はまだ二十枚くらいある。
さらに、もう一つ羊皮紙片の入った壺があるのだ。
それらには、どんなとんでもない内容が書かれているのか。
ワーターエラムは、別の羊皮紙片を読む。
「……”力”……ウェネー……ム? ……アデ……トゥス……?」」
”力”は魔力のことを表す。…………と思う。
ちょっと、先程の例があるので、断言しづらいが。
「これは、セステンドフにも手伝わせて、一から見直さなくては……。」
声の震えを抑えることができない。
今回の発見だけではなく、”奇跡”と”言”を別の物とした場合、どんな意味になるのかを過去に調査した分も調べ直さなければならない。
ワーターエラムは震える手で羊皮紙片を丁寧に一枚ずつ、綿を敷いた木箱に移す。
そうして、これからの研究の計画を一から練り直すのだった。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
第3章 魔法学院初等部編はこれにて完結です。
次回から第4章 魔法学院中等部編となります。
最近は本当に多くの方に読んでいただけて、大変有難く、また嬉しく思っております。
拙文で心苦しい限りですが、楽しんでいただけたら幸いです。
それでは、第4章も引き続きよろしくお願いいたします。




