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【書籍版第2巻発売中!】 神様なんか信じてないけど、【神の奇跡】はぶん回す ~自分勝手に魔法を増やして、異世界で無双する(予定)~ 【第五回アース・スターノベル大賞入選】  作者: リウト銃士
第3章 魔法学院初等部の”解呪師”

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第140話 呪われた聖女2




 ミカはネリスフィーネの手に触れ、呪いへの干渉を試みる。


(”吸収翼(アブソーブ・ウィング)”は問題なく動いてるな。)


 ガッツンガッツン、呪いに魔力を削られるが、それを上回る魔力の回復量。

 明らかにこれまでよりも魔力が吸収できている。

 あくまで感覚的な話ではあるが、確実に倍以上は吸収できるようになっていると思う。

 ただ、さすがに何百倍とまではいかないようだ。


(自分の身体よりも、吸収効率が落ちるのかね? まあ、どうせ満タン状態になるなら、二倍も百倍も変わりはないけど。)


 稼働率が五%でも百%でも、結果的に消費する魔力を賄ってくれるならどちらでも構わない。

 ミカはネリスフィーネの呪いの解呪に取り掛かった。


(…………? なんか、変なのが混じってる?)


 何というか、呪いとは別の”何か”がミカの魔力に干渉してくるのを感じる。


「…………ウ、クゥ……グ……。」


 その時、ネリスフィーネが呻き、苦しみ出した。


「あ、大丈夫ですか?」


 ミカはぱっと手を離し、ネリスフィーネに声をかける。

 しばらくネリスフィーネが苦しむようにもぞもぞする。

 身悶える、というほどには身体を動かせないようで、僅かにぴくぴくするだけだ。


「…………キュウニ、イタク……ナッテ……。」

「どこが痛いんですか?」

「……ゼンブ……。」


 全身が痛むということだろうか。

 まあ、これだけ全身が捻じ曲がり、ひしゃげていて痛くない訳ないだろう。


「そういえば、身体はどうしてこんなに、その…………曲がってしまったんですか?」


 あまり「ひしゃげた」とか「捻じ曲がった」という表現を本人に言うのはどうかと思い、何かいい表現はないかと考えたが…………無駄だった。

 結局、曲がったという表現でいくことにした。


「…………、……ワカラ、ナイ……。 …………スコシ、ズツ……。」


 少し考えるような間の後、ネリスフィーネが答える。

 どうやら、時間をかけてちょっとずつ曲がっていったらしい。


(呪いのせいなのか? それとも、別に原因があるのか。 ……普通に考えれば、呪いの影響なんだろうけど。)


 だが、何だかよく分からない要因がネリスフィーネの中にある。

 呪い以外の”何か”。


(…………【祝福】……?)


 前に呪いも【祝福】も、同じ魔力によるものではないかと考えたことがある。

 もしかしたら、ミカに干渉してきたのは【祝福】だろうか。


(俺の魔力を異物と判断して、干渉してきた……、とか?)


 ちらりと黒い(もや)を見る。

 時々、火花のように弾かれる黒い(もや)がある。


(【祝福】が呪いに抵抗してるのか……?)


 やはり、こんな状態になってもネリスフィーネが命を繋いでいるのには、【祝福】が関係していそうだ。

 それでも、三カ月もの間絶食して、生きていられることにはいろいろ納得できない部分もあるが。


 ミカはもう一度呪いに干渉する。

 ”吸収翼(アブソーブ・ウィング)”をぶん回し、圧倒的な魔力量で呪いに対抗し、干渉できる部分を探す。


「……ウ、……ク……。」

「ごめん。 ちょっと我慢しててね。」

「……ワカ……タ……。」


 ミカは魔力で干渉できる箇所を探すが、どうにも呪い以外の”何か”のミカへの干渉が気になる。

 しかも、その”何か”は呪いにも干渉しているようで、呪いに纏わりついてミカが探るのに非常に邪魔だった。


(……干渉すること自体は可能になったけど、どうにも邪魔をされていつもみたいに解呪ができないな。)


 いちいち手間がかかる。

 これは相当に時間がかかりそうだ。


 ミカは一旦諦めて、少し考える。

 ネリスフィーネと、取り憑いた呪いを見る。


(…………この呪いと、地下墓所(カタコンベ)にいた”不浄なる者”は関係あるのかな?)


 チレンスタの説明では、採掘場が地下墓所(カタコンベ)にぶつかった。

 その時点で地下墓所(カタコンベ)は”不浄なる者”に溢れていた。

 呪いが噴き出し、ネリスフィーネが呪われたのは、その後だ。

 もし呪いと”不浄なる者”に直接関係がないのであれば……。


 ミカは立ち上がると、石室の石の扉を見る。

 潜り抜ける隙間は四~五十センチメートル。

 ちょっと足りない。


 ミカは左手を向けると”石弾(ストーンバレット)”を作りだす。

 大きさはボーリングの球よりも、やや大きいくらい。

 その”石弾(ストーンバレット)”を、可能な限りの速度をイメージして撃ち出す。


 ドガァーーーンッ!!!


 凄まじい破砕音と砂埃。

 ミカが”突風(ブラスト)”で砂埃を適当に散らすと、砕かれた石の扉が散らばっているのが見えた。


「うっし。 んじゃ、いっちょ行きますか。」


 そう言ってミカは、ネリスフィーネを両手で抱える。

 【身体強化】を使っているので重さは然程でもないが、ちょっと持ちにくい。

 そして、当然ながら持っているだけで、とんでもない量の魔力が削られていく。


「……ナ、ニ……?」

「ちょっと手間がかかりそうなんで、別の場所でやります。」

「…………?」


 ネリスフィーネは、意味がよく分かっていないようだ。

 ミカは地下墓所(カタコンベ)、そして採掘場をてくてく歩きながら、簡単に説明する。


「……ノロ、イ……、トク……?」

「そう。 今までもいっぱい解いてきてるから、そこは心配しないで。 ただ、かなり手間取りそうだから、もうちょっと落ち着いた環境でやりたいなって。」


 ミカは、ネリスフィーネの解呪を別の場所で行うことにした。

 ちょっと、この石室に何日も籠る気にはなれない。

 人気が無く、人目に付きにくく、だけど街とのアクセスは良い拠点で集中して行うことにした。


 ミカは採掘場の外に出た。

 外は真っ暗だった。

 何時間採掘場に籠っていたのか分からないが、真夜中なのは確実だろう。

 外には誰もいなかったが、松明の明かりが近づいてくるのに気がついた。

 松明の明かりが大きく揺れるのが見えたので、きっと「採掘場の入り口に誰かいる」と、向こうも気づいたのだろう。

 まあ、光の翼が出てるから、そりゃ遠目にも気づくよね。


「ちょっとびっくりすると思うけど、大丈夫だから。 それじゃ、行くよ。 "低重力(ロウ・グラビティ)"、”突風(ブラスト)”。」


 ミカはネリスフィーネを抱えたまま、上空に飛び上がる。

 ネリスフィーネの体重は分からないが、お構いなしに”突風(ブラスト)”の出力を上げることで一気に飛ぶ。

 ”吸収翼(アブソーブ・ウィング)”による吸収量の増加で、然して苦も無く出力を上げられるようになった。


「ここからだと、二時間はかからないと思うから。 何かあれば声をかけてね。」


 そう言ってミカは目的地に向かって一気に飛んで行く。

 空気抵抗は自分の周囲に展開する”突風(ブラスト)”で軽減しているので、そこまで風は受けない。


「……ソ……ラ、トベ……ル…………アポ、ス……ト……。」

「ん? 何?」


 飛んでいると、ネリスフィーネの呟きが聞こえた。


「……アァ……、カミガミヨ……。」


 よく分からないが、神様にお祈りをしているらしい。

 まあ、聖女だしね。

 ミカは気にせず、そのまま飛び続けた。







■■■■■■







 そうしてやって来たのは、元ズレープトのお家(アジト)

 半年ぶりくらいの訪問である。

 ここなら万が一”不浄なる者”が寄って来ても、他人(ひと)様の迷惑にならない。…………と思う。


「さすがにもういないよね。」


 アジトのあった岩陰を空から見下ろし、様子を窺う。

 ミカの証言でアジトにはオールコサ子爵領の警備兵たちが調査に来たはずだが、さすがにもう調査も終わっているだろう。

 あとは、アジトが使えるかどうかだが。


「入り口の封鎖くらいで済ませてくれてるといいんだけど。」


 ミカはアジトの入り口に下りた。

 特に封鎖などもしていなかった。


「いいのか、それで?」


 誰かに再利用されたらどうするのだろうか。

 まあ、すでに場所は分かっているので、時々確認に来るだけでいいと思っているのかもしれない。


「じゃあ、有難く使わせてもらおうかな。」


 ミカは”火球(ファイアボール)”で光源を確保するが、すぐに消した。

 ”吸収翼(アブソーブ・ウィング)”の光の翼だけで、”火球(ファイアボール)”よりも明るかった。

 洞窟の中に入っていく。

 どうやら、中は完全に浚っていったらしい。

 何も残されていなかった。


「ちょっと待っててね。」


 ミカはネリスフィーネを下ろすと、魔法具の袋から毛布を取り出す。

 毛布を二つに折って、地面に敷く。

 そして、そこにネリスフィーネを乗せる。


「まあ、無いよりはマシでしょ。」

「……アリガ、トウ……。」


 そうしてミカはネリスフィーネの前に座ると、今度は糧食を取り出す。

 王都を出る時に、とりあえず六食分ほど買っておいた。

 日持ちするタイプなので、かなり固く、美味しくはない。

 まあ、非常用として、念のために用意したやつだ。


「食べられる……?」


 ミカはネリスフィーネに声をかけるが、微かに首を振る。

 おそらく「ノー」ということだろう。

 考えてみれば、ずっと食べていないのだ。

 食べるにしても、最初はパン粥のような物からにするべきだろう。


「喉は乾いてない?」


 そう尋ねるが、やはりいらないらしい。

 本当に、どうやって生きているのだろう。


 ミカは一言断って外に出た。

 そこで固い糧食をもそもそと食べる。

 さすがに、食べられない人の前で堂々と食べるのはちょっと気が引けた。

 ミカは何とか急いで食べるが、元々が食べにくい物なので、少々時間がかかってしまう。


「……はあ。」


 思わず溜息が漏れる。

 さすがにかなり疲労を感じる。

 朝早くに王都を出てから、ほぼ動きっ放しだ。

 採掘場を踏破し、地下墓所(カタコンベ)の探索、”悪霊の群体(レギオン)”との戦闘。


「さすがに、ちょっと限界かも……。」


 今から無理して解呪に取り掛かっても、確実に途中で寝落ちする。

 一応、気つけ薬もあるが、今から使っても大して長くは持たないだろう。


「仮眠を取らせてもらおうかな。」


 ネリスフィーネに言って少し休ませてもらって、それから解呪に取り掛かった方が効率はいいだろう。

 そう方針を決め、ミカはアジトに戻る。


「――――ということで、少し休まないと僕の身体がもちません。 仮眠に入ります。」

「……エエ……。」


 特にネリスフィーネに異論はないようだ。

 ミカは魔法具の袋から毛布を取り出すと包まって、ネリスフィーネの横で寝ることにする。


「……ココデ……ヤ、スム……?」

「だめ? 気になるならあっちに行くけど。」

「……ノ、ロイ……。」


 そんなの、別に気にせんけど。

 黒い(もや)がうねうねしてるだけじゃん。

 ミカは「ふぁ~……。」と欠伸をする。


「あぁー……、本当、もう限界……。 おやすみ。」


 そう言ってごろんと横になると、すぐに寝息を立て始める。

 明かりを失った真っ暗な洞窟の中、ネリスフィーネの目はじっとミカを見続けるのだった。







■■■■■■







「……んん……。」


 ごろんと寝返りを打つ。


 バチンッ!


「うぎゃっ!?」


 凄まじい衝撃が全身に走り、ミカは飛び起きた。

 慌てて周囲を見回す。

 外からの微かな光で、ここが洞窟であることを思い出す。

 そして、すぐ横にネリスフィーネがいた。


「………………、あー……もしかして、触っちゃった……?」

「……エエ……。」


 どうやら、寝返りを打った時にネリスフィーネに触れてしまったようだ。

 えらい目にあった。


(次からは、もう少し離れて寝るか。)


 寝返りを打つだけでこんな目に遭うのは、さすがにもう遠慮したい。


 ミカは眠い目を擦りながら立ち上がり、毛布を仕舞う。

 ぽりぽりと頭を掻く。


「……ちょっと、外出てくる。」


 どうにも眠気が取れない。

 日光を浴びて、もう少ししっかりと意識を覚醒させたい。


 横にさえなれればどこでも寝れるが、それで疲れが取れる訳ではない。

 この、「一応寝たけど疲れが抜けない感覚」に、ある意味懐かしさを感じる。

 泊まり込みの時は、いつもこんな感じだった。

 凝り固まった身体を解しながら洞窟を歩き、外に出る。


「くぁ……、目が……。」


 自分が”幽霊(レイス)”にでもなった気分だ。

 日光を浴びるだけでダメージを受けている気がする。


「今日も暑ちぃなあ……。」


 すでに、日は結構高い。

 十時にはなっていないくらいかな?


 ミカはもそもそと糧食を食べ、両手で水を掬うようにして”(ウォーター)飛沫(スプラッシュ)”で水分補給。

 いくらでも湧き出る水があるって、まじ便利だね。


 それから岩場を囲む森に行って、”風千刃(サウザンドエッジ)”で木を一本切り倒す。

 さらに”風千刃(サウザンドエッジ)”を使い、板を一枚削り出す。

 机の天板サイズだ。


「これ一枚のために木を一本切り倒すとか。 我ながら無茶苦茶だね。」


 使えそうな倒木でもあれば良かったのだが、すでに相当傷んだ物しかなかった。

 そうして洞窟に戻ると、早速解呪に取り掛かることにした。


「どうやら、呪いに干渉すると身体が痛むようです。 それに関しては申し訳ないですが、ちょっと手の打ちようがありません。 我慢してください。」


 麻酔でもあればいいが、そんな物はない。

 この世界のどこかにはあるかもしれないが、今のところは聞いたことがない。

 なので、我慢してもらうしかない。


「……エエ……。」


 ネリスフィーネは短く答える。

 ミカは削り出してきた板を地面に置き、魔法具の袋から雑嚢を取り出す。

 そして、雑嚢の中から紙とペン、インクを取り出す。


 この雑嚢は普段学院に持っていっている物だ。

 ミカは普段から、魔法具の袋に学院に持っていく雑嚢を仕舞っている。

 魔法具の袋があれば雑嚢なんか必要ないといえばないのだが、あまり魔法具の袋をひけらかすようなことはしたくなかった。

 なので、一応皆と同じスタイルになるように雑嚢も使っている。

 目立たないようにするためのカモフラージュの一環ではあるのだが、単なる悪あがきかもしれない。


「それじゃ、行きますね。 ”吸収翼(アブソーブ・ウィング)”。」


 ミカは”吸収翼(アブソーブ・ウィング)”を展開してから、ネリスフィーネの手に触れ、呪いを解いていく。

 呪いの干渉できる箇所を探すのに、よく分からない”何か”を邪魔に思いながらも地道に解く。

 そして、一カ所解けたらそれをメモしていく。


(…………本当に邪魔だな、これ。)


 集中したいのに、集中できない。

 ちょっとイライラしながらも、それでも黙って解呪を続ける。


 二時間ほど続けたところで一息つく。

 そして、再び再開し、更に二時間ほど解呪をしていく。


「ふぅーー……。 すいません。 ちょっと休憩してきます。」

「……エエ……。」


 ネリスフィーネに声をかけ、ミカが立ち上がった時、黒い(もや)の一部の塊がふわっと消えた。


「……ウ……ク……。」


 ネリスフィーネが僅かに呻く。

 それまでネリスフィーネの全体を覆っていた靄が、一部ではあるが取れた。

 ミカはじっとその部分を見るが、靄が戻ることはない。

 欠けた部分は、欠けたままになっている。


「どういうことだ?」


 ミカはもう一度座り直し、干渉してみる。

 だが、探ってみても、さっきまでと変わったような感じはない。


「…………何だ?」


 何だか、よく分からない現象だ。

 ミカはぽりぽりと頭を掻き、息を吐く。


「とりあえず休憩行きます。 疲れて頭が働かない……。」


 あー、缶コーヒー飲みたい。

 何だか、頭だけが疲れているような感じに、これまた懐かしい気分になる。

 昔は仕事の合間に缶コーヒー片手に同僚と雑談し、気分転換していたものだ。

 ふとそんなことを思い出し、思わず笑ってしまった。







■■■■■■







 ミカがネリスフィーネの解呪に取り掛かって三日ほど経った。

 途中でヤウナスンに行って湯場を借りたり、食料を買って来たりもした。

 そして、ネリスフィーネの解呪も大分進んだ。


 ネリスフィーネの呪いは、やはりある程度解呪が進むと黒い(もや)が取れるようだ。

 そして、それを行っているのは、どうやら【祝福】のようだった。


 最初は邪魔だと思った”何か”…………【祝福】からの干渉。

 だが、慣れるとちょっとしたコツのようなものが掴めてきた。

 まず、呪いの干渉できる箇所を探すのに、この【祝福】が非常に役に立つ。

 ミカが自分で探さなくても、この【祝福】が探してくれるのだ。

 【祝福】が呪いに干渉しようと殺到している場所が、呪いの干渉できる箇所なのだ。

 呪いを一カ所解除したら、猟犬や鵜でも放つように「行って来い」と【祝福】に好きにやらせる。

 で、【祝福】が干渉しようと集まった所にミカが干渉してやれば、簡単に解呪できるというわけだ。

 おそらく【祝福】も呪いに干渉しようとしているのだろう。

 だが、呪いと【祝福】に出力の差がありすぎて、まったく干渉できない。

 それでも、ひたすら呪いに干渉しようと殺到するわけだ。


 そして、呪いが剥がれていくことで、ネリスフィーネの身体にも変化が起きてきた。

 ガチガチに固まって、捻じ曲がっていたネリスフィーネの身体だが、少しずつ解れてきたのだ。

 呪いが解ければすぐに元に戻る、という訳ではないと思うが、身体を治してあげられる可能性が出てきた。

 ネリスフィーネの身体のことは、ミカも解呪後の懸念の一つだった。

 だが、まずは解呪が先だと、あえて今は考えないようにしている。


 そして、そもそものこの身体の捻じ曲がりだが、ミカはこの【祝福】が怪しい気がしてきた。

 普通は呪いによって引き起こされたと考えるべきなのだろうが、何となく腑に落ちない。

 ミカも根拠がある訳ではないのだが、どうにも【祝福】がアクティブ過ぎる。

 ネリスフィーネを生かしているのも勿論この【祝福】なのだろうが、もしかしたら【祝福】がネリスフィーネの身体を捻じ曲げたのではないだろうか。

 ネリスフィーネを生かすために。


 強すぎる呪いを逸らすため、とでも言えばいいのだろうか。

 ネリスフィーネを生かすために、【祝福】がネリスフィーネの肉体に無理矢理干渉してまで、呪いに抵抗、若しくは影響を逸らしているのではないか、と思っている。

 まあ、これはあくまでミカの予想だし、確かめようのないことではあるが。


 何にしろ、【祝福】はすごいものなのかもしれないが、【祝福(こんなもの)】がなければネリスフィーネはもっと楽に死ねたはずだ。

 ミカが”解呪師(ディスペラー)”として有名になったから助かる可能性ができた。

 だが、もしミカに聖女救出の依頼が来なかった場合はどうなるか。

 ネリスフィーネはあと何年、何十年、あの石室で苦しむことになったのだろうか。

 それを思うと、


(【祝福】なんて言っても、ロクなもんじゃねーな。)


 そんな感想を抱いてしまうミカなのだった。





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― 新着の感想 ―
>ファンを逆向きにして、魔力を吸い込むようにさせましょう。w CPUファンはヒートシンクに風を当てて冷やすので元から吸気ですぜ><
空冷式のCPUクーラーみたいな形にすれば表面積も多くてファンで吸気(吸魔?)も出来て効率よさそう……でもかっこ悪いのが欠点
[気になる点] よく言われてるけど、祝と呪いは似ている字で近しいものだからなあ
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