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【コミックス第1巻発売中!】 神様なんか信じてないけど、【神の奇跡】はぶん回す ~自分勝手に魔法を増やして、異世界で無双する(予定)~ 【第五回アース・スターノベル大賞入選】  作者: リウト銃士
第3章 魔法学院初等部の”解呪師”

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第119話 凶賊狩り




「ほぉ~……、あそこがシャクサーラか。 かなり大きい街だな。」


 ミカは上空から、遥か先にある大きな街を眺める。

 街の規模でいえば、間違いなくサーベンジールよりも大きい。

 海に面した街で、港に大きな船がいくつも停泊しているのが見える。


「通商連合の首都だっけ。 眺めもいいし、こういう所も住むには面白いかもなあ。」


 ここは、場所でいえばアム・タスト通商連合の領空。

 まあ、まだ領空侵犯の概念がないだろうから、気にすることはないだろうが。







 ミカが長期休暇中の冒険者活動の拠点をヤウナスンにし、すでに十日ばかり通っている。

 朝出掛けて、夕方に家に戻るという形で依頼をこなしていた。

 今朝もいつも通り家を出て来たのだが、ヤウナスンに向かう途中で、ふと思い出したことがあった。


「シャクサーラって街があるんだっけ?」


 ヤウナスンから南下して、荷馬車で三日くらい行った所に通商連合の首都がある。

 ミカはそれを、クレイリア誘拐事件の時に官吏から教えてもらった。

 賊たちが「シャクサーラに戻れば」みたいなことを話してたけど、シャクサーラって何?みたいな感じで。


 特に用事はないが、見るだけ見てみるか、とやって来た訳だ。


「……魚介系の料理が美味そうだな。」


 ミカはよだれが出そうになるのを、ごくんと飲み込む。

 港町なら、当然そういう料理が発達しているはずだ。


「でもなあ、醤油がないんじゃなあ。」


 さすがに生魚を食べる文化はないだろう。

 刺身、寿司、海鮮丼。

 煮つけにも醤油は欠かせない。


「あー、だめだ。 考えてたら増々食べたくなる。」


 醤油など絶対に手に入る訳がないのだ。

 ならば、思い出すだけ自分を苦しめることになる。


「どうやったって食べられないのに、何で思い出すかね……。」


 ミカはくるりと向きを変え、来た方向を引き返すのだった。







 引き返す途中、街道から外れた岩場に人が立っているのが見えた。

 周りに家屋は見えないので、住人ではなさそうだ。


「冒険者かな……?」


 何か、採集の依頼で訪れているのだろうか。

 すでに国境の検問を越え、この辺りはオールコサ子爵領だ。

 検問とヤウナスンの中間くらいからやや検問寄りの、街道を大きく外れた岩場。

 周囲は木々に囲まれ、冒険者でもなければ、こんな所には来ないだろう。


「ご苦労様でーす。」


 ミカは飛行しながら、手だけでスチャッと敬礼をし、そのまま飛び去った。







 ヤウナスンの近くの森に着陸し、走って冒険者ギルドに向かう。


 ミカがギルドに入って行くと、入り口近くにいた冒険者たちが驚いた顔をする。

 気にせず、そのまま依頼書の張られた掲示板の前に行く。


 ヤウナスンのギルドはこぢんまりしている。

 コトンテッセよりはマシだが、さすがにサーベンジールほど多くの依頼があるわけもなく、中々依頼探しは大変だ。

 街の規模を考えれば、それも当然ではあるが。


 だが、ヤウナスンのギルドには、他では見たことのない特徴があった。

 それは、賞金稼ぎ(バウンティハンター)ギルドと並んでいることだ。

 建物の中からも繋がっていて、簡単に行き来ができるようになっている。


 どうやら、このヤウナスン。

 賞金稼ぎ(バウンティハンター)が結構いるらしい。

 交易路で人の出入りが激しく、良からぬ輩が結構いるのだとか。

 それでも治安がある程度保たれているのは、警備の兵士や騎士だけではなく、この賞金稼ぎ(バウンティハンター)が活躍しているかららしい。

 コソ泥や置き引き、ひったくりは多いが、あまり派手にやると賞金がかけられる。

 数万~十万ラーツ程度の少額だが、領主が依頼者(クライアント)になって賞金をかけてくれるのだ。


 それじゃあ領主が破産しちゃうんじゃ?と思うが、そこはしっかり元を取れる仕組みになっている。

 非常にきつい労役が、長く科せられるのだとか。

 領主としては安価で使い潰せる労働力が得られるので、それで構わないらしい。

 勿論、かけた賞金によって労役の期間は決まっているので、それが終われば釈放される。


 そして、勿論そうした小物だけでなく、商会の荷馬車を襲う野盗や山賊なども出るので、そうした連中にも賞金をかける。

 賞金の原資は、領主以外にもいくつもの商会が共同で金を出し合ったりするらしい。

 なので、冒険者一本だと依頼が少ないが、賞金稼ぎ(バウンティハンター)と兼業でやればそこそこ稼げるという。


 ということで、ミカも念のため賞金稼ぎ(バウンティハンター)ギルドに登録しておいた。

 たまたま街中で悪さしてる奴がいて、とっ捕まえたら賞金首だったという状況もありえるので、先に登録しておいたのだ。

 すでに冒険者登録しているので、手続きは簡単。

 賞金稼ぎ(バウンティハンター)ギルドのカウンターで、ギルドカードを連携してもらうだけ。

 が、まあそんなことが早々あるわけもなく、今のところ意味はなかった。


「――――何日か前に、また商会の荷が襲われたって?」

「どうやら、やったのはズレープトみたいだぞ。 ……今度も皆殺しだとよ。」


 ミカが掲示板を見上げていると、そんな声が聞こえてくる。


「ひでえ手口も相変わらずか。 何で捕まんねーんだ?」

「国境を跨いでアジトを持ってて、通商連合にもいくつかあるらしいからな。 そこを転々とされて、追いきれないんだと。 何人も返り討ちになってるから、単純に強えってのもあるが。」


 何やら、凶暴な賊が出たらしい。

 聞き耳を立てていると、オールコサ子爵領とアム・タスト通商連合を行き来する、やばい連中らしい。

 襲われた荷馬車は、護衛も含めて皆殺しが基本。

 そして――――。


「やっぱ、【神の奇跡】を使うって噂、まじなのか?」

「みたいだぜ。 前に通商連合(あっち)で十人以上揃えて捕り物したけど、全滅だとよ。」


 どうやらその賊は【神の奇跡】を使うらしい。

 そのまま話を聞いていると、使っているのはおそらく【身体強化】だけのようだ。


(……【神の奇跡】の情報が漏れたら、やばいことになりそうと思ったけど。 実際にそういう悪さする奴がいるのね。)


 想定された事態ではある。

 騎士崩れか魔法士崩れか、はたまたまったく別の方法かは知らないが、賊が【身体強化】を使ったら、そりゃ普通の賞金稼ぎ(バウンティハンター)じゃ厳しいだろう。


(領主が騎士団を派遣するべきなんじゃないのか?)


 騎士の中にも【身体強化】を使える者はいる。

 そうした騎士を中心に討伐に乗り出さないと、被害が増える一方なのではないだろうか。


(まあ、領主が自前の被害を厭わなければ、だけど。)


 賞金稼ぎ(バウンティハンター)と領主軍の騎士では、どちらの被害が領主にとって痛いかは考えるまでもないだろう。


(何日か前、か……。 街道の上を飛んでたけど、襲撃現場らしいのは気づかなかったな。)


 すでに片付けた後だったのか。

 見落としたのか。

 街道で人が集まってる様子はいくつも見かけたが、そのうちの一つがそうだったのか?


 ミカは腕を組み、「ふーむ……。」と考え込み始めた。







 賞金稼ぎ(バウンティハンター)ギルドの手配書には、ズレープトという凶賊の詳しい内容が書かれていた。

 元々はアム・タスト通商連合で活動していた野盗、山賊の類だったようだ。

 通商連合をあちこち転々とし、何年か前からオールコサ子爵領にも隠しアジトを作ったらしい。

 さっき聞いた数日前の荷馬車襲撃は、場所は通商連合側。

 シャクサーラとヤウナスンを結ぶ街道上で起きた。

 【神の奇跡】については、【身体強化】を使うらしいことも書かれていたが、これははっきりしない未確認情報とされている。


 ズレープトのやり口は、とにかく皆殺しにすることが最大の特徴だ。

 ここ何年も直接の目撃情報がないらしく、手配書の似顔絵は十年以上も前に書かれたものらしい。

 だが、非常に分かりやすい特徴がある。

 額の正面に、三本の大きな切り傷。


 昔、通商連合を転々としていた時に、その土地を縄張りにしていた連中と揉めて拷問されたらしい。

 その時の傷が目印になっている。

 その頃は、まだ【身体強化】が使えなかったのだろうか?


(あちこちを転々として、そこで野盗とか山賊とかを好き勝手やって、またどっかに行っちゃうんだろ? そりゃ地元の賊とはトラブルになるだろうし、警備の兵も追いきれないか。)


 かなり自分勝手な奴のようだ。

 何人か手下もいるらしいが、その人数も不明。

 とにかく、ふらっとやって来ては一党で好きに暴れて、またどっかに行ってしまう。

 そして、しばらくするとまたやって来る。

 相当に迷惑な連中である。


 ということで、ミカは再び空を飛んで岩場に戻って来た。

 シャクサーラからの帰り道、たまたま人を見かけた場所だ。

 冒険者が採集に来ていた可能性もあるが、何となく気になったのだ。


(一応、ヤウナスンで出ている”定額クエスト”や採集の依頼をざっと調べたけど、あの岩場でやるような物はなかった。 じゃあ、誰が、何のためにあんな所にいたんだ?)


 別に何でもないことだった、という可能性は十分にある。

 ならば、それはそれでいい。

 ただ、その何でもないことだったというのを確かめないと、何となく気になる。


(最近の稼ぎでそこそこにはなったしな。 今日が空振りでも別にいいさ。)


 ミカは十日間で七十万ラーツくらいを稼いでいる。

 王都で”呪い系”をやっていればもっと稼げるだろうが、贅沢を言ってはいけない。

 一般的なCランクの冒険者の月の収入は五十万ラーツ。金貨五枚くらい。

 それ以上を十日で稼いでいると言うのに、何を不満に思うことがあるのか。


 とにかく移動に時間がかからないミカは、他の冒険者と比べるとフットワークの軽さが段違いだ。

 その移動時間の短さを生かして、ちょっと遠くても即日スピード解決で戻ってくる。

 普通の冒険者とは、稼ぐ早さが別次元になるのは当然だろう。







「いたな。」


 数百メートル上空から目を凝らし、岩場にいる人を探していた。

 最初に見かけた場所をちゃんと憶えていなかったため、少し手間取ってしまった。


「何やってんだ?」


 岩場にいる人は、最初に見かけた場所から動いていないようだ。

 岩壁に張り付くように背中を預け、ぼー……とつっ立ている。

 ミカは周囲の地形を観察する。


 その人がいる場所は、周りよりも少し高くなっている岩場。

 周りに岩場が広がっていて、その岩場を囲う様に森がある。

 森といっても、葉っぱなどまったくと言っていいくらいついていない木が囲んでいるだけだが。


「見張り?」


 少し高くなっているので、見張りには丁度いいだろう。

 逆に下からは岩に遮られ、見えにくいのではないだろうか。


「んー……。」


 腕を組んで考える。

 もしも岩場の人が見張りの場合、それなりに近くにアジトがあると思われる。

 だが、そうと決まった訳じゃない。

 一般の方という可能性も当然ある。


「もし当たりだとしても、アジトを探すのも大変だな。」


 岩陰に入り口がある場合、ちょっと探し出せる自信はない。


「……案内してもらうか。 無関係の人だったら後で謝ろう。」


 ミカは見張りから見えないように、背中を預けている岩壁の上に静かに着地する。

 【気配察知】を持っていたらこれでもバレてしまうだろうが、それならそれで構わない。

 ミカは岩壁の上からひょこっと顔を出し、下の見張りを窺う。

 どうやらバレてはいないようだ。


(もうちょっとこっちかな。)


 慎重に移動し、見張りの真上に来る。


「”石弾(ストーンバレット)”。」


 声にならないくらい小さく呟き、”石弾(ストーンバレット)”を作る。

 大きさは、拳よりも大きいくらい。

 形は意図的にごつごつさせる。


(健闘を祈る。)


 そして、自由落下。

 ”石弾(ストーンバレット)”がひゅー……と落ちて行く。

 自由落下と言いながら、微妙な位置調整はする。


 ガッ!


「ぃぎっ!?」


 くぅ~~……、と見張りが呻く声が聞こえる。


「だ、誰だ!?」


 見張りが誰何の声を上げるが、当然無視する。

 こっそり見張りを窺うと、右目の上辺りを押さえ、周囲と岩壁の上を警戒している。

 傷口からは出血しているようだ。


(つう)っ……、くそがっ! くそっ、くそっ!」


 見張りは悪態をつき、石ころを蹴っ飛ばす。


(不運にも怪我をしちゃったね。 血が目に入ったら、見張りも大変だよね。 じゃあ、どうするのかな?)


 頭に直撃して気絶されても面倒なので、額に掠るくらいを狙ったのだが、上手くいったようだ。

 あとはただ、回復薬(ポーション)などという余計な物を持っていないことを願うのみである。


 見張りは悪態をつきながら周囲を警戒し、移動を始めた。

 ミカは再び空に飛び上がり、警戒する見張りにバレないように後をつける。

 見張りは頻りに周囲を確認しながら、岩陰に姿を消した。


「そこ……?」


 上から見ているだけでは分からないので、少し離れた場所に一旦下りてから、見張りが姿を消した岩陰を窺う。

 ”地獄耳(ビッグイヤー)”を使い、何か聞こえないか音を拾う。


「……は……よこ……。」

「……みは……く……かよ……。」

「……ぎゃは……はは……。」


 何を言っているのかは分からないが、人の話し声と笑い声、そして怒声みたいな声も聞こえる。


「例の賊かはともかく、似たようなのがいるのは確かか。」


 まさか、横穴式住居ということはないだろう。

 もし間違っていたら「ごめんなさい」だが、ここが一般のご家庭のお宅とは思えない。


「じゃ、お邪魔しますか。」


 【身体強化】と魔力範囲が問題なく動いていることを確認する。

 ミカはひょいひょいと岩の上を飛び移り、見張りが姿を消した岩陰の前に立つ。

 そこは、岩に隠されるようにポッカリと穴が空いた洞窟だった。

 洞窟の奥からは、男たちの声が聞こえる。

 さすがに何人くらいいるのか、声だけでは判別できないが、二~三人ではなさそうだ。


 洞窟の中に入ると、意外に広かった。

 入ってすぐに椅子が置いてあるが、今は誰も使っていない。


(見張り用か?)


 洞窟は奥へと続き、幅は二メートルくらいある。

 天井も高かった。

 二枚のトランプを立て、互いに寄りかからせ、その間を歩いている感じ。

 音が反響して少し煩いが、アジトとして使うには悪くないというのがミカの感想。


 薄暗い洞窟を進むと、奥から明かりが漏れていた。

 男たちの声が響く。


「早く寄越せって言ってんだろ!」

「ぎゃははははっ! てめーが間抜けだからだよ!」

「ったく。 見張り一つロクにできねえのか。」


 ミカはそのままとことこと通路を進む。

 すると、広い場所に出た。


 奥には、鉢金をした筋肉達磨の大男。

 額を押さえて、回復薬(ポーション)を寄越せと訴える見張り。

 その見張りを揶揄い、回復薬(ポーション)を手にはしゃぐ小男。

 他三名の男と、あられもない恰好の女性が四名。

 女性の胸元には、刺青のようなものが描かれている。


 部屋は結構広い。

 中央に大きなテーブルを置き、食べ物や酒の瓶が乗っている。


「あ!? いつの間に入り込みやがった、このガキ!」


 ミカがきょろきょろと広間を確認していると、男のうちの一人がミカに気づく。

 ずかずかと歩いて来て、ミカの髪を掴もうとするのをひょいっと躱す。

 そのままとことこと歩き、女性の一人に近づく。


 女性は、怯えたような表情でミカを見る。

 顔や腕にいくつも痣があった。

 ぐるりと見渡すと、他の女性も似たような感じだ。


「おら! このガキがっ!」


 男の一人が掴みかかってくるが、軽く手を払って躱す。

 魔力範囲を展開してあるので、動きは把握している。


「ガキ一人に何やってんだっ!? さっさと捕まえろっ!」


 筋肉達磨が大声で怒鳴る。


「この、ちょこまかとっ!」

「「「キャァーーーーーーーーーッ!」」」


 ミカが男たちの手を器用に躱してうろちょろするので、激高した男のうちの一人がナイフを抜く。

 怯えた女性たちが悲鳴を上げた。


(ま、大体把握できたかな。)


 これだけ騒いで増援がないなら、とりあえず他に仲間はいなそうだ。

 女性たちは怯えて逃げ惑うだけなので、男たちの仲間ではないだろう。

 捕えられ、無理矢理に言うことを聞かされていただけと見て良さそうだ。


(魔獣相手ならこんな確認必要ないんだけどな。 確かに、人間相手の賞金稼ぎ(バウンティハンター)は、冒険者と勝手が違うね。)


 以前、サロムラッサに教えてもらったことが役に立った。


(あと確認が必要なのは……。)


 筋肉達磨。

 鉢金をしているため、額の傷が確認できない。


(如何にも隠してますって感じだけど、確認するのが面倒だな……。 まあ、確認しなくてもいっか。)


 悪党なのは間違いないだろう。

 子分たちはどうか分からないが、筋肉達磨はたぶん生死不問(デッドオアアライブ)


 賞金稼ぎ(バウンティハンター)で気をつけないといけないのが、賞金首の生死の条件。

 生きて捕えなければならないのか、死んでいても構わないのか。

 ヤウナスンで云えば、これは非常に単純な見分け方がある。


 賞金が十万ラーツ以下なら生きて捕えることが条件。

 それ以上なら、死んでいても構わない。


 これは、依頼者(クライアント)が領主のみか、領主以外の依頼者(クライアント)がいるか、という違いだ。

 領主が賞金をかけて小物を捕まえるのは、治安維持と労働力確保が目的だ。

 なので、殺してしまっては労働力が確保できない。

 だから、賞金を払ってくれない。


 そして、領主以外の依頼者(クライアント)がつくのは、相当な悪党に限られる。

 商会の荷を強奪するような悪党には、複数の商会が共同で多額の賞金をかける。

 商会からすれば悪党がいなくなってくれればいいだけなので、生死は問わない。

 このタイプの賞金をかける場合、勿論領主に了承をもらった上で発行される。

 商会だけで、勝手に「殺してもいいよ」とは言えないからだ。


 賞金がかかるということは、誰かがその賞金を払ってくれるということ。

 例えどれほどの悪党であろうと、賞金を払ってもいいと言う人がいなければ賞金はかからない。

 まあ、普通は悪いことをすれば恨みを買うし、そんなことを繰り返していれば誰かしらが「金を払うからあいつを捕えてくれ」と言ってくる。

 なので、この筋肉達磨に多額の賞金がかかっていない訳がない。

 見た目で判断して悪いけど。


 ミカはぴょんとテーブルの上に飛び乗る。

 その時、筋肉達磨が陽炎に包まれた。


「使えねえ野郎どもがっ! ……このガキ、誰を怒らせたか分かってんのかっ!?」

「アホか。 知る訳ないだろ? 誰だよ、お前。」


 ミカがつまらなそうに答える。

 筋肉達磨はわなわな震えながら、全身に力を籠める。


「こんな田舎のガキじゃ知らねえだろうが、ズレープト様と言えば、通商連合じゃ官憲だって逃げ出すぜ。」


 そう、筋肉達磨が気色の悪い笑みを浮かべる。

 ミカはそれを聞き、思わず溜息をついてしまう。


(はい、ズレープト確定しました。 つーか、自分で名乗るかね……。)


 自分で『様』とか言ってるし、どれだけ自己顕示欲が強いのか。

 ミカが呆れて肩を竦めていると、ズレープトの腕が素早く動く。

 ミカを捕まえようと、大きな両手でミカの身体を掴みにかかった。

 何倍の強化かは分からないが、二倍は超えていそうだ。


「おっと。」


 だが、ミカはそれをバックステップで躱す。

 テーブルの周りにいた子分どもが、テーブルの上のミカを足止めしようと、腕を伸ばす。


「よっほっ、たっ。」


 それすら魔力範囲で把握しているミカは、素早く動いて器用に避ける。


「ガキがっ! ぶっ殺してやるっ!!!」


 ズレープトは叫ぶと、両腕を振り上げ、テーブルに叩きつけた。


 ドガァーーンッ!


「「「キャアーーーーッ!」」」


 凄まじい衝撃音が広間に響き、テーブルが真っ二つに割れた。

 女性たちが衝撃音に怯え、悲鳴を上げる。


「おっとお……!?」


 ミカは足場を失い、一瞬バランスを崩した。


「死ねやぁぁぁあああああああっ!!!」


 その隙を見逃さず、ズレープトが割れたテーブルの間を突進してきた。




【後書き】


 いつも拙作を読みに来てくださる皆様、ありがとうございます。


 先日より大変多くの方に読んでいただき、感謝の言葉もありません。

 そこで、日頃から応援してくださる皆様への感謝の気持ちを籠めまして、感謝の正(ピー)突き…………ではなく、感謝の短編小説をご用意いたしました。

 ちょっとだけ、自分の気分転換も入ってますが……。


 内容は、本作とはまったく別の世界のお話です。

 お話のノリもボリュームも軽めの、ちょっと時間潰しに読むくらいの内容です。

 ほのぼの系を視野に入れつつ、なぜか「細けえこたぁ、いいんだよ!」という感じのお話になってしまいました。


 暇を持て余しがちな年末年始に、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

 年末年始に忙しい方は、合間のちょっとした息抜き、気晴らし、気分転換に読んでいただけたらと思います。


 12月25日、21時公開予定。

 今のところ予定しているのは毎日1話ずつ、全6~7話くらいです。


 タイトルは『異世界に落っこちたら、綺麗なお姉さんの眷属にされた ~一度死んでるらしいんですが、とりあえず俺は元気です~』


 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

 それでは、少し早いですが「良いクリスマスを」と「良い年末年始を」。


 リウト銃士

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― 新着の感想 ―
[気になる点] デッドは良いんだけど、アライブは面倒だな。ソロだからなおさらw後はなにかお宝があればいいね
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