ヤバい男と哀れな男
次の日の朝。皆、アンに感謝をしていたがアンは気にしていないよと笑っていた。大人だ。年齢が明かされていないがキョウコさんとお酒も嗜んでいったし、大人だと思う。多分。彼は謎が多い。
愛する人を無くしたマシャヤは皆に今までの態度を謝った。特にリヒトには深く深く謝っている。恐らく最後に愛する人がした行為を彼女の代りに謝りたかったんだ。
だが、そいつは元凶だ。もう謝るな。あと彼女はロボでモデルは元凶の母だぞ。これを知ったらどう思うんだろうか?確かに彼に良い思いは無い。が、本当に可哀想だ。
さて、アンに話を戻そう。その不思議人間アンだがこの度。見事こちら側の人間になった。
と、言うのも彼はその日の深夜にスプーンとナイフで床を壊しこちらに侵入したのだ。捕まえようとした黒服や執事をばったばったと投げた倒し。サキタとの死闘の末。サキタの撃った電気銃でようやく諦めたのか御用となった。
参加者のアン。床ぶち壊して敵アジトに潜入して行方不明だなんて言ってみろ。あ、アイツなら死なないじゃね?寧ろ、助けに来るんじゃね?と思われてしまう。
デスゲームに大きすぎる希望はいらない。なので存在自体を皆の記憶から削除させられた。
アンの許可は取られたらしい。本人もそうしてくれと笑った。何よりも人の記憶から消される何てファンタジーみたいな事が楽しくて仕方ないと目が語っている。
やはりお前らの一族か?と記憶を消さないので暇でこちらに居たリヒトに聞いたが違うと言われた。何なんだ。怖い。
目を覚ましたアンはこの施設にこの仕事に感動。自分もこの仕事に就きたいと懇願してきてしまったらしい。落とすつもりのテストも合格。何よりリヒトにも社長にも気に入られ彼もここの執事になった。優秀過ぎて二日も経たずに幹部クラスか優秀な者しかいないこのデスゲーム観察室エリアの一部を任されている。
サキタと優秀な声優さんを一方的に慕いセンパイと呼んで白い執事服でたまにこちらのエリアに来る。サキタ曰く。アイツは気持ち悪いが俺の仕事が減った。ありがたい。
声優さん曰く。気持ち悪い。本名も無名時代の作品やキャラや台詞まで調べられた。何度あしらい蹴っても来るのでパシリにしてる。との事。この一族に触れて彼女もマヒしているが本気度が違う。少しでも隙を見せればきっと彼女は負けてしまうだろう。
彼は王たる資格のありそうな者に弱いらしい。それを兼ね備え。しかも女性である人を見つけたんだ。もう。止まらない。あと顔が良い。彼女の好きなのがロン毛の王子キャラなのでらしくされればもう負けは決まりだ。
愉快なメンバーが増えたこの観察もそろそろ終わりに近い。アンの記憶はないが絆を深めたメンバーの中に邪魔な人間がいるからだ。
突然。始まるデスゲーム。実際は記憶の消すのに三日は経っているが消された者達は知らない。今回の過去の問題に関するテスト。皆は昨夜。思い出を語っているので勿論覚えていた。スラスラと解かれる問題。
「さて、今回の処刑者は……コイツだ!!」
指を刺される人物は一人しかいない。マシャヤだ。
「そんな俺、全問正解……」
「ぶっぶー!最後の問題の皆で星座の話をしたに×がついてるよ。あーあー。君の大好きな女の子の誕生日も忘れて間違えちゃったんだ。たのしーい!」
記憶だが恐らく消されたが正解だ。まさに悪魔。この性格の悪さはサキタだ。そう思い見ればにっこりとサキタは笑う。
「嫌がる彼女に言い寄る男と困る花嫁のデータは取れたんで、我慢に我慢をわたくしもご主人様も重ねました。いらんでしょ?こいつ」
哀れマシャヤ。男の悲鳴は聞くに堪えない。マシャヤは壁に押しつぶされて退場。こちらに来て事情を話されるマシャヤは取り合えずゲームの事は分かったがロボの件は本当に訳が分からないと駄々をこねた。そうだよな。
そこで登場ジュリナ。涙ながらに感動の再会を果たすが、話さないジュリナ。サキタにキーボードを押すように言われる。
「ああ。あああああ。あ。えええ。」
適当に押したボタンを話すジュリナ。こちらにナニコレと言いたげな視線が来るが知らんがな。最終的につけまブーメランと付け爪クナイを見せられてやっと信じた。何だこの機能はと聞けば奥様の提案。
何とも情けない顔で退場する彼は呟く「ギャルを好きになった自分を誇りたい。だからこの思いは消さないでくれ」と言って本当にこのゲームから退場したらしい。ちなにみその約束は守られた。
ゲームは最後の主役を残した。リヒトのこんなことまでした花嫁はもう明かされようしている。
夜。シキに呼ばれて夜のプールに来た。遅く現れたシキは白のパーカーをおずおずと脱ぐ。ポニーテールを下ろした髪に白と黒のビキニ姿だった。上が白で下が黒。シンプルだ。でも……。
「きれいだ」
「っ!!」
女の子の扱い何て分からない。でも、月明かりを演出されたライトに照れられて本当に綺麗だった。そんな素直な感想にかけれたのは水。その流れで二人で笑ってはしゃいで遊んだ。遊んで疲れてドリンクを飲んでジャグジーに移動した。カラフルに光るジャグジーに偽物の月。
「もしも。あのゲームに二人でこうやって残ってたら、最後の日だねって別れを惜しんで死ぬかもしれない明日を恐れたのかしら?」
シキの言葉に何も返せなかった。ただ何かしたくて彼女の手を強く握る。少しだけ考えが浮かぶ。
「俺、残れたかな」
「ふふ。確か毎回ほぼ不正解だったわね」
そこを付かれると痛い。すっかり忘れたクールなキャラを捨て普通に笑う彼女につられて笑う。
「俺は自信しかない男だったからきっと二人で生き残ろうって言ってたよ」
助かる保証はない。だって地が凡人で平凡だ。だけど、きっと好きな女の子の前ではそう言ったに違いない。男って恰好つけたがる生き物だから。
「好きだよ。シキ。君が俺を忘れない同じ観察者でクイズ参加者で良かった」
いけるかな。どうかなとちょっと震えながら、彼女の頬にキスをした。
「あなた。それ……」
ぽかんとする彼女。頬を押さえている。
「可愛いだけよ?」
「う、うるさいな!!」
恥ずかしさでジャグジーから勢い良く出ると彼女も着いて来た。何だか嬉しそうに見える。ならいいかと笑えば彼女が目を見開く。
そして……俺に触れる程度のキスをした。
「なんで?」
意味を聞くなよ。俺のバカが!彼女はまさかの反応に真っ赤だ。思えばこのウブさに引っ掛かり好きなった。
「貴方がキラキラして見えたからよ」
睨みながら言う彼女に今度は余裕をもって自分からキスをする。ちょっと触れてまた離してを繰り返す。これは気持ちいい。あのキスをしたい。けど、まだ早い気がした。
二人、手をつないで部屋まで帰りまたおやすみのキスをする。部屋にはあまり使わないスケベグッズ。いやいや。止めよう。確かにムラっとしたがいけない。
明日は花嫁候補が恐らく消える。
マシャヤ。本名は真斜矢。峠を攻める走り屋の父につけられた名前。好きなタイプは騙しやすい真面目で地味な女。だったが、ギャル好きにのちに運命のギャルに会う。
アン。謎の男。武道を嗜み博識。興味のあるものは全て知りたい。一族に王に使える者が居ると聞いて興味を持った。好きなタイプは王の資格を持つ様なオーラの人間。相手は見つけた。今、追い込んでる。