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TL出身キョウコさん

アナウンスが入った。処刑者発表部屋に来いとそんな言葉だ。


「参加者のキョウコがゲームに関係なく自分から死を選んだよ☆全く、とんでもない事をしてくれたよ」


ぷんぷんと怒るロボボンに皆が言葉を失う。サトが腰を抜かし近くにいたアンが支えた。あの元気が取り柄のユウミも放心状態でリヒトが大丈夫かと声をかけている。ジュリナが「ケンカばっかしてたアタシらのせいじゃね?」と言った言葉でマシャヤが顔を青くして部屋から出た。


この場にサキタはいない。色んな処理に追われているからだ。代わりに実は次点で優秀な声優さんが代りを務めている。


「しばらく。デスゲームはお休み。みんな好きに過ごしてね☆」


ロボボンはそう言って部屋からとことこ歩いて行く。写されるマシャヤの部屋にはジュリナが慰めに行った。何となく何んとなくだけど、いつもは現物が商品のご主人様を当てる方ではない賞金の方の花嫁の方を優先したくて、と言い訳にしてすけべ心を隠しているが今日は男達の反応を見ていた。


慰められ、そして慰めてやるメンバーの中で少し違和感を感じる。何か冷たい空気を感じた。誰とは言わないし分からないが、現状に怒りを覚えている奴がいる気がした。シキに聞いたが特にないといわれたので勘違いかもしれない。


それから三日くらい経っただろうか?サキタが来た。隣には……。


キョウコさんがいた。


俺は嬉しくて申し訳なくて泣いてしまった。横を見れば耐えてるのか目を真っ赤にして唇を強く噛んでるシキがいる。元参加者メンバーとして本当に何て謝ればいいか分からない。キョウコさんは困った様に笑っていた。


「お姉さんね。お仕事凄く忙しくて所謂。ブラックって言うのかな?だったんだ。彼氏ともなかなか遊べないし会えない。だから、頑張って頑張って会社を辞めたの。罵声も怒声も全部耐えてセクハラの証拠突きつけて、やっとこれでって思ったのね」


言いにくいのか子供に話していいのかと口ごもるキョウコさんに「続けて」と真っすぐにシキが言う。


「で、家に帰ったら彼氏は他の女の人と居た。私の家で私のベットで私の服を着せてたの。お前が相手をしないからだ。なーんて。言われてもう。なんの為に辞めたんだかって……」


優しくて皆のお姉さんだった人。マシャヤもジュリナも彼女に優しく諭されたらしばらくは黙っていた。大人だから強いって勝手に思ってたんだと思う。


「デスゲームはお姉さん説明を受けた後もよく分からなくて、でも誰かに殺されちゃうって事だって分かって……もしも。その誰かに殺されたのなら誰かのせいにできるって、喜んでしまったの」


目の前の紅茶を飲まずに何を思うのか本当に彼女は悲しそうに笑う。もしかしたらそこに映る時分が醜く見えたんだろうか?


「ぶつけられずに終った怒りも全部。貰ってもらおうとしたの。でも、わざと間違えても何をしても選ばれなかった。だから、もうってぼんやり割れたグラス見てた」


カップが取り上げられた。サキタが珍しい事に奪ったのだ。


「入れ直しますね。冷めて美味しくないですから……」


「あ、ごめんなさい」


瞬間。サキタが冷たい目で彼女を見た。震える彼女。サキタ?


「本当に見てただけで、目が覚めたら……」


「俺様。グットルッキングガイでスパダリで執事な個性てんこ盛りな彼に愛されちゃって、私どうなっちゃうの!?TL展開ってなった訳ですよ」


愛。愛?愛!?人間驚けば声も出ない。隣では「愛って、え。愛って?」と愛を知らぬロボみたいにシキが呟いてる。


「今日子ちゃん。敬語禁止って言ったよね。したらどうなるんだっけ?ほら、唇つきだして吸うから」


「うう!!」


キョウコさんはもこもこ部屋着のフードをかぶって机に伏せてしまった。サキタは笑って「困った今日子ちゃんだな」と背をさすさすしている。


「で、TL定番の一夜限りだと思ってたら実は執着されてましてって流れです。いや、本来は本当にそういう指示だったですよ」


理解できない。そういう指示って大人ってそれで終わりじゃ悲しいじゃないか。そんな事を考えてしまったのを表情で読んだだのかサキタは良い笑顔で俺を見た。


「大人の女には奉仕され一方的に愛されセ……愛されて発散させてあげてすっきりさせてあげる。そんな回復のしたかもあるんですよ」


「子供に何言うの!時持くん!」


珍しく怒って顔を上げるキョウコさん。掴まれるキョウコさんの顔。吸われる唇。人前でするには長いキスでじゅぽと艶めかしい音をたて離れた頃にはぴくぴくしながらキョウコさんはまた机に顔を伏せ戻った。横でもキャパオーバーなのかシキがゴンと強制的に顔を伏せる。


何だ。この状況。初めて生で見たキスがあんなでもう。俺。もう。


「けど、あまりにも簡単に引き下がるもんでして……つい。ム、イライラしてですね「お前みたいな。いい女を手放すわけねぇだろ」と分からせ、セ。コホン!お説教しまして分かって頂けたところでヘリで田舎のご実家に挨拶。入籍。元彼氏に倍返し報復。今日子ちゃんの名誉回復。元会社を倒産。それだけの事なのにわたくしとした事が二日もかかってしまいました」


「バケモンかあんた」


ふう。無茶苦茶な話で少し興奮が落ち着いたぜ。ふとサキタを見れば微笑んでいたのにぴくぴくしているキョウコさんを見る目は徐々に先ほど見た冷たい目になっていく。あの目だ。


「サキタその目」


「え」


本人も気付いていないのか指摘されて少し照れくさそうにする。


「申し訳ありません。わたくし性的興奮を抑えると笑いの次にイライラしてしまうのでつい怖い表情に……」


「怖い……表情」


「きもちわるい」


復活したシキは強烈な一言を放ち。キョウコさんにあんなキモいのでいいのかと詰め寄った。でも、甘えん坊で、でもたまに頼ってくれると可愛くてと惚気るキョウコさんの言葉は半分だけしか聞こえない。


「サキタ。お前は主人の血縁か?」


これがそうなら答えに近づけるかもしれない。


「……ええ。遠いですがはとこです」


ならば、もう答えは出た。次回のデスゲームで黒幕を炙り出してやる。あと、経営者の苦労とかどうやったらデスゲーム制作スタッフになれるのとかやりがいとか聞きたい。ミーハーだから!


「さて、頑張って自らの罪を告白した今日子ちゃんと正解に近づけた貴方様にほんの少しのご褒美を……」


カタカタと何かを打ち。それがプリントされる。それを渡される声優さん。その顔は優しい笑顔だった。


「みんな☆処刑者発表部屋に集まってね」


流れる放送。ぞろぞろと集まる皆の顔は暗い。サトは寝てないのかふらふらしてアンがたまに支えてやっている。ユウミもその顔に元気は無い。そのユウミに車いすを押されるリヒトは俯いている。ジュリナは青い顔のマシャヤの手を握って到着した。


「ここはデスゲームなの!自分からだなんてダメ絶対!キョウコは参加資格を奪って怪我も無いからここでの記憶を消してお家に帰しました。ぷんぷん。二度目はないからね!」


静まる部屋の中でマシャヤが崩れ落ちた。良かったと小さな声でつぶやく彼をジュリナとユウミが励ます。同じく座り込んだサトによしよしと頭を撫でるリヒト。アンも嬉しそうにそんな皆を見ていた。ここに来て絆が生まれようとしている。


ずっと気にしていたのかそんな皆を見てキョウコさんは静かに泣き。ありがとうとサキタを抱きしめ俺にも感謝をしてくれた。


夜時間。夜の自由時間はあまり動きがない。なので四人でたこ焼きパーティーをした。デスゲームを知らないキョウコさんに教えながら、シキのおススメのデスゲーム映画を見て気付けばキョウコさんとサキタは寄りそってソファで寝ていた。キョウコさんはしばらくは心と体の治療の為にここの施設を使う。


二人に毛布をかけてやり、色が白いと思ってた彼女は実は顔色が悪かったんだけだと改めて気付いた。しばらく彼女の寝顔を見てると「すぞ」と小さな声で聞こえる。何だと耳を澄ます。


「人の女。取ろうとかエロいなとかおかずにとか考えんなよ。殺すぞ」


と穏やかに目を閉じてる様に見えるサキタから聞こえた。うん。数滴洩れたな。ソファに戻りエンドロールを見るシキが静かなのでこちらも寝たのかと毛布をもって行こうかと近くに寄れば聞えた。


「キスってそんなにいいものなのかしら……」


俺の気配に振り向き恥ずかしそうに唇から指を離し俯くシキ。今日は本当に大変な一日だった。その後。タイミング良くサキタが起きてキョウコさんを抱き上げて連れて行く。


それぞれの部屋に戻り俺は……。


初めての生で見たキスよりも小さな小さなシキの可愛い呟きの言葉にときめいて興奮して眠れない夜になった。

今日子キョウコ色々あってボロボロだったお姉さん。好きなタイプは甘えん坊。と言うのは自分に寄せられるイメージで作った嘘。本当は甘えたいし甘えられたい。やっかいな一族に気に入られ嫁になった。回復後はメイド修行予定。

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