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ある諦めの悪い男の話

なんちゃってデスゲームな物語始めます。生暖かい目で見て下さい。

愛する家族よ。愛を知れ。オレを諦めの悪い男だと人は言う。思えば彼女を好きになったのはいつからだっただろうか?


「どうせ結婚できないんだろうから、オレが姉ちゃん貰ってやるよ!」


幼い自分はまだ素直になれず、こんな相手に失礼な告白をした。まだ13歳だったオレはこれが精一杯の告白だったんだ。


「マセてんね。前まで鼻水垂らして遊んでたくせに」


返事は勿論。お断りだ。彼女は喫茶店をしていた。だからほぼ毎日通っていた。お小遣いやお年玉は全部きえる。それくらい彼女が大好きだった。行く度に告白だってしてたんだ。


だけど、彼女は結婚した。相手は同い年の常連で彼女の「友達」だった男。付き合ってるとからかえば否定して怒ってたのにあっさりだ。


高校生になった。だけど、止めてやらない。結婚したとたん彼女がめちゃくちゃモテだしたからだ。


「アイツ。目付き悪いし愛想も悪いよ。別れてオレにしなよ?」


こそこそと彼女に耳打ちすれば用事で外に居た筈の男がジュース瓶のケースを両肩に乗せて、ズカズカこちらに来て真っ赤な顔で「また貴様か!俺の嫁を口説くな!」と叱りにくる。毎度これだった。


大学生。親に五月蝿く都会の大学に行って一人で暮らせと言われた。バイトの金で喫茶店に通い人妻を口説くオレを両親は良く思っていない。離ればなれだ。だけど、休みの日には両親には言わないで喫茶店に行く。高校時代より自由だった。


彼女は妊娠して母の顔になった。幼なじみだからと、お腹も触らせてもらった。思えば諦めさせてくれようとしたのかもしれない。だが、愛は止まらない。駄目だった。


「オレ、頑張って働いてこの子の父親になるよ」


またあの男が何処からか現れて、怒鳴る。が「赤ちゃんがビックリするだろうが!」と、おぼんで殴られてた。


健康的な彼女は子供は沢山出来ていく。全員に会わせてもらえた。可愛い。彼女の血が入ってるなら皆、可愛いかった。


彼女が裏方で働きだし、会えても少しだけ。寂しくて彼女を作ったが愛せない。まだまだ彼女だけだった。


就職が決まり本格的にプロポーズする計画を立てる。彼女は海外映画の跪きながらのプロポーズに憧れてからやるつもりだ。場所も確保する予定で計画は順調だと思えた。


だけど。やっとやっと大手に就職が決まったのに店は潰れて彼女はそこに居ないと分かった。


金を貯めて探す。そう決意する。順調に調べる金や新居。指輪の資金が貯まる頃に社長の娘とお見合いを勧められた。


コイツだけは一生許せない。金でオレの行動を監視させ怪しい事があると社長に言い付けると言う。結婚した。彼女は呼べない。調べられないからだ。不幸せな結婚だった。


何でもパパに言い付けるとヒステリックになる女を誰が愛せる?


子供が生まれた。流石に子供だけは可愛い。嫁になり母になった女は世話を家政婦に任せて遊び呆けている。オレは社長になり奴の父は隠居。全てをオレに託したのは本当に馬鹿だと思う。


不倫してた女から親権を奪い。離婚した。オレに同情的な女の両親は絶縁を女に言い渡し、他所の親戚に女を監視付きで渡す。もう会う事はない。


彼女を探した。時間はない。だって年が離れているんだ。


彼女は居た。オレからしたら小さな一軒家で家族と居るらしい。彼女以外の家族が留守の日を狙う。子供が働きに出てる時。そして、あの男が留守の時がチャンス。あの男は何処にでも彼女を連れていく。だけど、最近少し腰を悪くした彼女は調子の良い時にしか出かけられない。


今日がその日だ。


チャイムを鳴らし本名や昔の住所。懐かしい呼び方。で優しく優しく話しかける。彼女は扉を開けてくれた。


「珈琲をいれてあげようね。砂糖は相変わらず一つかい?」


キラキラしている。相変わらずキラキラして可愛くてドキドキした。皺もできて、すっかりおばあちゃんだけどやっぱり好きだった。


縁側に二人座る。並んで座るのは初めてだ。ぽつぽつと近況を話す。彼女はうんうんと優しく頷いてくれた。


「今年の春にね。ひ孫ができるんだよ」


時の流れを感じる。だけど駄目なんだ。好きなんだ。汚れるのも構わずに縁側から庭に降りる。そして座る彼女を跪いて泣きながら見つめた。


「愛してるんだ。残りの時間をオレにくれ」


情けなくボロボロに泣いて手を握る。本気なんだと心を込めた。なのに……。


「ごめんね。できない。少しの時間も無駄に出来ないんだよ。家族に全部使いたい」


返事は今度こそしっかりとしたお断りだった。手を離した彼女は優しく頭を撫で。汚れた靴下の代わりに新しい使ってない靴下をくれ汚れた物は袋に入れてくれた。


「ふふ。相変わらず、やんちゃでマセてるんだね」


邪魔されあしらわれ本気にされなかった恋が終わった。私の恋は一生ものだ。後悔はない。


だがせめて息子には素晴らしいドラマチックな幸せな恋をして欲しいと思う。金はある。好きに使えよ。


私は無理が祟り病気になった。だが、もういいだろう。息子や頼りになる部下もいる。


最後にあの人に会えて良かった。


そう言いながらあの人の名前を呼んで目を閉じる。ふと、香る筈のない珈琲の香りに泣きそうになった。


また。会えたらいいな。会えたら今度こそ……。

ある男。莫大な金の持ち主。しつこい。好みのタイプは好きになった人。

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