85: 愚王の末路
カナエに破れたゲンズ王は、ひとまず捕らえておいた
「クローディア、生き返らせるのはすぐにできるのか?」
「できるけど、ここじゃ狭いから地上に出ましょう」
「そうだな、みんなついてきてくれ」
囚われていた住人達を連れて地上へと上がる
「では、生き返らせるわね」
クローディアが手を振りかざすと、途端に王都の中に生き返った人々が現れる
「私達、生き返ったの?」
「信じられない」
「国王に殺されたはずなのに…」
「いや、吸収されたはずだ」
生き返ったことで少しパニックに陥っている
「皆聞いてくれ」
「誰?」
「あの黒い鎧は、まさか…」
「ゲンズ王は倒した、魂を囚われていた皆は、女神によって生き返ることができた」
「女神様!」
「我らをお助け下さったのか!」
「あの黒い鎧はやっぱりハルト様よ!」
「では、黒の傭兵団が来てくれたんだな!」
「ゲンズ王は捕らえてある、処分については皆に任せよう」
「国王が…」
「よくも俺たちを!」
「殺せ!」
「国王を許すな!」
「ひぃ!?た、助けてくれ!?」
ゲンズ王が助けを求めるが、誰も聞く者はいなかった
「お前や貴族のせいで、俺たちはひどい目にあってきたんだ」
「今更命乞いなんてさせないぞ!」
「私の娘は無理やり連れていかれて、酷い目にあったんだ!」
「妻を返せ!」
今までの行いで国民に恨まれているため、処刑は免れないだろう
「聞いてくれ、国王はひとまず置いておいて、皆の生活を立て直すことが先決だ」
「確かに…」
「家が壊れている」
「逃げ出した奴が、食料を全部奪っていっている」
「じゃあ、どうすればいいんだ!」
「女神様、お助けください!」
「わたくしは女神クローディアです」
よそ行きの態度だな…
「皆様のことは、人間同士での助け合いで生きていただきたいと思っております」
「そんな…俺たちは生きていくことなんて、もうできないよ」
「搾取され続けて金もないし」
「どうすればいい」
「神々が簡単に力を貸すわけにはいかないのです」
「そのことについては、俺から提案がある」
「提案?」
「何かあるのか?」
「アルストリア王国の庇護下に入ってもらう」
「あの大国に?」
「俺たちがアルストリア王国に…」
懐から通信機をだし、拡声器として使う
『余はアルストリア王国、国王のカインである』
「この声は?」
「国王陛下!」
地上に戻る前にカイン国王に通信で頼んでおいたのだ
『貴国の状況は、英雄ハルトより聞いている。我が国は援助を惜しむことはない』
「大国が…」
「私たちを助けてくれるというの?」
『現在、連絡を受けた我が国は、食料その他物資を運んでいる最中である。半日もせずそちらに着くだろう、まずは腹を満たし落ち着いてもらいたい』
「食料が…」
「飯が食えるのか」
ゲンズ王が錯乱してから、彼らはろくに食事を取っていなかったようだ
『わが国の軍が向かっているが安心してほしい、君たちを救うために行動しているので落ち着いて指示に従ってくれたまえ』
「聞いての通りだ、アルストリア王国より援助がある。君たちは、まずは指示に従って動いてほしい」
「「………」」
カイン王の宣言からの半日後、王国から食料を満載にした、気球船が到着した
「こちらに並べ!」
「食料は十分にある!」
「列を乱さず順番に受け取るんだ!」
配給が始まると、我先にと押しかけようとしたが、王国軍の指示が出ると落ち着いて並び始めた
「美味い…」
「久しぶりの温かい食事だわ…」
「ママ美味しいね!」
暖かい食事にむせび泣いている
「ハルト様、お疲れ様でした」
「ご苦労」
「はっ、あとは我々で」
「わかった、よろしく頼む」
王国軍に、あとはまかせ一旦飛行船で休むことにする
「カイン王、ありがとうございます」
『なに、大したことではないよ』
「食料は大丈夫なのですか?」
『ハルト殿が居なかった間も、食料の生産には力を入れていたから十分に足りている』
「そうですか」
『それで、ゲンズ王はどうするのかね?』
「彼らに任せますよ」
『カナエ殿は命を取らなかったようだが?』
「そうですね…ですが、国民は許さないでしょう」
『…だろうな』
5日後、暫定政府が会議を開くことになったので、出席を求められた
「それでは会議を始めたいと思います。まずは貴族たちの処遇ですが…」
「処刑でいいだろう」
「そうだ、散々国民の命を奪ってきたんだ当然の報いだ」
「ハルト様の意見は?」
「俺から言うことはない、皆で決めることだ」
「分かりました。では、捕え次第処刑するということで」
「兵士達はどうするんだ、ヤツらだって貴族たちの命令で俺達に酷いことをしてきただろう?」
「現在は拘束していますが、私は労働を課すことで罪を償わせるのがよろしいかと思います」
「労働をか」
「奴隷で良いのではないか?」
「国民の監視下に置けば十分でしょう」
「そうだな…」
「では、最後に国王ですが…」
「処刑だ」
「いや、それでは生ぬるい」
「簡単に殺しては苦しまんだろう」
「では、どうすると?」
「国民の奴隷にすればいいだろう」
「国民の?」
「そうだ、常に街中で労働させるんだ」
「何をしても自由とすればいいんじゃないか?」
「それでは、殺してしまうでしょう」
「ならば、殺さない程度でいたぶるのは良しとしよう」
やはり、恨みは相当に深いようだな
結局、ゲンズ王は国民の奴隷としてこれから20数年労働を課されることになる
最後は凄惨だったようだが、ここでは語ることはない




