79: 王都奪還(4)
馬鹿2人は置いといて、連合軍はオークロードを着実に討伐していった
「残りわずかだ」
『王国軍は、王都奪還へ向かってくれたまえ』
「了解した」
帝国軍を残し、王国軍の気球船8隻は王都へ向かった
「厄災を倒したいま、王都奪還はまじかですな」
「邪神の影響はあるでしょうが、ゲンズよりはましでしょう」
アーゼンハルトとニアバスが、悪魔のようになっていたため、油断は出来ない
「悪魔ですな」
「ええ」
「ハルト殿では浄化出来ないと?」
「分かりませんが、奴らの負の感情が強すぎたのかもしれませんね」
「確かに…逆恨みをしていたようですからな」
「ですが、王都の住民は避難をしているはずなので、問題はないでしょう」
「モンスターの残党ぐらいなら大丈夫そうですね」
王都に着くと、予想外の光景が広がっていた
「あれは、一体どうしたということだ!」
「なぜ、やつらが残っている!」
「逃がしたのではなかったのか!?」
「獣人が…」
「まずいぞ、襲われている!」
「ここからでは撃てない!」
王都に残された獣人が、モンスターに襲われているが、気球船からでは助けることができない
「……」
ハルトは無言で立ち上がると、気球船から飛び降りた
「邪魔だ…」
『ギ…』
ハルトが手を振るうと、モンスター数10匹が消え去る
『ギギャ?!…』
「あ、あなたは…」
「ちょっと待ってろ」
ハルトによって、王都に居るモンスターは駆逐された
「ありがとうございました」
「た、助かりました」
「何故王都に?」
「わ、私達は貴族様の奴隷なのですが…」
「貴族が逃げる際にその…囮に…」
「なんだと…」
ハルトが獣人達から話を聞いていると、気球船が降下してきた
「ハルト様!」
「来たか」
「ひっ!?」
「どうした?」
「あ、あの。ど、どうかされたのですか?」
「何でもない、とりあえず王都の見回りを…」
「あの!」
「どうした?」
「おかしくなってしまった、仲間達がいて…」
『ぎゃあー!』
『な、何をする?!』
『人間は死ね!』
『俺たちは物じゃない!』
「あれは!」
「邪神の影響を受けたか?」
「あの、変な煙が王都に流れてきました」
「我らが脱出した時には、そのようなものは、なかったはずですが…」
「煙を吸った仲間が凶暴になったので、私達は隠れていたのです」
「俺は浄化を試してみるから、お前達は彼女達を安全な場所に誘導してくれ」
「分かりました」
「仲間たちを、よろしくお願いします」
ハルトの力で浄化を試みる
「ハルト様!」
「お前達は下がれ」
『グルル!』
『がぁぁぁ!』
「獣のようになっているな…」
『浄化』
『ぐあ!』
『ぎゃあ!』
ハルトの浄化に当てられた獣人達は苦しみだし、瘴気が身体から溢れ出す
「お、俺たちは…」
「これは一体」
「気がついたか?」
「あなたは?」
「ひっ!なんで軍が!?」
「お、俺達は逃げ出したんじゃない!」
「囮にされたんだ!」
「助けてくれ!?」
「落ち着け、事情は聞いている」
「じゃあ、俺たちは…」
「心配ない。英雄ハルトの名において、罪を問わないことを約束しよう」
「あ、ああ…英雄ハルト様…」
「私達は助かるのね…」
「まずは事情を聞きたい、王国軍について安全な場所まで避難してくれ」
「分かりました。指示に従います」
「仰せの通りに」
「聞いたな、彼らを安全な場所に移動して、事情を聞いてくれ」
「はっ!」
「それから、彼らを囮にした貴族を調べろ」
「は、はい!」
ハルトによって助けられた獣人達は、大人しく事情を説明していた
「ハルト様、聞き取りが終了しました」
「どうだった?」
「はっ、子爵以下、男爵の多数が獣人を囮にして逃げたようです」
「名前は分かってるな?」
「記録してあります」
「では、カルア伯爵に届けろ」
「すぐに手配します!」
連絡を受けたカルア伯爵は、急いでハルトの元へ駆けつける
「は、ハルト殿」
「カルア伯爵」
「我が国の貴族が…」
「俺達、黒の傭兵団は手を引くことにする」
「なっ!」
「それから、獣人たちは連れていく」
「待ってくれ!奴隷達の事はすまないとは思うが…」
「ゲンズを解放するのには協力はするが、王国に対する協力は、今回で最後にしてもらう」
「それは…」
ハルトは激怒していた
ミルク、サーニャ、サイカはハルトにとっては家族に等しい
日本人であるハルトは、そもそも獣人に対する嫌悪感などは、一切持ち合わせていなかった
過去の事情は承知しているが、だからといって獣人を囮にしてまで逃げる貴族に愛想を尽かしていたのだ
「陛下に連絡させて頂く…」
「では、俺は獣人を連れて戻らせてもらおう。気球船と他の兵器は邪神との戦いが終わるまでは、使用しても構わない」
「感謝する…」
カルア伯爵は、止める事が出来なかった
ハルトとは一緒に戦っていたので、獣人が酷使される事を嫌がっていたのは承知していた
傭兵や国民にそれとなく噂を流し、ハルトのように奴隷を扱うのが1流で、酷使するような者は3流以下だと刷り込んでいたのだ
だが貴族は、ハルトの偉業を知ってもなお、平民と侮る者が多くいたので、奴隷に対する扱いは変わらなかった
今回の件は、それが表面化してしまった結果だった
「ソフィア」
『あなた、どうしました?』
「そちらの様子はどうだ?」
『進行の兆しは見えません』
「では、あの場所に向かってくれ」
『分かりました。すぐに向かいます』
ハルトは大型の飛行船を即座に建造して、獣人達を連れてゼウスから聞いていた、大陸の東にある島へと向かった




