5: 奴隷商(2 )※
修正終了しました
何とか読めるようにはなっていると思います
説明回は難しいので苦労しました
「御説明しましょう」
奴隷商は語りだす
「そもそもこの国の戦争奴隷とは約320年前に起きたモンスターの大氾濫に端を発します」
「この大陸に存在する3大国。我々がいるアルストリア王国は大陸の北に位置し、王国の南側には最大の軍事国家であるゼクノス帝国。王国の西側にあるのがライゼンガー公国です」
図らずもこの大陸の情報が手に入りそうだ
ヴェルナーさんの特訓で忙しくて、調べる時間がなかったからね
「大氾濫はこのアルストリア王国で起きました。当時の記録が残っているのですが村や街、王都までもモンスターが押し寄せ王国滅亡の危機に瀕したそうです」
相当な数のモンスターだったんだろうな
「その時立ち上がったのが傭兵ギルドです。昔も大陸全土に支部を抱えていたそうですが、ギルド本部のグランドギルドマスターがいち早く王国への救済を宣言。全土から集めた傭兵を指揮して王国に散らばるモンスターを討伐しつつも王都に迫るモンスターを背後から強襲。王国軍と挟撃をしかけ見事に王国滅亡を回避したそうです」
おー!そんな裏話があったんだ
裏話ではないか、歴史だね
「この大氾濫の時に帝国は兵は出せないが支援はすると表明。傭兵ギルドに兵糧の提供、帝国内から武器を集め後方から送りだし、モンスター討伐に多大な貢献をしてくれたとして王国、傭兵ギルド連盟で感謝の意を表明し今日までの友好関係を維持しております」
あれ?
「公国はどうしたのですか?」
「公国は……」
顔を顰める奴隷商
「公国は傭兵の王国への移動を禁止して、国境を封鎖しました」
うわっ、裏切りではないけど人類の危機だったんだろう?
「モンスター討伐後に軍が越境して王国に圧力を掛けました」
えー!
「これに激怒した帝国皇帝サルガノビアⅢ世が、公国へ軍を派遣し一気に辺境地域を奪取。傭兵ギルドも公国に対し進撃し、公国内の傭兵を吸収しなががら、帝国と足並み揃えて首都へと迫りました」
自業自得だね
「公国も焦ったのでしょう、すぐさま講和を打診。3大国と傭兵ギルドを交えて話し合い、公国は王国と帝国に賠償金を支払う事を約束したため領地は返還されました」
「え?!領地を返したのですか?」
「はい、帝国の進軍に対し各領主はすぐさま降伏したため、被害はなかったそうです」
「そうなのですね」
「ただ…」
??
「公国は傭兵ギルドには賠償を拒否しました。被害は与えてないのに支払う義務はないと言ったそうですよ」
あらま
「逆に傭兵ギルドに賠償を請求したため話し合いは決裂。公国から傭兵ギルドは撤退しました」
「それはそうなりますよね」
「はい、しかしこの判断が公国の没落を決定づけました」
「没落ですか?」
「傭兵ギルドが無くなったために、モンスター対策に過剰な兵を抱えなくてはいけなくなったのです」
「常備兵は国庫を圧迫した訳ですか」
そりゃそうなるよ〜
「賠償の支払いもあるため税率を上げましたが、市民は当然ながら国の上層部を批判。脱税や隠し畑を作り政府の意向に従わなくなりました」
「国の収入が減りますね」
「はい、摘発しようにも兵は足りないですからね、お金が無くなれば兵は養えません」
バカだね〜
「治安の悪化、民の流出が相次ぎどうにもならなくなりました」
「当然ですね」
「この間、僅か2年」
「ぶふっ!」
思わず笑ってしまった
「お笑いになるのもわかります」
本人も笑ってる
「ここで更なる問題が起こったのです」
面白くなってきたー!
他人の不幸は蜜の味だね!
「公国と領地接する獣人族が攻めてきたのです」
「ほほう」
「獣人の侵略は苛烈でした。老若男女に至るまで徹底に略奪、暴行、殺害を繰り返し公国内を暴れ回りました」
「なんと…」
「公国は困りました。このままでは全土が蹂躙されます。しかし追い詰められた公国は混乱し、援軍の要請すら考えつかなかったそうです。公国軍は連戦連敗、上層部は責任の擦り付け合いで機能しない。ここで立ち上がったのが、かの大名君であるアルストリア王国国王ハンバニアルⅠ世だったのです」
「おぉぉぉ」
盛り上がってきたー
「ハンバニアル国王はすぐさま傭兵ギルドのグランドマスターを招集。国民と傭兵に対して演説を行いました。これは後世に残る話しとしてはあまりに有名ですが…」
ここで充分にタメを作って話し出す
余ハンバニアルは此処に宣言する
傭兵ギルドと共に公国の危機を救うべく、王国軍を率いて公国へと出陣する
王国の危機に立ち上がってくれたのは傭兵ギルドである
何故か?
傭兵ギルドの信念は民を守ることだからだ
このまま公国を見殺にする
それは本当に正しいことだろうか?
自らの危険も顧みず王国の危機に駆けつけてくれた彼等に、胸を張って正しい事だと言えるだろうか?
否である!
恥ずべき事だ!
愛する国民よ
共に公国を救おうではないか
国は違えど愛すべき隣人を
今この時も不安に苛まれ救いを求める友人を
救われた我々は知っているはずだ
差し伸べられた手の暖かさを
戦える者は武器持て
戦えない者は暖かいスープを
我ら1本の槍となりて公国に迫る闇を祓う者なり!
「「ワーーーーーーーー!!!」」
「すぐに動ける部隊は先行して友人を救え!」
「商人の仲間に声を掛けろ!糧食を集めるんだ!」
「大量のスープが必要になるぞ!鍋だ鍋を集めろ!」
「お父さん、僕も手伝う!」
「っ!あぁやれる事があるはずだ行くぞ!」
「うん!」
こうして1本の槍となった王国国民は公国を救うべく行動を開始
帝国もすぐさま軍を動かして民間人の保護に務めました
王国、帝国、傭兵ギルド連合軍は3方向から獣人軍を攻めたて動きを封じました
連合軍は一旦戦闘を中止。話し合いの末、戦争の長期化を防ぐため大元である獣王を討つべく精鋭部隊組織し獣人国首都へ決戦を仕掛けました
連合軍が敵軍を引き付けている間に首都へと赴いた精鋭部隊は50人
夜の帳に紛れ、一気に城まで迫った精鋭部隊は獣王親衛隊と激戦を繰り広げ、獣王にたどり着いたのはわずか5人
城の兵が集まって来る前に決着を付けなければならなかった彼等は、傭兵の英雄エンフィリアを犠牲に獣王の隙を作り獣王を討伐しました
連合軍に囲まれた獣人国は降伏を宣言、ここに公国の滅亡は回避されました
しかし、公国の被害は凄まじく復興は難航したため、捕らえた獣人を奴隷にすることで人員を捻出して、何とかやり繰りをしました
公王は責任をとって隠居
新しい公王は傭兵ギルドに謝罪をして公国内にギルドを戻す事を要請、傭兵ギルドはこれを受諾します
ようやく大陸に平和が訪れたかに思われましたが、これで終わりではありませんでした
大陸に平和が戻るかと思われたとき、冒険者ギルドが王国内のダンジョン都市を占拠して、独立を宣言しました
冒険者ギルドは3カ国に独立を認めるように迫りましたが、3カ国は当然拒否しました
そこで、冒険者を使って各国の要人の家族を拉致するという暴挙に出たのです
各国はダンジョン都市を包囲し圧力を掛ける事で冒険者ギルドの暴走を止めようとしましたが、ダンジョンにより都市の中で自給自足をすることができた冒険者ギルドは、圧力に屈する事が無く、打つ手が無いまま3年間実行支配が続きました
ですが、住人からの手引きで侵入した傭兵の精鋭部隊によって人質を奪還された冒険者ギルドは、突入した軍によって制圧されました
その後、冒険者ギルドの解体も検討されましたがダンジョン攻略のノウハウを持つギルドを解体するより上層部を刷新して継続することを選びました
大氾濫に端を発した大陸の危機は、ひとまずの平穏を手に入れたのです
「これがライヘェリア大陸混迷期と呼ばれた時代ですね」
「大変貴重なお話をありがとうございました」
傭兵ギルドがあれだけ信頼されているのが分かる話しだったね
冒険者が嫌われてる理由も分かった
よかったーー!
冒険者になってたら大変だ
小説だったらまず冒険者目指すもの!
傭兵ギルドに転移?したからよかったけど知らなかったら終了だったよ
「いえ、つい熱く語ってしまいまして、いやはやお恥ずかしい」
「ここまで詳しく知っている方は、なかなか居ないのではないですか?」
「いえいえ、私などは単なる歴史好きですから。さて奴隷の話しでしたな」
「はい、奴隷は獣人が多いというのは分かりました」
「ええ今となっては大陸に奴隷ではない獣人は居ないはずです」
「えっと、人族?は居るんですか?」
「勿論居ますよ。借金奴隷としてですが、税を払えない貧しい村などから売られてくるんですよ」
「それはなんというか…」
「いえ、王国での借金奴隷の待遇はいいんですよ」
「そうなのですか?」
「はい、ハンバニアル陛下の治世のもと借金奴隷の働きに見合う報酬を払うべし、と決められましたから」
「報酬から自分を買い上げるという事ですか?」
「その通りです。実は村に居るより待遇がいいんですよ。ハッハッハ」
「確かに良さそうですね」
「ただし、借金奴隷にも種類があります」
「ほう」
「生活が苦しくて子供を売る
怪我などが理由でどうしても払えなくなる者
ここまでは購入され安いです」
「やむを得ない理由がありますね」
「そうなのです。ここからは酷いですよ
ギャンブルで身を崩す者
犯罪奴隷まではいかないが相手への賠償が払えず借金奴隷になるものですね」
「それは勘弁して欲しいですね」
「御安心をまず売れませから。一定期間売れなければ鉱山などに売られます」
予想通りだな
「では実際に見て頂きましょうか」