46: ダンジョン捜索準備※
気球船でガンダルーに戻ってから3日、ダンタリオン陛下との対談が行われた
「久しぶりだな、ハルト殿」
「お久しぶりです。カイン国王との話し合いはどうだったのですか?」
「うむ……。やはり帝国北部の割譲で決まったよ」
「そうですか」
「今の帝国は領土が無い状態だ。奪還しても復興には王国の力を借りねばとても無理だ。領土の割譲で済むなら安いものだ」
「王国が大陸の制覇に動いたら、止められませんからね」
「いや、ハルト殿が居るから無理だろ?」
「まあ、力で奪うと言うのなら抵抗はしますね」
「あの気球船というのには度肝を抜かれたよ。あれで王都を急襲されたら抵抗出来ないだろうな」
「カイン陛下には野望が無いとは言いませんが、現実を見れる人ですから大丈夫でしょう」
「どこかの誰かとは違うな」
ハウゼン君かな?
「それで、気球船で帝都を確認してくれるらしいが、私も連れていって欲しい」
「ダンジョンが見つかれば突入しますよ?」
「もちろん着いていくさ」
「ですが、皇帝自ら行くのはどうなのです?」
「皇帝なんて名ばかりだ、この状況を変えなければ、単なる代表者に過ぎんよ。公爵が居れば私が死んだとしても代わりが出来る」
「……わかりました。そのかわり、気球船の防衛の指揮をとって貰いますよ」
「気球船の?」
「俺や覇王アイゼン達決死隊は、ダンジョンに突入するので指揮を任せます」
「分かった無理は言えないからな」
「着いてくるだけでも我儘なんですがね」
「ははっ、すまんな」
ダンタリオンとの対談を終えたので、気球船の最終調整に入る
『お〜い!食料はこっちだ』
『寝具は2層に運んでくれ』
『3層のハッチから物資の搬入をしてくれ!』
気球船の甲板には、バリスタが左右に30門が並んでいるので、ワイバーンなどの大型モンスターに対応可能だ
下の階である2層には個室があり、交代で睡眠が取れる。食堂もあるので、食事や飲み物は此処で摂る
3層には下部ハッチがあり、物資の搬入が出来る。また、3m間隔で下に向かってボーガンが撃てる開閉式の窓が付いており、上空からモンスターの大群にも攻撃出来る
「これは…動く要塞だな」
「重量がとんでもないから、ハルト殿にしか動かせないですがな」
「それでも拠点としては参考になりますね」
「うむ、帝国でもいずれ作りたいな」
「肝心な構造は分かりませんな」
「火を焚いて浮かすのは分かっているんですけどね」
点検がてら内部を見せているが、興奮気味だ
「ハルト殿、作り方は教えて貰えないのですか?」
「理論は教えられるが、設計図とかは無理だぞ?スキルで作ってるから、無いしな」
「そうですか……」
「技術者が見れば分かるか?」
「どうでしょう?」
「今回は材料がないから土を圧縮して作っているが、本来は、船のように木で骨組みを作って中を空洞にして作るから、造船技術があれば作れるかもな」
「それはいい事を聞きました」
「南部からの難民に居ましたな」
「すぐに試作させましょう」
「まあ軽くしないといけないから、武装は最低限のしか作れないだろう」
「軍事的には使えないと?」
「出来るが、何年も掛かってようやく輸送用の気球船を作れるくらいじゃないかと思う。技術は進歩するから無理では無いだろう」
俺のは反則だからな。浮力や安定性、気候の影響なんかは俺には分からないからな
スキルで無理やり飛ばしてるだけだから、教えてくれと言われても困る。そういうのは技術者が試行錯誤して完成させて欲しい
この戦いが終われば、小型の高速船を開発してみよう
「ありがとうございました」
「いい物を見せて貰いました」
「俺は調整が残っているから失礼する」
1人になったので、各部のチェックをしながら見て回ると、サイカがちょこちょこと歩きながら部屋の準備をしていた
可愛い…
「サイカ、準備か?」
「あ!ご主人様!」
「疲れてないか?ちゃんと休憩するだぞ?」
「休憩はちゃんと取ってます」
「そうか。ほらこれをあげよう」
焼き菓子を渡してやる
「ありがとうございます!」
しかし、サイカは元気になったな。最初はビクビクしてたのに今じゃ元気一杯だ
「皆と仲良くやれてるか?」
「皆さん優しいので楽しいです」
「そうかそうか」
ハルトが怖いので、獣人嫌いな人間もサイカやハルトの奴隷には絶対に余計な事を言わない
最近はその活躍からファンが多いので、獣人に対する感情が変わってきている
獣人の奴隷を無下に扱うのは、二流三流の人間として見られる事も多くなり、ハルトを見習って仲間として扱うのが傭兵や一般人にも波及している
「サイカちゃん、これは何処に置いたらいい?」
「えっと………それは209号ですね」
「あいよ」
「邪魔しちゃ悪いな」
「すみません…」
「いや、頑張ってくれ」
「はい!」
サイカと別れて甲板に行くと、ソフィアが揉めていた
「だから、会ってくれないか?」
「すみませんが無理です」
「頼むよ」
「自分はハルト団長の奴隷ですので」
「それは分かってるが、断るだけでもいいんだ」
「困りましたね…」
「どうした?」
「あ、団長」
「うっ、あんたが英雄ハルトか?」
「そうだがお前は?」
「俺はカルビン侯爵の遣いの者だ」
「カルビン?」
焼肉みたいな奴だな
「ああ、王国の侯爵だ」
「それで?」
「実はカルビン侯爵が、ソフィア嬢に入れ込んでいてな。皆で止めているんだが聞かないんだよ。だからソフィア嬢に直接断って欲しいんだ」
なるほど、配下としてはなんとかしたいが、無理だからソフィアに頼みに来たのか
「頼む!」
「ふむ……」
「団長…」
「ソフィアを困らせたくないんだが」
「分かっているが侯爵が暴走したら困るんだ。英雄ハルトと揉めたなんて知れたら爵位の剥奪すら考えられる」
「そこまでか?」
「あんた…自分の力を認識してないのか?」
「団長……やっぱり理解して無いのですね。団長を怒らせたらあの気球船が来るんですよ?国王はまだ知らないでしょうが他の貴族から侯爵が責任追及をされますよ」
そりゃ分かってはいるが…
「もし侯爵が暴走したら、国が滅びると思われてもしょうがありません」
「いや、そんな事はしないが…」
「団長がしなくても、そう思われているんです」
「その通りだ。もし、ソフィア嬢が攫われたらどうする?」
「草の根分けても探し出して報いを受けさせるな」
「団長……」
ソフィアが赤面してるが、当たり前だろ?
「ほらな?」
「まあ、都市の1つくらいは壊れるかもしれんが…」
「やっぱり頼む!!」
しょうがないので、俺が同伴ならと許可した




