43:覇王の危機※
「くそ!ハルトの言ってた、嫌な予感が当たったな!」
「団長!城壁が持ちませんよ!」
「諦めるな!」
『くそっ!矢が切れた!』
『何でもいい、投げれるものをかき集めろ!』
『油はないか!』
ビーンズの街をゴブリン2万に加えて、リザード1万が取り囲んでいた
城壁は5mしかなく、死骸が積み重なると乗り込んで来られるため、槍や棒で崩さないといけない
『市民は無理をするな!適当に物を投げるだけでいい!』
『死骸を崩せ、乗り込まれるぞ!』
「不味いな…冷静さをかいている」
「団長どうします?」
「今は耐えるしか無い」
『西の城壁がヤバい、崩れかけてる!』
『人数を回せ!』
『市民は西から下がらせろ!』
モンスターの攻撃で、城壁の一部が決壊を始めてしまい、更に混乱を極める
『落ち着け!油を持ってこい。決壊した部分を燃やして、侵入を防ぐぞ』
『交代で休憩させろ。まだ先は長いぞ』
ここで、帝国軍の将軍や指揮官達が、各地に散らばり指揮を始めた事で持ち直す
「流石は将軍達だな」
「ええ、何とか持ち直しましたね」
「団長!応援要請です!」
「わかった。全員移動する!」
「わかりま……」
『ドガァーーン!!』
「な、なんだ?!」
「揺れが?!」
『南門が破られた!』
『なんだと?!』
「団長…」
「南門に行くぞ!」
「はっ!」
戦闘開始から、4日と5時間で南門が破壊される
『ゴブリンが入ってきたぞ!』
『市民を中央区に避難させろ!』
『俺達も戦うぞ!』
『無理するな!』
ゴブリンが侵入したが、事前にバリケードを設置していたため、まだ致命的にはなっていない
「はっ!」
『ギャッ?!』
「ゴブリンを進ませるな!」
「市民は棒でいい、ゴブリンを近寄らせるな!」
「喰らえ!」
「えい!」
市民も一緒になって、バリケードの中からゴブリンを突き刺す
「不味いぞ、バリケードがもう持たない」
「市民は下がれ!」
「ここからは、撃滅の傭兵団が受け持つ」
「覇王だ!」
「覇王が来てくれた!」
「バリケードが崩れるぞ!」
バリケードの隙間から、ゴブリンやリザードが入ってくるが、歴戦の勇士である撃滅の傭兵団は冷静に処理していく
「団長この調子なら何とかなりそうですね」
「ああ、数は多いが下級ばかりだからな」
「こっちに武器をくれ!」
「俺もだ!」
10分も戦っていると、武器の切れ味は無くなり、鉄の塊と化す
1時間もすれば、折れたり曲がったりと使えなくなるので、交換するしか無い
ハルトがゴブリン5000匹を倒せるのは、クズ石の硬度とハルトの造形のスキルで、瞬時に斬れ味を戻せるからであって、普通の傭兵団は、サポート要員が武器の交換や簡単な修理を行う
「団長!武器が足りなくなりそうです!」
「よし、格闘で倒せ!」
撃滅の傭兵団のアイゼン以下、団員は格闘術も修めており、素手でもゴブリンくらいなら倒せるように訓練している
「帝国軍が押されていますね」
「終わりが見えないから疲れが出たか…」
交戦時間が長くなってきたので、帝国軍は交代しても疲れが見えてきた
『ぐあー!』
『なんだあいつは!』
『近づくな!距離を取れ!』
『槍を使え!』
『や、やめろ…』
『ゴァァァァ!!』
通りの向かいで、帝国軍の悲鳴が聞こえる
「なんだ?!」
「あれを!」
「あ、あれは?!」
『グヘヘッ』
「ゴブリンキング……」
「嘘だろ…」
「だ、団長…」
「お前たちは下がってろ…」
モンスターには、準厄災級と呼ばれるキング種が存在する
あらゆる時代で甚大な被害を出した事で、傭兵ギルドは存在を確認すると、厄災と同等に大陸全土から精鋭を集めて討伐するほどのモンスターである
「何とか抑えてみるが難しいだろう。お前たちは市民を連れて将軍の誰でもいいから市民を連れて行けるだけ連れて街から逃げ出すように進言しろ…」
「そんな団長!」
「置いて行くなど出来ません!」
「お前たちは逃げろ」
「団長には俺達が付き合う」
「若い者は思いを繋げ」
「さあ行け!」
「すみません団長…」
「ご武運を…」
団員の中でも若い者を逃がし、団長と長い間活動してきた者は、戦う事を選んだ
「やりますか」
「久しぶりですね、命懸けは」
「お前ら……すまんな」
『グフグフ。ニンゲンハオモシロイ』
「喋れるのか」
『イタブリガイガアル』
「簡単にやられると思うなよ」
「低脳にやられるかよ」
「行くぞ!」
ゴブリンキングに挑むが、厄災級は伊達ではない
『グラァ』
「あぶね!」
「風圧で転ぶなよ!」
「なんてやつだ」
「俺がいきます!」
「まて!」
『グフッ』
「まず……ぐあー!」
1人がゴブリンキングに捕まってしまう
「くそ離せ!」
「おら!」
『グフグフ』
斬り掛かるが、ゴブリンキングの皮膚を斬れないため、余裕の表情を崩さない
「あぁぁぁ」
握りしめられて、骨が軋む音が辺りに響く
「おのれ!」
「団長待ってください!」
『グガー!』
「しまっ……」
誘われてるのに気付いた時には、殴られて建物へと叩きつけられ全身を強打する
「ごふっ」
「団長!」
血を吐きながらも、ゴブリンキングへと近づいて行くが、足元がおぼつかない
「無理です下がりましょう」
「仲間を置いて逃げるなど…」
『グフフッ!ニゲテモイイゾ?』
「ぐふっ!団長逃げて…」
少しずつ握り締めていくことで、苦しむ団員を見せられるアイゼンは逃げる事が出来ない
「ごふっ、待ってろ今助ける…」
「団長……」
『グフグフ!オマエジャムリダ』
「ぐぁぁぁぁ!」
「や、やめろ!ごふっ!」
血を吐きながらも、助けようとするアイゼンだったが…
『なら俺が変わろう』
『ゴアーーー!?』
ドスンという音を立てて、ゴブリンキングの右腕が切断される
「ちょっと待ってろ」
「は、ハルト…」
「遅くなったな。ポーションだ飲め」
アイゼンと、握られていた団員にポーションを飲ませる
「ふ〜、助かった」
「ありがとうございます!」
「ああ、話は後だ」
『ア、アア……』
ハルトの全身から湧き上がる覇気を感じて、ゴブリンキングは切られた腕を押さえながら後ずさる
『ナ、ナンダオマエワ…』
「俺か?死神だ」
『マ、マテ…』
「どうした?何を怯える?」
ハルトは無意識に、覇気と威圧をゴブリンキングにぶつけている
『コンナニンゲンガ…』
厄災に対して特効を持つハルトは、準厄災級のゴブリンキングにとってまさに死神に見えている
「そろそろいいか?街を救わないと行けないからな」
『ヤ、ヤメ……』
スパンと音を立てながら、ゴブリンキングの首を斬り落とす
「さて、まだ戦えるか?」
「あ、ああ」
「なら武器を直してやろう。俺だけじゃちと時間がかかるからな」
「頼む」




