4: 奴隷商(1)※
傭兵団ギルドの帰り道、カナエさんから教えて貰った奴隷商へと向かった
「確か衛士の詰所を右だったな」
そのまま通り過ぎようとしたら、詰所の近くで騒ぎが起きていた
「だから俺らはなんもやってねーよ!」
「そうだ!飯に誘っただけじゃねーか!」
「被害を受けた女性から訴えがあったんだ」
「んなの俺らを嵌めようとしてんだろ」
「そうだそうだ!」
揉め事か?
「被害女性からは、腕を掴まれて無理やり連れて行こうとしたと聞いている」
「だからやってねーよ」
「目撃者も居るんだ観念しろ!」
「あ?俺ら冒険者に喧嘩売ってんのか?!」
「テメーらぶちのめすぞ!」
え?冒険者って居るんだ?
この街じゃ傭兵しか見た事無いのに…
『ガヤガヤ』
騒ぎに気づいて市民が集まってきたな
「何が冒険者だこのゴロツキどもが!」
「この街に冒険者ギルドなんて無いよ、さっさと出ていきな!」
市民から罵声が浴びせられている
「うるせーぞクソどもが!」
冒険者とやらも冷静じゃないな
「貴様らいい加減にしろ!この街で勝手は許さんぞ!」
衛士も興奮してきてお互いに剣に手をかけだした
「やめんか馬鹿もん!」
「衛士長!」
「貴様ら冒険者も騒ぎを起こすなら街から出ていけ!」
「なんだこのジジイが!」
「貴様!衛士長に向かってなんて口を聞く!」
「ええい、辞めんか!」
興奮しすぎて収集が付かなくなってきたようだ
いつ殺傷事件に発展してもおかしくない
「一体どうしたというのかね?」
そこへ1人の鍛え上げられた肉体を持つ、明らかに只者ではない御仁が現れた
我らが傭兵ギルドのギルドマスター、その人である
「これはギルドマスターお騒がせして申し訳ありません」
衛士と市民がギルドマスターに向かって頭を下げる
「いえいえ、儂は通りかかっただけですから。それでそちらの若いのが何かしましたかな?」
そう言って冒険者達に鋭い眼光を向ける
「「ひっ!」」
あまりの眼光に冒険者が縮みあがっとる
「い、いや俺達は何も……」
ギロッ!
「「すいませんでした!!」」
あっさりと謝る冒険者
「このセロの街は、ワシら傭兵ギルドと衛士諸君が治安を預かっとる。この街で冒険者が問題を起こすなら傭兵ギルドとの敵対を意味するのがわかっているのかね?」
「い、いえそんなつもりは…」
「だったらこの騒ぎは何かね?」
「ご、誤解がありまして」
「誤解?」
「いえ!自分らが悪かったのです!すみませんでした!」
「だったら、すぐに謝罪をして街から早めに立ち去るんだな」
「「わ、わっかりましたーー!」」
ピューと音が出そうな勢いで冒険者達は逃げ出した
途端に拍手が巻き起こる
「流石ギルドマスターだぜ!」
「やっぱり素敵よね!」
「ああ、傭兵ギルドがあるお陰でこの街も安泰だな!」
凄い、ギルドマスターの人望が半端ない
「皆さん」
1度区切ってからギルドマスターは周りを見渡す
「この街を守っているのは傭兵ギルドだけではありません。衛士の皆さんが、日々市民の平和のために街を見回り、事前に犯罪を抑止して下さっているのです」
市民は改めて気付かされたとわかったのだろう、衛士達への感謝を述べる
「いつもありがとう!」
「これからもたのむよ!」
衛士達は泣きそうになりながらも市民に応える
「我々だけの力ではありません、市民の皆さんの協力あっての賜物です」
「「ありがとうございます!」」
拍手喝采が巻き起こる
すげ〜。何この信頼関係!
「いつまでも集まっている訳にはいきません解散しましょう」
皆あっさりと解散していく
俺も奴隷商に向かおう
「しかし、あの信頼関係はなんなのかね?日本も安全だと思ってたけどこの街は異常な気がする」
「ここかな?」
俺のイメージする奴隷商とは違って小綺麗だな
「ごめんください」
「ようこそいらっしゃいました。当店へようこそ、奴隷の購入ですか?」
「本日は奴隷の購入にあたり、説明を頂けたらと思い伺いました。傭兵ギルド所属のハルトと申します」
「これはご丁寧にどうも」
畏まりつつ応える奴隷商
「何分奴隷に対する知識が無いものですから、教えて頂けたらありがたいです」
「分かりましたこちらへどうぞ」
店内の応接室へと通される
「当店の奴隷を説明させて頂きますね」
「よろしくお願いいたします」
「当店で扱っておりますのは、戦闘奴隷と永久奴隷となっております」
「永久奴隷とは戦争奴隷と聞いたのですが、違うのでしょうか?」
「はい、永久奴隷とは過去の戦争で奴隷になった者の子孫となっております」
「子孫?」
「永久奴隷は永久奴隷としか子を残す事が出来ません」
「奴隷だからでしょうか?」
「奴隷であるのはもちろんなのですが、種族の違いによって人族とは子を成す事が出来ないというのもあります」
「種族が違うとは?」
「ご存知ありませんか?」
「はい、お恥ずかしながら」
一瞬怪しむような表情をしたが説明してくれるらしい
「分かりました御説明しましょう」