37:反撃開始(2)※
ゴブリンへの次の一手として、ハルト自ら、ゴブリンの軍勢へと飛び込む
「これは気持ち悪いな」
辺りをみると、醜悪なゴブリンの顔だらけで嫌になってくるので、さっさと倒してしまおう
「いくぞ!」
クズ石製の大剣を振るうと、ゴブリンが6匹上下に分かれた
『ゴギャ!』
『ギャ?!』
「何言ってるか分からんが驚いているようだな」
ゴブリンの間を縦横無尽に走り抜けながら、当たれば切れるのを幸いと切り伏せていく
『おい!あれを見ろ!』
『なんだ?』
『死神だ!死神ハルトが、ゴブリンの軍を1人で倒しているぞ!』
『すげー!』
1時間もゴブリンを倒していると、帝国軍の中でもハルトの動きを見つける者が現れる
「ははっ!どうしたゴブリン共!」
『ゴァーー!』
「上位種か?」
『グルァ!!』
上位種が剣を振るってくるが、クズ石製の武器や防具を装備しているハルトには、脅威になり得ない
「効かんな。死んどけ」
『ガッ…』
『ゴ、ゴブ?!』
上位種が一瞬で殺された事で、周囲のゴブリンに恐怖が伝染する
「どうした?掛かってこないのか?」
周りを見るが、ゴブリン達は怯えてしまい、ハルトを中心とした場所に空間が出来ている
「ふむ、そろそろいいか」
重量をゼロにして防壁の上まで飛び上がる
「うぉーー!すげぇ!」
「ゴブリンを5000は殺してたぞ!」
「流石死神!」
「さすしに!」
止めんかい
「いや、お見事!」
「将軍、20分ほどしたら打って出るぞ」
「全軍ですか?」
「ああ、ゴブリンは混乱しているから一気に殲滅出来るだろう」
「わかりました伝えましょう。伝令!」
ハルトの活躍で全軍の士気は最高潮になっている。出撃の指示が行き渡ると、歓声で地面が揺れた
「これより打って出る!各班配置は決まったな?戦闘終了後の食事に、ウチの女性陣の作ったデザートが付くぞ!」
『『うぉーー!!』』
「デザートが欲しいか!」
『『欲しい!!』』
「ならば生きて戻れ!」
『『おーーー!』』
「出撃!」
出撃命令の後、防壁を解除する事で、隊列を組んだ帝国軍がゴブリンへと進軍する
突如現れた軍勢に、ゴブリン達は困惑して、次々に討ち取られていく
『進めーー!』
『ゴブリン如き我らの敵では無いわ!』
1度はゴブリンに追い詰められた帝国軍だが、ハルトの防壁によって安全に休息を取り、英雄の活躍をその目で見た彼らには、恐れる物など無い
対して、ゴブリン軍は圧倒的な数の差でありながら攻めきれず、ハルトによって上位種を散々に討ち取られたため、崩壊すんぜんにまで追い詰められていた
「久しぶりに、一兵卒のように戦えるぞぉ!」
「ははっ!将軍もまだお若い!」
「ダンタリオンか!貴様も楽しんでおるか?」
「ええ!まるで若い頃のようです!」
「ここまで士気を上げられては、老骨とはいえ燃えるわい!」
「同じく燃えますな!」
「ならば競争じゃい!」
「望むところです!」
将軍と騎士団長という、普段一緒に前線戦う事は無い立場の者達は、久々の感覚に身体が歓びで充ちていた
「おいおい。将軍達は暴れまくってるな」
「騎士団長まで…」
「楽しいんですかね〜」
「楽しそう……」
「おじいちゃん達、笑ってますよ」
「指揮はいいんでしょうか?」
「大丈夫だろ。全軍の士気は高いし将軍の配下の指揮官は、優秀だ」
「そうですね。見事に連携して動いてます」
流石は、大陸最強の軍事国家だけはある
浮き足立つゴブリン軍の、薄い部分を的確に攻めている
「これじゃあ俺たちの出番は無いな」
「そうですね」
「あとは帝国軍だけで終わりますよ」
「それじゃあ飯の用意でもするか」
3時間後には、8万居たゴブリンは1万と少しまで減らされ、逃げ出した所を追撃されて壊滅した
こちらの戦死者0、重傷者74名、軽傷者361名と怪我人は多いが完治可能なため、歴史的大勝利として、後に語られる英雄ハルトの偉業の1つとなった
「約束通り戦死者はいないようだな。では今日の晩飯は我が傭兵団が誇る美女達のデザートを食す権利を与えよう!」
『うぉーー!』
『ソフィアさーーん!』
『ミルクちゃーーん!』
『サーニャちゃーーん!』
『サイカちゃーーん!』
「団長!!」
「恥ずかしいです〜」
「止めて……」
「えへへ」
「「私達は?……」」
ソフィア達は顔を赤らめていてる
元赤衣衆は、まだあまり知られていない……
頑張れ!
『『かわいいーー!』』
「やめてください!」
「まあまあ、今日は許してやってくれ」
「団長のせいじゃないですか!」
「つい出来心で……」
「知りません!」
ソフィアは怒っているが、死線を潜り抜けた彼らには、今日くらい楽しんで欲しい
「ハルト殿、大戦果でしたな」
「これはクレイ将軍、お見事でした」
「いやはや、お恥ずかしい。年甲斐もなく、はしゃいでしまいました。それと儂は元将軍ですぞ」
「未だ覇気を放っておいて、元とは呼べませんな」
「ガッハッハッ!皇帝の坊主にクビにされましたからな。現役に戻るつもりはありませんよ」
「それは勿体無い。クレイ卿の経験はこの災厄には必要ですよ」
「帝国への最後のお勤めになるでしょうがな…」
「……良かったら、うちの団に来ませんか?うちは皆若いので、クレイ卿の経験を伝えて欲しいのです」
「儂を団にですか?齢60を超えた老骨ですが……」
「なにを仰る。知識や技術においても、我らには変え難いものです」
「……分かりました。息子があとを継いでますし、この老骨で役に立つならお世話になりましょう」
「ありがとうございます」
「これからは配下ですからな敬語は必要ありません」
「……分かったよろしく頼む」
新たに、クレイ将軍を加えた事で戦力が増えたが、クレイ将軍を慕う元部下30名も一緒に団に入る事になった
「こやつらは、儂が鍛えた精鋭ですから実力はありますぞ」
「「よろしくお願いします」」
「ああ、よろしく頼む」
「よろしくお願いしますね」
「頑張りましょう〜」
「よろしく……」
「これからは仲間ですね!」
「ハルト殿を支えましょう」
「「よろしくお願いします」」
「「よろしくお願いします!!」」
おい!女性陣との温度差があるぞ!
「分かってるとは思うが…女性陣に無理に手を出したら……」
「「ひっ?!分かってます!!」」
「よろしい」
「ガッハッハッ!儂からもお仕置があるからな」
これだけ釘を刺せば大丈夫だろう
「ハルト殿」
「ダンタリオン殿か」
「我らは、難民のいる場所に向かいたいのだが…」
「皇帝も居るはずだが…」
「なんですと?!」
「皇帝が?!」
「知らなかったのか?」
「あやつは、民を囮にして逃げたのですぞ!」
「ええ、我らにゴブリンを擦り付けたのです」
「聞いている。俺たちがこちらに向かった時に、北部に築いた城塞へ向かっていると聞いた」
「あのクソガキが!!」
「落ち着いて下さいクレイ将軍」
「これが落ち着いていられるか!あれだけ王国との関係を潰しておいて、自分はあっさり逃げ込むなどと!」
「私も同じ気持ちですが、相手は皇帝です」
「ふむ、他に皇族は居ないのか?」
「どういう意味ですか?」
「ハルト団長?」
「もし居るなら、その皇族を擁立して皇帝にすればいい」
「それだ!!」
「確かにいい案ですが…」
「何か問題があるのか、ダンタリオン?」
「皇帝がいるのに皇族を擁立すれば、内乱になるのでは?」
「それは無いな」
「どういう意味です?」
「今は皇帝が居ないからだ」
「え?」
「儂には分からん」
「簡単な事だよ。現皇帝は王国に亡命したから、新たな皇帝を決める必要がある。ならば皇族から選ぶのは当然だろ?」
「なるほど!」
「亡命をした皇帝は、帝位を失うから既に皇帝では無いのだな!」
「その通りだ」
「ならば皇族を探さねば」
「その必要は無いな」
「何故?」
「ダンタリオンが、皇帝になればいい」
「私が皇帝ですと?!」
「それは流石に…」
「構わんだろ。ここには帝国で重鎮だったもの達が揃っている。暫定的な評議会を開いて、ダンタリオンの即位を認めればいいだけだ」
俺の出した案に2人は驚愕している




