36:反撃開始(1)※
帝国軍に食事を与えて休憩を取らせている時、ハルト達は軍議を開いていた
「帝国兵の数は?」
「総勢8000名で、軽傷者は3000名ほどです」
「そうか……あと2時間ほどで日が沈むが、ゴブリンは夜襲を掛けてくると思うか?」
重傷者は置いてきたのだろう
「未だ来ていませんし防壁がありますので、ゴブリンも歩き疲れていますから来ないとは思います」
「念の為、見張りを置いて兵を休ませるべきだと思う」
「そうですね」
「では兵を休ませよう。次の議題だが、帝国兵は弓矢をどの程度持っている?」
「弓は300ほどで、矢は5000といったところですね」
「ふむ、なんとかなるか」
「ですが、ゴブリンは10万以上は確実ですぞ」
「籠城は無理だから、ある程度ゴブリンを減らしたら打って出る」
「それは無謀では?」
「俺なら問題ない」
「ハルト殿1人でですか?!」
「ああ、俺は重さを操れるから、ゴブリンを減らして休憩時は防壁に戻るを繰り返せるからな」
「そ、そんな事が……」
「防壁は作れるわ、戦闘能力は死神と称されるほどに高い御仁に喧嘩を売ってたんですね帝国は」
「皇帝の間違いだろ」
「愚帝の間違いでは?」
「うむ愚帝だな」
皆が深く頷いている
「ソフィア嬢に、懸想して国を危険に晒すなど愚かしい」
「ハルト殿が慈悲深い御仁であったから良かったものの、救援頂かねば、我々だけでなくビーンズも落ちていた可能性がある」
「まったく皇帝には相応しくない」
「皆様そのへんで、ハルト殿も困っています」
「これは失礼した」
「申し訳ない」
「いや、皆さんの言いたい気持ちもわかる。危機的状況から解放されたのだから愚痴も言いたくなるだろう。しかし今は防衛に意識を集中して貰いたい」
「了解した」
「いや、お恥ずかしい」
「では他に議題は?」
「「…………」」
「無いようなので今日は休みましょう」
軍議が終わり、テントに帰るとソフィアが待っていた
「団長、私のわがままの為にありがとうございます」
「何の事だ?」
「帝国を救う必要などなかったはずです」
「いや、そんな事はないぞ」
「え?」
「帝国を救うのは、傭兵の民を守る信念があるからだ。そしてソフィアの憂いを無くせば、気持ちよく働いてくれるだろ?副団長は有能で居てくれないと、俺がサボれん」
「団長……」
「これからも、こき使うから覚悟しておけ」
「はっ!自分の命を捧げます」
「相変わらず硬いやつだ。そうだ、この戦いが終わったら可愛い服を着せてみようかな?」
「なっ?!自分には似合いません!」
「残念だが決定事項だ」
「そんな〜」
ソフィアの珍しい顔が見れたので、来たかいはあったようだ
翌朝、ゴブリンの軍勢が荒野に現れたと、監視から連絡が入ったことで全軍に緊張が走る
「来ましたな」
防壁に登ると、ゴブリンの大軍勢が見える
補佐として付いてくれた、クレイ元将軍が緊張した様子でゴブリンを見ているが、帝国軍は萎縮してしまっている
仕方ない……
勇敢なる帝国軍の精鋭達よ!
諸君らは、民を守るためにゴブリンの大軍勢を引き付ける大役を見事に果たした勇敢なる兵士である!
我ら黒の傭兵団は、諸君ら帝国の精鋭を守るために来たのでは無い!
精鋭に足りなかった物資を届けに来たに過ぎないのだ!
諸君らはゴブリンなどに負けるほど弱いのか?
『違う!』
民を守るためにゴブリンを引き付けていただけだろう?
『『そうだ!』』
ならば恐れるな!
諸君らが力を出せるだけの準備はした!
防壁の上からゴブリンを潰す簡単な仕事だ
出来るのか?
『『出来る!』』
そうか
ならば声を上げろ!
ゴブリン共に、勇敢なる精鋭の存在を刻みつけろ!
『『おー!』』
声が小さい!!
『『『おーーーー!!』』』
総員防壁に上がれ!
ゴブリン共に、諸君らの力を知らしめてやるのだ!!
『『『うぉーーー!!』』』
『総員準備!』
『ゴブリンなど恐れるに足りん!』
「素晴らしい演説でした」
「本来の力を出させたに過ぎない」
「これで勝てますな」
『ゴギャ!』
「数は8万ほどですな」
「10倍か…」
徐々に近づいてくるゴブリン達に、帝国軍は士気は最高潮になる
「へっ、来やがれ!」
「もう逃げる必要は無いからな」
「何匹殺せるか賭けようぜ」
「そりゃいい!」
ゴブリンが防壁まで迫ってくる
「距離700!」
「弓、ボーガン用意!」
「了解!」
「距離500!」
「放て!」
一斉に放たれた矢がゴブリンに刺さるが、数が400程しか無いので減ってるようには見えない
「投石準備!」
投げやすい大きさに加工された石が、大量に準備されているため問題なく投石を続けられる
「よし来たな。投石開始!」
「喰らえゴブリンが!」
「親友の仇だ!」
『ゴギャー?!』
「見ろどんどん死んでくぞ!」
「この防壁すげえや表面がツルツルしてるから登れねえぞ」
「ゴブリンが群れてると気持ち悪いがな!」
「違いない!」
「「ワッハッハ」」
開始1時間経っても、防壁は破られないし登っても来れない
「今のところは完璧ですな」
「ああ、だが気持ちが緩んでるな」
「引き締めますか?」
「いや、そろそろ俺が行こう」
「本気だったのですね…」
「もちろんだとも」
ゴブリンがわんさかいるので、大剣を振るえばいくらでも当たるだろう
「では行ってくる」
「ご武運を」




