32: 皇帝の受難※
国境での戦いのあと、帝都では敗北の情報が流れていた
「なんだと?!」
「国境での戦いに敗れ軍は壊滅。現在、増援を用意していますが帝都守備に必要な数を抜いて2万。同数を当てても勝利は難しいでしょう」
「何故王国などに負けているのだ!」
「現在情報を集めていますが、死神が現れたとか…」
「死神だと?何を馬鹿な事を。負けた言い訳なら、もっとマシな嘘をつけ!」
「それが、どうやら本当に現れたようなのです。黒き鎧に赤いマント、黒い大剣を振り我が軍を1人で2000は殺したと、複数人の証言があります」
「なんだそれは?」
「英雄ハルトですよ」
「なに?あの傭兵だというのか」
「はい、軍の兵糧を焼き払い、そのまま陣地で暴れたそうです。更に、国境沿いに砦を築かれたので、王国攻略は難しい状況です」
「馬鹿な…」
「如何致しますか?」
「ぐっ、余が全軍を率いて王国を滅ぼしてくれる!」
「お待ち下さい。帝都の防衛はどうするおつもりですか?」
「帝都は、防壁に囲まれているから大丈夫だろう」
「治安の悪化が懸念されます」
「ならば、どうすると言うのだ!」
「謝罪されては如何ですか?」
自分に従わない者を癇癪を起こして罰し、女の為に戦争を起こした皇帝は見限られつつある。
「貴様ーー!余に、謝罪をしろだと!」
「このままでは、帝国は滅びます」
「黙れ!余が皇帝になったのだ、大陸統一を出来ない訳がなかろう」
「現実を見て頂きたい」
「うるさい!貴様などクビだ!」
「分かりました失礼します」
優秀な者が去り、愚か者が残った帝国は、このまま没落して行くかに見えたが…
「陛下!大変で御座います!」
「今度はなんだ!」
「モンスターの氾濫が起きました!」
「なんだと?!」
「兵士が居ないため抑えきれません!モンスターに攻撃されて、南部が分断されています!」
「すぐに軍を派遣しろ!」
「王国は宜しいのですか?」
「ぐっ!停戦の打診をしろ!」
更に兵士が入ってくる
「陛下!王国軍が進軍して来ました!」
「このタイミングでか?!」
「既に、北部地域が占領されています」
「すぐに使者を出して、停戦に持ち込め!南部に軍を派遣せねばならんのに、王国の相手をしていられるか」
「分かりました!」
「何故このような事に……」
「陛下、南部への派兵は誰に任せますか?」
「将軍の誰かに任せれば良かろう」
「申し上げにくいのですが……将軍は誰も残っていません」
「残って居ないだと?」
「皆様、役職を外されたため城にはおりません」
「ならば、騎士団長に指揮を取らせろ」
「ですが、帝都の守りはどうするのですか?」
「副団長に帝都を守らせろ」
「すぐに指示を出します」
南部に、騎士団長率いる帝国軍を派遣してから2週間後。王国との停戦の使者が帰ってきた
「陛下、王国は北部地域の割譲と、陛下の謝罪があれば停戦に応じるそうです」
「余の謝罪だと!」
「はい、王国と傭兵ハルトへの、謝罪を要求しています」
「そのような事が出来るか!」
「しかし、王国と和解して食料を融通して貰わないと、飢餓がおきます!」
「そんな事は分かっている!」
「でしたら!」
「皇帝が謝罪するなどありえん!」
「このままだと、王国軍とモンスターに、帝国の領土が奪われたままになりますぞ!」
そこに、兵士が駆け込んでくる
「大変で御座います!」
「なんだ……」
「南部にて厄災が発生しました!騎士団長の指示のもと、南部の住人を連れて撤退中です」
「馬鹿な……」
椅子に崩れ落ちる
「陛下…」
「もはや是非もなし……王国に謝罪する」
「はっ…、すぐに準備します」
こうして停戦が成立した




