31: ハルトの怒り※
「ハルト殿!帝国が国境に軍を展開しました!」
「なに?」
「皇帝が亡くなったことで、皇太子が後を継ぎましたが、王国に対して食料の輸出再開と、ソフィアさんの引渡しを要求して軍を派遣して、圧力を掛けてます」
「そうか、王宮からはなんと言ってきている?」
「我々第1騎士団に、国境へ行くように指示が来ました。ハルト殿には陛下から手紙が来ています」
「分かった。読んでおく」
「では、準備がありますので失礼します」
陛下からの手紙を見ているが、状況は厳しそうだ
『ハルト殿へ。帝国の皇太子が後を継ぎ、我が国へ無理な要求を突き付けてきたが、到底受け入れる事は出来ない。我が国は帝国の圧力に屈せず、徹底交戦をする事にした。そこでハルト殿に協力を要請したい。もし協力をしてくれるなら王宮へ来てもらいたい』
ソフィアの引渡しも要求されているし、協力するのは吝かでは無いが戦争に関わるのは嫌なんだよな
「ソフィア、カレン来てくれ」
「どうしました?」
「帝国が、王国に兵を派遣して圧力を掛けてきた」
「戦争になるのですか?」
「恐らく戦争になるだろうな。王宮に招聘されているから行ってくる」
「自分も行きます。帝国との軋轢は自分のせいですよね?」
「皇太子が愚かなだけだ。いや、今は皇帝か」
「ですが…」
「カレンと一緒に、この場所を護って貰いたい」
「わかりました…」
「カレンも頼む」
「お任せを」
ソフィアは気にしていたようだが、付き合わせる気は無い
1人で身軽なため、王都まで馬に乗り2日で到着する
王宮では、国王陛下と宰相が待っていた
「おお、ハルト殿良く来てくれた」
「ご無沙汰しております」
「うむ、今回来てもらったのは他でも無い。帝国への対応の為だ。皇太子が帝国を継いだ事で暴走しておる」
「現在、国境付近では両軍の睨み合いが続いております。王国としては、譲歩するつもりは有りませんので、このまま戦端が開かれると思われます。ただし、この後、帝国の使者と話し合いがありますので、その結果によっては回避される可能性があります」
「可能性は低いだろうがな」
「そうですね。ハルト殿には、話し合いに参加して欲しいのです」
「当事者ですから参加致します」
「有難う御座います。それでは謁見の間に移動しましょう」
謁見の間に移動すると、帝国の使者が入ってきた
「帝国からの要求をお伝え申し上げます。傭兵ハルトとその奴隷ソフィア嬢の引渡し、並びに、傭兵ハルトの開拓地を帝国へ譲渡して頂きたい」
「ふざけておるのか?」
「いえ、帝国としては、王国を滅ぼしても構わない所を、譲渡した結果でございます」
「宰相どう思う?」
「話になりませんな。そもそも王国が負ける事を前提にされても、笑い話にもなりませんな」
「そうよな、ハルト殿はどう思う?」
「はっ、帝国如き、滅ぼすのは簡単ですが、後始末が面倒ですね」
「なっ!」
確かに帝国は強い。王国が騎士団5千、一派兵2万なのに対して帝国は騎士団2万、一派兵5万を抱えている
数だけ見れば、3倍近い数だが帝国は食料が足りていない。王国はハルトのおかげで食料は潤沢にあるので、防衛に徹していれば帝国が引いて行くはずだ
更に、ボーガンやバリスタなどの、最新兵器があるため籠城も容易い
「そうよな、大量の避難民が出ては面倒だ。使者殿、即座に謝罪と賠償をするように皇帝に進言する事を進めるぞ」
「そのような事出来るわけが御座いません!帝国は大陸最強の国ですぞ!」
「大陸最強とは大きく出たな。前ならいざ知らず、今となっては帝国など恐れる訳が無いだろうに」
「そうですな」
「そこの傭兵と、奴隷の身柄だけでも渡して頂けるのなら、戦争は回避出来るのですぞ!」
「ハッハッハ!愚かな事だ。ハルト殿が大人しく捕まるはずがあるまいよ」
「帝国には、愚帝がいるようですから、遠慮願いたいです」
「ぐ、愚帝だと!皇帝陛下に向かってなんと言う事を!」
「ならば世間知らずの馬鹿者とでも言うべきか?」
「おのれ!言わせておけば!」
「ふん、ソフィアを狙う、色情魔など敬う気は無い」
「貴様!」
ハルトは、ソフィア達を皇帝が妾に望んでいるのを知ってから、内心激怒していた
「そこまでにせよ!」
「陛下の御前ですぞ!」
「これは失礼しました」
「最早交渉は決裂!皇帝へは王国が戦争を望んでいると、報告致します!」
怒り心頭で、出ていく使者
「陛下申し訳ありませんでした」
「よいよい、ハルト殿を怒らせるとは、帝国には同情するぞ」
「そうですな」
「ははっ、では帝国軍を痛めつけて参ります」
「1人で行くと言うのか?」
「ええ、国境には2万程度と聞いていますので、兵糧を潰してきますよ」
「ならば国境の軍には協力するように伝えよう」
「有難う御座います」
ハルトの退出後
「宰相よ、ハルト殿は怒らせるなよ」
「もちろんです」
5日後
「ハルト殿!」
「おお、ヘリオスか」
「此の度の戦争に、参加されるのですか?」
「ああ、皇帝が舐めた事してくれたのでな」
「はははっ、これで勝ちましたな」
「指揮官は誰だ?」
「案内します」
「ハルト殿をお連れしました」
「入れ」
「失礼する。ハルトです」
「貴方がハルト殿か、私は王国軍の総指揮を任された、カルア伯爵だ」
「よろしくお願いします。早速ですがこの場に砦を築いても?」
「噂のスキルだな。許可しよう私が案内する」
国境沿いに砦を築いて、帝国を驚かせてやろう
『造形』
「おお!!」
使い続けた造形によって、防壁が一瞬でせり上がってくる
「凄まじいな」
「このまま防壁で囲んで、階段や監視塔も作りますよ」
防壁と堀を築いて、階段や監視塔を作って、バリスタも作り上げる
『なんだあれは!』
『急に壁が現れたぞ!』
『確認しろ!』
いい感じで、帝国側が慌てている。今や複数の物体を作る事が出来るため、1時間と掛からずに完成させる
「出来ました」
「あ、ああ」
「柵や、残っていた木材は、バリスタにしました」
「分かった。おい!帝国の様子を監視しろ」
「はっ!」
「では、帝国軍に打撃を与えてきます」
「なに?」
「ちょっと兵糧を潰して、後方を撹乱してきますよ」
「何を言ってるんだ?兵糧を潰す?」
「ええ、1人なら敵の陣に簡単に侵入出来ますから」
「わ、分かった。こちらも準備しておこう」
砦を出て、帝国軍の後方へと回り込んで、兵糧の場所を探す
「ここら辺が怪しいが…」
テントが並んでいる場所に忍び込んで、辺りを探す
「貴様何をしている!」
「丁度いい、兵糧の場所を教えて貰おうか」
「何を言っている教える訳が……ぐふっ!」
腹を強打され、悶絶する兵士
「教えないと言うなら、手当り次第破壊するまでだ」
『ゴォォォォォ!!』
ハルトによって焼き払われたテントは、激しい炎と煙を出す
『火事だーー!』
『消火しろ!』
『不味いぞ食料庫の方だ!』
気づいた兵士達が、消火をしようとするがハルトは許さない
「悪いが邪魔させて貰おう」
「何者だ!」
「ふん!」
大剣を一閃させて、兵士を数人纏めて切り払う
「ぐあっ!」
「ヒィ〜」
「さあ来い!」
集まってくるの幸いとして、大剣を振り回し帝国兵を、なぎ倒し続ける
「ぎゃーー!」
「いやだ〜!」
「怯むなかかれ!」
「弓で攻撃しろ!近づいたら死ぬぞ!」
矢を浴びるが、クズ石の装備で全身隙間なく覆っているハルトには、矢が刺さるどころか傷一つ付かない
「効いてないぞ?!」
「化け物だ…」
「黒の死神…」
一切の攻撃が効かず、多数の帝国兵相手に黒き鎧と黒の大剣を振る様から、死神を連想させる
「死神だ……死神が来たんだ!」
「助けてくれ〜〜!」
「逃げるんじゃない戦え!」
「ふざけるな!死神と戦えるかよ!」
「お前が戦えよ!」
指揮官の指示を無視して、兵士が逃げ出してしまう
『『ウォォ!かかれー!』』
混乱した帝国軍に、王国軍が襲い掛かる
「クソっ!応戦しろ!」
「無理です!兵士が混乱して、隊列が取れません」
「さっさと兵士を統率せんか!」
「後方に、死神が現れたとの情報もあります」
「死神だと?!」
「人間同士の戦いに死神が怒ったんだ…」
「そんな馬鹿な事があるか!」
「では何者ですか?!」
「黒き鎧に赤いマントらしいです!」
「黒……。英雄ハルトだ」
「英雄……」
「今回の戦いは、皇帝陛下が英雄ハルトの奴隷を欲したため、起きたのだ。英雄ハルトが参戦していても、不思議は無い」
「オークロードを、単独討伐した英雄が後方で暴れているなど悪夢だ…」
「撤退しましょう」
「………。撤退だ」
「撤退!全軍撤退!!」
後方でハルトが暴れ回っているため、隊列すら取れずに王国軍に攻撃された帝国軍は、撤退を余儀なくされる
「引けー!引けー!」
散々に打ち負かされたうえ、追撃された帝国軍は、2万のうち戦死者8000人、重軽傷併せて6000人、逃走した兵士は3000人にも及んだ。このうちハルトは1人で2000人近い数を倒している
「いやぁ、大勝ですな!」
「ハルト殿の力は凄まじい」
「お疲れ様でした、伯爵閣下」
「ハッハッハ!帝国はこれで懲りただろう」
「それならいいんですけどね」
帝国がまた来る可能性もあるから、防備は強化しておこう




