28: 宰相の来訪※
王都から開拓地に戻り2ヶ月。日々忙しく開拓作業を追われていると、帝国からの使者が現れた
「ご主人様、帝国から使者の方が、お見えになっています」
「帝国からだと?」
「はい、屋敷にてお待ち頂いてます」
「そうか」
屋敷へ向かい、完全武装に整えてから応接室に向かう
「お待たせした」
「いや、突然訪れてすまない」
使者というわりには、随分と偉そうな感じだ
「それで?何用で来られたのかな?」
「ソフィア嬢を、こちらに渡して貰いたい」
「ふむ、その件はザコス殿から騎士団長殿へ、お断りの連絡が行っているはずだが?」
「確かに聞いているが、今回は騎士団長とは関係がない。皇太子殿下がソフィア嬢をお望みでな。ここに金貨500枚ある。それ受け取るがいい」
随分と無茶を言ってくるが、こちらを怒らせるつもりだな。こちらが怒りに任せて使者を追い返せば、それを理由に力ずくでソフィアを奪うつもりだろう
「帝国の使者では無いようだな」
「なんだと?」
「帝国の使者だというから時間を取ったが、俺の奴隷であるソフィアを買いにきた奴隷商ではないか。まったく、時間の無駄だったな」
「なっ!私を、奴隷商だというのか!」
「では、何者だ?未だ、身分を明かしていないではないか?」
「ぐっ、私は帝国子爵のバカデスだ!」
「何か、身分を証明する物は?」
「それは……」
「無いのであれば、貴族を騙った罪で拘束する事になるな」
「私は貴族だ!」
「使者に来る者が、身分を証明出来ないなどあるはずがないだろ?とりあえず身柄を拘束させて貰う」
「ふざけるな!」
「王都へ確認を頼むから、帝国からの返答があるまで大人しくしているのだな」
「ぐっ!お前達私を守れ!」
護衛の騎士達は、迷っているようだ
「剣を抜けば、立場が悪くなるぞ?まあ、帝国では身分も証明せずに、他国で使者が務まるのなら、俺が知らなかったとして謝罪はしよう」
「私は……」
「仮にも、国王陛下より開拓地を任されている以上は、王国内では貴族に準ずる扱いになるので、国際問題になるが知らぬ訳ではあるまい?」
「……分かった、そちらの指示に従おう」
「ヘリオス、丁重にお連れしろ」
「かしこまりました」
「しかし、皇太子の遣いであるのに身分証を持たず、手紙すら預かっていないとはどういう事だ?」
「恐らく、皇太子殿下の独断なのでしょう」
「皇帝陛下の許しを得ずに、王国へ使者を出したと?」
「はい、王国は帝国貴族が来ている事を、知らないはずです」
この世界では、貴族が勝手に他国へ入る事は許されていないため、事前に申請しなければならない
「面倒な事になりそうだな」
「そうですね」
王都へ連絡してから、20日後に宰相が開拓地へ来訪した
「これは宰相閣下。此の度は、閣下自らのご来訪、感謝申し上げます」
「ハルト殿からの連絡ですからな。開拓地の確認も併せて、来させて頂きました」
「有難う御座います」
「まずは、帝国貴族の方から片付けましょうか」
「分かりました。お連れしろ」
「貴方が帝国貴族ですか?」
「貴方は?」
「これは失礼。アルストリア王国で宰相を務めております。オーフェンと申します」
「なっ!失礼致しました。ゼクノス帝国子爵バカデス・カルノーと申します」
「ふむ」
宰相は資料で確認している
「確かに、カルノー子爵家は帝国に存在していますな。それでカルノー子爵は、ハルト殿へ金貨500枚を叩き付けて、ソフィア嬢を譲るように迫ったのは事実ですかな?」
「い、いえ買い取りたいと申しただけです」
「ハルト殿?」
「わかりました」
応接室に設置してある、記録水晶を起動させる
『ここに金貨500枚がある。受け取るがいい………』
「なっ?!」
「これが、帝国の交渉の仕方ですか…」
「ち、違うのです」
「映像が記録されているでは、ないですか」
「それは……」
「帝国に対して、厳重に抗議しなければなりませんな。無断で貴族が国境を越えて、我が国の開拓地で、我が国の、英雄への侮辱行為。しかも皇太子殿下の命令とあらば、軍事的緊張も、止むを得ませんな」
「どうかお許しを!」
「無理ですな。立派な敵対行為ですから、皇帝陛下からの正式な謝罪が無ければ、我が国としては戦争も辞さないですよ」
「そんな!それでは皇太子殿下の御立場が悪くなります!」
「当然ではないですか。私的な欲を満たすために、王国と英雄を、侮辱したのですから、皇太子としての地位も危ういでしょうな」
「なんて事だ…」
「臣下ならば、お諌めすべきでしたな」
カルノー子爵は肩を落としたまま、戻って行った
「では、開拓地を見させて頂きましょうか」
「ご案内します」
「報告は聞いていましたが、これ程とは思っていませんでしたよ」
「有難う御座います」
「二重の防壁に、バリスタを各方向に50台配置ですか」
「大氾濫に備えて、ボーガンも2000丁用意してあります」
「それはそれは」
「軍の長期滞在にも、問題がないように宿舎を建設しております」
3階建ての宿舎を、完成させているので2万人までなら滞在出来る
「いやはや素晴らしい。これは最早城塞都市ですな」
「過分な評価を頂き恐縮です」
「過分などと、謙遜される必要はありません。この短期間で成し遂げられるとは流石です。すぐにでも、移住計画を進めるように陛下へと進言致します」




