23: ニアバス子爵の愚行(2)※
ニアバス子爵の館にて
「旦那様、不味い事になりましたぞ」
「朝からなんだ一体…」
「開拓地に赤衣衆を差し向けた事が、王宮に知られそうです」
「なに?証拠を残さないようにしているはずだろう」
「それが生き残った移住者が、ハルト殿の開拓地へ向かっているらしいのです」
「ふん、あの傭兵の所か」
「どうしましょうか?」
「決まっている、赤衣衆を向かわせろ」
「しかし関与を疑われますぞ?」
「皆殺しにすればよい」
「赤衣衆だけでは、また取り逃がす可能性がありますが?」
「だったら父上の私兵を動かせばいい。森の中を移動させればバレないだろ」
「本当に宜しいのですか?」
「構わん、始末すれば言い訳など、いくらでも出来る」
「畏まりました……」
その頃、ハルトの奴隷であるソフィアとサーニャは、騎士50人を連れて森を探索していた
「サーニャどうですか?」
「見つからない…」
「困りましたね、ニアバス側からなら、この辺りに来るはずなのですが…」
「少し先行して探してみる…」
「分かりました、気を付けて下さい」
「行ってくる…」
「ソフィア殿、我々はどうしますか?」
「サーニャが戻るまで、待機していましょう」
「分かりました」
サーニャが先行してから1時間
「遅いですね」
「何かあったのかもしれません、私達も移動しましょう」
「では準備します」
移動しようとした所、周囲から気配がする
「全員警戒!」
「モンスターか?」
「違う…」
「サーニャ?!驚かさないで下さい!」
「ごめん…、住民が見つかったけど、おかしな事になった…」
「おかしな事?」
「貴方はハルト殿の関係者か?」
「誰です?」
「赤衣衆と言えばわかるか?」
「なっ!」
剣に手を当てて警戒する
「まて、戦う気はない」
「では何故ここに居るのですか?」
「我々は、住民を護衛して来たのだ」
「護衛?貴方達は住民を虐殺したと聞いていますよ?」
「なんだそれは、我々は罪の無い者に手を出したりはしない」
「本当です!私達を助けてくれました」
「そうです、犯罪組織に無理やり働かされていた、私達を助けてくれました」
住民達が赤衣衆を庇い始める
「一体どういう事なのですか…」
「まずは開拓地に戻りましょう、ハルト殿とヘリオス団長に報告しなければなりません」
「そうですね、では皆さん着いてきて下さい」
「ハルト殿、ソフィア殿が戻られました」
「そうか呼んでくれ」
「はい」
「団長、ただいま戻りました」
「ご苦労、それでそちらの方は?」
「初めまして、私は赤衣衆のリーダーをしているカレンです」
若い女の子だ、白髪で目鼻立ちが整っているが、着ている衣装は返り血で染まっている
「赤衣衆だと?」
「はい、ニアバス側の住民を護衛して、こちらに来ました」
「話が見えないのだが」
「私達は、ニアバス開拓地に居座って悪さをする、犯罪組織の壊滅を依頼された。だけど激しい抵抗にあい、開拓地は壊滅してしまった。そのため住民を保護してくれる場所が、ここしか思いつか無かった」
「犯罪組織との戦いのせいで、住民の皆殺しと伝わったと?」
「多分、先に住民を逃がしていたから、開拓地に人が残って無いため皆殺しと誤解されたと思もう」
「そう言う事か」
「住民を受け入れて貰えるだろうか?」
「それは構わないが、君たちはどうするんだ?」
「私達は赤衣衆として、終わりだと思ってます」
「それほど被害が出たのか?」
「いえ、今回の依頼を最後に解散しようと思ってました。先代の赤衣衆と違って、私達は未熟過ぎる」
「確かに君は若そうに見えるが…」
「生き残ったのが私だけだった」
「生き残り?」
「聞いた事がありますな、赤衣衆を恐れた貴族によって、里を襲撃されてから10年近く活動して無かったと」
「そう、里を襲撃されたとき唯一生き残れたのが私だけ、今のメンバーは過去に赤衣衆に助けられた子供達で、復讐に付き合わせてしまってる」
「貴族への復讐か」
「そうニアバス伯爵」
「は?それなのにニアバス子爵の依頼を受けたのか?」
「これを」
カレンが手紙を差し出す
「………ヘリオス」
「はっ、読ませて頂きます」
「住民の殺害と、開拓地の資金をニアバス子爵が着服する依頼書とはな」
「これが王宮に提出されれば…終わりですな」
「ああ、ニアバス子爵の印も押してあるし、伯爵の私兵を差し向けて残った住民もろとも、この開拓地を襲撃する計画が書かれている」
「ええ、すぐに王宮に提出しましょう」
「3部隊を派遣する」
「1部隊でよいのでは?」
「万が一があってはいけない、襲撃者は300ほどらしいから、問題ないだろう」
「ですな、ここを落としたいなら、最低でも1万は必要ですよ。ハッハッハ!」
「全周囲警戒を発令。不審な集団には警告後、即時戦闘許可を与える」
「はっ!了解しました」
ヘリオスは出ていく
「さて、カレンはこれからどうするんだ?」
「私は…」
「ふむ、しばらくここに居るといい。お仲間も一緒にな」
「ありがとうございます」
「構わんよ、とりあえず避難してきた者達に、仮設住居を作るか」
土を固めて長方形の建物を作っていく、中は仕切りをして簡易的なものではあるが、しばらくは大丈夫だろう
人数を聞いたら413人と言われたので、そんな人数の住居はまだ無い
「皆さんにはここに住んで貰います。仮設ではありますがしばらくは我慢してください。職人の方は明日より住居の制作を手伝って貰います。他の方は畑仕事や荷物運びなど、仕事はいくらでもありますので収入は心配しないで下さい」
「あの、家を買えるほどのお金は無いのですが」
「家は1年間無料で使用できます。その後は賃貸にするか、購入するかは自由です。また、開拓地では無く、別の街での生活を望む方は、後日相談に乗ります」
「そこまでして貰えるのですか?」
「ニアバス開拓地ではどうだったか知りませんが、これが普通ですよ」
「そうなんだ」
「セロの街へは、無料の馬車が3日毎に出てますから、事前に予約して貰えれば何時でもいけます」
街道の整備と、セロまでの森を伐採した事で、8時間で行けるようになったのだ
「では、詳しい話は晩御飯後に係の者から話しますので、住居を家族毎に決めて移動して下さい」
「「わかりました」」
「あとは頼む」
移民を案内した後は、監視塔へと移動する
「どうだ、不審な奴らは居たか?」
「いえ、今の所は居ません」
「そうか、済まないがしばらくは、昼夜問わず監視を頼む」
「わかりました」
監視塔を後にしたら、カレンと赤衣衆の仲間たちが集まっていた
「カレン、どうかしたか?」
「ハルト殿、皆と解散について話していました」
「そうか」
「リーダー!解散は嫌です!」
「そうですよ、まだ伯爵に復讐してないじゃないですか」
「ハルト殿が、王宮にニアバス達の犯罪の証拠を提出してくれる。それで奴らは終わりだ」
「それでは復讐にならないですよ!」
「奴らは、自分達の手で殺してやりたいです」
「まて、私達は10人しか居ない。奴らを相手にするのには力不足だ」
「暗殺すればいい」
「無理だ、ニアバス子爵は王宮に篭っているし、伯爵は臆病者だから、手元にかなりの戦力を控えさせている」
「ならどうすれば!」
「だから、王宮の沙汰に任せる」
「それじゃあ、先代達の無念は!」
「こんな私に着いてきてくれた、皆を死なせたく無いんだ」
手助けしてやりたいが…
「すみませんハルト殿、彼女らをここに置いて貰いたいのです」
「リーダー!」
「黙れ!これは命令だ!」
「ぐっ!」
よく見ると、みんな若い女の子だな
「ハルト殿お願いします」
「それは構わないが、いいのか?」
「はい」
「ふむ、手が無いわけではないが……」
「なんですか?!」
「教えて下さい!」
「この開拓地に攻撃を仕掛けらた場合に、反撃の許可が降りる可能性がある。いちおう領主だからな、しかもニアバス親子の不正や、犯罪の証拠もこちらにある。これを王宮に提出してニアバス親子の討伐を願い出る」
「それならニアバ親子を…」
「ああ、だがこれは個人的な報復だから、騎士団を借りる事が出来るか分からない。仮にも伯爵だから、それなりの戦力を持っているだろう。命を掛けられるか?」
「「もちろんです!」」
「カレンは?」
「私は…」
「ああ、それから俺の傭兵団に、全員入って貰うぞ」
「何故ですか?」
「赤衣衆じゃ、討伐の許可が降りんよ」
「確かにそうですね」
「ああ、皆には赤衣衆の名を捨てて、ニアバス親子を倒したら新しく傭兵として生きて貰う事になる。それでもいいなら、手伝おう」
「何故そこまでしてくれるのですか?」
「お前達は、ニアバス子爵に会った事があるか?」
「いえ」
「俺は王宮で傭兵だ平民だと見下された。貴族にも尊敬すべき人はいるが、奴らは害悪だ、排除しなければ、今後どんな妨害を受けるかわからん。だったら、さっさとご退場願おう」
「わかりました、ハルト殿に従います」
「「よろしくお願いします!」」
「これからよろしく頼む」




